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ハーレム100 作者:松宮星

魔界

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死神とお人形    【サリー】(※)

 ベティさんのカボチャ馬車に戻ると、ドアの取っ手の辺りににクモの巣が張られていた。
 キラキラ光るクモの巣の上には、見たこともない文字が浮かび上がっていた。
 知らない文字のはずなのに、なぜか読めた。
『三人、サリーの城』。
 ラミアのエドナからのメッセージだ。虫とか蛇とかクモなんかをしもべにしてるんで、よそにこっそり入りこんで情報収集したり、連絡をとったりするのが得意みたいだ。
 尼僧さんはラミアに、ジョゼとサラと学者さんをさがさせていたんだ。

「よくやった・・・ご苦労」
 それだけ言って尼僧さんは無造作に扉に手をかけ、クモの巣をこわして馬車へと乗り込んだ。

《エドナめ、又、我が領地にしもべを放ちおって……》と、黒ネコがブツブツと文句を言う。吸血鬼ノーラの変化だ。服を着るのはめんどうだと、ノーラは裸のままでOKな獣に化けたんだ。
 黒ネコになったノーラの、額につけられた足形は毛にかくれている。黒い毛はツヤツヤしててキレイで、しなやかで、ほっそりしてて……かわいすぎる。キュンキュンする。中身がアレでなきゃ、抱っこしたいよ。

《サリーはね、美しいものが好きなんだよ》
 頭の上のベティさんが教えてくれた。
《美しけりゃ、手あたり次第なんでも集める。魔族でも人間でもモンスターでもね。で、お気に入りを城に集めて、ハーレムつくって悦にいってるわけ》
「ハーレム?」
《お人形遊び……うっぷんばらしだよ》
「どういうこと?」
《サリーの奴、自分の世界に帰るとかなりおエライんだ。あの世界じゃ、死神は最高位の暗黒神だからね。すごい数の信者が居るんだ。けど、その分、気が抜けない。四六時中、エラそうにしてなきゃいけないもんだから、》
 ゲヒヒヒとベティさんが、下品に笑う。
《ストレスためまくりなんだよ。馬鹿だろ? あっちじゃみっともない真似できない分、魔界に来ちゃ人形相手にうさを晴らしてるのさ》
 ジョゼたちはひどい目にあっているのだろうか……

 ベティさんの馬車でオレらは、死神サリーの領地を目指した。

 尼僧さんの右側に首だけのベティさんが、左側にネコに変化したノーラが座った。
 魔族たちは、たがいにツーンとそっぽを向いている。仲が悪いなあ、ゾンビと吸血鬼。ご近所さんで、どっちも不死族なのに。

「裸。きさま、死神にマリーの下僕達を売ったと言ったな。親しいのか?」
 尼僧さんの問いに、黒ネコが答える。
《たまに取引をしているだけだ。女など私の国ではペットの餌にしかならんが、贈ればサリーは喜ぶ。相手好みの人間が迷い込んだ時に、プレゼントする約定を結んでおるのだ》
 ちなみにと、黒ネコはごキゲンで言葉を続ける。
《サリーには筋肉男(マッチョ)十二人分の借りがあったのだが、女ども三体で『貸し借り無し』にしてもらえた。良い売り物だった♪》
 ジョゼ達の価値はそれぞれ、マッチョ四人分か……

《一つ助言をしてやろう、僧侶》
 黒ネコが、ニィーッと目を細める。血のような赤い色の目だ。
《サリーはひきこもりだ。めったな事では城の外に出んし、外に関心を持たん。貴様が私の領内でやったデモンストレーションをしたとて無駄だ。取り押さえに来るのは雑兵ばかり、サリーは城の中で人形遊びを続けるであろう》
 そういえば、尼僧さんとノーラの最初の戦いを、ベティさんとエドナは邪魔をしたって聞いた。けど、死神は話題にあがらなかった。のぞいてすらいなかったのか。

《サリーと連絡をとってやろうか?》
 くつくつと吸血鬼ネコが笑う。
《『おまえ好みの美女二体とおまけがいる。美女二人は光の加護を受ける賢者と僧侶。いい人形になる。欲しくはないか?』と。そう持ちかければ、あいつ、我々を城に招いてくれよう》

「何をたくらんでいる、裸?」
《なあに、つまらぬことさ。サリーも足形仲間にひきこんでやろうと思ってな》
《サリーのデコにも足形か! そいつはいいねえ! 笑える!》と、ベティさんも楽しそうにヒヒヒと笑う。
 悪だくみの時だけ気が合うのか。友達どうしの魔族っていないのかなあ?

《僧侶。雑魚相手に手間取りたくはなかろう? その肉体は弱りかけている。サリーとの対決を前に、雑魚に遅れをとったら恥だぞ》
「ほう。邪悪な吸血鬼がお優しいことだな。俺の憑依体の心配か」
《今は貴様のしもべだからな》
 ネコの赤い目がキラリと輝く。
《サリーには『うっかり食欲が刺激されてはたまらない。私好みではない、貴様が美しいと思う姿で出迎えてくれ』とも伝えておこう。そこの惰弱勇者が萌えやすいように、な》
 死神を女体化させといてくれるのか……親切だなあ、吸血鬼。

「死神から返信があったら、起こせ。無くとも、死神領に着く前には起こせよ・・・」
 それだけ言って、尼僧さんは眠ってしまった。
 目の下が黒いし、頬がやつれている。
 疲れがぬけきってないみたいだ。


 移動中は、オレにとっても休憩タイムだ。
 寝たり、食事をしたり、体を休めたり。

『勇者の書』も書いている。
 十八才のオレのためにいろいろ書き残している。
 記憶ソーシツが直った時に困らないように。

 十八才のオレが気にかけてたことも、お師匠様に聞いといてあげることにした。
「フォーサイスって、お師匠様の恋人だったの?」
『勇者の書 101――ジャン』には、何度も何度も二人の仲を気にしてる文がある。十八のオレはグズグズしてて、まだ質問してないみたいだ。

 お師匠様はいつも通りの顔で答えた。
「違う」と。
「じゃ、だれが好きだったの?」
 オレは『ヤザキ ユナ』のページを見ながらたずねた。
「死んだ恋人ってだれ?」

「ユナの勘違いだ。私に恋人などいなかった」
 ふ〜ん、そうなのか。

「私は、ただ……己の怯懦を悔いていたのだ」
「きょうだ?」
 それ、最近、聞いた単語だぞ。えっと……
「気遅れしたんですか、お師匠様が?」
「勇者であった頃、私は視野が狭すぎた。差しのべられた手の意味が理解できていなかったのだ」
 ん?
「庇護されていた事に気づいた時には、遅すぎた。フォーサイスは私の身代わりとなって死んだ……私は勇者として、大切なものを守れなかったのだ」
 そうか……竜は、お師匠様を守って死んだのか。

 つらすぎるよな。
 もし、オレをかばってサラが死んだりなんかしたら……オレだって後悔する。サラを死なせずにすむやり方はなかったかって考え続けて、ずっと自分を責めるだろう。

「昔のことだ」
 お師匠様が口元をかすかにゆるめる。ほほえんでいる感じに。
 聞きたいことは、まだあった。けど、それ以上、聞けなかった。思い出させちゃ悪いような気がしたんだ。

 十八のオレは気にしていた。お師匠様は、昔はどんな顔をしてたんだろうって。フォーサイスが生きていたころは無表情じゃなかったかもしれない、そう思ってたんだ。





 死神といえば……デッカイ大鎌を持ち、ボロボロの黒のローブをまとった、ガイコツ。大鎌を振って命を狩る……オレのイメージなんて、そんなもの。
 死神が住む城なら、くずれる寸前のボロボロの城だろうと思った。

 しかし、死神の城は……想像とは違った。

 死神領に入ってすぐオレらは、魔法の先導を受けた。
 カボチャ馬車ごと空中浮遊の魔法で浮かされ、ハゲ山とハゲ山の間の谷に運ばれたんだ。
 高い所から谷を見た時、びっくりした。
 そこは白い霧におおわれていた。
 霧が出てるのに天からは白い光が差してるんで、白い谷はキラキラと輝いていた。
 そんな中に、城はあった。白い塔が四つある、青い屋根のキレイな城。おとぎ話に出てきそうなかわいい城だ。白い霧につつまれたその姿は、天空の城のようにも見えた。

 馬車は城門の前で止まった。
 城壁には彫刻やらレリーフがあるんだが、そのどれもが聖教会のものに似ている。天使や聖獣にしか見えない美しい像が、いっぱい刻まれている。
 そのアーチ門の門扉の前に、天使がいた。不似合いなほど大きな武器を持って。

 オレは何度も目をこすって、見直した。
 が、門の前の子は、頭に輪っかがあって、背に白い翼がある。
 どー見ても、天使だ。

 白レースのミニドレスを着てるんだけど、薄手なんでスケスケ。下着が見えちゃってる。ブーツも白だ。
 髪の毛は、澄んだ空のような水色。肩にかかる長さにまで伸ばしている。
 顔はちょーかわいい。ふっくらとしたほっぺたがピンク色で、口元はにっこりと笑っている感じ。
 右目にはハート型の眼帯。左目は青く、こぼれそうなほど大きくてくりくりしてた。

 魔界に天使?
 しかも、すっごくかわいいのにほぼ裸で、デッカイ黒い鎌を持ってるんだ。
 それだけでも、変なんだが……

 小さいんだ。
 たぶん、五、六才ぐらい。
 幼児だ。

 鎌を持ってない左手をあげ、幼児が黒ネコへと手をふる。
《ノーラちゃん、おしらせありがとー》

 お師匠様の足元の黒ネコがしなやかな体をゆらす。
《サリー、おまえ好みの女とおまけの勇者を連れて来たぞ。勇者には、ベティもくっついている。得だぞ》
《はあ? 何言ってやがる。あたしゃ、勇者のオプションじゃないよ!》
 オレの頭の上のベティさんが怒鳴る。

 この天使がサリー? 死神サリー?

「堕天か・・・」
 尼僧さんがポツリとつぶやく。
 ダテン?

《ケンジャとソウリョ、でもってユーシャとベティちゃん! かわいい〜! ん〜 でも、クロネコのノーラちゃんも、かわいいね! ギュッしたい! お人形にしていい?》
《断る》
 吸血鬼は一瞬で変化した。黒ネコは消え、お師匠様のそばに羽ばたくコウモリが現れた。
《ああああん、かわいかったのに〜 つまんない。コウモリはかわいくない、いらな〜い》

 お子様天使がオレらをみわたし、お師匠様、尼僧さん、オレの順に、びしっ! と指をさす。
《100テン、100テン、51テン! ベティちゃんつきだから、ユーシャもおまけのおまけでゴーカク!》

 オレ、おまけのおまけかよ!
 つーか、合格ってなに?

 尼僧さんがチッと舌うちをする。
「堕天様がお人形にしてくださるのだろう・・・堕天は、邪でありながら聖。神聖魔法では祓いきれぬ存在だ・・・そいつと正面からひきあわせてくれるとは・・・謀ったな、裸」

《そこの惰弱勇者が萌えれば、戦闘は回避できる。サリーの傀儡(くぐつ)とならずに済む》
 お師匠様の後ろに半ば隠れながら、コウモリがくつくつと笑う。
《……頑張って萌えるがいい。その幼児に、な》

 う。

「正面衝突は避けよと、内なる俺の霊魂がマッハで告げている・・・任せた」
 尼僧さんがドン! と、オレの背を押す。
「きさまは、義妹にも幼児にも動物にも萌えてきた立派なダメ青年だ。萌えられる。萌えろ」

『勇者の書』ではそうだけど……
 ちっちゃな子にはドキドキしないよ、オレ。

 よろけ出たオレを、ニコニコ笑顔の天使が見つめる。
《キミからお人形になりたいのー? えへへ。ベティちゃんも、ついにあたしのモノかー うれしいなあ》

《人形にしたきゃ、このガキだけにしとくれ。あたしゃ無関係だ。あんたのお人形なんかごめんだよ! 虫唾が走る》と、ベティさん。
《ベティちゃんなら、いいお人形になるなあ、たのしみー》
《人の話聞けよ、クソ馬鹿死神》

 ベティさんが小さい声で言う。
《サリーの左目を見るな。魔眼だ》
 マガン?
《目だけで、相手を殺すこと、身動きを奪うこと、魅了することができる。人形になりたくなきゃ、目を無視しろ》
 おっけぇー!

《んじゃ、まあ、さきに、こっちのユーシャくんからお人形にしよっかなー キミ、おなまえは?》
「ジャンです」
 あれ?
 答えようと思う前から、しゃべっている。

《いくつ?》
「十八みたいです」
 また、口が勝手に!

《みたい?》
「記憶ソーシツなんです、オレ」
《キオクソーシツ! かっこいいー そーなんだ。へー。もうちょっとこっちにきて、ユーシャくん》
 オレの足は勝手に歩き始めた。お子様天使のもとへと。
 操られてる?
 オレ、もう人形になっちゃったのか?
 目を見ないようにしてるのに!

《馬鹿! サリーの視線を感じちゃ駄目なんだよ。見られてることを忘れるんだ》と、ベティさん。
 ンな器用なマネできないよ!
 顔が勝手に動く。
 天使の顔を見ようとする。
 目を閉じようとしてもダメだ。
 勝手に開いちゃう。
《へっぽこ勇者……いいかい、絶対、願いを口にするなよ? サリーと契約を結んだら、代償に人形にされるからね》

 それも難しそう……
 口を閉ざせない。

《ユーシャくんは、マカイになにしにきたの? マゾクたいじ?》
「いいえ。仲間さがしです」
《ナカマさがし?》
「魔王戦でいっしょに戦ってくれる、ものすごく強い魔族をさがしにきました」
《へー》

 目がそらせない。
 お子様天使の宝石みたいな左目を見つめながら、オレは天使の前に立ち止まった。
《あたし、ものすごくつよいよ》
「はい」
 オレはうなずいた。
 戦わなくてもわかる。魔界でも所属世界でもえらい死神なんだ。弱いはずない。デッカイ鎌を持ってるし。

《あたしをナカマにしたい?》
「はい、たぶん」
《たぶん?》
「十八のオレは、きっとそうだと思います」

《そっかー キオクソーシツだもんね。いま、いちばんのねがいは、ちがうんだー なんだろ? おしえて〜》

 願いを口にしちゃいけない!

 わかってる!

 わかってるのに……

 オレの口は勝手に動いていた……

「ジョゼとサラと学者さんをとりもどしたい」
《だれ、それ?》
「オレの義妹と幼なじみと仲間です」

《このまえ、私が贈った三体らしい》と、コウモリ。

《あのかわいい三人か! そっかー 返してほしいのか……》
 天使は腕を組み首をひねり、それからいたずらっ子のように笑った。
《いいよ、そのおねがいきいたげるー》

 ポン! と、音がして、天使の背後に三人の女の人が現れる。

 びっくりした。

 三人とも、天使と同じ格好をしている。
 頭に輪っか飾りをつけて、背中に羽飾りつきの白いミニドレスを着て、白ブーツをはいている。
 ミニドレスは、スケスケのレースだから下着まで見えてる。三人とも白だ。

 長い黒髪の女の子、ストロベリーブロンドの子、茶の髪を背に垂らしてるメガネっ娘……
 ジョゼとサラと学者さんなのか?

 ジョゼは、いつも男の子のカッコーをしてた。
 けど、天使の後ろにいる黒髪の子は、キレイで優しそうなおねえさんで……小柄だけど、ベルナ母さんによく似た体をしていた。

 そのとなりが髪の色からして、サラなんだろう。
 大きな緑の瞳、頬はふっくらしてるし、お化粧してないのに唇はピンク色。美少女だ。近所の悪ガキを泣かせまくってたサラが、これ? ほんとに?
 だけど、その分、体は……

 残ったキリッとした感じの美人が、学者さんなのか。
 うん。サラよりはマシ。
 でも、三人の中じゃ、ジョゼがダントツだ。

《かえしてあげるー》
 三人がオレのそばにやって来る。みんなほほえんでいる。なんかトロンとしてる。
 うふふと笑いながら、三人は左右背後からオレに抱きついてきた。

 うわ!
 ほっぺやら胸やら体をスリスリと押しつけてくるよ!
 十八のオレって、みんなにこんなエッチなことさせてたの?

 息がくすぐったい!
 首にチュッされた!
 ジョゼとサラが左右のほっぺにチュッチュしてくる!

《かえしたげたー まんぞくぅ? まんぞくでしょ? まんぞくしたなら、あたしの番〜 あたしもまんぞくさせて〜 キミも人形に……》

《ちょいとお待ちよ、サリー。この三人、あんたの術にかかったまんまじゃないか。それで返したと言い張るとは、図々しい》
 オレの頭の上のベティさんが、バカにしたように死神に言う。
《借りたドレスを泥だらけにして返したようなもんさ。返すんなら、汚れを落とすのが礼儀じゃないかい?》

 ちっちゃな天使はムッと顔をしかめた。
《んじゃ、これでどーだ?》

 天使が左目を閉じ、右のハート型の眼帯をはずす。
 とたん、楽になった。
 頭の中のモヤがはれて、すっきりした感じがした。
《左が魔眼。右が癒しの目さ。右目で見られりゃ、術は解ける》と、ベティさん。

 オレの左右と背後から抱きつきチュッチュしてた三人の動きも止まる。

《ジュツをといたぞ。もう心はしばってない。これなら、まんぞくぅ?》

 オレに抱きついてる三人がぶるぶるとふるえ始める。

「お、お兄……さま……?」
「ジャン?」
「勇者……様……?」

 ほんのちょっとだけ間をおいてから、悲鳴があがった。

 背後の学者さんは、胸をかくすように両腕を組み、しゃがみこんだ。

 ジョゼは顔中を真っ赤にして、目を見開いてオレを見てる。抱きついたままだ。かたまってしまったみたい。

 そして、サラは……
 鼻のあたりをカーッと赤くして、泣きそうな顔になって……
「えっち!」
 オレに、おうふくビンタをした。

 なんで?

 左右とも四回なぐられた。

「なんで、オレをなぐるんだよ! オレ、なにもしてないぞ! キスしたの、サラじゃないか!」
「違う!」
 真っ赤な顔で、サラがかぶりを振る。
「アタシ、そんなつもりじゃ! 体が勝手に動いただけよ!」
「でも、キスしたよ!」
「したのは、アタシじゃない! ア、アタシが、あ、あんたにキスするわけないじゃない!」

 ムカッ。
 助けに来たのに、何だよ!

「オレだって、キスされたくない! されてもうれしかないよ! サラなんて、ぺったんこじゃないか! ジョゼぐらいおっぱいあるんなら、うれしいけどさ!」

 ピシッ! とサラのおでこに、青スジがうかんだ……


* * * * * *


 空が白い……

 頭がガンガン痛む……

 いや、体中が痛い……

 指を動かすのすらつらい……

 オレ、もしかして……
 又、死にかけてる……?

《ダイジなナカマがかえってきたんだもん。まんぞくしたでしょ〜 ユーシャくん?》
 頭上からかわいい声がした。

 そこには……
 天使がいた。

 頭に輪っか、背に白い翼。
 水色の髪がピュアな感じで、大きな青い瞳があどけない。
 右目にハート型の眼帯。子供らしいオシャレで、無邪気でかわいい。
 ふっくらほっぺはピンク色、お口も小さくてかわいい。将来、絶対、美人になる顔だ。今のままでも、ものすごくかわいいけど。
《まんぞくしたなら、こんどはあたしの番〜 おねがいきいてくれるよね〜? その三人のナカマごと、あたしのお人形になるの。かんたんでしょ?》
 にっこりと笑う穢れのない顔。
 まさに、天使。
 これぞ天使って感じの清らかさで……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……

 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと四十一〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 体が痛い……
 オレは地面にあおむけにぶっ倒れているようだ。

 そばにはマリーちゃんが居るんだが、いつものアレな魔法を唱えてくれない。
 忙しいみたいだ。笑いながら、何かを踏んづけてる。

《なんで〜? なんでお人形にならないの? おねがいきいて、ケイヤクむすんだのに〜》
「ククク・・・教えてやろう。きさまは勇者の仲間となったのだ。光の加護を受ける者は、マッハで正道を歩かねばならぬ。もはや人への悪事は不可能。きさまの愛玩人形趣味も終わりだ!」

 セリアはそっぽを向き、サラはオレに背中を向けてる……治癒の技法も魔法も使ってもらえそうにない。
 ジョゼはどこなんだろう……? 薬持ってないかなあ……

《幼児愛好の()もあったのか……萌えられんと思ったのに、予想以上に幅が広いのだな》
 知らない女の人の声が聞こえた。

《やっぱ、おにーちゃん、イカすわ、おもしろすぎ〜》
 幻かな……地面にお化粧生首が転がってる。イヒヒと笑っている……

 ああ……冷やっこい……
 お師匠様が濡れた布をオデコにのっけてくれたみたいだ。
 気持ちいい……

 魔王が目覚めるのは何日後だっけ……
 頭がガンガン痛いよ……


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№059)

名前     サリー
所属世界   魔界
       所属世界では最高位の暗黒神
種族     堕天使
職業     死神王・魔界貴族
特徴     天使の輪と翼のある堕天使。
       翼の色は白い。
       左眼は魔眼で、
       右眼は癒しの目。
       美しい存在を人形にするのが趣味だが、
       人間は洗脳できなくなった。
       おでこにマリーちゃんというか
      『マッハな方』の聖痕(足形)をつけられてる。
戦闘方法   大鎌。
年齢     不明。
容姿     見た目は幼児。
       右目にハート形の眼帯をしている。
       髪の色は水色、目は青。
口癖    『かわいいー』『お人形にしていい?』
好きなもの  美しいもの。かわいいもの。
嫌いなもの  美しくないもの。かわいくないもの。
勇者に一言 『まんぞくしたでしょ〜 ユーシャくん?』
挿絵(By みてみん)
+注意+
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