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ハーレム100 作者:松宮星

英雄世界

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ジパング界へ

 魔法陣を通って実体化したオレに、澄ました声がかかってくる。
「おかえりなさい、勇者様、賢者様、みなさん」
 テーブルから立ち上がったセリアが、オレらにお辞儀をする。
「ご予定よりも早くの無事のご帰還、何よりです」
 オレの部屋に分厚い本やら書類やらを持ち込み、魔法陣が見える位置で書き物をしていたようだ。

「伺いたいことは山ほどありますが、まずはご休憩なさいますよね? お食事になさいますか、湯あみの準備をさせましょうか?」
「ああ……腹はへってるけど……」
「今、屋敷に誰か居るか?」と、お師匠様の質問。
「マリーさんはいらっしゃいます。ルネさんと占い師は自宅、パメラさんは獣使い屋、アナベラさん達は遺跡調査の旅です」
「わかった。全員、私が連れてこよう」
「今、ですか?」
 セリアの顔に緊張が走る。還って来るなり仲間全員を集めようとするお師匠様。何事かあると察したようだ。
「魔王戦の事で相談がある」
 セリアが表情をひきしめる。
「了解しました」
 お師匠様の姿がフッと消える。移動魔法で仲間達のもとへと向かったのだ。
 呼び鈴を鳴らし、セリアが駆けつけた従僕にあれこれ指示を出す。
「軽食を準備させます。サンドイッチとスープと果物でよろしいですか?」
 オレは頷き、テーブルについた。次元穴騒動やユナ先輩と出会ってのショックで、けっこうバテてるんだ。

 共に英雄世界に行ったサラ、ジョゼ、ニーナ、カトリーヌ。
 この世界に残っていた、セリア、マリーちゃん、イザベルさん、ルネさん、アナベラ、リーズ。
 皆を見渡し、パメラさんに背後から抱きつかれているお師匠様は静かに尋ねた。
「以上だ。何か質問はあるか?」

「英雄世界の人間は転移しても特殊能力を得ない……? 歴代勇者様達は勇者特典で強化されていただけ……だったのですか?」
 セリアの声は震えていた。
 対してお師匠様の声は淡々としている。抑揚のない声で事実のみを伝える。
「あくまで推測でしかないが、勇者を務めてもらう報償として神様が特殊能力を授けていたと思われる」
 英雄世界は、魔族もモンスターも盗賊も存在しない平和な世界だった。まあ、泥棒やスリはいるそうだけど。
 そんな世界出身じゃ、戦闘技術が低いのは当たり前。おまけで勇者特典でも与えなきゃ、英雄世界出身の勇者は魔王とまっとうにやりあえなかったんだろう。

「申し訳ありません!」
 ガタンと音がした。セリアがすごい勢いで立ちあがり、頭を深く下げたんだ。座っていた椅子が派手な音を立てて、床に倒れる。
「英雄世界を推薦したのは、私です! ()の地の人間ならば強力な味方となると思い込んでおりました! 1300万ダメージの損失は私の浅慮がもたらしたのです! たいへん申し訳ありません、勇者様!」

「いや、いいよ。セリアさんのせいだけじゃないから」
 オレは頬張っていたサンドイッチを急いで飲みこんだ。
「オレだって英雄界の人間は転移すりゃ強くなると思い込んでたし。『勇者の書』に神様から能力貰ったなんて記されてないんだから、みんな、勘違いするよ」

「しかし、総ダメージ1億が求められているのに、戦闘力ゼロの無能者を十三人も加えてしまっただなんて……私のせいです、ふさわしい謝罪の言葉すら思い浮かびません。すみません……」
 無能って……時々、セリアは表現がひどくなる。まあ、今は気が動転してるんだろうけど。
 セリアは頭を深々と下げたまま、動こうとしない。

「戦闘力ゼロの人ばっかじゃないよ、カンザキ ヤチヨさんは凄い霊能者だった」
 セリアを慰めようと、そっと優しく背に触れているマリーちゃん。
 ヤチヨさんは、マリーちゃんと同じく『マッハな方』を降ろしていた。ヤチヨさんは『神の一人』だと言っていた。どんな存在なのか気になってる。マリーちゃんに聞いてみたいけど、今はセリアを元気づけるのが先だ。

「婦警のハラ ミサキさんは多分戦闘力ある。それに、もと勇者のヤザキ ユナさんも居る」
「九十七代目様は言霊使いではありませんか。言霊使いは言葉を紡ぎ続けてこそ、本領が発揮できるのです。一撃で100万ダメージなど放てぬ方です」
 さすがセリア。勇者について正しい知識がある。

「英雄世界の住人の攻撃はゼロと仮定し、他で1300万ダメージを補完するのが無難だろう」と、お師匠様。

「『先制攻撃の法』を唱える私に加え十三人もアタッカーが減っただなんて……一人あたりのノルマは116万2791ダメージとなりました……」
「私、99万9999ダメしか出せないわよ」と、伝説の黄金弓を持つ狩人。
「では……1億から99万9999ダメージを減算し、アタッカー85人で等分すると……」
 いや、算数はいいから。

「頭あげてよ、セリアさん。謝るのはもういいから。オレを助けてくれ」
 セリアがのろのろと頭をあげる。興奮のせいか顔が赤くなっていた。が、泣いてはいなかった。

「強力な仲間が探せそうな世界は何処だと思う? オレはこれから何処へ行ってどんな仲間を得ればいい? 考えてくれ。オレも考えるから。何もかもセリアさんやお師匠様に丸投げするのは、やめる。一緒に頑張るから、セリアさんも今まで通り頑張ってくれ」

「私を……まだ頼ってくださるのですか?」
 セリアのブラウンの瞳がオレを見つめる。
「1300万ダメージもの損失を招いたのは私です。こんな大失態を犯した学者を、何故……まだ信頼するのです?」

「オレだっていっぱい失敗してきたけど」
 萌えちゃいけない者をいっぱい仲間にしてきた。
 お師匠様から教わった呪文を忘れた。
 精霊界でグズグズしちゃったのは、オレがいきあたりばったりだったからだ。
「セリアさん、見捨てずにオレを支えてくれてるじゃないか。同じだよ。1300万どっかで埋めるには、セリアさんの知識が必要なんだ。協力してくれ」
 オレは立ち上がり、セリアに対し頭を下げた。
「頼む」

「あなたは……本当に馬鹿ですね」
 顔をあげると、おっかない顔のセリアが見えた。眉を大きくしかめ、睨むようにきつい眼差しをオレに向けている。
「何故、私に頭を下げるのです? 無能な学者をあなたが責めるべき状況だというのに……あなたは……おかしい。理解できません」
 セリアはメガネを外し、目頭をおさえた。
「申し訳ありません……五分ほど退出します。別所で思考をまとめて参ります」

 廊下へと向かったセリアの後を、マリーちゃんが追う。

 二人が退出してから、アナベラが場ちがいなほど明るい声でのんびりと尋ねてきた。
「で、けっきょく、あたしはどんだけダメージを出せばいいの?」
 えっと……
「116万4706以上ね」
 サラが答える。筆算したみたいだ。
「待ってくれ。ニーナもアタッカー枠から外してくれ」
「じゃ、84で割ればいいのね……えっと……117万8572以上」
「わかったー」
 えへへと、アナベラが笑う。
「まかせて、勇者さまー あたし、ぜったい、それ以上のダメージを出す」
 そう言ってアナベラがパシン! と、左の二の腕を叩く。裸同然の胸が、ぷるんぷるんと揺れ動く。
「リーズのおかげでねー あたし、いい剣が手に入ったんだ。ちょー強くなったんだから、期待していいよぉ」
 ビキニアーマーには、布地も鎧部分もほとんどない……ああああ、あいかわらずステキな胸だ……再会できてうれしい……元気がでてきた……

「今んとこ、めぼしいお宝はオレとアナベラの武器ぐらい」
 頬杖をつきながら、リーズはサクランボをつまんでいる。
「あとは、微攻撃力アップみたいな、しょぼいアクセサリーを幾つか見つけた」
 種を器に吐きだし、リーズが笑う。
「今、東方の遺跡に向かってるんだ。どんなお宝が出てくるかは運次第。攻撃力がケタ違いに化けるお宝があるかもしんねーし、収穫ゼロかもしれない。当てにはしないで、覚えといて」

「勇者さま……今、水晶にはあなたの未来が映っているわ……」
 イザベルさんが占いを始めたようだ。テーブルに置いた水晶を撫でている。彼女の指を輝かせている八つの宝石には、八体の精霊が宿っているのだ。
「ますます茨の道になってしまったわね……魔王に勝利するのは、とても困難……でも、まだ、道は閉ざされていない……とても細いまがりくねった道だけれども……勝利に通じている道もあるわ……」
 おぉぉぉ!
 イザベルさんがそう言うのなら、そうなのだろう!
 まだ大丈夫。オレは負けない!

「勇者様、困ったなーという時には私です!」
 ガシャンコと音を立てながら、ロボットアーマーに身を包んだルネさんがオレの側まで歩いて来る。アーマーを装着すると乳牛並に重くなるんで、もともとルネさんは椅子に腰かけずにずっと立っていたんだ。
「どんな困難な状況も、私の発明品があれば大丈夫! 攻撃力ゼロの方でも、私の武器があれば戦えます! 英雄界のみなさまのことは、私にお任せください!」
「いい武器あるの?」
「これから完成させます」
 ぉい、ぉい。
「大丈夫です! 『最終兵器 ひかるくん』も『めがとんパンチ』もあとちょっとで完成だし、ドリルアームも開発中です! 英雄世界の情報をいただければ、新たなイメージで新たな発明品だって生み出せます! いいものが作れますよ!」
 絶対できる! と、確信を持ってるルネさん。発明品はちょっとアレだけど、その自信は頼もしい。
「爆発しないモノ作ってくれる?」
「自爆系の発明品は厳禁ですかー わかりました! 他に何かご希望はございますか? リクエスト承ります!」
 え?
 もしかして、自爆アイテムも作る気だった?
 うぅぅむ。
 ヤバそうなものは先に禁止しとかないとな、使用不可なモノ作られかねん。

 難しい話し合いは終わったと思ったのだろう、ピンクのクマを抱えたニーナがパメラさんのもとへ走る。動物好きのパメラさんに、貰ったクマのぬいぐるみを自慢したいようだ。
 パメラさんは、お師匠様の背中にべったりくっついている。そこを一番の安全地帯と思ってるんだろう。ひたすらカトリーヌから顔をそむけ、うつむいていた。
 が、ニーナが近づくと、ニーナには嬉しそうな笑みをみせる。久々に見ると、やっぱ……すっごい綺麗だなあと思う。神像のように完璧な美貌だ。ドラゴンのきぐるみ付きでなきゃ、最高なんだが。

 ノックの後、扉が開き、セリアとマリーちゃんが入室して来る。
 セリアは、ツンと澄ましたいつも通りの顔に戻っていた。マリーちゃんもほんわかした顔だ。
「勝手をいたしまして、申し訳ございませんでした」
 オレとお師匠様に頭を下げてから、セリアがテーブルにつく。

「次に勇者様が赴かれる世界……幾つか候補を考えてはおりますが」
 セリアさんがオレへと視線を向ける。
「まずは勇者様のお考えを伺おうかと存じます。勇者様は次にどの世界へ向かわれたいのでしょう?」

 へ?

 いきなり、振るなよ。
 そんなの、オレが考えてるわけないだろ?
 あ〜
 いやいや。丸投げはやめるんだった。自分でも考えなきゃ。

 全員の視線を感じる。
 オレは、今、めいっぱい注目されている。

 えっと……

「………」

 あ。

「ジパング界はどうだろ……?」
 侍と忍者が居る世界。
 英雄世界じゃなく余所で探してくれってカガリさんに言われた時、ふと思ったんだ。ジパング界なら、そのニジョブの達人級の人が見つかるんじゃないかって。

「ジパング界ですか……」
 セリアが、ジーッとオレを見る。
 学者的な鋭いまなざしだ。
 不機嫌そうな感じもする……怒ってるのか、セリア?
「……悪くない選択だと思います。ジパング界でしたら、戦闘力の高い人間が多いですし、事前準備なく赴けます。明日から旅立って何ら問題ありません」
 セリアはお師匠様にも意見を求める。ジャンの選択で良かろう、とお師匠様。

 決定……?

 ほんとに……?

 いいの、オレの選択で……?

「共に赴く者は……」
 お師匠様が仲間達を見渡す。

「遺跡探索中のリーズとアナベラ、武器開発に入るルネを除く者から選ぶ。ジパング界はあまり治安が良くない。あちらでは、争いごとを避けては通れまい」

「マリー、共に来てくれ」
「はい〜」
 ほのぼの聖女様が答える。危険を伴う場所じゃ、マリーちゃんの回復魔法は欠かせない。

「サラ、おまえもだ」
「はい」
 オレと一緒に旅する事が、サラの魔力増幅に繋がるらしい。

「ジョゼ。戦闘時には、仲間を守ってくれ」
「わかりました……」
 ジョゼのが声は小さい。元気が無いんだ。
『1300万の借金、どっかで取り返さないと、チュド〜ンだぞ』てなユナ先輩の言葉、どう理解しているんだろう?
 オレに自爆技があるってバレちまったんだろうか?

「それから、カトリーヌ」
 あらま。
 又、女狩人を連れてくの?
「人、獣、モンスター。あらゆるものと、おまえならば冷静に接する事ができる。情報収集及び戦闘での活躍を期待する」
 なるほど。向こうじゃ、戦いに巻き込まれる可能性(だい)。戦いもOKなのはパメラさんとカトリーヌだが、パメラさんは人間とまともに話せない。情報収集もできるって事でカトリーヌを選んだのか。
 カトリーヌは肩をすくめ、『わかりましわ、賢者様』とおどけるように答えてから、横目でチラリとオレを見る。
 何だかなあ……
 英雄世界でも、オレのことチラチラ見てたんだよな、カトリーヌ。言いたいことありゃ、はっきり言えばいいのに。


 今後の予定などを話し合ってから、解散となった。

 ドラゴンのきぐるみに抱きつかれたお師匠様は、アナベラとリーズを伴って移動魔法で消えた。宿泊先の宿屋まで送るのだそうだ。
「勇者さま、がんばってねー」とぷるんぷるんのぷりんぷりんはぶんぶんと手を振り、「これ以上変なのに萌えるなよー」と生意気盗賊は笑っていた。

 他の者は今夜は伯爵邸に泊まるようだ。

 ニーナはピンクのクマを抱え《アンヌに見せてくるー》と走り去って行った。クマを持ったままじゃ、透明になって飛んで行けないようだ。扉を開けて、普通に出て行った。
「私もおばあ様の所へ……」そう断ってから、ジョゼは席を立った。そして、
「勝ちましょうね……お兄さま……勝てばいいんですよね」
 と、去り際にオレに微笑んでいった。

「そーよ、勝ちましょうね!」とサラはオレの後頭部を軽く叩いてから、マリーちゃんのもとへと走って行った。そのまま二人で話しながら部屋を出て行った。何を話してるのかはよく聞こえなかったが。

 オレはルネさんにつかまっていた。
 英雄世界の仲間の情報、あちらの世界の文明、どんな機械があったか、質問責めされまくりだった。
 オレはルネさんを邪険にできなかった。英雄世界のみんなの武器を頼むってのもあるけど、それよりも何よりも……後ろめたかったんだ。

『そうですかー 『ルネ でらっくすⅢ』、まったく使われなかったんですか……残念です……英雄世界向けに『一九九×年トーキョー』爆弾や、『爆走 ローラー君』、『スパイ 大々々作戦』道具などを準備していたんですが……』

 ごめんよ。
 わざとじゃないんだ。
 あっちじゃ、蛇口ひねりゃ水出るし、どこもかしこも明るいし、移動方法には車があったし、戦闘には剣を使っちゃったし……
 ルネさんのあやしげな発明品を使わなくてもことは足りて……
 あ。
 いやいやいやいや!
 たまたま、そうなっただけです! ルネさんの発明品、オレ、頼りにしてます、ほんとです!
 精霊達を呼び出して、ルネさんの相手を手伝ってもらう。
 雷の精霊エクレールが、けっこうノリノリでルネさんに付き合っている。電気が関わるからか、メカものが好きなようだ。

 気づいたら、セリアは居なくなっていた。

 カトリーヌは、イザベルさんを誘い、部屋を出て行った。
 意外な組み合わせ。
 イザベルさんは、いつも通り「うふふ」と妖しく笑っていた。イザベルさんも、そっちの趣味あったの? 真実を見極めたかったんだが、
「自動照準機能を搭載しても、銃火器は婦警さんしか扱えなさそうですねー スイッチ一つでミサイル発射とか、リモコンロボットなら扱えるでしょうか? それから、言霊効果アップな次元フィールドも開発してみようと思うのですが……」
 発明イメージわきまくりの発明家が、意見を求め、オレを離してくれなかった。

 戻って来たお師匠様に『明日に備えて休め』と叱られるまで、オレはルネさんに付き合っていた。





 翌朝、仲間達はオレの部屋に集まった。
 旅の空の下のリーズとアナベラは居ない。
 パメラさんも来なかった。カトリーヌに会いたくないんだろうなあ。

 旅立つオレに、イザベルさんが「うふふ。勇者さまは今のままで、ステキですわ。そのまま仲間を信じて大切にすれば、必ず道は開けますわ」と、占いというよりは励ましの言葉を送ってくれた。
 イザベルさんはみんなに何かを囁いていた。特にカトリーヌとの会話は長かった。

《アンヌがねー 今日ねー クマさんのボーイフレンド買ってくれるって。約束したの。楽しみー》
 ピョンピョン飛び跳ねるニーナ。その腕は、ピンクのクマのぬいぐるみを大事そうに抱えている。
 ジョゼやサラやマリーちゃんは笑みを浮かべ、白い幽霊の話を聞いていた。

「勇者様、困ったなーという時にはこれです!」
 ルネさんが、いつもの通りオレの手にかなりデカい革袋を押しつける。
「私の発明品を詰めた、その名も『ルネ でらっくすⅣ』! ジパング界に合わせ新たな発明をしたかったんですが、時間がありませんでした! 今までのモノを詰め合わせた即席版です! ですが、あらゆる危機に対処できる、発明品を詰めておきました! きっと役に立ちます! 旅のお伴にどうぞ!」
「英雄世界の仲間の武器、よろしくね」と頼むと、
「任せてください! 簡単に扱える強力な武器を、作りだしてみせます!」との頼もしい答え。ルネさんはすごく生き生きとしている。

 対して、セリアは大人しい。
「セリアさん、次に何処行くか考えといてね。オレも考えてくるから」
「了解です」
 ツーンと澄ましたいつもの顔をしてはいる。けど、あんましゃべらないんだ。
「どっちが良い行き先を考えられるか勝負だ」
「了解です」
 ノリが悪い……
 うるさいのは嫌だけど、セリアがしゃきしゃきしてないと物足りない。
 オレは、わざとらしいほど明るい笑みをつくった。
「もしかしたら同じ候補地かもな。オレ達、気が合うから」
「は?」
「なかよしだし」
「……何をくだらぬことを」
 頬をちょっぴり赤く染めたセリアが、メガネのフレームを押し上げながら不機嫌そうに言う。
「どういう根拠をもって何故そんな発想をなさるのか、理由をお尋ねしたいところです。私と勇者様では、共通点がございません。気が合うわけないではありませんか」
 しゃべった、しゃべった♪ しゃべり始めると長い。うん、やっぱ、この方がセリアらしいや。

 お師匠様が、『勇者の書 39――カガミ マサタカ』を物質転送で、呼び寄せる。
 三十九代目勇者は精霊界で修行をつみ、八大精霊を全て仲間とした人。ジパング界出身の勇者なんだ。
 彼の書の裏表紙には、精霊界とジパング界、二つの世界への魔法陣が記されているのだ。

「それほど長い滞在はしない。一週間ほどで帰還する予定だ」と、お師匠様。

「了解です、どうぞお気をつけて」
《おにーちゃん、おねーちゃん、またねー》
「うふふ。より良い星がみなさんの頭上に輝くよう、お祈りしておりますわ」
「私の発明品はどれも最高です。使ってみてくださいねー」

 床に広がった魔法絹布の一番右端には幻想世界への魔法陣があり、その隣には精霊界、さらに隣には英雄世界への魔法陣が刻まれている。
 その左隣に、お師匠様は三十九代目勇者の書を置いた。

「いつもと同じように、私の呪文の後に続け」
 お師匠様のお馴染みのセリフ『私の跡を継いで』が無い。
 まあ、四回目だしな。
 呪文には定型文が多い。変わるのは赴く世界についての箇所だけなんで、そこさえ気をつけてればいい。もう間違えない。慣れた。

 額を合わせて、お師匠様と向き合う事にもだいぶ慣れた。
 とても綺麗だけど感情が浮かんでいない顔が、すぐそばにある。

 それでも、息がかかるとドキドキしてしまう。
 お師匠様の柔らかそうな唇は、すぐ近くにある。


 魔王が目覚めるのは、五十六日後だ。


 そんなわけで、お師匠様が魔法で開いた魔法陣を通って、オレは仲間達と共にジパング界へと旅立って行った。
+注意+
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