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ハーレム100 作者:松宮星

ジパング界

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天界へ (※)

「そうですかー 神様がいらっしゃって『女神の何でも答えちゃおうコーナー』が開催されたんですかー 残念です。そんなビックな企画に参加し損ねただなんて……私も質問したかった……」
 オランジュ伯爵家にやって来たロボットアーマーの人が、がっくりと肩を落とす。

 神様に質問できるんなら、ルネさんは何を聞きたかったんだろう?
 一般人向け武器のアイデア?
 有名な発明家になる為の広告方法?
 スポンサーになってくれそうなお金持ちの情報?
「ドリルアームの命名です! 『漢のロマンだ ドリル君』にしようか『ドリル君 ぐるぐる〜』にしようか、ストレートに『ドリルなパンチ君』がいいか……もう三日も迷っていて……」
……そんなんかよ。

 神様は還った。
 お師匠様の体はお師匠様のものに戻り、脳天気に明るかった顔はいつもの無表情に戻っている。
 パメラさんも定位置についた。お師匠様の背中に、嬉しそうにくっついている。

 オレらはテーブルを囲み、ルネさんに説明した。
 神様の帰還後に話し合い、次に行く世界を天界に決めた、と。

 セリアが神様に質問し、『勇者の書』によって転移できる世界のおすすめ度情報を入手したんだ。
 一枚の紙に世界名がズラ〜と並んでいる。116万4706以上のダメージが出せる女性とオレが出会える確率が80%以上の世界には青、50%以上は黄、30%以上は赤の印がついている。

 向かうのなら、まずは青印の世界。
 それから黄色、赤の世界。
 無印の世界は極力避けるべきだ。

 オレが今まで赴いた世界のランクづけもしてもらっている。これからの仲間探しの困難さの指標とする為だそうだ。
 ちなみに……
 青印なのは、精霊界だけ。
 黄印はなし。
 赤が、幻想世界とジパング界。
 目隠し無しでOKだった幻想世界が、赤印なのはちょっと意外。下限が100万より上がっちまったせいだろうか? 攻撃力が100万にすら届かない人ばかりだったとは思いたくないが。
 なお、英雄世界は当然のことながら無印だ……

 青印つきの世界は、極端に少ない。
 世界一覧の中で二つしかなく、精霊界を除くと青印の世界はたった一つ。
 天界だけなのだ。

「なるほどー だから、次は天界なんですかー」と、ルネさん。

「次に赴くべき世界の候補の筆頭に、天界を私も考えておりました」
 と、セリア。
「しかし、ご存じのように、天界は神々の聖域。天界が認めた清らかなる者しか入界が許可されません。転移の魔法を用いても、不純な者は弾かれもとの世界に還されると言われています」
 邪悪を許さぬ聖なる世界。それが天界だ。
「六人分の護符や聖絹布、携帯用聖結界リングを準備済みです。後はメンバー次第でしょう。聖具を身につけた、罪なき者ならば入界が許されるはずです」

「罪なき者ねえ……ま、あたしは無理そう」
 と、女狩人がニッと笑う。女の子をとっかえひっかえ狩ってるもんなあ、どっかで怨みを買ってそう。
「私も武器開発中なので、遠慮しまーす」と、ルネさん。

「天界にジャンと共に赴く者は……」
 お師匠様が仲間達を見渡す。

「マリー」
「はい〜」
 まあ、そうだよな。聖女様だもん。天界が入界拒否をするはずがない。

「サラ」
「はい」
『メテオストーム』のショックで、サラはまだ顔色が悪い。サラは乱暴者だけど、姉御肌で優しい。天界に弾かれる事はないだろう。

「ジョゼ」
「はい」
 大人しいオレの義妹は、純粋で清らかだ。

「あとは……」
 お師匠様が口元に手をそえて、首をかしげる。

 オレも仲間達を見つめた。

 ニーナには全く邪気がないらしい。英雄世界の看護婦さんが、そう言っていた。『子供らしい善性だけが昇華され、霊格が高まっています〜 他人を癒す力があるんですよ〜』って。
 だけど、場所は天界だ。連れて行っても良いのだろうか? 無辜な魂はそのまま天に召されてしまうんじゃないか?
 でも……ニーナにはその方が幸せなのかなあ。

 お師匠様にくっついているパメラさんは、子供みたいにあどけない。しかし、モンスターや獣がいない世界では、獣使いのパメラさんは働きようがない。
 天界にも聖獣なら居るけど……操れるのかなあ? というか、聖なるものを操ろうとしたら、邪悪扱いされないか?

 セリアは留守番役だし、カトリーヌはアレだし、ルネさんは忙しい。旅の空の下のアナベラとリーズは連れて行けない。
 と、なると……

「賢者さま。最後の一人は決まっています。私を伴ってください」
 突然、オレの背後から声がした。

 振りかえると、そこには……
 たいへんつややかな、むっちりとした褐色の胸が……
 オレの後ろに、何時の間にか爆乳な方がたたずんでいたんだ。胸の開いた流浪の民風ドレス姿で。
 何時、部屋に入って来たんだろう?
 前にもこういう事あったなあ。
 てか……
 いいなあ……
 見とれちゃうよな、このボリューム……
 シュテンのがデカかったし、アナベラのぷるんぷるんもステキだ。でも、この褐色の胸は、張りもツヤもたぷたぷ感も至高の芸術品のように魅惑的で……

「私を伴わなければ、勇者さまの未来は閉ざされます。水晶が私にそう告げています」
 占い師イザベルさんが、にっこりとオレ達に微笑みかける。
「占いか……」
 お師匠様は、思案するようにうつむいた。
「おまえがそう言うのなら、そうすべきだろうな」

「何をおっしゃるのです、賢者様!」
 セリアがすごい勢いで立ちあがった。
「占い師ですよ、占い師! 言葉巧みに、悩んでいる者を騙す、最低な詐欺師! 悪徳霊感商法を生業としている女ですよ! 穢れきっています! 天界に弾かれるに決まっています!」

「大丈夫よ、セリアさん」
 イザベルさんがうふふと笑い、ダークブルネットの癖のある長髪を掻き上げる。ああああ、オレのすぐ側で芸術品がぷるるんと揺れる……
「私、清浄そのものだから」

「寝言は寝てから言ってください! あなたなど、中身も肉体も不純そのものではありませんか!」
 セリアの指の先は、イザベルさんの誘惑的な胸元をびしっと指していた。

「まあ、ひどい」
 イザベルさんが明るく言う。全然、傷ついていない。むしろ、セリアの侮辱を楽しんでいる感じ。

「でも、本当に大丈夫なのよ、セリアさん」
 うふふと笑いながらイザベルさんが、両手の指をセリアに見せた。
 八本の指を、八色の宝石が飾っている。八大精霊との契約の証だ。
「光の精霊マタンに同化してもらえば、私、光と同等になれるの。とても清らかでしょ? 天界から拒絶されないわ」
 へー 精霊にそういう使い方もあるのか。

 セリアは不快そうに眉をしかめる。
「何故、あなたを伴わないと、勇者様の未来が閉ざされるのです? 水晶のお告げでは理解できません。具体的に説明してください」

「私の成長の為……と、言えばいいかしら?」
 うふふとイザベルさんが笑う。
「無能な占い師では、魔王戦で役に立たなさすぎでしょ? 私が強くなる事が、勇者さまの未来に繋がる……そうは思わなくって?」

「なるほど……総ダメージ1億の為に、あなたは天界で修行をしてくるのですね」
 セリアが椅子に腰を下ろす。
「了解しました。ノルマは116万4706ダメージ以上です。無能者はいりません、せいぜい強くなって来てください」
 どうして、セリアはこう喧嘩腰なんだろ……


 話し合いが終わると、ジョゼは部屋を駆け出て行った。
 雷の精霊レイから、技を教わるつもりなんだろう。えっと、何ってったっけ、『雷神……何とかピッカリ拳』。格好悪い名前の奴。
 強くなりたいってジョゼの気持ちはわかるし、ありがたい。だけど、レイとの仲がますます深まりそうで心配だ。
 今度、あの小鳥野郎とはちゃんと話そう。オレの勘違いかもしれないし……勘違いだといいけど。

 サラはマリーちゃんとどっかへ行った。そいや、この前もそうだった。最近、仲がいいなあ。

 ルネさんは『発明途中なので』と、今日はあっさり帰った。ノリノリで発明中のところを切り上げて来てくれてたんだろうか?

 カトリーヌも、ふら〜と居なくなってしまった。

《おにーちゃん、あそぼー》
 ピンクのクマを抱っこした白い幽霊が、オレを誘う。
《おとうさんクマかしたげる。クマさんたち、かくれんぼしてるの。おにーちゃんが鬼ね》
 クマは四体。ニーナは既に、パメラさんとイザベルさんを遊び相手にゲットしていた。

「ちょっと待って」
 オレはテーブルに残っている二人を見た。

 セリアとお師匠様は、世界一覧を手に、難しい話をしている。
 反転の魔法陣がどうの、詠法がどうの、魔界がどうの……
 今後赴く世界について相談してるっぽい。けど、わけがわからない。オレも話し合いに参加すべきなんだろうが。

 紙から顔をあげたセリアが、オレと目が合う。
「勇者様、お付き合いくださらなくて結構ですよ。魔法陣反転の法について検討しているだけですので」
「なに、それ?」
 セリアが胸をそらせる。
「『勇者の書』に記された魔法陣の知的活用法です。逆転の発想で魔法陣を利用するのです」
 むむむ。
「使用可能となりましてから、詳細をお伝えします。今は勇者様に判断いただく事はございません。お暇でしょ? 遊んでいらしてはいかがです?」
 ぐ。

「そういえば……」
 テーブルを離れようとしたオレに。セリアが尋ねる。
「勝負は私の勝ちでしょうか?」
 ん?
「ジパング界に赴く前におっしゃったではないですか、次に何処行くか考えてくれ、どっちが良い行き先を考えられるか勝負だ、と」
 あ。
 言ったかも。
「勇者様は、候補地を何処と考えていらしたんです? 天界ですか? でしたら、引き分けですが」
 ぐぅぅぅ。

 オレは正直に答えた。
「ごめん。考えてなかった。いろいろあって忙しくって……」

「そんな事だろうと思っておりました」
 その言葉にカチンときた。
「勇者様は後先考えず、いつでも何処でも一生懸命になってしまわれる方ですから」
 けど、セリアを見たら怒る気は失せた。穏やかに微笑む顔も声も優しそうで、揶揄している感じがまったく無かったからだ。
「冒険中は、よけいなことでお心を煩わさずとも結構です。勇者としての使命を果たす事を第一となさってください。良いアイデアが浮かんだ時だけ、是非、私に助言してください」

 何か……
 セリアが、ちょっと変なような……?





 翌朝、仲間達はオレの部屋に集まった。
 旅の空の下のリーズとアナベラは居ないが、それ以外のメンバーは全員揃っている。初めてのことだ。

「いっぱい萌えて来てね、勇者様ー」
 美人の天使ちゃんをゲットしてね〜と、女狩人が手を振る。

 パメラさんはお師匠様にひしっと抱きついてから、ニーナと手をつないで下がって行った。
 聞きわけが良くなったなあ。
 カトリーヌには、まだ近づけないようだ。が、怯えてもいない。きぐるみから覗く顔は、穏やかだった。

「勇者様、困ったなーという時にはこれです!」
 ルネさんが、オレの手にお馴染みのデカい革袋を押しつける。
「私の発明品を詰めた、その名も『ルネ でらっくすⅤ』! 前回同様、新発明は無しですが、赴く先が天界という事でしたのでそれらしい発明品をおまけにつけときました!」
 それらしい発明品?
 ジャジャーンとばかりに、ルネさんが中から発明品を取り出す。
「まずは、『聖なる気分にひたっちゃお〜君』、讃美歌詠唱機能付きライトです。それから、組み立て式の『どこでも祭壇』でしょ、『祈りのポーズ矯正くん』。それと……」
 本当、どーでもいい発明品が多い……

 そこで、ノックが響いた。
 誰だろ? と思ったら、従僕だった。
 セリアはそいつと二言、三言会話を交わしてから、手紙を載せた銀の盆を持って戻って来た。
「マリーさんに、聖修道院からです」
 封筒を受け取ったマリーちゃんは開封し、手紙を開き……
 眉を曇らせたんだ。

「どうかなさったのですか?」
 セリアの問い。
「いいえ、ただの、お知らせです〜 副院長さまからでした〜 私が、異世界に、行ってた為、心話で、連絡がつかなかったので〜 それで、お手紙を、くださった、みたいです〜」

「悪い知らせなんですか?」と、オレが尋ねると、
「ちがいますよ〜」と、マリーちゃんはやんわりと否定する。

 だけど、わかる。
 嘘だ。
 幼子のように清らかな、ほわほわ、ぽよぽよのマリーちゃんの顔が、いつもと違う。
 ほんのちょっとだが、陰がある。
 のほほんとしてない。
 何かあったんだ。

「オレ達の間で隠し事は無しにしましょうよ。何かあったんでしょ?」
 オレは、きりっと顔をひきしめた。
 マリーちゃんは、何も無いと静かにかぶりを振る。
 意外と強情。
「マリーさん、今、このタイミングで手紙が届いたのは、神様の思し召しだと思いませんか?」
 うつむきがちなマリーちゃんが、青い瞳でオレを見つめる。
「ジパングに居る間でもなく、天界に向かった後でもない。手紙は、今、来たんです。その手紙を受け取ったマリーさんは、心のままに動くべきです。それが神様の御心にかなうと思います」
「でも……」
「何があったんです?」

 マリーちゃんは力なく頭をたれた。
「院長さまの、御容態が、思わしくなく……おとといから、意識が、戻られないのだ、そうです」

 すぐに聖修道院に戻るよう、オレも仲間達もマリーちゃんを促した。
「でも〜 院長さまは、治癒魔法を、拒まれて、いらっしゃいます〜 自然のままに、召されたいと、おっしゃって……私が、戻ったところで、何のお役にも……」

「だけど、お見舞いに行きたいでしょ?」
 マリーちゃんがかぶりを振る。
「勇者さまを、お助けして、光の教えを、守ることこそ、大事です〜 院長さまも、その方が、喜ばれます〜」
 その言葉から、マリーちゃんが院長をとても慕っていることは伝わってきた。

 決めた。

「天界行きメンバーを変更します」
 オレは強い口調で言った。
「聖女様に代わり、」
 オレは側に居た女性の肩を、がしっと握った。
「宗教考古学のエキスパートを連れてく!」

「え?」
「は?」

 マリーちゃんからもオレに肩を掴まれた女性からも周囲からも、あっけにとられた声があがる。

「セリアさん、先制攻撃の法以外も使えたよね? 絶対防御とか治療とか性質変換とか」
「はあ……一通りの古代技法は使用可能ですが……」
「頼もしい! さすが、セリアさん!」
 オレはセリアの肩を軽く叩いてから、お師匠様へと顔を向けた。
「いいですよね、お師匠様? 精霊達も居るし、マリーちゃんが居なくてもどうにかなりますよ」
 お師匠様は、いつもと同じ無表情だ。
「好きにしろ」
 だが、その口元は少しほころんでいるような気がした。

「勇者さま……」
 とてもとても愛らしいマリーちゃんが、オレを見つめる。目がちょっと潤んでいて、かわいい。
「オレの為にもお見舞いに行ってください」
「勇者さまの為……?」
「マリーさんが心を痛めてたら、オレ、集中できません。気になって、天界で萌えられなくなっちゃいます」
 オレは頭を下げた。
「頼みます、行ってください。オレ、仲間を増やせないと困るんです」

 コホンとセリアが咳払いをする。
「突然の事で戸惑いましたが、引き受ける以上、マリーさんの抜けた穴はきっちりと埋めてみせましょう。それに、」
 セリアは、メガネのフレームを軽くもちあげた。
「二十四代目勇者様が訪れた天界に赴けるのは、私にとって幸運以外の何物でもありません。喜んで代役を務めます」

 マリーちゃんが、オレをセリアをみんなを見渡し、ほわっと微笑んだ。とても嬉しそうに……
「勇者さま、セリアさん、みなさま……ありがとう、ございます〜」
 そしてみんなに対し、印を切った。

「みなさまに、神の、ご加護が、あります、ように〜」
挿絵(By みてみん)
 マリーちゃんは、お師匠様の移動魔法で運ばれ聖修道院へと向かった。


 セリアは猛スピードで旅の支度を整え、従僕を交えてカトリーヌにあれこれ指示を出し始めた。王宮や要所組織から連絡があった場合の対応、物資の補充と受け取り、諜報員からあがってくる情報の整理等々。
「何で、私がそんな面倒な仕事をしなきゃいけないの?」
 女狩人は非常に不満そうだった。が、
「あなたしか居ないんです! 仕方ないでしょ!」
 と、セリアはドきっぱりと言い切った。そりゃ、そうだよなー あと居るのは、ニーナとパメラさんとルネさんだもんなー カトリーヌが一番、常識があるよなー
「オランジュ伯爵に頼めばいいじゃない!」
「アンヌ様はご多忙なのです! ご迷惑をおかけするわけにはいきません!」
 私だって迷惑よ! と、女狩人が叫ぶ。
「その上、金庫は私に預けないですって?」
「カトリーヌさんの浪費癖は存じております」
 ツーンとした顔でセリアが言う。
「金庫はオランジュ家のクレマンに預けます。必要経費は彼に請求してください」
 やってられないわ! と、カトリーヌがキーッと声をはりあげる。

 天界にあまり滞在しない方が良さそうだ。
 早いとこ、セリアをオランジュ伯爵家に帰そう……


 お師匠様が戻って来て、オレ、ジョゼ、サラ、セリア、イザベルさんは旅立つこととなった。全員、聖なる布とか護符を身につけている。

 お師匠様が、『勇者の書 24――フランソワ』を物質転送で、呼び寄せる。
 二十四代目勇者は、末っ子気質の美少年だったらしい。すぐに泣いて甘える、他力本願な奴だったそうだ。だが、彼は天界の住人にたいへん愛された。ちやほや甘やかされ、楽ちんな修行をつんで物凄く強くなったらしい。顔が良い勇者は、たいてい得してるよな……
 彼の書の裏表紙には、天界への魔法陣が記されている。

「それほど長い滞在はしない。数日で帰還する予定だ」と、お師匠様。

「早く還って来てくださいね、勇者様、賢者様……留守番役なんて、冗談じゃないわ」
《おにーちゃん、おねーちゃん、またねー》
「………」
「私の発明品はどれも最高です。使ってみてくださいねー」

 床に広がった魔法絹布の一番右端にあるのが、幻想世界への魔法陣。それから、精霊界、英雄世界、ジパング界への魔法陣が並んでいる。
 その左隣に、お師匠様は二十四代目勇者の書を置いた。

「いつもと同じように、私の呪文の後に続け」
 お師匠様は、『私の跡を継いで賢者となれ』と口にしなくなった。

 オレはお師匠様と額を合わせ、呪文を詠唱した。

 魔王戦の後に勇者は、よその世界に転移するか、不老不死の賢者となってこの世界に留まるかを決める。この世界に、一般人として残るって選択肢は無い。
 オレが賢者を継がずよその世界で暮らしても構わないと、お師匠様は思っているのだ。

『私を妻としてくださりませ』
 オレの事を慕ってくれた綺麗な女性の顔が、心に浮かんだ。
 ジパング界に転移してヨリミツと結婚しても、それなりに幸せな人生を送れるような気がする。

 だけど、オレは……
 この世界のみんなと別れたくない。
 なにより、お師匠様を不幸にしたくないんだ。

 生き残って賢者となる……それが一番正しい道だと思う。
 その為にも、天界で強い女性を仲間にしなきゃ。
 チュド〜ン無しで魔王に勝つんだ。


 魔王が目覚めるのは、四十八日後だ。


 そんなわけで、お師匠様が魔法で開いた魔法陣を通って、オレは仲間達と共に天界へと旅立って行った。
+注意+
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