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ハーレム100 作者:松宮星

エスエフ界

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正義の味方参上!の巻【キャロライン】(※)

【エスエフ界編 第六話 巻頭大特集】

* これが勇者ジャンのすべてだ!の巻 *

勇者頭……よく萌えるぞ!
勇者眼……敵と味方の残りHPと攻撃値がわかる!
勇者耳&口……自動翻訳機能つき!
勇者胸……キュンキュン鳴るぞ!

勇者マント……勇者の印!
勇者剣……今は水の魔法剣。振ると水が飛び散るぞ!
勇者アクセサリー……精霊八体分あるぞ!
 首……風のペンダント。
 右胸……光のブローチ。
 左胸……闇のブローチ。
 右手首……氷のブレスレット。
 左手首……雷のブレスレット。 ある女の子とおそろいだ!
 腰……土の飾りつきベルト。
 炎のボウタイはぬいぐまが、水の仮面はマーイが付けてるぞ!
勇者お守り……イザベルから貰った謎の小箱。胸のポケットに!

勇者運……ラッキーすけべは少なめ。7度死にかけたけど、まだ生きてるぞ!
 ごめんなさい、シャフィール。
 あなたからのお願い、まだ叶えられずにいます。

 何重にもセキュリティが張られていて、科学ラボに近づけないのです。
 ユーリアおねえさまの承認を得た人間しか彼等と接触できないんです。

 おねえさまの鼻をあかせると、はりきったのに!

 仕方が無いので、外部の手を借りる事にしました。
 御しやすいので、今までもたまに利用してきた組織です。

 お探しの方がいるか確認させます。
 しかし、彼等はあまり賢くありません。多くは期待できません。
 隠密活動に最適な道具はありませんか? 何か役に立つ機械を貸していただけたらと思います。

 次の同期は明日、それを逃すと三日後でしたね。
 可能ならば明日には決着をつけたいです。


               宇宙新世紀〇二八七年 ナターリヤ


* * * * * *


 メイドロイドのイヴは、よく働く。
 オレ達全員の、食事の世話、部屋の掃除、身の回りの世話、当日のスケジュール調整をしてくれ、護衛役まで果たす。
 就寝の時間は科学ラボの個室を見渡せる廊下で待機、日中はオレの護衛役。
 休む暇なしだが、機械の体なんで疲れ知らずだ。

 彼女のセンサーは、オレには見えないものが見え、聞こえないものが聞こえている。
 時々、目からビームを撃ったり、手刀を振りまわしている姿を目撃する。で、何もないはずの宙から爆発音がしたりするんだから、びっくりする。
「お騒がせしテ、申し訳ありませン。虫ヲ、退治しましタ」
 角度によって微妙に表情のできるイヴは、微笑んでいるかのような顔で言った。
 何を退治したのかは、はっきりと教えてくれないが、実体を隠した偵察ロボを破壊しているんじゃないかと思う。

 ユーリアさんがオレ達を保護している事は、外部にはバレていない。が、バビロンの研究者の間じゃ、けっこう知られている。
 オレらを研究したい奴等が、こっそり情報収集をしたり、オレらの体の一部や持ち物を盗ろうとしたり、誘拐しようとしている……らしい。
 嘘か本当かわかんないが。
 イヴや精霊達に護衛を頼んでいるおかげか、今のところ怪しいモノは見ていない。


 今日は、エスパー部隊との交流日。バビロン外縁の第二演習場へと転送装置で移動した。
 精霊を体に同化させたジョゼとサラ、アンドロイドのイヴも一緒だ。
 他のメンバーは他の場所で、武器開発と検査。ニーナはルネさんについて行った。マーイさんはお師匠様の、エクレールはルネさんの護衛として同行させた。

 バビロンにある演習場は六つ。
 廃ビルが並んでいた第六演習場とは異なり、第二演習場に何もない。むきだしの金属の壁に覆われた、だだっぴろい空間だ。非常時には、戦艦格納庫として利用されるのだとか。
 こちらは空気が汚染されてないので、演習後は簡単な健康検査でドーム内に帰れる。

 そこで演習中だった女性隊員を、ラリサさんから紹介される。キム、スージー、クラーラ、ルチア、ヒルデの五人。
 金髪碧眼のヒルデが、なかなかの美人。浅黒い肌のスージーも、お尻がきゅっとしててかっこいい。
 残りの三人もかわいい。というか……みんな、肌にフィットした白銀のスーツ姿なんで、ドキドキもの。胸もそうだけど、後ろから見るとお尻が割れてるところまではっきりわかる。
 野郎と違って、女の子が着ると最高。
 眼福。
 あ、いやいやいや! 目のやり場に困る。
 ジーッと見てたら、怪しい人と思われかねない。

 ラリサさんがふきだし、ケラケラ笑う。
「もう遅いよ。ここ、ESP禁止エリアじゃないんだぜ?」
 心を読まれた?
 慌てたせいで、ついついラリサさんのオッドアイをまともに見てしまう。
 キュンキュンしちゃう……綺麗だ……
 なんて思ってたら、エスパーさん達はひそひそ話を始めていた。ああああ、みなさん、視線が冷たい!
「着衣の人間に性的魅力を感じるなんて、笑える。文化の差だな」
 着衣ったって、下着の上からスプレーしてるだけじゃん。体の線だってモロに出てるし。


 今日は、まずは第二演習場の端にある管制施設内のホールで顔合わせ。その後、エスパー部隊と模擬戦闘。
 女性隊員五人と、戦うんだ。ラリサさんとイヴは、アドバイザー兼非常時の護衛役の付き添い。
 この場には、ユーリアさんもいる。けど、立体映像だ。本体はドーム中央部のオフィスだ。第二演習場全体で収集する戦闘データを分析しつつ、双方に必要情報を流す。審判兼両チームの監督って立場だ。

 模擬戦闘はユーリアさんの希望。精霊を体に宿した人間の戦闘データが欲しいのだそうだ。

 しかし、オレ達にもメリットがある。
 ジョゼは未完成の『雷神なんちゃら拳』を実戦で稽古できる。
 サラも複合魔法の練習ができる。炎魔法に他の属性を被せる事で、より強力な魔法がうてるらしい。魔界の王に268万以上のダメージを出したってのに、今の実力で満足してない。サラは、もっともっと強くなろうとしている。オレの為に……。

 オレとしても、エスパーの女性隊員のさまざまな面を見たい。顔を見ただけじゃキュンキュンこなくても、会話したり戦う姿を見れば萌えられるかもしれない。交流時間は長い方がいい。
 ラリサさんはエスパー部隊隊長だから、平隊員とはジョブ被りにならない……はず。戦闘力の高い女性を仲間にするのが、オレの使命。できる事なら、萌えたい。
 ただ、どの精霊を呼び出すかは決めかねている。故郷で休養中の、炎、風、土、氷、光の精霊達。『そろそろ、みんな、回復したと思う』とソワは言っていたが、無茶はさせたくない。呼び出すとしても、一体だけだ。

 だが、戦闘前にトラブル発生。
 ジョゼとサラが、真っ赤になって固まってしまったんだ。

「そ、その、白銀の、スーツを、着ろ……と?」
 サラは、ラリサさん達を見回している。どこを見てるのか、オレにはよくわかった……

「耐熱・耐寒・耐雷性に優れ、衝撃を緩和し、動きを阻害しない優秀な強化服だ。余分な成分がないので、機械のスキャニングにも適している。控室で着替えてくれ」
 ラリサさんにそう言われても、二人は『はい』と頷けない。

「慣れた格好の方が……動きやすいし……あ! 私のローブは魔法絹布なんです! 魔力増幅効果がありますし、このままで」
 サラの目線は、ラリサさんの胸に向いている。出るべきところは出てるんだよな、ラリサさん。他のみなさんも、とても女性らしい体形をしてる。
――精神力増幅装置付きなの、その服?――
 立体映像のユーリアさんに聞かれ、サラは勢いよく答えた。
「はい!」
――なら、ますます脱いでもらわないと――
「え……?」
――今日のテストは、精神生命体『精霊』と人体との同期(シンクロ)や影響を調べるの。余計なものは外してくれる?――
 真っ赤な鼻のサラが口をパクパクさせ、オレの方にチラリと視線を向ける。
 オレは、急いで顔をそらした。

 魔界でオレは、ジョゼに『胸が大きい』、サラに『ぺったんこ』と言ったらしい。記憶喪失中の事なんで覚えてないが……多分、真実を言ったんだと思う。
 サラの胸、どれぐらいぺったんこなんだろ?

「あ〜」
 そういう事って顔で、ラリサさんがオレを見る。
 女性隊員達がオレを睨んでいる。いや、でも、正直な感想を持っただけで……

 ラリサさんがサラを手招きして、耳元でコソコソ話す。
 赤い鼻のサラも囁き返す。話声は聞こえないが。

 ラリサさんがサラとジョゼを連れて、控え室へと移動する。
 オレも、管制施設内の小部屋で着替えとなった。が、案内してくれたキムさんはさっさと居なくなってしまった。イヴが一緒だから、着替えには困らなかったが。
 雷と氷のブレスレット、風のペンダントは装備した。が、ツルツルの服では、ブローチや腰のベルトをつけられない。
 脱いだ服ごと精霊との契約の証をイヴに預けると「大切にお預かりしまス。マスター、テスト、がんばっテ!」と応援してくれた。表情の無い仮面みたいな顔が、そういう事言う時は微笑んでいるように見えるから不思議。

 ホールに戻ると、女性隊員達はよそよそしかった。話しかければ答えてくれるが、笑顔がない。『ぺったんこ』発言で、オレは更に嫌われたようだ……
「マスター、体温と血圧が低下しつつありまス。テスト、緊張してますカ? 大丈夫でス。マスターならできまス。がんばっテ!」
 的外れな慰めだけど、気持ちが嬉しい。礼を言って、イヴの冷たいボディを抱きしめた。
 したら、一層、女の子達の視線が冷たくなったような……何しても評判が落ちる運命のようだ、今日は……

 間もなく、ラリサさん達が戻って来る。全員、首から手足の指先までの白銀のスーツ姿だ。
 ジョゼは胸を腕で隠すようにし、うつむき、背を丸めて小さくなって歩いている。体のラインがはっきり出るのが恥ずかしいんだな。
 そして、サラは……
 やや猫背で入室して来たが、途中で気がついたのか、しゃんと背筋を伸ばした。
 オレは、目を見開いた。
 杖頭の飾りがダイヤモンドの杖を持って、サラは歩いている。普段、黒いローブ姿なんで白銀の服が新鮮。エスエフ界のその特殊な服は、ストロベリーブロンドの長髪と可愛らしい顔に意外なほど合っていた。
 だが、おかしかった。
 大きすぎない、ほどよい丸い膨らみが二つ。
 サラが動く度にぷるんと動くそれらは、実にやわらかそう。上向きで、形もいい。思わず触れてみたくなる愛らしさ。
 そこにあるのが自然なように見えたが、あまりにも不自然だった。
 サラの胸を見つめながら、思ったことをそのまま口にした。

「どんだけ詰めてるの?」

 次の瞬間、オレは床に叩き伏せられていた……


 そこで、耳障りな警戒機械音が鳴り響いた。
 続いて、機械音声が流れる。
――第二演習場エリアに侵入者。警備ロボットを撃破し、中心部に進行中――

 ラリサさんや女性隊員達が、左の掌を見る。そこに数値やら立体映像が浮かび上がる。
 オレも左手を見てみた。が、何も浮かび上がってこない。エスパー部隊は専用の通信装置を持っているんだろう。

 第二演習場って、ここだよな?

「敵現在地を確認。エスパー部隊は、侵入者捕獲に向かいます」
 左掌に向かってそう言ってから、ラリサさんは部下へと向き直った。
「ルチアは客人の護衛及びバックアップで待機。フォーメーションD。行くぞ」
 ラリサさんと部下四人が瞬間移動で消える。
 呪文を唱えないから、迅速だなあ。

――テストは一時中断します。ルチア、ユーシャ達を転送装置室まで連れて行って――
「侵入者ですか?」と、オレ。
 バビロンの研究者達の監視ロボとかじゃなく。
――現在、確認中。人権保護団体か産業スパイだと思うわ――
 そいや、よく侵入されるって言ってたよな。侵入者よけに、荒廃したテラの表面にドームを作ったってのに。
――バビロンは宇宙連邦ひいては連邦軍の援助を受けて、多方面に渡り画期的で優秀な開発をしてきてるから。その技術を目の敵にされてるのよ――
 ふーん。
「人権保護団体って何なんですか?」
 サラの質問に、ユーリアさんは顔をしかめた。
――時代錯誤の勘違い集団よ。自称『正義の味方』。『人権を守る為』だって、堂々と犯罪を犯すの。罪の意識ゼロで! どーしようもない馬鹿達よ!――
 相当、怨みがあるっぽい。
――ここに来るのは、人権保護団体の名を借りた凶悪犯どもよ!【音声伝達デキマセン】め! あいつらの【音声伝達デキマセン】をちょんぎって【音声伝達デキマセン】な【音声伝達デキマセン】を口につっこんでやりたいわ!――
【音声伝達デキマセン】は機械音声だ。
 公序良俗に反する言葉を立体映像装置が自主規制し【音声伝達デキマセン】に変換するんだと、イヴが教えてくれた。
 何って言ったんだ、ユーリアさん?

 ルチアさんの瞬間移動で、転送装置室前の廊下へと移動する。
 移動した途端、オレはバランスを崩し、後方に倒れた。
 何かにぶつかったんだ。
 オレがぶつかったものも、後ろに倒れた。出会いがしらに、人とぶつかったようだ。

 相手を目の端で見ながら、体を起こした。
 女の子だ。
 見事なプラチナブロンド。輝くような美しい髪は、少しウェーブが入っていて腰を過ぎる長さだ。
 ミルクのように綺麗な白い肌、大きくて明るい青い瞳、すらりとして小さな鼻、チャーミングな唇。お人形みたいな美少女だ。
 その上、彼女は……
 白銀のフィットスーツを着ていなかった。
 白と赤の縞模様のビキニ。だけど、右胸だけ青地に星が散らばったお洒落な意匠。青いブーツを履いている。背には赤いマント、両手には青のアームリスト。
 ぷるんぷるんの胸とお尻が、ビキニからこぼれそうだ。あふれんばかりの健康的なお色気。みずみずしい姿態に、クラクラきた。


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと三十三〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 やっちゃった……
 相手の実力を調べてないのに、萌えちまった。

 けど……
 ビキニが新鮮!
 白銀のフィットスーツ姿の女の子も、エッチだ。でも、ビキニがすげぇ可愛く見える! やっぱ個性って大切だよな!

「『正義の国』!」
 ルチアさんがそう叫んだ時……
 耳をキーンとつんざく不快音が響いた。

 頭の中をめちゃくちゃにかき回されるかのような衝撃が走り、オレは膝をついた。ジョゼもしゃがんでいる。
 この肉体的苦痛、忘れようもない。
 超能力ジャマーだ。
 ルチアさんとサラが倒れる。オレでさえ頭が割れそうなんだ、魔力のある人間はより一層の苦痛に苛まれる。
 立体映像のユーリアさんの姿が無い。機械が停止してしまったようだ。
 アンドロイドのイヴは……直立不動のまま動かない。イヴも攻撃を受けているのか?

 少女が、オレ達に左手を向けながら立ちあがる。その顔に笑みを浮かべて。
「バビロンの犯罪者どもめ。正義の味方キャロラインの鉄槌を受けるがいい!」

 少女が腰を引き、それから右手をふりあげ、ふりおろす。
 狙いは倒れている人間……サラか?

 だが、その右手ははらいのけられ、その体はふっとばされた。
 何が起きたのか、一瞬わからなかった。きっと、攻撃された少女もそうだろう。
 瞬く間に距離を詰め、腕をはらい、その後に蹴り飛ばしたのは……ジョゼだ。
 白銀のフィットスーツをまとった義妹は、さながら稲妻だ。黒い髪をなびかせ、目にも止まらぬ速さで攻撃をしかける。
 相手が立ちあがる前に、その上にまたがり、ジョゼは肩をおさえつけて拘束を完了させていた。

 不快音がやむ。

《そのパワードスーツは、我が分身の支配下に置いた。もはや貴様は我が主人(あるじ)に害をなす事はできぬ》
 ジョゼがすくっと立ちあがり、肩にかかっていた髪を払う。
 ジョゼに宿っている雷の精霊レイだ。
 床の上に倒れた少女は、頭を激しく振った。しかし、体や手足は、ぴくりとも動かない。
《当然である。首から下は、素肌に見える箇所も全て強化装甲である。その機械は、もはや吾輩のしもべ。装着者の指示ではなく、我が命に服す》
 少女がなにそれ? と叫ぶ。どんなおぞましい新型武器を使ったの? と。
 武器じゃなく、雷の精霊の力だが。

 サラ達の無事を確認する。気絶してるだけのようだ。良かった。
 けど……
「おまえ、超能力ジャマーが平気になったのか?」
 オレの問いに、ジョゼの体が肩をすくめる。
《愚問である。吾輩は常に進化を続ける存在である。弱点を克服する策は既に講じてある》
 へー さすが機械世界に詳しい精霊。
《ましてや、侵入者の存在を警告されていたのだ。有事に備えておかぬ方が愚かである》
 ぐ。

「で、具体的には何やったの?」
 ジョゼのかわいらしい顔がジロリとオレを睨み、それから床に倒れている侵入者へと視線を向けた。
《この場で答えを求めるとは……何処までも愚かな男である。危機感ゼロのお気楽無能勇者とは、会話をするだけ無駄である》
 ぐぅぅぅ。
 腹立つ!
……でも、言ってる事は、もっともだ。
「わかった。オレが悪かった。今はもう聞かない。けど、後でエクレールにその技を教えてやってくれ」
 エクレールはルネさんの護衛役で、今はドーム中央部に居る。
「オレの精霊達にも超能力ジャマーは脅威なんだ。ここで安全に過ごせるようにしてやりたい」
 それに対し、レイはうんともすんとも答えない。実にかわいげがない……

《吾輩は下がり、パワードスーツの拘束役に徹する》
 ジョゼの顔が、いつものほわっとした感じに戻る。

 床の上の少女が、目を大きく開いてジョゼを見ていた。
「『ユーシャ』? 『セイレイ』?」
 赤白青のビキニの少女が目をパチクリさせ、上から下までジョゼを見る。
「二重人格……? にしては、変。この未知の技術……超能力ジャマーだけじゃなく、センサー系撹乱装置も使用したのよ、エスパーもサイボーグもバイオロイドも動けるはずなかったのに……」
 相手の熱っぽい視線に戸惑い、ジョゼがうつむく。
「『常に進化を続ける存在』……? もしかして、あなたは……いいえ、あなた様は」
 少女が声をはりあげる。

「宇宙人ですね?」

 む?
 宇宙人というのは……確かこの世界(ほし)出身ではないモノのことだったよな。ユーリアさんがそう言っていた。

「そうだ。オレ達は『宇宙人』だ」
 オレがそう答えると、少女の顔がパーッと輝いた。

「やっぱり! バビロンに幽閉されてたのね! お会いできて光栄です! 宇宙人様! 『正義の国』の一員キャロライン、正義の味方です!」
 それから少女は真面目な顔となった。

「あなた様を助けに来ました! どうぞ拘束を解いてください! 悪の巣窟から逃げましょう!」

 へ?

 悪の巣窟……?





 少女は警備ロボットに連れられて行った。

 侵入者のせいで実験どころではなくなり、オレらはドーム中央に戻った。
 サラとルチアさんは医療スタッフに預けられ、活動停止中のイヴはユーリアさんの部下に搬送されて行った。

 オレとジョゼも検査となった。最初に比べれば略式だったけど、キャロラインに接触したせいで検査項目は増やされたっぽい。
 検査が終わると、立体映像のユーリアさんが現れた。
 サラはもう起きたそうだ。体に異常は無いかもうちょっと検査した後、オレらと合流できる。
 イヴは大事をとって、夜までメンテ。イヴが復帰するまで代わりのメイドロイドを手配してくれるそうだ。

――『正義の国』は、バビロンを敵視している人権保護団体……というか、カルト集団よ。大昔にテラに存在した正義の大国の後継者を気取ってるの。正義に生き正義に死すのが、美学。悪の組織を潰す為なら、命さえ惜しくない人間の集まりなのよ――
 立体映像のユーリアさんが、もこもこの丸い頭をかきむしる。
――バビロンは墜落したUFOを運びこんでるだ、宇宙人を解剖してるだ、宇宙人と共同開発して兵器を造ってるだ、モラルを完全無視した人体実験を行ってるだ……デマばっか広めやがって! あの【音声伝達デキマセン】ども! さっさと【音声伝達デキマセン】しちまえ!――
 又、聞くに堪えない悪口を言ってる。

 立体映像に、ラリサさんも現れる。
――『正義の国』は何度もバビロンで破壊活動をしている。『宇宙人を解放する』って言ってね。けど、――
 エスパー部隊の隊長のラリサさんが、ため息をつく。
――連邦警察に引き渡しても、罰金程度ですぐ釈放されちまうんだよ。あいつらの組織の後ろ盾、連邦のお偉いさんだから――
 宇宙連邦も一枚岩じゃない、バビロンの支援者と敵対している派閥もあるのさと、更にため息。
――キャロラインって女、やけに優秀な隠密(スパイ)活動用パワードスーツを着てた。他の男どもも軍払下げの強化装甲だったし……軍関係者の後援がなきゃあの装備は無理だ――
「隠密活動用スーツ……? あの派手なビキニが?」
 オレの漏らしたつぶやきに、ラリサさんがケラケラ笑う。
――あの意匠は『正義の国』のシンボルだ。抗議活動時には必ずあのマークをつけるんだよ――
 はあ。
――透明化や迷彩化の機能もあるし、探知機械に誤情報も流せる。ああ見えて、高性能スーツだ。男どもが陽動している間にバビロン中心部に侵入する計画だったみたいだが、なまじ隠れてたもんだからルチアの瞬間移動とぶつかったんだ。運が悪かったよな――

「彼女どうなるんですか?」
 オレの問いに、二人は顔を見合わせる。
――いつもは、調査の後、連邦警察に引き渡すの。あなた方を目撃されてるけど、『正義の国』は社会的信用がない組織だもの、外で何を証言されても平気よ。でも、あなた、あの【音声伝達デキマセン】な女を百人の仲間に加えちゃったのよね?――
 オレは頷いた。
――【音声伝達デキマセン】な『正義の国』に戻ったら、どっかに鉄砲玉に送られちゃうかもね。【音声伝達デキマセン】な女が【音声伝達デキマセン】ところで構わないんだけど、魔王戦までは生かしておかないと――
 いっそ洗脳しちゃおうかしらという姉を、妹が軽くはたく。『それやったら、本物の悪の組織になっちゃうだろーが』と。
――彼女が自分からここに留まりたいと希望すればいいのよね……宇宙人様に説得してもらおうかしら――
「オレ達が説得?」
――宇宙人様のお言葉なら、あの【音声伝達デキマセン】女も従うでしょう。情報を何処まで伝えるかは、ケンジャさんと話し合って早急に決めるわ――

 ちょっと気になったんで、聞いてみた。
「バビロンに宇宙人が居るって、テロ集団はなんで信じてるんですか?」
 ユーリアさんの顔が渋いものになる。
――バビロン・ドーム周囲に浮かぶUFO映像が何百パターンも公開されてるせい。『正義の国』以外にもそう思いこんでいる奴はいるわ――
 へ?
「UFOって宇宙人の乗り物ですよね? 宇宙人に会ったのは、オレらが最初だったんじゃ?」
――未確認飛行物体は全部UFOよ。その中に宇宙人の乗り物も含まれるけどね――
 なるほど。
――私は目視した事ないんだけど、原始的な撮影機械でのみ記録できる物体がバビロン周囲に出没するらしいの。その動画を無料配信し続けている馬鹿がいてね――
 へー
――あの【音声伝達デキマセン】、拘束しても何故か配信だけはできるのよ! 二十四時間監視してもボロ出をさないし! どんな手を使ってるのよ、あのバカ妹!――
 は?

 ラリサさんが、笑いながら教えてくれる。
――一番下のナターリヤだよ。自称超常現象研究家なんだ。UFOとか幽霊とか変なものばかりを研究している。『私と宇宙人〜愛と勇気と友情と』だの、『テラは狙われている! UFO密着24時間!』だの変なサイトを作ってるんだ――
 ユーリアさん、ジリヤさん、ラリサさんの妹……
 てことは……
 オッドアイなのかな?
――狂信的な『正義の国』もナニだけど、ナターリヤも恐いぞ〜 宇宙人LOVEなのに、あんたら研究のチームから外されてるんだ。誘拐に走るかもな――

 魔王が目覚めるのは、三十五日後だ。

 最長あと三日、エスエフ界にとどまる。
 怪しい人間は、バビロンの中にも居るようだ……気をつけよう。


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№067)

名前     キャロライン
所属世界   エスエフ界
種族     人間
職業     正義の味方
特徴     カルト集団『正義の国』の一員。
       宇宙人を救う為、
       バビロンに正義の鉄槌を下しに来た。
       美少女なんだが、頭の中は……
戦闘方法   パワードスーツ
年齢     三十二歳。外見は十五才ぐらい。
容姿     プラチナブロンド、青い瞳、
       ミルクのように白い肌。
       赤と白の縞模様のビキニ。右胸は青地に星模様。
       赤マントに青ブーツ。
       健康的にぷるるんな胸とお尻。
口癖    『悪魔どもめ』『正義の味方』
好きなもの  正義
嫌いなもの  悪
勇者に一言 『お会いできて光栄です! 宇宙人様!』
挿絵(By みてみん)
愛と勇気と希望と! 正義の味方と共に進め、勇者ジャン!
魔王の目覚めは35日後だぞ!
+注意+
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