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ハーレム100 作者:松宮星

エスエフ界

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ビクトリー見参ッの巻【バルバラ】(※※※)

みんなの夢を乗せて!
 こんにちは、シャフィール。

 念願のレイとの再会、おめでとう。

 予定外の人間まであなたの支配領域に送り込んでしまい、一時はどうなるかと思いました。
 姉のラリサの存在がやっかいでしたが、私の方が超能力者としては上位者。もっともらしくついた嘘を真実と信じてくれたようです。

 でも、シャフィアのメッセージを渡しただけで、なぜ帰してしまったのです?
 レイを虜にし、再び伴侶にするのではなかったのですか?
 シャフィロス発展の行き詰まりを、レイの能力を濃く継ぐ優秀な次代、つまり知能指数の高い子孫で乗り切るのでは無かったのですか?

 歴代女王の願いを、叶えなくて本当に良かったのですか?
 ユーシャ達はすぐにもとの世界に還ってしまいます。そうなったら、レイの再捕獲はきわめて困難です。

 シャフィロスの未来が心配です。


               宇宙新世紀〇二八七年 ナターリヤ


* * * * * *


 オレらが今居るのは、シャフィロスの女王様の精神世界だとナターリヤさんは言っていた。
 普通の場所とは違うらしい。

 オレの鼻先を、何かがもの凄いスピードで通り過ぎて光の中に消えた。マーイさん達がバリアを張ってるんで、風圧も振動も感じなかったが。
 ふと足元を見ると、ず〜と下の方に青い飛行機が動いていた。空の上空から飛行機を見下ろしているような角度。だが、その飛行機には厚みがなかった。
 遥か上空も嵐だった。爆発光が閃き、光線や弾丸が飛んでいる。

《侵入者のようですね》と、マーイさん。
《女王様、応対で手いっぱいだ。侵入者とコンタクトをとろうとしてるけど、うまくいってないっぽいー》と、エクレール。

 エクレールやマーイさんの感覚を借りると、何となくわかる。
 不定形のこの世界はぐにゃりと曲がっている。その中を縦横無尽に赤、青、黄の三体の飛行メカが飛び周り、光線や実弾を撃ちまくって攻撃している。
 メカの攻撃は発射してじきに、威力を失い、四散する。
 おそらく、女王が防いでいるんだろう。機械文明且つ超能力文明だって話だけど、どっちで防衛してるんだろ?

――人質をすぐに解放しなさい!――

 ババーン! と宙に顔のドアップが浮かび上がる。立体映像だ。
 オレの前方視界一面が、人間の顔だ。

 見事な赤毛、ワイルドな眉毛、大きな青の瞳、高い鼻、厚い唇。
 ハードボイルド系美人だ。

――そこに『ユーシャ型宇宙人』と、我々の仲間ラリサが居ますね? ナターリヤも? しらばっくれるのなら、こちらも最終手段に訴えます!――

 立体映像の女の人が少し身を引く。
 顔だけじゃなく、上半身まで見える。肌にフィットしたスーツは夕日のように赤い。腕は女性のわりに逞しく、胸はとても肉感的だ。
 女性は乗り物の運転席(コクピット)にいるようだ。

 後部座席には二人の人間。
 一人は、黒のローブをまとった魔術師。
 もう一人は、おかっぱ黒髪の女性。エスエフ界の住人と同じフィットスーツ姿だ。
「サラさん! ルネさん!」
 ジョセが叫んだが、二人は心配そうな顔のまま、ジッと前方を見つめている。たぶん、そこにモニターがあるんだろう。

 オレも叫んだり、手を振ったりしてみた。が、立体映像の三人は無反応。こちらの声が聞こえていないっぽい。
《心話も駄目です。通じません》と、マーイさん。
《たぶんー ここが通常空間じゃないせいー 勇者さま達は女王様仕様に変換されてここに転移したけどー あちらは勝手に入って来たからー この次元仕様に再編集(シフト)されてないんだよー 次元が違うからー 意志の疎通ができないのー》
 むむ?
《接近し空間を同位化せねば、声が届かぬという事である》と、レイ。
「同位化?」
《空間を繋げる。かように》
 レイが、義妹の体を使って前方に右手を伸ばす。開いた手をぐっと握り、宙をひっぱる。
 すると……
 ジョゼの右手の先からニーナが現れ、遅れてラリサさんとナターリヤさんの姿もわいて出る。

 びっくりしたが、いきなりひっぱられて来た三人のがオレより驚いていた。
《貴様が主人を呼んだのであるな?》
 レイが声をかけたのは、ニーナの腕の中のぬいぐるみアナムだ。
《たぶん、そうだ》
 ぬいぐまがしゃべる。若い男性声なんで、可愛い姿にまったく合わない。
《だけど、何かしたわけじゃないぞ。俺の契約の証は、サラ様の魔力の刻印だ。サラ様がご自分の魔力を探知すれば、自然と俺の居場所もわかるんだ》
《なるほど。探索中に炎の精霊の存在を感知し、亜空間転移座標に行き着いたのであるか。今、主人と会話可能か?》
 つぶらな瞳のクマのぬいぐるみは、しばらく沈黙する。
 バイオロイドのリスは、クマの側を離れ、ニーナの肩へと移動した。
《可能なれば攻撃停止を頼め。この世界はシャフィロス現女王の精神世界である。崩壊すれば、女王は自意識を失い、我らもあのメカの搭乗者達も現実世界に戻れなくなるであろう》

――人質をさっさと返しなさい! 解放しろって言ってるのがわかんないんですか、このタコ!――
 立体映像の赤毛の女性が、顔を赤く染めて怒鳴る。見た目そのままに熱血タイプなんだな。

「おねえさま、ロボの暴走を止めて」
 と頼むナターリヤさんに、
「テレパシーも通信機も通じないんだ……」
 と、ラリサさんがため息をつく。
「バルバラの奴……無茶ばっか。オレら回収前に暴れやがって。殺す気かよ」
「バビロンの方ですか?」
「ああ。ユーリア姉さんの部下、大型ロボット開発チームのリーダーだ。あんたがたの武器開発チームにも参加してる、メカおたくだよ」
 ルネさんのチーム? のわりには見た事ない。
「あんたと顔を合わせないようにしてたんだよ。メカニック兼パイロットだけど、攻撃力が高いわけじゃないから」

 ぬいぐるみ姿の炎の精霊アナムが、う〜むとうなる。
《だめだ。サラ様と会話できない。勇者・武闘家・幽霊・超能力者の四人とリス、それに俺……全員の無事を祈っておられる。そのお気持ちはおぼろげに伝わってくるが……》

《吾輩の方も駄目だ。メカを捕捉できん……この領域では、吾輩の能力は著しく制限されておる。メカのでたらめな動きを追いきれぬ》
 レイは苛立しそうにそう吐き捨てた。巨大な立体映像の背後やら頭上やら足元やらで、赤青黄の三体のメカが落ち着きなく飛びまわっている。

――時間切れです! このフィールドを徹底的に破壊し、仲間を救出します!――
 赤毛の女性は、高らかにそう宣言した。
――チェーンジ、フォーメーションV!――

――待ってください、チーフ――
 バルバラって赤毛の女性を映している立体映像。それの左上に青い服の男性がカットインしてくる。
――ここで、ビクトリーを出すのは危険です! 敵殲滅前に、人質を救出しましょう!――

――弱気は損気!――
 ちょっと狭くなった画面で、赤毛の女の人がぐっと拳を握る。
――強気で押せば、どうにかなるわ! 頑張れば出来るっ!――
――いや、チーフ、人質の命は根性でどうにかなるものでも……――
――大丈夫! エスパーのラリサが一緒だもの! バリヤーで自分達の命は守るわよ! 諦めないでファイトッ! 新作武器ビーム・ソードの実験をしましょ!――

――オーケー チーフ――
 立体映像の下側に、又、映像がカットイン。今度は、全身黄色い太めの男。
 立体映像は三分割になった。

――いくわよ、ブルー、イエロー!――
 更に狭くなった画面の中で、赤毛の女性が力強く叫び、青と黄色の男達も声をそろえて唱和する。
――チェーンジ。フォーメーションV!――

挿絵(By みてみん)

 赤毛の女の人の後ろで、ルネさんがポチッとボタンを押した。

 立体映像から、勇ましい音楽が大音量で流れる。
 三体のメカが唐突に、立体映像の前に登場した。空中からボコッとわいて出たように見えた。

 赤の機体の下方から青の機体が合体し、くっつくタイミングでガシャーン! と重々しい機械音。
 バリバリバリ! と雷のエフェクトを発しながら、黄色の機体が中央で分離。
 分離した二体が、青の機体の下方からくっつく。当然のように、ガキーン! といかにもな機械音。

 重たそうな音がするタイミングでルネさんがボタンを押している。音響担当なのか!

 三体合体。そして、変形だ。

 一番上の赤の機体の両翼がガショーン! と折れ曲がり、下方に向かって伸びてゆく。
 赤の機体の中央からニョキッ! と額にV字の頭部が飛びだし、伸びた翼の先からジャキーン! と指が生える。

 赤が頭部と胸部と両腕、青が胴体、黄色が両脚に変形。
 三体合体で、ビル並みにでかい巨大人型ロボ登場だ。

 あっけにとられながらも、オレは……
 胸のときめきを感じていた。
 巨大ロボがいる……ただ、それだけでわくわくする。
 わけわかんないけど、格好いい。

 画面三分割の立体映像の女の人が 目をキラキラと輝かせ、力強く叫ぶ。
「バビロンの守護戦士ビクトリー! 見ッ参ッ!」
 合わせて、ロボがズシンズシンと轟音を響かせ両手でVの字を象った決めポーズをとる。
挿絵(By みてみん)

 女の人は幸せそうだ。
 メカが好きで好きでたまらないんだ。


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと二十九〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


《萌えている場合か、愚か者》
 ジョゼの体を使ってレイが、オレの後頭部を殴った。
《精霊を全て出し、全員でかかり、あの巨大ロボの動きを押さえよ。その間に、アナムの案内で吾輩が魔術師と接触し説得する》





 それからは、とんとん拍子だった。

 精霊界に還していた精霊達まで呼び出した。炎、水、風、土、雷、氷、光、闇の八体。ルーチェさんは、サイバーパンク風だと言って妙にツンツンした七色ファッションをしていたが、まあ、それはいいとして。
 雷のエクレールが中心になって風・氷・光・闇で巨大ロボのセンサー系を撹乱し、巨大ロボのビームソードを炎・水・土の精霊で封じた。

 オレの精霊達がロボと戦っている間に、レイとアナムが内部に乗り込みサラと接触してくれたので騒動はおさまった。


 宇宙人シャフィロス。
 五百年以上もテラを監視していた宇宙人との接触で、バビロンは揺れた。

 シャフィール女王は『文化形態が異なる為、外交は遠慮したい』と、友人ナターリヤさんを通じて伝えてきたものの、放射能除去装置の貸与を提案したり等、非常に友好的。調査団の受け入れもOKしてくれたそうだ。

 ユーリアさんはオレ達の時と同じように『まずは調査よ! 宇宙人を名乗ってるだけの、ただの妄想家かもしれないもの! 正体を見極めてからでないと宇宙連邦には報告できないわ!』と主張し、調査団の準備を嬉々として始めた。フェロモンの塊の女王とは直接接触しないよう特殊フィールドも準備するようだ。

 バビロン副所長のユーリアさんは超多忙となった。
 で、『私からお願いした事なのに申し訳ないけれど』と、オレらの世界の実踏調査は一時断念すると言ってきた。
 七十八代目勇者がこの世界出身だったものの、オレらの世界はエスエフ界と縁が薄い。それに比べ、シャフィロス星人は何百年も前からテラを監視していたわけで。関わり度合いから言っても、優先調査すべきなのはシャフィロスなわけだ。
『あなた方の星の探索は、ポチ2号に一任します』
 ニーナと一緒にバリアを張る為に、バイオロイドのポチ2号がオレらの世界に一緒に行く事になっている。ポチ2号が見聞した情報を、魔王戦で回収するとユーリアさんは言った。魔王戦の最中に、タチアナさんのポチに2号の記憶を転写するのだそうだ。
『シャフィロス調査で忙しくなるけど、魔王戦の準備もきっちり進めるわ。狭い部屋でも通用する強力な武器を開発しておくわね』

 レイが『正義の国』のキャロラインにバビロンへの帰順を促したらしい。が、その場にいなかったので、何をどうやったのかは知らない。
 シャフィロスとの交流にわくバビロンで、レイはいつも通り漂々とし、ジョゼの事だけに関心を払っていた。
 シャフィロスにも女王にも、まったく興味がないようだった。

 ダンとバリーがポチ2号を調整をし、ニーナを主人に登録。ニーナにバイオロイドの接し方等をレクチャーしてと、予定より滞在日数は伸びてしまった。が、九日目についに帰還となった。





 バビロン側からの強い要望により、四方がガラス張りの小部屋で帰還の魔法陣を使う事となった。
 室内の様子はさまざまな角度から録画され、探査機械でスキャンされている。最後までめいっぱい調べられまくりだ。
 四方のガラスの壁の先には、研究者達がぎっしりだ。このところシャフィロス調査準備に忙しかった研究者達も、オレ達の転移方法に興味津々。一目見たいと詰めかけている。

 今日のルネさんは、久しぶりにロボットアーマーだ。
 こっちで造った武器やら資材をお腹のトランクにつっこみ、背にコンテナを背負い、更に両手やら頭の上に金属板を抱えている。持ってけるだけこちらの世界のものを持って帰るわけだ。
 オレらも、ルネさんの荷物運びに協力している。お師匠様の『異次元倉庫』までエスエフ界のモノでパンパンらしい。

 武器開発チームが、ルネさんから貰った発明品を持って手を振っている。『スパイ 大々々作戦』『お顔ふき君』『ぶんぶんナイフ』『どこでも祭壇』『魔力ためる君』……オレ的にナニな発明品もあるけど、自分の発明した物が異世界に残るんだ。誇らしい気分だろうな、ルネさん。
 オレが萌えちゃった赤毛のバルバラさん、ブルーとイエローの人も居る。
 バルバラさんは巨大ロボットの操縦者だ。ビル並にデカいロボは、岩山もロケットパンチで砕き、剣やら槍やらブーメランやら多彩な武器で大暴れできるみたいだ。すっごく強いんだろう。
 だが、しかし……十中八九、巨大ロボは魔王戦に持ってこられない。召喚の魔法陣を通れるのは、本人とその荷物だけなんだ……
 魔王戦に何か武器を持ってきてくれるとしても、117万は厳しいだろう……

 サイボーグのジリヤさんと、エスパーのラリサさんが手を振っている。
 二人の間のナターリヤさんは、今日は裸じゃない。ちゃんと服を着ている。オレらの帰還を撮影したかったようだが、カメラをラリサさんに奪われた模様。少しむくれ顔。
 オッドアイの女性が三人並ぶと壮観だな……キュンキュンくる。

 チコを掌にのせた痩せっぽちのダン、相棒のバリーの姿もある。
 二人は何度かニーナへと手を振っていた。
 ただしくは、ニーナの手の中の四角い箱――培養カプセルの中のポチ2号に手を振っているのだが。

 ダン達の隣にエメラルドグリーンのアンドロイドがたたずんでいる。
 イヴの目は、オレだけを追っている。
 表情のない仮面のような顔が、なんとなく寂しそうに見える。
 イヴは、オレを主人だと思っている。置いて行くのはかわいそうだけど、仕方ない。オレらの世界にはイヴを動かす燃料もないし、修理用のパーツも道具もない。連れて行ったら、すぐに壊してしまう。
『魔王戦で、又、会おう。それまではオレの伴侶の女性達に仕えていて』と、イヴに最後の命令を与えた。
『了解しましタ。異世界で仲間集めなさっている間、しっかり留守番いたしまス。マスター、がんばっテ!』
 けなげに答えるイヴの姿に胸が痛んだ。オレはイヴを抱きしめた。ひんやりとしたボディ。硬い金属の体が愛しかった。

 魔王戦の後、イヴのハートを初期化してもらう。初期化しない限り、主人変更ができないからだ。新しい主人を登録してあげてとユーリアさんにこっそり頼んでおいた。
 その時、ユーリアさんは変な顔をした。
『いいの? 全メモリーを消去したら、あなたが育てたイヴはこの世から消えるわ。あなた流に言えば、イヴを殺す事になるのよ?』
『けど、帰らないオレをずっと待ち続けるなんて、かわいそすぎる。オレのことを忘れた方がイヴは幸せになれると思うんです……』
『イヴの幸せ……ねえ』
 ユーリアさんは何か言いたそうだった。が、約束してくれた。
『わかったわ。魔王戦の後、イヴが主人喪失(マスター・ロス)状態にならないよう配慮します』と。


 お師匠様が『勇者の書 78――ウィリアム』を床に置き、オレと向かい合う。

 何処の世界から還るんでも、帰還の呪文はほぼ一緒。
 違う箇所はこうなるんじゃないかと推測し、事前にお師匠様に確認とっておいた。
 オレが先に呪文を唱えて、お師匠様に後から唱和してもらっても無事に還れるだろう。

「始めます」
 そう口にすると、別室でこの部屋をモニタリングしているユーリアさんからの返事が聞こえた。
――オーケー。ケンジャさん、ユーシャさん、お元気で。魔王戦の後、お時間ができたら、又、いらしてね。あなた達から採取したもので作った作品も完成してるだろうって、タチアナも言っているわ――
 ジョゼが、ポッと頬を赤く染めてうつむく。
 オレやジョゼの赤ちゃんが作られてるんだっけ、そういえば。いまいち実感わかないけど。

 いつか再びエスエフ界を訪れたら……
 テラとシャフィロスの交流が進んで、いろいろ変わってるだろう。そこには、オレとジョゼの子や、別人になったイヴも居るんだな。

 深呼吸をしてから、オレは動いた。
 お師匠様と額を合わせる。

 目の端に、外野が騒いでいるのが映る。
 傍目には、接吻しようとしてるみたいに見えるもんな……
 けど、気にしない! 精神集中! 呪文を間違えるわけにはいかない!

 ほぼ同じ背丈だから、視線がぴったりと合う。
 すみれ色の瞳を微かに細め、お師匠様がオレを見つめている。
 とても綺麗だ。
 シャフィロスの女王様みたいに見てるだけで、カーッとしたりはしないけど……
 やっぱりドキドキする。お師匠様の息が顔にかかると、体温が上昇する。

 オレは目を閉じた。

 魔王が目覚めるのは、三十日後だ。

 周囲の喧騒は聞こえない。
 だが、不思議と彼等の興奮が伝わってきた。

 そろそろ、床に魔法陣が浮かび上がったろうか……
 魔法陣は白くまばゆく輝き、まず勇者の書を飲みこみ、それからオレとお師匠様、背後の仲間達を包み込んでゆくんだ……

 そんな事を思いながら、オレは……
 エスエフ界より離れ、お師匠様達と共に、もとの世界へと還っていった……


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№071)

名前     バルバラ
所属世界   エスエフ界
種族     人間
職業     ビクトリーのメカニック。
       1号機パイロット。
特徴     ユーリアさんの部下。
       大型ロボット開発チームのチーフ。
       ブルー&イエローと共に、
       巨大合体ロボ『ビクトリー』を操縦する。
       軍の要請(リクエスト)で開発したものの、
       ユーリアさん&バルバラさん、メカ好きの二人が
       趣味に走り過ぎた為、かなり特殊な出来となる。
       納品は断られたらしい。
       ルネさんの武器開発チームにも参加し、
       ロボ好き同士仲良しになったみたいだ。
戦闘方法   何だろう……
年齢     90歳。
容姿     赤毛、青い瞳。
       ワイルド系美人。
口癖    『弱気は損気!』『頑張れば出来るっ!』
      『ファイトッ!』
好きなもの  巨大合体ロボット
嫌いなもの  ロマンのないロボット
勇者に一言 『ロボの醍醐味は合体変形!』
挿絵(By みてみん)

* * * * * *


 こんにちは、ナターリヤ。

 心配をおかけして、ごめんなさい。

 歴代女王が憂いていたのは、シャフィロスの集団的知性の下降でした。
 レイの子供達が持っていた素晴らしい特徴――革新的発想・視野の広さ・高次の複雑な思考・統合能力が、代を重ねるにつれ労働者階層から減退してしまったのです。

 シャフィアの代に、低能な労働者階級は自己崩壊へと暴走しました。女王を除くシャフィロス星人は死滅し、星は滅びかけたのです。
 あの時代の悪夢を再現したくない……そう思い、歴代女王はレイを探しました。優秀で知的な存在と再び交配する為に。

 しかし、先日、思いもかけぬ情報を得ました。
 あなたが運んでくれた個体達の脳を調べたところ、レイの本来の所属世界『精霊界』を知る者が居たのです。
 精霊界への転移方法、八大精霊と各々の世界、精霊の捕獲法……さまざまな情報がありました。
 シャフィアが己の死をもって隠した『精霊界』の知識を、得る事ができたのです。

 精霊全てが交配相手候補となったのです。レイに執着する必要はなくなりました。

 情報を充分検討した上で、精霊界で理想的な交配相手を探そうと思います。
 個体の選別は苦手ですが、一定水準以上の知性を全て誘惑しておけば問題ないでしょう。
 私の性的フェロモンは精霊にも通用します。みな、私に夢中となるでしょう。捕獲は容易です。

 シャフィロスの種の繁栄は約束されたも同然です。あなたの働きに感謝します、ナターリヤ。

 テラに配置したあなた方探索班の役目は、終了しました。
 シャフィロスへの帰還を認めます。しかし、シャフィロス星では知性を有する女性は常に一人、女王だけなのです。帰還すれば、私のフェロモンの影響下に入り、一年もしないうちに無個性・無性の労働者階級へと変化するでしょう。自我の喪失は、今のあなたには恐怖でしょう。回帰を求めるのは酷ですね。

 私の呼びかけで、シャフィロス星人の自覚を取り戻せたのはあなただけ。他の者は女王の声に反応しないほど、シャフィロス星人とは異質な存在となっています。任務遂行の為、原住民との交配を繰り返した結果とはいえ、悲しく思います。彼女等はテラ人に交じり、このまま同化していくに任せるしかありません。

 しかし、あなたはシャフィロス星人であり知性を有する雌体。
 輝かしい未来がふさわしい。

 役目を全うした報酬を払います。約束通り、次の接触時に知識を伝授します。
 第一が、フェロモンの変質。現在はテラ星系人に対し無効となっている性的フェロモンも、あなたの意志で制御できるようになります。どんな男も思いのままに操れるようになりますよ。
 第二が、フェロモン強化による変身。
 女王のフェロモンは強化次第で、労働者階級の繁殖能力や自我を奪う作用も働くようになります。
 母や姉を含む周囲のテラ人を無性化して労働者階級に変質させる事も可能です。

 あなたは、群れの女王として君臨できるのです。

 労働者階級の行動パターンや思考は、女王が好きに管理できます。
 芸術的才能が高く評価される世界も、エスパーやサイボーグが優等種となる世界も、思いのままに造れます。

 胎生の私達が出産できる子供は常に一人ですが、出産後、女王の意志のままに子供は分裂・成長させられます。億にまで分裂可能ですし、出産後、数秒で成人個体まで育成できます。兵隊の数はそれで充分でしょう?

 複雑な社会形態のテラ星をシャフィロス化するのは困難でしょうが、ドーム単位、惑星単位と徐々に支配範囲を広げて実験してみてはいかがでしょう?
 亜空間座標は消さずに残してあります。援助が必要となった場合は、声をかけてください。

 いずれあなたと私で姉妹群れとして、シャフィロスとテラを繁栄させてゆきたいものです。


               在位〇四二年 シャフィール
これぞ大団円……? エスエフ界編 一巻の終わり! だが、急げ、勇者ジャン!
魔王の目覚めは30日後だぞ!
+注意+
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