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ハーレム100 作者:松宮星

天界

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天使の輪      【ガブルエル】(※)

 天界は雲の上の輝ける空間……
 神様や天使や神獣の住む、穢れなき世界……
 老いも病も貧困もない理想郷……

 一般的なイメージは、そんなところだろう。

 だが、二十四代目勇者によると、天界はSランクの神様達の交流場所なのだそうだ。
 多目的空間といっていい。
 神様の修行場、神様用宿泊・温泉・レジャー施設、サロン、図書館、裁判所、神聖アイテム製造工房、天使の職安等があるのだそうだ。
 天界神とその御使い役の天使を除けば、その他の神様は来客(ゲスト)。自分の世界から天界に遊び(レジャー)に来ているのだそうだ。
 そう聞くと、有難みが失せる。

 だけど、俗っぽかろうが何だろうが、天界に居るのはSランクの神様なわけで……あとは、神様に仕える天使・神獣……
 魔王に大ダメージなど軽いだろう。
 仲間にできれば心強い。


 そう思って天界に来たのだが……

 オレは立ちすくんだ。

 まばゆいばかりの光が目を射し、何も見えない。
 ギラギラの太陽を直視しちゃったみたいだ。
 まぶしくって目がチカチカした。

 頭の中に、ゴォォォォーンって感じに荘厳な音楽が鳴り響いていた。
 落雷のように激しく、体の中が揺さぶられるようだ。讃美歌と鐘の音と管弦楽をごっちゃにした感じ。
 ボリューム大きすぎ。頭が割れそうだ。

 香りもキツイ。
 花のような? お香のような? 甘い香りが漂っているんだ。
 だけど、匂いが濃すぎてむわっとしている。いい匂いを通り越すと匂いってヤツは……

 何も見えない。
 うるさい。
 臭い。
 オレは目を閉じてうつむき、耳を閉ざし、なるべく鼻から息を吸わないようにした。

「うふふ。招かざる者を追い払うために、演出過剰にしてるのね」
 イザベルさんの声が非常に小さく聞こえた。遠くの人の声を聞いてる感じ。
 天界からの刺激が強すぎて、それ以外のものがよくわからないんだ。

 なのに……

《汝、天の門をくぐる資格あるや否や》
 勇ましい行進曲みたいのが頭に割り込んできて、大声が響いた。耳元でがなりたてられてるみたい。女性の声だ。

 目をうすく開けると、ちょっと遠くにローブのような服を着た天使が見えた。
 頭に輪っか、背中に白い翼があるから、たぶん天使。
 けど、鎧を着て剣を佩き、武装している。
 まばゆく輝く世界の中に、建物も無いのにアーチ状の大きな門が忽然と浮かんでいる。天使はその前にたたずんでいるのだ。

 綺麗な顔だちしているっぽいんだけど……
 まぶしくってよく見えない。

《何ゆえに、門をくぐるを望むか?》

「百一代目勇者ジャンです! 魔王を倒す為、十二の世界から仲間を集めています! ご助力ください!」

 前方の天使がカーッ! と輝き、その体から光の奔流が生まれた。
 光は一気に駆け、オレの体を突き抜けてゆく。
 容赦なく、荒っぽく、体の中を揺さぶってから。

 ドド〜ンって感じに光が通り過ぎると……

 急に楽になった。

 辺りからギラついた眩しさはなくなり、うるさかった音楽はやみ、臭い匂いも消えた。

 オレは目を開けた。
 まだはっきりとは見えないんだけど、目を開けられる。

 音楽は消えたわけじゃない。耳障りじゃないぐらい、低い音量になったようだ。
 多分、匂いも残ってるんだろう。鼻がバカになってるんでさっぱりわからないが。

《百一代目勇者ジャンよ、あなたの言葉に偽りなきことはわかりました。入界を許可します》
 そう言ったのは……
 信じられないくらい美しい方だった……

 黄金の髪はさらさらで、肌は透き通るように白い。
 細面の顔、澄んだ緑の瞳、愛らしい唇。
 頭上の輪も、背の白い翼も、顔立ちも、スラリとした肢体も、宗教画の中の天使様そのもの。たいへん清らかで厳かだ。
 けれども……
 オレの視線に気づき、天使様が……
 微笑んだんだ!
 すっごく可愛く!
 無垢な笑みというか。おさな子みたい。
 よく見ると、首も手首も細い。たよりなげだ。
 剣と鎧が重たそうに見える。
 こんな愛らしい方が武器と防具を身につけるなんて、間違ってる!
 抱きしめて、守ってあげたい……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと四十九〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


「あの天使を仲間にしたのか……」
 お師匠様がポツリとつぶやくと、
「えぇーっ!」
 サラがものすごいデカい声をあげて驚いた。
「ジャンがあの天使様に萌えたんですか?」
 サラは泡を食ったような顔をしている。
 悪いかよ。

「あんな綺麗な方なんだもん、キュンキュンしちゃったってしょうがないだろ?」
「いや……綺麗は、綺麗だけど……」
 サラは眉をしかめ、変な顔でオレを見つめた。かわいそうな人を見る目のような?

「綺麗というより……かわいい方ですよね」
 天使ちゃんを見つめる、ジョゼがほわっと微笑む。今は紫の小鳥は出現していない。義妹は契約の証のペンダントをつけてるだけだ。
「あんな愛らしい方ならば……お兄さまがときめくのもわかります」
 うん、うん。ジョゼは理解があるよなあ。
「……男の子でも」

 はい?

 男……の子?

 オレは天使ちゃんを見つめた。
 声といい、触れなば折れんばかりの首といい、細い手足といい……
 どー見ても女の子だろ!
 鎧が邪魔で胸のあたりがよく見えないけど!

 てか、鎧、邪魔!

 鎧いらん!

 と、オレが思った途端。
 天使ちゃんの体をまとっていた無粋な鎧が、消えて無くなった。 
 鎧の下はゆったりめのローブ……かと思いきや肌に密着した薄絹だった。

 そこには、まさに……
 天使がいた……

 バイーンでぷるるんな胸……
 きゅっとくびれたウェスト……
 ぷりりんな感じなお尻……

 ま・さ・に!
 ボンキュッボン!
 理想的なまでにボンキュッボン!
 色白で手足が細くってかよわげなのに、その挑発的な体型……
 クラクラきちゃう……

「こんなグラマーな方のどこが男の子なんだよ?」

「え?」
「えぇぇぇ!」
 ジョゼは目をパチパチさせ、サラは声をはりあげる。
「あんた目がおかしいんじゃない! 天使様の男らしい胸をグラマーですって?」
「男らしい?……あの……ぽよぽよしてて、ぺったんこで、やわらかそうですけど……男らしくは……」

 へ?

「お教えしましょう」
 ズンとばかりにセリアが一歩進み出る。
「天界におわす神族・天使族・神獣族は、不滅の物質から構成されている不死なる存在です。霊的な存在であり、血肉はお持ちではないのです」
 えっと……
「更に言えば、天使には性別という概念がありません。性に囚われない清らかなる存在、つまり両性具有なのです」
 セリアは、メガネのフレームを押し上げる。
「男女の別の無い精神生命体……そうご理解いただけば間違いありません」
 で、でも、天使ちゃんは、どー見ても可愛い女の子なんだけど……

 セリアが、メガネごしに責めるような視線を送ってくる。
「勇者様、二十四代目勇者様の書をご覧になっておられますよね?」
 うん。
 読んだよ。
 二十四代目は、末っ子気質の甘えん坊勇者だ。美少年だった彼は、天界で天使や神様達に囲まれて楽ちんな修行をつんだんだ。
「天界は美男美女ばっかって書いてあった」
 セリアは溜息をついた。
「読み間違えてますね……『美男美女』とは書いておられません」
 え? そうだっけ?

「二十四代目勇者様は『誰しも、輝かんばかりにお美しく見える。地上の美男美女など霞んでしまうほどに』と書き残されたのです。二十四代目様にとって最も尊いものが『美』だったからこそ、天界の方々はお美しくなったのです」
 へ?
「天界におわす方々には、実体が無いのです。なので、人間はそれぞれ、尊い方々の姿を自分のイメージに置き換え理解するのです」

 む、むずかしい話になってきたぞ……

 セリアがメガネをかけ直す。
「勇者様が今ごらんになっているのは、勇者様の思い描く理想の天使像なのです。その姿は勇者様にしか見えません」
 え?
「サラさんはサラさんの天使像を、ジョゼさんはジョゼさんの天使像を見ていらっしゃるのです。三者はそれぞれ違う相手を見ているというわけです」
 えーっ!

「サラさんの目にはあちらの方は美形な男性と映り、声も男性ですよね?」
 セリアの確認の問いに、サラが小さく頷く。
「ちょっとシャルルさんに似た感じのハンサム……大天使様みたいなご立派な翼の方で、右手に魔術師の杖を持ってるわ」
 ぉい! 誰がハンサムだって? てか、武器も剣じゃない?

「私には……赤ちゃんの男の子に見えます……とても愛らしくって……ちっちゃな天使の輪と翼がかわいくって……裸で……弓矢を持ってます……」
 裸の男の子ぉ〜?
 ジョゼってそういう趣味だったの?
 オレの顔を見て、義妹がプルプルと頭を振る。エッチな目では見ていないと言いたそうに。

「天使を、サラさんは男性美の理想像、ジョゼさんは無垢な赤子のイメージでとらえてらっしゃるという事ですね」
 ちなみに、とセリアはメガネのフレームを押し上げる。
「私の目には、武装した髭の男性として映っています」
 えぇーっ!
「光輪や翼もありません。そもそも、宗教画において天使の光輪や翼が定着したのは千五百年ほど前からのことです。古代宗教において天使は成人男性と同じ外見であり、神の御使いとして悪魔と戦う……」
 う。
 宗教考古学者のスイッチが入ってしまったぞ……

「見た目から、人間の好意をさらおうって魂胆よ。ズル賢くてせこいところは、神族も魔族といっしょだわ」
 うふふと笑ってイザベルさんが、珍しく皮肉な口調で言う。

 オレの目には美少女にしか見えない方が、ボンキュッボンな体を揺らしながら尋ねてくる。ああああ、あの胸が幻だなんて、そんな……
《天界のいずこに赴くことを望む?》
 いずこ……
 うぅ〜ん……
「私にお任せくださいますか?」と、セリアが言ったので、任せた。

「魔王に116万4706以上のダメージを出せ、勇者様の仲間となることをお引き受けくださる方々との面会を希望します」
《承知した》
……かわいいけど、天使ちゃんは言葉使いが固いよなあと思ったら……
《んじゃ、案内しちゃうぞ〜 みんな〜 アタシの側にお・い・で キャハッ♪》
 びっくりした!
 口調が、めっちゃくちゃくだけた。
 これも実体がないからか? オレ次第で外見も言葉使いも変わっちゃうのか……?

 そういうえば……
「天使様、お名前をうかがってもよろしいですか?」

 天使ちゃんはにっこり笑って、オレにウインクした。
《ガブルエルよ。ヨ・ロ・シ・ク♪》

「ガブリエル様ですか!」
 セリアが、妙に興奮した声をあげた。ガブリエル様って超有名な大天使だよな、確か。
 チッチッチッと天使ちゃんが指を振る。
《ガブルエル キャハッ♪》

 ガブルエル……
 パチモンくさ……
 てか、ガブッとエル?
 ガブっとかみつくエルフ?
 わんこエルフ?

 オレがそんなことを思ったもんだから……
 天使ちゃんの耳の先がピンと尖ったんだ、エルフみたい。
 んでもって、黄金の頭の上にかわいい犬耳がちょこんと現れたんだ!

 うぉ!
 天使でエルフで犬耳でボンキュッボン!
 一粒で二度美味しいどころじゃなく!
 超豪華マニア仕様!
 すげえ!

 光輝く雲の世界。道の真ん中にデンと浮かぶでっかい門。
 そこが開き……
 中からガブルエルちゃんが現れる……
 あれ?
 門の外にガブルエルちゃん、中からもガブルエルちゃん?
 同じ顔、同じ体型、同じ天使の輪と翼、同じエルフ耳でわんこ耳な天使が現れる……

《はぁ〜い、ガブルエル。交替に来たわよぉ〜ん》
《ありがとー ミッカエルちゃん、おあとよろしく〜》

「大天使ミカエル様……?」
 セリアの問いに、二人の天使ちゃん達はそろって右手の人さし指をチッチッチッと振った。
《ミッカエル》
 これまた、パチモンくさ……
 けど、こっちはガブっじゃないのか。
 て思ったら、後から来た天使ちゃんの方は犬耳がひっこんだ。エルフ耳はそのまんまだけど。
 外見がそんなにコロコロ変わっていいんだろうか……オレが言うのも何だが。

《ではでは、移動しま〜す。みなさん、ガブちゃんのそばに集まってね〜 キャハッ♪》
 天使ちゃんが、ヤバいぐらいにどんどん軽くなってゆく……
 オレのせいだよな。
 もうちょっと威厳あるイメージに直そう……
 直せるかなあ……


 んで、ガブルエルちゃんの移動魔法で跳んでった先は……

 天使天国だった。

 光に満ちた空間に、右向いても天使、左向いても天使、前にも後ろにも天使。頭上にも天使。
 あっちにもこっちにも、どこもかしこも天使。
 遥か遠くまで、天使がズラ〜〜〜〜〜と。
 どんだけ居るのかさっぱりわからない、百や二百じゃきかないような。
 み〜んなガブルエルちゃんと同じ顔、同じ薄絹姿、同じボンキュッボンだった。
 オレらが出現した半球状の透明なドームに体を向けて天使達が並んでいる。

「なに、ここ?」

《お役目に就く前の、天使たちの待機場所で〜す》
 天使たちの待機場所?
 よく見れば、みんな瞼を閉じている。
 眠ってるのか?

《各世界の神様達の御使いに選ばれるか〜 魔族と戦う軍勢の補充員になるか〜 天界の番人になるか〜 まだ決まってない子たちで〜す。み〜んな、魔王に116万4706どころか200万とか300万とかダメを出せま〜す》
 なに?
《……だったら、いいですよねぇ。キャハッ♪》
 ぉい。
《まあ、116万は固いですよ》
 てへペロをしてからガブルエルちゃんが言葉を続ける。
《この中から、好きなの幾らでも持ってってくださ〜い》

 おおおおお、気前がいい!

 ガブルエルちゃんはにっこりと微笑み、犬耳とエルフ耳をピクピクさせた。
《天界は勇者にはやさしーので〜す。ぜひぜひ、魔王をプチンとぶっ潰してくださ〜い♪ キャハッ♪》
 見た目、かわいい天使ちゃんなのに、性格はナニだなあ……

「天使だったら、魔王戦で大ダメージを出せます!」
 と、セリア。両手を握りしめ、頬を染めて顔を輝かせている。
「四十三人を天界で集めましょう! 女神様も欲しいところですが、ここで可能な限りバンバン萌えちゃってください! あ、でも、あと六つの世界を回るので、六枠は残してくださいよ」

「よかったわね、ジャン! さあ、萌えるのよ! どんどんいっちゃって!」と、サラ。
「お兄さま、あの、がんばって」と、ジョゼ。

 オレは周囲を見渡した。
 みんなガブルエルちゃんにそっくりだ。
 犬耳は無いけど。
 あっちにもこっちにも、どこもかしこもガブルエルちゃん。
 同じ顔、同じボンキュッボン。
 オレらの居る場所に向かって、天使達がずら〜〜〜〜〜〜と並んでいる。
 置物のように。

「………」

「どうなさったのですか、勇者様?」
 セリアがオレの体を揺さぶる。
「勇者様の目には、あの髭の男達が美女に見えてるんでしょ? 勇者様のことですから、胸部と腰部が巨大な女性なのでしょ? 大好きな『ボンキュッボン』体型ですよ! 萌え萌えでしょ?」
「いや、あの……何というか……」
 オレは顔をしかめた。
「こんだけ同じ顔と同じ体型だと……綺麗なんだけど……人形みたいで、有難みがないというか……」
「なに贅沢言ってるのです! あなたの大好きな外見の者がゴロゴロしてるんですよ、可能な限り仲間にすべきです! 魔王戦に勝利する為に!」

 てかさ……
「オレが探してるの、伴侶でしょ? 大切なパートナーっていうか……どれでも同じの山盛り商品つかみどりとは、違うんじゃない?」

 セリアがうっと喉を詰まらせる。
「し、しかし、ここで仲間を増やしておけば、魔王戦に勝利できる確率が格段に上昇し……」

「それにここに居る子、みんな天使なわけで……ジョブ被りじゃない?」

 セリアが硬直する。
「で……では、ジョブをお与えになれば良いのでは? あの天使は天使のパン屋、あちらは果物屋、向こうは魚屋みたいに……」
 むちゃくちゃ言うなあ。
 英雄世界の勇者達の正体がわかった時もそうだったけど、セリアはパニクりやすい。

「試してみましょうよ、ジャン!」
 がしっとオレの両肩をつかんだのは、サラだった。
「まず、そこらの天使達に適当にジョブを割り振って」
 むぅ。
「わかった」
 パン屋、果物屋、魚屋、肉屋、えっと、武器屋、防具屋、それから……
「で、わりふったら……」
 鼻の頭を赤くしながら、サラが叫ぶ。
「特別に許す! エッチな想像をするのよ!」

 へ?

「ここに居るの、『ボンキュッボン』な天使ちゃん達なんでしょ? 想像して! 全員、全裸! 何も着てないの! 裸よ! どう? それなら萌えられるでしょ?」

 サラの言葉を耳にした途端。
 周囲に居た天使ちゃん達は一人残らず、着衣が消えてしまって……

 オレのハートは、キュンキュンキュンキュンと鳴った……
 鳴り響いた……

 は、鼻血が……

「ほら、ジャン、うつむかない! しっかり見て。ヌードな女の子がいっぱい! 萌え萌えよ!」
「勇者様、裸の天使ですよ、天使! よく見てください!」
「お兄さま……ファイトです」

 いや、もう……
 おなかいっぱいというか……
 すごすぎて、ロマンも何もないというか……
 お師匠様やイザベルさんの視線がつらい。二人とも責めてるわけじゃないんだけど、オレを注目している。こんな状況で鼻の下のばせるかよ……
 サラ達の応援が重いというか……
 痛いというか……

 だめ。
 どーしても、無理。

 勘弁して……
 いろんな意味で……


 結局、天使は増やせなかった。
 セリアはがっくりと肩を落とし、サラは『どーでもいい時は簡単に萌えるくせに』とブツブツ文句を言い、ジョゼは泣きそうな顔でオレをジーッと見ている。
 くぅぅぅ。
 オレが悪いのかよ……





 わんこ耳つき天使ガブルエルちゃんが、小首をかしげながらやってくる。
 薄絹をまとったガブルエルちゃんが、やたらとかわいく見える。
 オレ、モロよりチラリの方が好きなんだよ……

《待ち時間の間に、現在天界にいらっしゃる女神様に照会しました。面会OKな方はこれだけいらっしゃいますよ〜 キャハッ♪》
 空中に名前の一覧が現れる。
 女神名だ。
 百以上ある。
《みなさま、魔王と戦う気まんまんのお強い方々です〜 天使より、めっちゃ強いですよ〜》

 森の女神様を既に仲間にしてるけど、あちらはローカルエリアの神様。Bランクぐらいだろう。
 対して、天界に来られるのはSランクの女神様だ。
 創造神とか破壊神とか天体神とか。
 ジョブ違いってことで仲間にできるはず……たぶん。
 百体以上の神様がいらっしゃるんだ、一人ぐらいは仲間にできる……と、思いたい。

《どなたからお会いになりますか? ご希望はございますかー?》
 希望ねえ。
《ち・な・み・に、ジャン様の世界の女神様は面会拒絶札をお出しになっておられまーす。伝言は『来んじゃねー ジャン君。会いに来たら殺す』でーす》
 く。
 あのキャピキャピ神、オレの伴侶になりたくないんだな。

「ドゥルガーさまにお会いできるかしら?」
 オレの背後からイザベルさんが天使ちゃんに問う。

《輪廻世界の戦いの女神さまですねー 了解でーす。今、アポをとりますねー》

 何でその神様なの?
 オレの疑問に、イザベルさんはうふふと笑って答えた。

「水晶が私にそう告げたの」

 そっか、占いか。
 じゃあ、そーしないと。


 魔王が目覚めるのは、四十八日後だ。


 イザベルさんがセリアに耳打ちしてる。
 学者様は『何でそんなことしなきゃいけないんです?』って不満そうだったけど、イザベルさんは、
「勇者さまの未来に関わることなのよ。一度だけでいいの、私のお願いを聞いてくださらないかしら?」
 大きな胸を揺らすように手を合わせていた。

 天使ちゃんの胸もいいけど、イザベルさんのもやっぱ絶品だよなあ。


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№051)

名前 ガブルエル
所属世界   天界
種族     天使
職業     天使(天界の御使い)
特徴     見る人によって姿が変わるらしい。
       オレの目にはネコ耳でエルフ耳な
       ボンキュッボンな天使に映る。
       実体の無い精神生命体。
       脳天気な性格や口調はたぶんオレのせい。
       他の人には普通に聞こえてると思う。
戦闘方法   不明だけど、
       116万以上のダメは出せるようだ。
年齢     何千歳?
容姿     黄金の髪、天使の輪、白い翼。
       理想的なボンキュッボン!
       天界の門の番人だから、
       武装しているように見えたらしい。
口癖    『キャハッ♪』
好きなもの  きっと神様。
嫌いなもの  きっと邪悪。
勇者に一言 『ぜひぜひ、魔王をプチンと
       ぶっ潰してくださ〜い♪』
挿絵(By みてみん)
+注意+
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