王都テルベール
レベルアップと言う当たり前の事を忘れていた俺は、少しの間頭に響いた声の意味を理解出来なかった。
だって……今まで進化しかしてこなかったから、レベルという概念を軽く忘れてたんだもん……。
しかし、今こうして頭にレベルアップという声が聞こえているという事は、俺のレベルが上がったのだろう。
そんな事より、レベルアップと言う単語が不穏な気配を漂わせている気がしてならないのは何で?
取りあえず、ステータスがどうなったのか確認するために、俺は急いでステータスを表示した。
≪柊誠一≫
種族:人間(人間)
性別:男(男)
職業:無名の怪物(魔法剣士)
年齢:17(17)
レベル:2(2)
魔力:216030(21)
攻撃力:218090(21)
防御力:213270(21)
俊敏力:220270(22)
魔攻撃:215580(21)
魔防御:216680(21)
運:209040(20)
魅力:ドキドキで壊れそう(20)
≪装備≫
上質なシャツ。上質なズボン。上質な肌着。上質なパンツ。賢猿の鎖。水霊玉の短剣。夜の腕輪。黒王石のチョーカー。果て無き愛の首飾り。憎悪渦巻く細剣。慈愛溢れる細剣。
≪固有スキル≫
瞬間記憶。完全記憶。瞬間習得。瞬間回復。完全解体。心眼。
≪スキル≫
【攻撃】斬脚。双牙撃。剛爪。
【耐性】麻痺耐性。睡眠耐性。混乱耐性。魅了耐性。石化耐性。阻害耐性。毒耐性。疲労耐性。
【移動】刹那。
【特殊】上級鑑定。超調合。道具製作:超一流。索敵。偽装。同化。千里眼。吸収。圧縮。
≪魔法≫
生活魔法。水属性魔法:極。闇属性魔法:極。
≪奥義≫
疾風。一閃。雲霧。
≪武術≫
ゼフォード流守護剣術:開祖。
≪称号≫
臭い奏者。ゴリラの嫁を持つ男。総ての頂点。自重知らず。雄の王。
≪所持金≫
1000500000G
「俺の馬鹿野郎ッ!」
俺はその場に崩れ落ちた。
駄目だろ……自重しようぜ?
何でレベルが1しか上がってないのに、10万もステータスはプラスされてるの?ねえ、何で?
それより、一応俺よりレベルが87も高いスライムを倒した筈なのに、何故かレベルは1しか上がっていないし。
まあ……レベルが一気に上がったのなら、俺は今以上に精神的ダメージが大きかっただろうなぁ。
うん、レベルがたった1しか上がらなくて安心してる俺はおかしいね。あれ?目から汗が……。
俺……本当に人間?絶対に人間辞めてるよね?
「何なんだろうね、俺……」
静かにそう呟いていると、サリアが俺の隣にしゃがみこんだ。
「元気出して、誠一」
「うん……」
多分サリアは俺が何でヘコんでいるのか分かってないんだろうけど、こうして優しい言葉をかけてくれる事が嬉しい。そんなアナタが大好きです。
俺は気合いを入れなおして立ち上がる。
「なってしまったモノは仕方が無い。気を取り直して、出発しますか!」
「うん!」
サリアの言葉を受け、そのまま俺達は歩みを進めた。
◆◇◆
「えい」
ズパンッ!
初めてスライムを倒してから5日が経過した。
この5日間は、特に盗賊に襲われるというイベントも無ければ、サリアとムフフな展開になった訳でもない。
強いて何があったかを挙げるとすれば、スライムしか襲いかかってきていない事だろう。……まあレベルも上がってるんですけど。
あ、それと『スライムの生涯』に書かれたモノでは、スライムが主にどんなモノを食べてるのかくらいしか分からなかった。
微妙な出来事が多かったが、今も襲いかかってきたスライムを消し飛ばした所だ。結局する事は同じ。
散乱したドロップアイテムをアイテムボックスへと放り込む。
ひと段落すると、俺は小さく呟いた。
「……虚しい」
スライムが出現する度に瞬殺。最早作業ゲーだよ。
遠い目をしていると、再び声が俺の脳内に響いた。凄く嫌な予感。
『レベルがアップしました。スキル【偽装】の習熟度が最大値になりました。効果を【実力偽装】へと移行します。スキル【索敵】の効果が半径10mから半径500mまでアップしました』
「俺にどうしろと!?」
またレベルが上がっちまったよ!でも、この5日間で今倒したスライムを含めて107匹倒している。それなのに、俺のレベルは今上がったおかげで未だに10だ。
段々街に近づくにつれてスライムのレベルが低くなってきているとはいえ、レベルの上りが遅い。
だが、これは俺にとっては大歓迎である。
何故か?俺のステータスを見れば簡単な事だった。
≪柊誠一≫
種族:人間(人間)
性別:男(男)
職業:無名の怪物(魔法剣士)
年齢:17(17)
レベル:10(10)
魔力:1016030(50)
攻撃力:1018090(50)
防御力:1013270(50)
俊敏力:1020270(50)
魔攻撃:1015580(50)
魔防御:1016680(50)
運:1009040(50)
魅力:ドキドキで壊れそう(50)
≪装備≫
上質なシャツ。上質なズボン。上質な肌着。上質なパンツ。賢猿の鎖。水霊玉の短剣。夜の腕輪。黒王石のチョーカー。果て無き愛の首飾り。憎悪渦巻く細剣。慈愛溢れる細剣。
≪固有スキル≫
瞬間記憶。完全記憶。瞬間習得。瞬間回復。完全解体。心眼。
≪スキル≫
【攻撃】斬脚。双牙撃。剛爪。
【耐性】麻痺耐性。睡眠耐性。混乱耐性。魅了耐性。石化耐性。阻害耐性。毒耐性。疲労耐性。
【移動】刹那。
【特殊】上級鑑定。超調合。道具製作:超一流。索敵。偽装。同化。千里眼。吸収。圧縮。
≪魔法≫
生活魔法。水属性魔法:極。闇属性魔法:極。
≪奥義≫
疾風。一閃。雲霧。
≪武術≫
ゼフォード流守護剣術:開祖。
≪称号≫
臭い奏者。ゴリラの嫁を持つ男。総ての頂点。自重知らず。雄の王。
≪所持金≫
1002378000G
「もう嫌だあああああああああああ!」
何なの!?ステータス全部100万超えですか!?レベル10のステータスじゃねぇよな!?てか人間のステータスでもないよな!?
俺が本当に人間なのか不安になるね!助けて!
「それに何!?実力偽装?説明しやがれッ!」
俺がそう叫ぶと、あらかじめ用意してあったかのようにいきなり目の前に半透明のボードが表示された。
「うお!?……って何だ?」
いきなり出てきた事に戸惑いつつも、書いてある内容を読む。
『実力偽装』……スキル『偽装』の効果の一つ。今までの見た目を偽装する効果と違い、雰囲気を騙す事が出来る。ステータスに表示される数値も偽装出来るが、本当の実力すら偽装出来る様になった。力の制御も可能となる。ただし、見た目の偽装効果が解除される。
「……どゆこと?」
え、何?つまり、相手に見えるステータスだけじゃなくて、漫画とかでよくある強者の雰囲気みたいなものまで偽装出来るみたいな?
それに、力の制御って事は……スライムをズパンッ!しなくてイイって事?もう消し飛ばない?
…………。
「やったあああああああああああ!」
俺は思わずガッツポーズを決めた。
これで……これでイケるっ!他人から化物扱い受けなくて済むっ!
今更だけど、力を抑えられて喜ぶ人間って俺ぐらいだろうね!普通思いっきり力を振るいたくなるもんなんだろうけど……。
うん、ここまでぶっ飛んだステータスだと、逆に嫌になるんだ。
「てか、『索敵』のスキル効果……上がり過ぎじゃね?」
一気に10mから500mですか。ヤベェな。
まあ、索敵は攻撃系のスキルと違って、自重とか考えなくてすむからイイよね。それに、索敵は性能が上がってた方が断然いい訳だし。
一人で一喜一憂していると、サリアが俺に駆け寄って来る。
「サリア!やったよ、俺……。やっと人間を騙る事が出来るよ!」
「?よく分からないけど……よかったね!」
笑顔でそう答えてくれるサリアに、俺は心が軽くなった。
ただ、人間を『騙る』ことは出来ても、『語る』ことは出来ない。
でも、今の俺にはそれで十分だった。これ以上、俺の精神を攻撃されたら、どうなるか分かったモノじゃないからな。
そんなこんなで俺とサリアが盛り上がっていると、突然サリアが俺の顔を凝視して驚いた表情を浮かべた。
「どうした?」
「誠一、被り物が……」
「被り物って……ヘルメット?」
俺はサリアの言葉に首を傾げる。
俺のヘルメットがどうしたんだろうか?
すると、サリアはヘルメットの様子を語ってくれた。
「ひ、光ってるよ……」
「へぇ、ひかっ――――は?」
思わずそんな言葉を返してしまう俺。
いや……ヘルメットが光る?意味分からん。どう言う状況だよ。
しかし、現にサリアは俺の被っているヘルメットを見て、驚いている。
周りにはサリアしかいないし、今なら脱げると思った俺は、被っているヘルメットを脱いでみた。
「…………」
結論から言おう。
「光ってやがる……!」
え、何コレ!?どう言う状況!?自分で言ってて意味不明なんですけど!?
それに、光の種類も柔らかい光のせいか、全然眼にダメージも――――
ピカアアアアアアアアアアッ!
「「目が……目があああああああああああっ!?」」
俺とサリアは目を抑えて悶えた。
その瞬間、手に持っていたヘルメットは地面に落してしまった。
つか、安心した瞬間に強く発光するのヤメテッ!
それ以前に、目にダメージを負う事多くね!?進化の時とかそうじゃん!光る事が流行ってんの!?
しばらくの間目を開く事が出来なかった俺達だったが、時間が経つにつれて視界も回復してくる。
「チカチカする……」
「うぅ……」
未だに引かない痛みに顔を顰めていると、視界におかしなものが飛び込んだ。
「……何アレ」
視界の先にあったモノは、変なローブらしきモノだった。
しかも、よくよく考えれば、ローブらしきものが落ちている位置は、俺がさっきヘルメットを落とした位置でもある。
ローブらしきモノに近づき、拾い上げる。
「……まんまローブじゃん」
拾い上げたローブは、黒一色のローブで、刺繍も何も施されていなかった。
「いやいやいやいや、ヘルメットどこに消えたんだよ」
ローブを広げながら、ヘルメットの所在を探すと、ローブから何か白い紙らしきものが落ちた。
「誠一、何か落ちたよ?」
サリアが落ちた紙を拾い、俺の渡してくれる。
「一体何だ?」
渡された紙を広げてみると、中身は手紙らしきモノだった。
『どうも、羊さんです』
「お前かよ!?」
俺は手紙に思いっきりツッコんだ。
「これ、羊からの手紙なのか!?」
よく分からないが、取りあえず読み進めてみる事にする。
『まず、レベルアップおめでとうございます。どんどん人間から離れていきますね』
「ほっとけ!」
つか、何でレベルアップしてるの知ってんの!?
『さて、いきなりヘルメットが光った事で困惑していると思います。そこで、思い出してみてください。私は、いずれヘルメットは脱げるようになる事を説明しておりました。ヘルメットから、ローブに変換したのは、それが現実となったからです。つまり、今回の発光は、ヘルメットが新たなステージへと【進化】した事を示しているのです』
「新たなステージって何!?」
それにヘルメットが進化!?もうどこからツッコんでいいのか分からねぇ!
『それで、ヘルメットが進化する条件ですが、それは誠一様がレベルを上げることで、スキル【偽装】によって、表示される数値が一定まで到達する事でした。レベルが上がれば、偽装の効果が変わる事を私は知っておりましたので』
成程……だから、俺がレベルアップしてた事を知ってるのか。
『偽装の効果が変わったことで、誠一様の見た目も本来の姿へと戻されます。最早、ヘルメットで顔を隠す必要は無いのです』
「俺は初めから無かったと思うよ」
半分は羊の暇つぶしなんだろ?嫌になるね。
『本来の姿に戻られたのは良いのですが、それでも問題は出てくるでしょう。そこで、この世界でも特別目立つ事のないローブを用意させていただきました。ローブは魔法使いの証でもありますから、被っていた所で兵隊さんのお世話になる事もありません』
成程。確かにファンタジーならローブはアリか。……ヘルメットより信用性があるのは確実だね。
『見た目は隠す事が出来ますが、ローブには特に効果が付与されている訳ではありません。そこは、しっかりとご理解しておいていただきたいと思います』
おい、効果が付与されてなかったら進化じゃなくて、退化だろ。まあ、見た目は確かにローブの方が良いけど……。
つーか……
「なんか調子狂うぞ、この羊」
なんて言うか……馬鹿みたいに丁寧だし。
それに、優しい気がする。何なんだ?
『羊の半分は優しさで出来てますからね』
「アレ!?これって手紙だよね!?」
俺の思ってた事に何で手紙がツッコんでくんの!?驚きだよ!
『まあ、色々と大変なことも多くなると思いますが、進化したローブと共に、無事に過ごせる事をお祈りしておりますBy愛しの羊より』
「駄目だ、ついて行けねぇ……!」
愛しの羊って何!?気色悪っ!
「ねえ、どんな内容だったの?」
羊の手紙に勝手に鳥肌を立てていると、サリアが不思議そうに訊いてくる。
「そうだな……なんか、ヘルメットがこのローブに進化したから、色々頑張れって」
「……どう言う事?」
うん、俺自身も自分で言ってて、何言ってんだって思った。ワケ分からないね。俺が説明をだいぶ省略したって言うのもあるんだろうけど。
「まあいいさ!とにかく、とっとと街に向けて出発しよう!」
俺は早速ローブを羽織り、フードを被った。
「誠一、カッコイイよ!」
「サンキュー!」
何だ、このノリ。それ以前に、サリアは俺が何しても基本的にカッコイイと言ってくれる。俺もサリアが何しても可愛いと思うけどね!……服着た状態でゴリラにならなければ。
そんなこんなで、俺達は再び街に向けて出発した。
◆◇◆
「お!」
「街だ!街が見えるよ!」
ヘルメットがローブに変わって一日経った時、俺達は遠目に大きな街が見える位置まで移動していた。
「やっぱりゼアノスの知識は正しかったか……」
正直、ゼアノスから手に入れた知識だけでは不安だった。何せ、1500年も昔の情報なのだ。普通、あてにすらならないだろう。
でもそれは杞憂で終わったようだ。無事、こうして街が見える場所まで辿りつけたし。
「しかし……凄いもんだな」
「ん?何が?」
「いや……俺はゼアノスの知識を頼りにここまで来たじゃん」
「うん、そう言えばそうだったね」
「それでさ……ゼアノスの知識は1500年も昔のものなのに、今も変わらず同じ場所に街がある事が凄いなって……」
街の名前や、他の国の領地に変わっているかもしれないが、同じ土地に今もこうして人が住んでいるという事に俺は感動した。
「そっか……誠一は人だもんね。私達魔物は、特に決まった棲みかを持たないんだけど、居心地が良ければそこに棲みついちゃうんだよね」
サリアは苦笑いしながら俺にそう言った。
「本当は餌場を探す為に移動したり、自分より強い魔物に追われて棲みかを離れたりするんだけど、私は残っててよかったなって思うんだ」
「へぇ……」
「確かに、危険な事も多かったし、私も自分より強い魔物と何度も戦ったり、逃げたりしたんだよ?でも、それ以上にあの場所が棲み心地が良かったんだ……」
やはり、サリアにとって、あの森は様々な思い出のある場所なんだろう。
「なら、本当に良かったのか?俺に付いてきて……」
それだけ棲み心地の良かった場所を離れてまで、俺に付いてきてよかったのか不安になった。
だが、サリアはそんな俺の考えなど一瞬で消し去ってしまった。
「ううん。だって、言ったでしょ?私の居場所は誠一の居るところだよ!それに、私があの場所に残ってて良かったって思えるのは、誠一と出会えたからなんだから」
「……」
スンゲー恥ずかしい。ヤバい、本当にヤバい。
サリアは、こんな恥ずかしい台詞も平気で言ってくる。それも、満面の笑みを浮かべてだ。
うわぁ……本当に惚気てんなぁ、俺……。
ヘルメットからローブに変わったけど、それでも顔が隠れていた事に俺は再び感謝した。絶対顔真っ赤になってるだろうしね。
「そ、そそそれじゃあ、い、行こうか!」
「うん!」
声を上ずらせてしまった俺だが、サリアは特に気にした様子も無く元気に頷いてくれた。
それからの道のりは、特に魔物に襲われる事も無ければ、テンプレ的展開の盗賊も現れず、そのまま街の門まで辿り着いた。
「でけぇ!」
「うん、大きいね!」
俺とサリアは、門の前まで辿り着くと、思わずそう口を零した。
恐らく街を一周囲ってあるだろう城壁と、10m程の大きさを誇る分厚い鉄の門。
あんなデカイ門、どうやって設置したんだろうか。そもそも、あんな大きさの門がいるのか?
まあ、何かしらの理由があるんだろう。
「さて……これからどうすればいいんだ?」
そう言いながら、ざっと辺りを見渡してみる。
すると、門のところで門番らしき人物が立っており、門を潜る人間一人一人と何かしらのやり取りをしているのが見えた。
「あれは……検問ってヤツだろうか?」
「そうなんじゃない?」
サリアも同じように思ったらしい。つか、何で検問知ってるんだよ。元魔物ですよね?
そんな思考回路に俺が移った時だった。
……ヤバい。
俺は、今まで全く気付く事無く、一つの事柄をすっかり忘れていたのだ。
それは――――
「サリアって種族何!?」
という事。
ヤベェよ!?これ、検問でステータスとか調べられるんじゃねぇの!?
俺は幸いスキル『偽装』で誤魔化せるけど……!
つか、今更だけど、身分証とか必要なんだろうか?無ければよくあるギルドで発行的な?
「それより……!サリア!」
「なに?」
「種族なんだ!?」
「え?……あ」
どうやらサリアも気付いたらしい。
サリアの種族が、カイザーコングまたは魔物だった場合、騒ぎどころの話じゃねぇ!兵隊さんが飛んでくるよ!
「……そうだ!『上級鑑定』で調べれば良いんじゃないか!」
……いや、待てよ?確か、俺は一度教室で青山のステータスを確認しようとしたら、実力差があり過ぎて名前以外確認できなかったんだよな?
……だ、大丈夫かな?今の俺、化物だし。あ、言ってて悲しくなってきたけど、何だかイケる気がする。
そうと決まればさっそく実行に移す。
「上級鑑定!」
特に叫んだ理由はありません。気にするな!
≪サリア≫
種族:ゴリラ(獣人)
性別:雌(女)
職業:拳闘士(拳闘士)
年齢:17(17)
レベル:775(7)
魔力:10000(30)
攻撃力:30000(30)
防御力:20000(30)
俊敏力:30000(30)
魔攻撃:5000(50)
魔防御:5000(50)
運:100000(100)
魅力:測定不能(100)
「うぇい!?」
なんか色々凄かった!
てか、ステータス高くね!?ハイスペックじゃね!?魅力値に至っては測定不能ですよ!?羨ましいっ!
そより種族!ゴリラですか!?……いや、そうだけども!
でも、かっこ内に書かれている数値や文字は、恐らくだが人間の姿の時に調べたら表示されるモノだろう。まあ、色々とステータスが偏ってる気がしないでもないけど……。
しかし……サリアは拳闘士ですか。ゴリラの時は素手で戦ってたから合ってるっちゃ、合ってるんだけど……。
それより、相手のスキルとかは見る事が出来ない事が『上級鑑定』を使用して分かった。まあ、どうでも良いんだけどね。
「よかった……サリア、お前は一応獣人と言う事らしいぞ」
「獣人?何、それ」
「確か、亜人の一種だったと思う」
神から貰った知識では、そう書かれていた。
「だから、普通に検問に行っても大丈夫だろう」
「そっか!なら、早く行こうよ!」
「わっ、ちょっ!」
サリアは、俺の手を引くと、そのまま検問を待つ列に連れていった。
しばらくの間待っていると、とうとう俺達の番になった。
「はい、次の奴~」
「えっと……」
「よろしくお願いします」
俺がオドオドしていると、サリアがきちんとそう告げた。俺、駄目駄目じゃん……。
「うおっ!?すんげぇ美人さんだな……」
そんな声を上げるのは、検問をしている兵士だった。
銀色の甲冑に身を包み、腰には西洋の剣を提げている。
無精髭が目立ち、髪もボサボサだが、目には覇気があるので駄目人間と言う訳ではなさそうだ。
初対面の人に失礼だろうが、そんな見た目なんだもの!
「っと、無駄話は駄目だな。……んで、取りあえず身分証を提示してくんねぇか?」
キタアアアアアアアアア!やっぱり訊かれたよ!でも持ってねぇ!
しかし、どれだけ騒ごうが、無いモノは無い。
なので、正直にその事を告げる事にした。
「すみません……俺もコイツも身分証を持っていなくて……」
「はあ?持ってない?それ、有り得ねぇだろ?普通生まれれば、身分証を発行される筈だろ?奴隷でさえ、身分証があるってのに……」
「そうですよね……でも、失くしたんです」
「失くしたって……まあいい。そう言う奴は時々いるからな」
いるのかよ!俺達位だと思ったよ!
内心盛大にツッコんでいると、目の前の兵士は近くの兵士を呼び寄せ、何かを頼んだ。
「ちょっと待ってな。今、『真実の宝玉』持ってくるからよ」
「真実の宝玉?」
いきなり告げられた知らない単語に首を傾げる。
すると、兵士は溜息を吐いて、半眼気味になりながら言ってきた。
「お前……マジで言ってるのか?」
「マジもマジですよ。それで、それってどんな食べ物ですか?」
「食べ物じゃねぇよ!」
うん、そんなの知ってる。冗談を言ってみただけ。
「簡単に説明すると、調べたい奴の犯罪歴やらなんやらが分かる道具ってヤツだ」
「凄いですね」
「まあな。作ったヤツは天才だよ……」
「作ったんですか!?」
ええ、そんな凄いモノ作れるのかよ……。
「おう。まあ、大昔の人物だけどな。……と、丁度来たな」
おっさん兵士がそう言うと、先程頼まれていた兵士がバスケットボールサイズの水晶らしきモノを持ってきた。
「んじゃ、お二人さん。取りあえず、これに手を置いてくれねぇか?」
「わかりました。それじゃあ、俺からいくぞ?」
「うん」
サリアに了承を得て、目の前の水晶に手を置いた。
すると、手を置いて少し時間が経つと、淡い青色の光が水晶内で弾けた。
「よし、お前さんは大丈夫だ。そんじゃあ、そっちの美人さん」
「はい」
サリアも水晶に手を置くと、俺と同じ様に淡い青色の光が水晶内で弾けた。
「うし、二人とも大丈夫だ。ただ、身分証が無い奴には入門料で銀貨2枚程払ってもらうが、それで良いか?」
「いいですけど……それって一人で2枚ですか?」
「いや、二人で2枚だ。つまり、一人一枚だな」
「成程……はい、これで」
俺は早速銀貨2枚を素早く取り出すと、そのままおっさん兵士に渡した。
「おう、確かに。つか、お前さんの恰好はちと浮くぞ?」
「え?」
いきなりそう指摘されたので、俺は気の抜けた返事を返した。
「そっちの美人さんは違う意味で浮きそうだが、お前さんの恰好は明らかに不審者だ。この街で過ごすにしろ、そう言う意味では気を付けて行動しろよ」
「……はい」
あんの羊めぇ……!物スゲェ目立つんじゃねぇか!
……まあ、フルフェイスヘルメットよりはいいだろう。うんうん。
しかし、ステータスは確認されなかったので、よかったと思う。まあ、用心するに越したことは無いんだけどな。
「そう言えば、お前さん達は新しく身分証を発行した方が良いぞ」
「えっと、一応冒険者ギルドに登録して、身分証は手に入れようと思ってるんですけど……」
多分登録すれば手に入る筈だ。そうであってほしい。お願い!
しかし、俺がおっさん兵士にそう告げた瞬間、おっさん兵士の顔は盛大にひきつっていた。
あ、あれ?俺、何かやらかした?
「お、お前さん……この街のギルドで登録するって言ったか?」
「え、ええ……」
なにやらマズイ雰囲気になりつつあったので、恐る恐るそう頷くと、おっさん兵士は突然俺の両肩を掴んで来た。
「あそこだけはヤメテおけっ!お前さん、ノーマルだろ!?」
「いや、何の話ですか!?」
ノーマルって何!?意味が分からん!
「何でよりによってこの街のギルドを選んだんだっ!」
「だ、だって……」
「だってじゃねぇ!」
「えぇー……」
どうしたんだよ、このおっさん……。
でも本当にここが一番近い街だった訳だし、仕方が無くね?てか、何でおっさんはこんなに必死なんだろうか?
「クソッ!また……またあの場所の犠牲者が増えると言うのか……!」
「ちょっと待って。今不穏な言葉が出ませんでしたか!?」
犠牲者!?一体何の!?
今から向かう筈のギルドに凄まじい不安を抱いていると、おっさんは真剣な表情で俺とサリアを見てきた。
「いいか?何かあったら俺の所に来い!相談に乗ってやる!絶対に早まった真似はするんじゃねぇぞ!?」
「えっと……」
「いいな!?」
「「は、はい!」」
俺もサリアも声を揃えて返事をした。
「よし!……おっと、肝心の自己紹介がまだだったな。俺の名前はクロード・シュライザー。気軽にクロードと呼んでくれ。敬語もいらねぇよ」
「それじゃあ、遠慮なく……。俺は誠一だ。よろしく」
「私はサリア!よろしくね!」
「おう!そんじゃあ、改めて――――」
そこまで言った後、クロードは改めて大きな声で言い放った。
「ようこそ!王都、テルベールへ!」