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ハーレム100 作者:松宮星

エスエフ界

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狂的科学者の野望の巻【ユーリア】(※)

この物語はフィクションであり、登場する人物・団体名は実在する物や実在するであろうものとは関係ありません。
 こんにちは、シャフィール。お元気ですか?

 又、資料映像が手に入りました。知的生命体へのPR映像019巻と131巻です。

 それから、ご質問にあったドームですが、ドームとは密閉型気密空間です。
 外縁を不透明なバリアシールドで覆って、内部を人間が過ごすのに最適な環境となるよう人工的に整えた居住空間です。
 宇宙でスペースコロニーで暮らすように、テラの人間はドームで暮らしています。
 巨大都市規模の物もありますが、バビロンは個人所有のドームなので小型です。直径は二十キロしかありません。
 しかし、内部に閉鎖生態系が完成していますので、独立して数百年も生存できるのだと、おとうさまは自慢しています。

 一度、ぜひ遊びにいらしてください。おとうさまも、おねえさまも、シャフィールなら大歓迎だと思います。

               宇宙新世紀〇二七七年 ナターリヤ


* * * * * *


 カウントが、ゼロになる前に動いた。

 風の精霊は風から風へと移動魔法が使える。

 白いロボットが攻撃に移る前に、跳んでもらった。
 結界ごと、白い機械のすぐそばへと。
 雷の精霊を宿したオレは迅速に動ける。地に伏していた紫の髪の少女を急いで抱えあげ、又、移動を頼む。

 ほんの二〜三秒のことだったが、その間に義妹が信じがたい速さで動いた。
 左腕をオレに向けた白い人型の機械を蹴り飛ばしたのだ。分厚い金属装甲でできているであろう機械は転倒し、左腕の先端から天に向けて光線が発射される……
 ジョゼがロボを倒してくれてなきゃ、オレは撃たれていた……

 ぞっとした時には、別の場所に移っていた。
 同じような廃ビルの並ぶ通り。どれだけ白いロボから離れたんだか、わからない。
 更に跳んで距離を開いてもらおう……そう思った時、耳をキーンとつんざく不快音が響いた。

 凄まじい衝撃。
 頭の中をめちゃくちゃにかき回されているかのような。

 女の子を抱いたまま、うつむき、オレは膝をついた。まともに立っていられない。

《痛い!》
 ニーナの悲鳴が聞こえる。
《痛いよ!》
 痛い?
 幽霊のニーナが?

「アウラさん、移動を」
《無理……》消え入りそうな小さな声を感じた。
《吹っ飛びそう……個を保つのが精一杯……》

 風の結界も消えたようだ。

《痛い! 痛い! 痛い!》
 ニーナの悲痛な叫びが聞こえる。
 誰でもいい。誰か何とかしてくれ! せめてニーナを!
 精霊達に願った。が、誰も応えてくれない。

「ニーナさん! 小さくなれますか?」
 ルネさんの声がした……
「蓄霊器『霊力ためる君』です! 今、内部は真空状態です! 外部に霊力を漏らさない機械は、逆に外から何も吸収しません! この内なら安全です! 小さくなって避難してください!」

 シューシューと、気体を噴射する音がする……

 ガンガンと頭は痛んだものの、どうにか目を開ける事ができた。
 スプレー缶を右手に持ったロボットアーマーが、『消え〜る君』を周囲に噴射している。周囲に魔力の霧が広がっている。
「ニーナさんは『霊力ためる君』内に避難しました! 周囲も高度の魔力に包みました! これで、少しは楽になるかと!」
 どういうことだ……?

「変な電波をキャッチしたんです。振動電波です。レーダーで確認したところ、発信源はさっきの白いロボです。頭痛、吐き気、めまいを誘う、人体に有害なレベルの超音波です」
 なので、とルネさんが言葉を続ける。
「『消え〜る君』を撒いてみました! 何となく中和されるんじゃないかって気がしたんですが、正解でしたね!」
 何となくか……
 あいかわらずのヤマカン行動。けど、おかげで助かった。
 オレは女の子の上に倒れ込んでいたみたいだ。急いでどいた。
 地面に倒れているお師匠様とサラを見た時は、ドキッ! としたが、
《意識を失っているだけです。死者はいません》
 マーイさんの言葉にホッとする。
 動けそうな仲間は、ルネさんとジョゼだけだ。ジョゼは頭をかかえてしゃがんでいたが、ルネさんはいつも通りだ。ロボットアーマーのおかげか。
 オレの内にいた水・雷の二体はさほどでもないが、他の精霊達はひどい状態だ。弱体化して、赤・緑・黄・黒の光になってしまっている。

《卓越した勘である。この魔力の霧は有効だ。あの忌々しき機械波を弱めてくれた》
 ぎょっとした。
 突然、妙なしゃべりを始めたのは……ジョゼだ。
 ジョゼがゆっくりと体を起こし、肩に乱れかかっていた髪を直す。
《吾輩の力はおおむね回復した》
『吾輩』と言ったんで、わかった。しゃべっているのはレイだ。同化していた雷の精霊が、義妹の体を使っているんだろう。
《超音波は、精霊が依るべき元素を撹乱しているのである。対ESP兵器。吾輩が思うに、おそらくは超能力ジャマーだ》
 対ESP兵器?
 超能力?
 ジャマー?
《説明すると長い。要点だけ、簡潔に言う。常人にも悪影響の及ぶ音波であるが、主たる目的は魔法及びそれに類する能力の撹乱・遮断にある。魔法のありように影響を及ぼす、波長攻撃である。浴び続ければ、精霊と幽霊は四散し、魔法使いは精神攻撃に耐えられず発狂するであろう》
 げ。

《だが、吾輩の能力が回復した今、あのようなデクノボウ、もはや敵ではない。超能力ジャマーの音波パターンも記憶した。次は同じ手はくらわぬ》
 レイが自信たっぷりにそう言いきった時、重たげな足音が聞こえた。
 ビルの陰から、ぬっと機械が顔を覗かす。あの丸い頭部の白いロボだ。

 オレは腰の水の剣を抜いた。

 だが、しかし……
 目のある位置の光が消え、白い機械は動きを止めた。停止したそれは、でかい彫像のように見えた。

《先程の接触で、分身を潜ませておいた。電磁波で電子機器内部の配線に過負荷を与え、沈黙させたのである》
 先程の接触って……ジョゼが白いロボを蹴っ飛ばしたアレか? あん時に分身を相手の内に侵入させといたのか。
 機械にやたら詳しいぞ、こいつ。機械文明の人間に仕えた経験があるんだな、きっと。

《監視している女。姿を見せよ。戦闘中のスキャン及び今の戦闘法でほぼ推測できたであろう? 我々は貴様等とは異文化の世界から来た、異界人である。対等の立場で交渉がしたい》
 ジョゼがズンと身を乗り出す。
 横から覗いてみたが、表情がジョゼ本人とはまるで違う。冷静冷徹な時のセリアっぽい。ツーンと澄ましてるところまで、よく似てる。

《吾輩は主人を守る為であれば、手段は選ばぬ。次は加減せぬぞ。このドームを破壊してやろうか? それとも、全電子系を浸食される方が良いか?》

――待って。停戦します――

 ジョゼの前に、メガネの女性が現れる。

 綿か雲のようにモコモコしたオレンジの髪。
 紫の髪の子と同じ、体にフィットした白銀の服を着ている。が、その上から白衣をまとっていた。

――まずは非礼をお詫びするわ。研究都市バビロンは、不法侵入者が多い為、常に第三種警戒態勢をとっているの。産業スパイや人権保護団体に狙われやすいから――

《それが非礼を詫びる態度であるか? 不快である。未開人と思い、あなどるでない。立体映像ではごまかされぬぞ。速やかに姿を現わすがいい》
 立体映像?
 映像ってことは、幻か。
 あ。
 いや、待て、レイ。
 未開人とはオレらのことか?

――そこ、汚染レベル4のエリアよ。防護服に着替えなきゃ行けないわ。このままで許して――
《なるほど。了解した。では、警告のみを残し、吾輩は下がろう。先程のロボットのごとく大事な機械を停止されたくなくば、主人とその仲間を丁重に扱え》

 義妹の顔がスッと変わる。
 高慢なレイから、おとなしいジョゼの顔へ、と。
 立体映像の女性の鋭い視線にジョゼが、戸惑う。だが、それでもどうにか、伝えたい事だけは口にした。
「あ、あの……もう、超能力ジャマーというのを使うのは……絶対、やめてください……」

「あの攻撃で、オレの仲間達は苦しみました」
 オレは義妹を背にかばった、
 ニーナの悲痛な声、倒れたサラやお師匠様、弱体化した精霊達……胸が痛い。ルネさんがいなければ、どうなっていたことか。
「四散しかけた者もいます。あの機械は、もう使わないでください」

――超能力ジャマーは捕獲用の平和的武器なの。偏頭痛程度の肉体負荷で、超能力を制限できるんですもの。でも……――
 立体映像の女性が頭を下げる。
――完全な精神生命体に使用したのは、配慮不足でした。私のミスです。許してください――
「使用しないと約束してもらえれば、それで……」

――今から医療用ロボを出します。スキャンの結果、あなた方の肉体が限りなく私達に近い事は判明しています。意識を失った方を治療しましょうか?――
「大丈夫です! 立体映像さん! 救急箱がありますから!」
 バーン! とルネさんがロボットアーマーの腹部を叩く。そいや、そんなのもついてたっけ。

――あら、やだ、私ったら、名乗ってなかったわね――
 立体映像の女性が、口元に手をあてて笑う。
 そして、メガネを外す。
 先程まで両目ともに紫だったはずなのに……
 右眼が紫、左眼が金。
 左右で色が異なる、オッドアイだ。
 この女性も……?

――バビロン副所長、科学部門部長ユーリア。専門はロボット工学。ラリサの姉です――
 不可思議な瞳が、オレを見つめる……
――あなた方は誤解してたけれども、ラリサを襲っていたわけじゃないの。ESP市街訓練にロボットを貸して協力していただけよ。ラリサはバビロンの実験体で、ESP部隊の隊長なの――
 ファニーなオレンジの髪のせいで、美よりも奇抜さが目立っていたけど……
 切れ長の魅惑的な目を見れば、その変わった髪型すらもチャームポイントに思える。
 左右の瞳が細くなる……まるで猫のように。化粧っけのない、やわらかな唇が笑みを形づくる。
 その笑みが何とも艶やかで……
 色違いの瞳が美しくて……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと三十七〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 ああああ……
 何故、萌える、オレ……
 萌える気なんかなかったのに。
 いや、綺麗な瞳なんだけど。まるで吸いこまれそうな……

 だけど、おかしいよ。
 目を見るだけでときめくなんて。

 もしかして……
 オレ……
 オッドアイ・フェチ……なのか?

――あなた方を歓迎します。ようこそバビロンへ。宇宙人との第一種接触は人類史上初! 光栄だわ!――

 宇宙人?





 宇宙人というのは、ユーリアさんの世界(ほし)出身ではないモノのことらしい。
 それなら、オレらは『宇宙人』か。

 まずは治療ってことで、地下から現れた医療ロボが紫の髪の少女……ラリサさんを治療する。
 オレらの方は、ルネさんが治癒にあたった。

 ティーナ、アウラさん、サブレ、ソワは、精霊界に還した。しばらく生まれた世界でのんびりしてもらう事にした。
 これで、オレと一緒に居るのは、水のマーイさんと雷のエクレールだけになった。

 ニーナは静かだ。呼んでも、『霊力ためる君』から出てこないし、話しかけても返事しない。
 疲れたんだろうか?
……後で、又、声をかけてみよう。オレは、『霊力ためる君』をルネさんから借りておいた。

――ズバリ聞くわ――
 治療中、立体映像のユーリアさんが真面目な顔で尋ねてきた。メガネをかけ直したんで、目の色は両目とも紫に変わった。変装用メガネなのかな? オッドアイじゃないと、キュンキュンこないなあ。

――何の目的の来訪? 侵略? それとも和平?――

「援助を求めに来ました」
 オレは頭を下げた。
「三十八日後の魔王戦で、共に戦ってくれる女性を探しに来たんです」
 ルネさんが横から身を乗り出す。
「あと、すぐれた科学技術を学びに来ました。素材、知識、技術に触れたいんです! おねがいします! 魔王戦用武器を開発したいんです!」
 ルネさんも、ごっついロボットアーマーで頭を下げる。

――え? 嘘――
 ユーリアさんは、目を丸めた。
――恒星間航行技術を所持しているあなた方が? 異星人との会話すら成立させる高度な知性を有しているのに? 私達を頼るの?――
 すごく意外そうだ。
「科学技術は、オレらの世界よりあなた方の世界の方が発達していますから」
――あら、まあ――
 オレや、ジョゼ、倒れているお師匠様達をしばらく見つめてから、ユーリアさんの視線はルネさんに止まった。
――そうね……未知の金属やエネルギーを使用しているけれど、全体的に文化レベルは低そうよね……科学技術より精神文化が発達した超能力文明に分類すべきかしら?――
 はあ。
 あ、そうだ、これ言っとかないと。
「既にユーリアさんと紫の髪の方はオレの仲間です。オレが萌えたんで」
――私とラリサが、あなたの仲間? なんで?――
「オレ、勇者なんです。オレが萌えた人間は強制仲間枠入りなんです」
――『ユーシャ』? 『強制仲間枠』?――
 むぅ。説明が難しい。どう言えばわかってもらえるのか。

 お師匠様とサラが目覚め、ラリサさんも起きたんで、いったん会話は途切れた。
 姉のユーリアさんから事情を聞いたラリサさんが、いぶかしそうにオレらを見る。
「宇宙人……?」
 右眼が紫、左眼が金のオッドアイ。その目で上目づかいに見つめられると、ドキドキした。
「ちゃんと名乗ってませんでしたよね、勇者ジャンです」
 右手をさし出すと、ラリサさんはぎょっと身をすくませた。
「あ、ごめん……宇宙人に会うのは初めてなもんで……よろしく、ラリサです」
 ためらいながらもオレと握手してくれた。指先まで繋がってるスーツの生地はすべすべで滑らかで金属みたいだ。
「宇宙人にも握手の習慣があるのか……びっくりだな。指も五本だし、普通の手だよな」
 外見に似ずボーイッシュな口調だ。
 ラリサさんがまじまじとオレを見る。
 あああああ、その瞳で見つめられるとキュンキュンきちゃう……
 ほんとに……綺麗だなあ……

――つまり……三十八日後の戦争の戦闘員として、私達を母星まで連れ去る気なのね?――
 連れ去る?
「いえ、魔王戦当日に召喚し、一回だけ攻撃してもらって、その後すぐにもとの世界にお戻しします。ほんの数分程度、オレらの世界に来てもらうだけです」

――は?――
 ユーリアさんが目を丸める。
――私達を誘拐しないの?――
「そんな物騒な事しませんよ」
 オレはきっぱり答えた。
「三十八日後の魔王戦までこちらで過ごしてもらって、魔王戦に短い時間だけ召喚したいんです」

――え? え? え? ちょっと待って――
 ユーリアさんが額に手をあてる。
――あなた達、どうやってここまで来たの? UFO?――
「UFO?」
――乗り物を使ったの?――
「いいえ、魔法で転移してきました」

――えぇぇっ!――
 ユーリアさんが、すっとんきょうな声をあげる。ラリサさんも驚いている。
――それって、あなた方の母星から超能力だけで恒星間航行したって事?――

「使用したのは、転移の魔法と魔法陣だけです。乗り物は使ってません。召喚時にも魔法と召喚用の魔法陣を用います」

――嘘でしょ! 銀河分布図は読める?――
 オレらの前の宙に、黒い闇と白いごちゃごちゃした点の散らばりが現れる。幻影の魔法に似ている。これも立体映像なのか。
 なんだかわかんない図だ。仲間達も誰もわからない。レイならわかるのかもしれないが、沈黙している。
――あああ、そうよね。超能力文明じゃ、宇宙観測技術は発達しないわよね……母星の位置はわかんないか……でも、私達の星系に知的生命体は確認できていないし……とはいえ、他銀河となったら最低でも七万五千光年離れてる。瞬間移動(テレポート)とかありえないわ!――
「テラ産のエスパーじゃ、大陸間移動ですらまだ成功してないのにね」と、ラリサさん。

――あなたがた、何の制限もなく瞬間移動できるの? 何万光年という距離を自在に渡れるの?――
「いえ、『勇者の書』に記された世界にしか転移できません。跳び先も書とその世界の神様に委ねられますから、何処に出現するかわかんないんです」
――『ユーシャの書』?――
 なにそれって顔でユーリアさんが尋ねる。
「歴代勇者の日記帳です」と、答えると、ユーリアさんの顔がますますけげんそうになる。

「今から四百四十二年前、あなた方の世界のウィリアムという人間が我々の世界に転移してきた」
 お師匠様がオレの説明不足を補ってくれる。
「彼は七十八代目勇者となり、その冒険の記録を書に残したのだ。あなた方の世界の事は、ウィリアムの書で知ったのだ」
――四百四十二年前の宇宙航空技術で、他銀河に渡るなんてありえないけれど……――
 ユーリアさんがむぅぅと顔をしかめ、両腕を組んだ。
――何らかの方法で、あなた方の母星にテラ星系の人間が訪れ、ユーシャという存在になった……――
「七十八代目勇者として魔王を倒し、我々の世界を救ったのだ」
――『マオウ』というのは?――
「我々の世界を乗っ取ろうと、繰り返し現れる魔だ。七十八代目勇者は、七十八代目の魔王を倒した。この百一代目勇者ジャンも、百一代目魔王を倒すべく仲間を集めている」
――侵略者ってことね。あなた方の母星は、何度となく宇宙人(まおう)の脅威にさらされ、ユーシャが撃退してきたのね?――
 お師匠様が頷く。

――だいたい話は見えてきたわ……あなた方の星では超能力が発達し、制御しきれないけれども超能力星間移動技術を有している。しかし、科学技術力が低い為、侵略者に有効な武器開発が進められず、戦闘要員が確保しきれずにいる。ほんの数分しか拘束しないから、三十八日後の侵略戦争で一緒に戦って欲しいってことなのね?――
 えっと……?
 合ってる……よな。
 オレは頷いた。

――素晴らしいわ! 宇宙戦争! しかも、未知の技術で星間移動ができるだなんて!――
 メガネと目をキラキラと輝かせながら、ユーリアさんがオレに迫って来る。
――三十八日後だなんてケチなこと言わず、明日にでもあなた方の母星に運んでくれないかしら?――

 へ?

――あなた方の星を研究したいの! 親善大使として滞在させてもらえないかしら?――
「なに馬鹿なこと言ってるんだよ、姉さん!」と、ラリサさん。
 しかし、ユーリアさんは妹を無視し、更にオレへと迫る。
――こちらの武器や技術が欲しいんでしょ? 一度にどの程度運べるの? 機材やパワードスーツは運べる? 探査艇は?――

 えっと……
 オレはお師匠様をチラリと見た。

 お師匠様が淡々と答える。
「要望にはお応えできない。一度に運べるの私を除く五人の人間だけなのだ。我々の数は六人。他の者は運べない」
――六人? もっと人数いなかった?――
「精霊達はしもべだ。勇者が八、魔術師が一、格闘家が一所有している。が、所属物なので彼等と共に運べる」
――精神生命体はオプション扱いなのね……――

――では、母星に帰還後、もう一度こちらに来ることは可能かしら?――
「来る事はできる。しかし、同じ場所に転移するとは限らない。出現箇所は、この世界の神がお決めになる事だ」
――座標指定ができないのね。どこへ跳んでくかわかんない、ギャンブルなわけか……でも、実験したいわ。帰還した後すぐに、あなた一人だけで再転移してもらえます? 同惑星上への再出現ならば、発信機をお渡ししておけば再接触可能ですもの――
「残り三十七日で、勇者はこの世界を含む五つの世界で三十七人の女性を仲間としなければいけない。我々には時間がない」
――半日。いえ、二時間でいいわ。再訪問は短時間で構いません!――
「それぐらいの時間でよければ協力しよう。繰り返すが、運べるのは私を除く五人の人間。あとは、その人間が身につけている物や荷物だ」
 不充分だけどそれでも充分! と、ユーリアさんが叫ぶ。

――私を異星に連れてって! ついでに、有能なスタッフも! そちらの母星を研究探索させて!――
「ちょ! 姉さん!」
 横からラリサさんが口をはさむが、ユーリアさんは今回も完全無視。

――もちろん、協力はきちんとするわ。武器開発支援と女性戦闘員がお望みだったわね?――
 その問いには、オレが答える。
「そうです。魔王に大ダメージを与えられる女性を探しています。同じジョブは仲間にできないんで、戦闘力の高い人から順に紹介してください」
――了解したわ。このドームの優秀な人材を紹介するわ。武器開発指導の方も、専門チームを作るわね。滞在予定はどれくらい?――
「最長一週間です」
――一週間! きちんとスケジュールを立てないと厳しいわね……滞在中、あなた方を調べてもいいかしら? 武器開発や戦闘員探しに支障をきたさない範囲で――
「まあ、仲間探しの合間とかでよければ……」

 ラリサさんが、ドンと道路を蹴る。
「マズいだろ、それ! 知的生命体を発見・接触した場合は宇宙連邦への即時報告が義務だろーが! 宇宙人は個人がどうこうしていいもんじゃない!」

――まだ調査中です――
 えっへんと胸をそらせて、ユーリアさんが言う。
――彼等は宇宙人を名乗っています。が、まだ証言のみです。彼らが異星の知的生命体である確たる証拠はつかめていません――
「一目瞭然だろ! 異星文明じゃないか!」
 ラリサさんが、オレらを次々にビシッ!と、指差す。
「格好からして変だし、『精霊』なんて知的精神生命体も、『魔術師』なんてジョブも、テラにはない! あのロボットアーマーも異種の技術で造られたもんだ!」
――いいえ、まだ確証は得られていません。『宇宙人』を名乗ってるだけの、ただのエスパー、ただの発明家、ただの妄想家かもしれないわ。このドームによく不法侵入してくる、人権保護団体の人間かもしれない――
 オーホホホホとユーリアさんが笑う。
――まずは調査よ! 私達バビロンには、『法的或いは軍事的必要がない限り』未知の拾得・採集物を独占調査研究する権利が与えられています! 最低でも一カ月! 申請次第では最長五年! じっくり調査して、正体を見極めてからでないと上に報告はあげられないわ!――
「あんたが異星に行きたいだけだろ!」
 そう怒鳴るラリサさんを尻目に、ユーリアさんは笑い続ける。
 えっと……
 この世界での協力者をゲットできた……ってことかな?


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№063)

名前     ユーリア
所属世界   エスエフ界
種族     人間
職業     科学者
特徴     ロボット工学が専門らしい。
       オレ達を襲ったロボはユーリアさんの作。
       エスパーのラリサさんの姉。
戦闘方法   ロボットかな?
年齢     不明。
容姿     オレンジの丸いふくらんだ髪。
       メガネをかけているのも、
       全身タイツな服の上に白衣を着てるのも
      『科学者』としての信念らしい。
       右眼が紫、左眼が金のオッドアイ。
       でも、メガネをかけると両方紫に見える。
口癖    『素晴らしいわ!』
好きなもの  未知の事を研究すること。
嫌いなもの  研究できないこと?
勇者に一言 『ようこそバビロンへ』
挿絵(By みてみん)
謎の(マッド・)科学者(サイエンティスト)が仲間になったぞ! 行け、勇者ジャン!
魔王の目覚めは38日後だぞ!
+注意+
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