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ハーレム100 作者:松宮星

英雄世界

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年下の先輩     【矢崎 ユナ】(※)

 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと五十六〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 萌えてしまった……

 オレはもしかしたら……
 とんでもない勘違いをしてたのかもしれない。
 目の前の女子高生を見つめながら、そう思った。

 オレは萌えて、この子を仲間にした。
 女子高生三人目だ。

 と、なると、これは……
 赤ジャージ、セーラー服、ブレザーか!
 こずえさんとシオリさんは、女子高生と『いいんちょ』だと思っていたが!

 つまり、制服なわけ?
 制服の数だけ女子高生を仲間にできるってこと? 

 セーラー服といっても、夏服・冬服で趣が違うと『勇者の書』にあった。
 学校ごとにスカーフの色、校章、デザインは異なる。夏・冬の服で二人づつ女子高生を仲間としていったら、あっという間に女子高生100人ハーレムが完成、

《つくって、どーする!》
 後頭部にボカリと軽い刺激。
 ティーナか。
 アナムと一緒に抱えられてるせいか、サラに似てきたな。
 いきなりぶつなよ。
 精霊は主人に暴力はふるえない。が、さっきのはツッコミだったんでOKのようだ。

「ユナ」
 オレのすぐ横からの呼びかけ。
 女の子がぴくっと頭を揺らす。

「やはりユナか……」
 お師匠様がささっと進み、アウラさんの結界をつきぬけてしまう。
 姿をみせてしまったのだ、透明化してたのに。

 茶髪の女の子にしてみれば、目の前に、突然、人間が現れたようなもの。
 移動魔法で人が出現した感じだろうか。

 女の子がお師匠様を見上げる。
 白銀の髪、スミレ色の瞳、整った美しい顔。今はこちらの世界風に、黒のジャケットとシャツにズボン。男装風だ。
「やだ! もう、ウソ!」
 女の子ははじかれたように立ち上がり、お師匠様に抱きついて来た。
「オシショーさまーッ!」
 と、叫びながら。

 オシショーさま……?

 お師匠様が、その女子高生のおシショーさま?

「ここ来れば仲間に会えるかもと思ったけど、もう、ウソって感じ! ウレシー!」
 かわいい女の子が超美人のお師匠様に抱きつき、ピョンピョンしてるんだ。
 周囲からチラチラと注目を浴びる。
 今さら結界内に戻れないだろう。さっき結界からお師匠様が出たのも、唐突すぎたし。この女の子以外にも見た人いたかも。目の錯覚と思ってくれてればいいが。
 お師匠様は女子高生に静かに囁いた。
「どこか落ち着けるところで話がしたい。案内してくれるか?」
「おっけー」
 お師匠様が背後を振りむく。独り言を装いながら、姿の見えないオレらに対しポツリと言う。
「九十七代目 ヤザキ ユナ。私の教え子だ」
 そして、『行こ、行こ』とひっぱる女子高生に連れられてゆく。

 九十七代目勇者……?
 お師匠様が導いた最初の勇者だ。
 オレの四代前……
 言霊使い師の中学生。 
 女子高生じゃなくって、女子中学生だったのか? だから、萌えたのか?

 百年近く前の勇者なのに……

 まだ学生、まだ十代なのか。
 漫画家のランランさんの言う通りだ。英雄世界とオレらの世界は、時の流れが異なる。オレらの世界で百年近く経とうが、こちらでは数年? いや、数か月しか経ってないのか?


 移動している途中、お師匠様は彼女に大まかな説明をした。オレが百一代目なことも、仲間探しに英雄世界に来た事も伝えた。
「百日で女百人を仲間? 一人あたり100万ダメ? え? こっちで、あたし入れて十三人も仲間にした? 幼妻にOLに女子大生にメイド? て! ちょ! マジ? それヤバすぎない?」と、彼女は妙に興奮していた。


 九十七代目勇者が案内してくれたのは、マンションの合間の狭い児童公園だった。変な形のジャングルジムもどきの遊具が二つとベンチがあるだけ。遊んでる子は居ない。不人気な公園のようだ。
「……ま、座って。オシショーさま」
 一個しかないベンチに、女学生がお師匠様を誘う。
「アジトにつれてきたかったんだけど、事情が事情だし、パパッとした方がよさげ。ここで話そ」

 ここに着く前、狭い路地に入り、風の精霊アウラさんの結界は解いてもらっている。オレもジョゼもアウラさんも、今は姿を見せている。
 剣は鞘の上からタオルをぐるぐる巻いて、ショルダーバックに突っ込んである。柄が出ちゃってるけど、まあ、しょうがない。

 九十七代目はベンチの真ん中にさっさと座り、オレとお師匠様を手招きした。
 ジョゼとアオイさんは変な遊具によりかかり、こちらを見ている。
 精霊達は全員、宝石に戻した。けど、そこから話は聞いてもらっている。オレよりずーっと観察眼のある彼女らなら、大切な情報を聞きもらすまい。

 来る途中で『自動販売機』で買った『缶ジュース』を、もと勇者がオレとお師匠様に手渡した。
「時間あんまなさそーだけど、せめてカンパイしよっか」
「そうだな。おまえと再会できるとは私も思っていなかった」
「あたし消えてから何年?」
「……九十二年だ」
「そんなに……。じゃ、オーバンもダリウスもロラもポーラもみんな、もう……」
 もと勇者は、ほんの少し表情をくもらせた。だが、それは一瞬で消え、明るい笑みが甦る。
「ま、しょーがないか、あっちとこっちじゃ時の流れ違うしー」
 ん?
 英雄世界とオレらの世界は時の流れが同期してないって、知ってるのか。
 オレが尋ねるよりも前に、もと勇者はアオイさんとジョゼに話しかけていた。『ごめんねー ジュース二本しかない』と明るく謝る。アオイさんは気にしないでと手を振った。
『缶ジュース』を開けられないオレ達に代わって、彼女が口をあけてくれる。
「じゃ、再会と後輩との出あいを祝って。カンパーイ」
 もと勇者はカバンから出した飲みかけの『ペットボトル』を、オレらは『缶ジュース』を掲げそれから口に運んだんだが……

 衝撃が走った。

 口腔や舌にビリビリした痛み。
 慌てて口の中のモノを吐きだした。
 一気に飲もうとしたもんで、そこそこ盛大に。
 何だ、この刺すような刺激?
 毒?

「うける〜」
 女学生がケラケラ笑って、ティッシュを差し出して来る。
 受け取り、口元をおさえる。
「ガツンときたでしょ? 炭酸めちゃめちゃ強いの、それ」

 お師匠様は吐かなかった。けど、口元をおさえて、眉を微かにしかめ、目を細めていた。
 お?
 わずかだけど、表情がある。
 苦しそうだ。
 駆け寄って来たジョゼからハンカチを貰い、シュワシュワベタベタする黒い液体を拭き取りながら、オレはお師匠様を見つめていた。

「やったー」
 歓声があがる。
「やばい、ちょーかわいいオシショーさま!」
 九十七代目勇者はご機嫌だ。
「見ちゃったー オシショーさまの『うは〜』な顔! 無表情キャラ、壊したかったんだ〜♪」
 お師匠様が更に眉をしかめる。
「悪趣味な奴め」
 そして、教え子へと缶を差し出す。
「私の口には合わん。おまえが飲め」
「はーい」
 受け取った缶ジュースを、女学生がごくごくと飲む。
 よく飲めるな……
 オレと目が合い、もと勇者がニッと笑みを浮かべる。
「欲しい?」
 いやいやいや。
「ジョシコーセーとオシショーさまが飲んだのに? 間接キスできるよ?」

 間接キス……?

 一気にカーッときた。
 いやいやいやいや!
 お師匠様と、そんな。
 いや、先輩勇者とも、そんな。
 間接キスなんて!

 オレを見つめ、九十七代目勇者がケラケラ笑う。
「じゅんじょー! てか、やっぱ、向こうの人、やばい、かわいい! うけるぅ!」
 む。
「ごめん、ごめん。もうふざけない。ユルシテ」


「んじゃ、あらためて、自己紹介ね。九十七代目矢崎ユナ。あれからいっこ年くって、コーコーセーになりましたー よろしくー」
 一年しか経ってないのか、九十七代目が英雄世界に還ってから。
 この人は、九十二年前に活躍したオレの先輩だけど、今、十五、六歳。年下だ。何か変な感じ。
「百一代目勇者ジャンです」
「ジャン君、会えてうれしいよ」
「オレもです」

「けど……せっかく会えたのに、ちょー残念だけど、もと勇者として忠告したげる」
「はい」
「すぐに還れ」

 はい?

「留まれば留まるほど、キミ、チュド〜ンに近づくから」

 あ。
『チュド〜ン』はやめて。
 ジョゼ達は知らないから。オレに自爆魔法があること。内緒にしてるんだ。

 しかし、アイコンタクトは通じない。ユナ先輩はそのまま語り続ける。

「今、キミ、そうとうやばい。崖っぷち。チュド〜ン目の前」
 先輩、チュド〜ンは……
「この世界の一般人じゃ、魔王に100万ダメは無理だから。いって三ケタ、悪けりゃ一ケタだよ。ぶっちゃけ、キミ、1300万ダメージとりそこねたから。1300万の借金、どっかで取り返さないと、チュド〜ンだぞ」

 は?

「でも、英雄世界の人間はオレらの世界に来ると、すべからく英雄となって……」

「それはー、トリップしたからじゃなくってー」

 ん?

「悪い……話せない」
「どういうことだ?」と、お師匠様。ユナ先輩は視線を外した。

「それって、もしかして」
 知的女子大生のアオイさんが、鋭いまなざしでユナ先輩を見つめる。
「口止めされてる?」
 ユナ先輩は答えない。

「あなた……異世界で勇者やってもらう代わりに、チートとしか言いようのない特典を先に神様からもらったんでしょ?」
 え?
「主人公補正バリバリの最強技とか、高い戦闘技術とか、無敵能力とか、お約束なチート技を」
 ユナ先輩は口を閉ざしたままだ。首も動かさない。

「オレ、勇者だけど、そんないいもの貰ってませんよ」
 女の子百人強制仲間枠入りと、チュド〜ンと、『仲間や敵の、攻撃値と残りHPを見る』勇者(アイ)と、自動翻訳機能ぐらいだぞ。勇者のオレにある能力って。
「つまり、事前に超チート技をあげるのは、異世界勇者だけの特典。不平等なんで、勇者世界の者にバレたらブーイングされる。バラすなと、神様に脅されてるのね。ま、秘密をバラしたらその能力を無くすってな脅しも、セオリーよね」
 ユナ先輩は答えない。
 けど、その微妙な表情が全ての答えを表していた。

 英雄世界から来た歴代勇者達は……チート特典を持っていた……?
 だから、むちゃくちゃ強かった……?

 え?
 え? え? え?

 じゃあ、オレが仲間にした彼女達は……
 オレらの世界に来ても強くなんない……?

 そのまんまの実力……?

 一般人のまま……?

 普通の、幼妻にOLに女子大生にメイドに婦警に看護婦が、魔王戦に……?

 えぇぇぇ?

「だいじょーぶよ、勇者さん、ほら、霊能者の未亡人! 彼女、強そうじゃない!」
 パニくるオレをアオイさんが慰めてくれる。
 いや、そうだけど!
 でも、ヤチヨさん一人で1300万は無理でしょ!

「それに、ほら! 今そこに、もと勇者さまいるし! 勇者なら100万ダメ軽いでしょ?」
「悪い。あたし、そーゆう勇者じゃなくって」
 ユナ先輩が頬をポリポリと掻く。
「言霊使い師だったの」
 そうなのだ……
 九十七代目勇者は、魔王のつぶやいた『まがごと』を、言霊によってはねかえして戦った。
 災い転じて福と成す『ことかえ』が得意な勇者、ようするにディフェンス型。
 更に言えば、しゃべり続ける事で、じわじわと相手を弱まらせて戦う戦法。
 じわじわとボディーブローを叩きこんでゆくタイプ。一撃必殺や一発逆転とは、相容れぬ勇者なんだ……

「じゃ、女子高生! いいんちょ! 合気道家なんでしょ?」
 いや、駄目だ。魔王が幼馴染かもしれないんだ、シオリさんに攻撃は頼めない。
 それに…… 
 強い事は強いんだが……勇者(アイ)で見て知ってる。彼女のモップでの攻撃は600程度。槍に持ち替えたとしても、いって1000ぐらいなんじゃ……

 詰んだ……
 いろいろと……
 いろんな意味で詰んだ……

「この世界の者は我々の世界に来ても、現在の能力のまま。攻撃力は上昇しないのだな、ユナ?」
 お師匠様の問いに、ユナ先輩が頷く。

「そうか……」
 お師匠様がベンチから立ち上がる。
「ならば、おまえの言う通り、早々にこの世界から立ち去るべきだな」

 そう言ってからお師匠様が動く。
 背筋がすっと伸びた綺麗な姿勢。すみれ色の瞳が、まっすぐにオレを見つめる。

「すまない、ジャン。私はおまえに間違った助言をした」
 オレに対し頭を下げる。白銀の髪が揺れ動き、絹糸のようにさらさらと流れた。

「英雄世界におまえを導いたのは、誤りだった」
 えーっ!
「ちょ! やめてください、お師匠様!」
 慌ててオレは立ち上がった。

 お師匠様がオレに謝罪して頭を下げる?
 ありえないだろ、そんなの!
「この世界来たのはセリアさんの推薦だったし! オレ、何の疑いもなく来たし! というか何も考えてなかったし! 英雄世界の人間はみんなすごいんだって、オレだって思い込んでたし! お師匠様のせいだけじゃなくって! オレだって失敗しました!」

 お師匠様がゆっくりと頭をあげる。
 感情の浮かんでいない綺麗な顔が、そこにはあった。
「二度と誤らない。残り五十六人に強力な仲間を探そう」
 抑揚のない声で、だが、決意を込めてお師匠様が言う。
「この世界の住人は、魔王にダメージを与えられないものと考えておこう。1300万ダメージを他で補完した上で、この世界の者にも参戦してもらえばいい」

 お師匠様がオレと向かい合う。
 ほぼ同じくらいの背。
 白銀の髪に、印象的な瞳。
 お師匠様はいつも無表情で、感情的になる事はない。

「必ずおまえを正しい道に導いてやる」

 絶望感が、嘘のように消えてゆく。
 もう駄目だ、自爆魔法コースだ! って、さっきはあんなに慌てたのに……
 何とかなるような気がしてきた。
 お師匠様が何とかしてくれる。
 オレを死なせないと、そう言ってるんだから。

「オシショーさま、変ったねー」
 ユナ先輩の声。
 ベンチに座っているユナ先輩が、オレとお師匠様を見上げている。
「かわいくなった」

「かわいい……?」
 意外なことを聞いたというように、お師匠様が微かに眉をよせる。
 ユナ先輩がニッと笑う。
「いっしょーけんめいで、かわいい」

 お師匠様の表情がわずかに曇る。
「ユナ。おまえの師であった時、私には余裕がなかったのだ。不充分な指導だったと、悔やんでもいる」
「あ。ごめん。文句じゃないの。ウレシーだけ。氷みたいだったオシショーさまが、人間っぽくなったなーって」
 ユナ先輩が明るく笑う。

「新しい恋できた?」

……アタラシイ恋デキタ?

「まだ、そんなくだらぬことを……。私は賢者だ。勇者を勝利に導く為に、存在しているのだ。私的な感情など不要だ」
 新しいってことは、古いもあるわけで……
「まだそんなこと言ってるの? 九十二年経ったんでしょー? 死んだ恋人だって浮かばれないよ、オシショーさまがそれじゃ」
 死んだ恋人……
……フォーサイスか?
 勇者時代のお師匠様の相棒。
 魔王戦で亡くなったドラゴン。

 恋人……だったのか?

「ユナ」
「ごめん、ごめん、黙る。怒んないで」
「怒ってなどいない」
「ごめ〜ん。待って、座って。還る前にちょっとだけ、あたしにつきあって。三十分ぐらいでいいから。聞きたいことがあるの」
「聞きたいこと?」
「この世界出身の勇者の情報がほしいの。何代目に、どんな勇者が居たか教えて」

 ユナ先輩は説明した。
 英雄世界出身のもと勇者達は、互いに連絡を取り合い、扶助組織のようなものを作っているのだそうだ。さっき言ってた『アジト』も、勇者達のたまり場らしい。
 最初、オレがユナ先輩を見かけた時にひどく懐かしいって感じた。そんな風に『勇者は勇者がわかる』のだそうだ。
 神様から『勇者認定』の印を貰ってるからかもしれない、それで通じ合ってるのかもと、ユナ先輩は笑った。
「レーダー狭いんだ。何となく仲間が居そうってわかるの、半径1キロぐらい? で、誰だかは、ものすごく近寄らないとわかんない。さっきはさ、パトカーわんわんの学校があったから、ここかもって思って校門で張ってたわけ」

 仲間情報が欲しいのだとユナ先輩は言う。
「あたし、英雄世界からの十五人目なんでしょ? 昔、オシショーさま、教えてくれたよね? 今、メンバー八人なの。あと七人が誰だか知りたいんだ」
「知ってどうするのだ?」
「助けあったり、支えあったり、いろいろ。不思議な体験したんだもん。話せる仲間が欲しい」
 ユナ先輩がフーッと息を吐く。
「あたしもそーだけど、他のみんなもトリップしてから自分のことで手いっぱいで、歴代勇者の書なんか見てなかったし。どの代の何って人かもわかんなかったりして」

「この世界出身の勇者は、七、十一、十六、二十八、ニ十九、三十三、四十九、五十一、五十五、六十六、七十四、八十四、八十九、九十一、そして九十七代目のおまえだ、ユナ」
 淡々とお師匠様が教える。
 ユナ先輩は目を輝かせた。
「待って、今、メモとるー」 
 ユナ先輩もアオイさんみたいに、ケータイにメモを取り始める。
「もっかい言って。七と十一と……」

「ありがと。十一、二十八、五十一、五十五、六十六、八十四、八十九代目勇者のこと、教えて。名前・特徴・その後の消息わかる範囲で。あ、二十八はその後だけでいいから」
 その七人以外、メンバーになっているんだな。
 二十八と二十九は兄弟勇者だ。賢者となった兄は、賢者の役を終えた後に英雄世界に還らなかったのか。オレらの世界で亡くなったのか?

「七代目が存命とはな。千八百年以上も前の勇者だというのに」
「こっちとあっちは、時間の流れが違うもん。七代目、戻って来て十六年だって」
「たった十六年か……」
「もう高校生勇者じゃなくて、おっさんだけどね。OB会のリーダーなんだ」

 オレらの世界と英雄世界は、時の流れが違う。
 だから、オレの四代前の先輩は不老不死のお師匠様と、今、こうして話せているんだが。

 ユナ先輩と話すお師匠様。時々、知的なアオイさんがユナさんの説明不足を補ったり、推測を交えたりして、二人の情報のやり取りを横から手伝っている。

 オレはそんな三人をぼんやりと見つめていた。

 考えなきゃいけない事はいっぱいある。
 これからどの世界へ行くか、どんな仲間を増やすのか。
 1300万ダメージを肩代わりしてくれそうな伴侶って、どんなジョブだろう?
 お師匠様やセリアがあれこれ考えてくれるだろうが、自分のことなんだ、オレも考えなきゃ。
 みんなで最善の道を探すんだ。

 けど……

 いつも通り無表情なお師匠様。
 見ていると胸が苦しくなってくる。
 昔、お師匠様には好きな男性が居たんだ。


 魔王が目覚めるのは、五十七日後だ。


 オレの右手にそっとジョゼが手をそえてくる。
 義妹は淡く微笑んでいた。が、どこかせつなそうな、悲しそうな顔だった。

 聞きたいことがあるだろうに、義妹は何も言わない。

 オレも何も説明しない。
『チュド〜ン』のことも、今の心の内も。
 ただ、義妹の手を握り返した。


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№044)

名前 矢崎 ユナ
所属世界   英雄世界
種族     人間
職業     もと勇者
特徴     九十七代目勇者。
       お師匠様の最初の教え子。
       言霊使い。
       女子高生、ブレザー。
戦闘方法   言霊
年齢     十五か六。
容姿     茶髪のセミロング、
       つけまつげをしてて
       お化粧が濃い。
       素顔の方がかわいいと思うのだが。
       太ももが露わなミニスカート。
口癖    『やばい』『うける』『かわいい』
好きなもの  勇者仲間?
嫌いなもの  何だろ?
勇者に一言 『1300万の借金、どっかで取り
       返さないと、チュド〜ンだぞ』
挿絵(By みてみん)
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