挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ハーレム100 作者:松宮星

英雄世界

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

46/224

ご主人さま☆萌えっ♪【瑠那】(※)

 マドカさん家の、二日目。
 客用布団が片付けられ、広いリビングは再び面接会場となった。
 昨晩にひきつづき、今日も朝からカガリさん達の知り合いに会っている。

 コンビニ店員の次だった。
 運命の女性が現れたのは。

 リビングに入って来るなり、彼女はペコリと頭を下げたのだ。

「ただいま戻りました、ご主人さま」

 そこには……
 メイドさんがいた。
 左脇に銀の丸盆を抱えている。
 けど、黒いドレスはありえない短さで、ふわっと横に広がっている。フリフリのペチコート? 下着? が見えちゃってる。
 白いカチューシャ、白いフリルエプロン、そして……目にまぶしい白のレースつきニーハイソックス。

 おもむろに顔をあげた彼女は……
 肩までのストレートヘアーの……
 愛らしい女の子だった…… 


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと六十五〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 なんでメイドさんが……?
 つーか、スカート丈、短ッ!

 メイドさんがにっこりとほほ笑む。
「瑠那をご主人さまのモノにしてくださったんですね。ありがとうございます、ご主人さま。瑠那、愛情をこめてご主人さまにご奉仕いたしますね」

 な?
 なに?
 なにが?
 なにが起きてる?

 いきなりな告白をするメイドさん。
 頭の中は、パニックになった。
 てか、何、この夢の展開。
 仲間になった途端、愛情値マックスとか!
 何でオレ、そんな熱っぽい目で見てもらえるの?
 初めてじゃん、こんな美味しいの!

 仲間達も茫然としている。

「お側に寄ってもよろしいですか、ご主人さま?」

「ど、どうぞ……」
 心臓がバクバクいっている。
 彼女の一挙一動にみとれてしまう。
 ソファーに座るオレの側までやって来て、
「失礼いたします」
 メイドさんは床にひざまづき、銀の丸盆の下に隠していたモノを広げてオレへと差し出した。
「ご主人様、どうぞ。愛情いっぱいおしぼりでございます」
 広げた状態のおしぼりが、メイドさんから直に手渡しされる。

 オレのハートは、キュンキュンキュンキュンと鳴った……

 おぉぉぉぉ、なに、これ? どーしちゃったの、オレ? 何で、こんなに愛されてるの?

 戸惑うオレの背後で、女子大生のアオイさんが明るい声をたてて笑う。
「やっぱゴスロリ風味のメイドにして正解だったね、勇者さん、萌え萌えみたいよ」
 ゴスロリ風味……?

 アオイさんがちょっと意地の悪い顔で、オレに微笑みかける。
「瑠那はなりきり系レイヤーなのよ。趣味と実益をかねて、メイド喫茶でバイトしてるの。現役メイドよ」
 また知らない専門用語が出てきたぞ。
「あ、言っとくけど、お触り禁止よ。この世界では、メイドさんにエッチな事しちゃいけないんだから。メイド喫茶は雰囲気とおしゃべりを楽しむ所なの」
 喫茶店にメイド?
「ようするに、ウェイトレスよ。今、着てるのは喫茶店の制服なの」

「違うよ、セイちゃん、これは自前。うちの店のデザインに似せて、あたしが作ったの」
 メイドさんがまったく違う口調で、アオイさんに言う。『セイちゃん』?

「ペンネームはやめて。勇者さんが混乱しちゃう」
 アオイさんが笑う。

 メイドさんがオレに対し、とろけそうな笑顔を見せる。
「瑠那はお裁縫が大好きなのです。メイド服も、正統派ロングスカートからナース風まで八種類ございます。ネコ耳、ケモ手、ネコ尻尾、ご主人さまのリクエストに何でもお応えいたします」
 ほぉ。
「よろしかったら、他のメイド服もご覧にいれましょうか?」
「へぇー いろいろあるんだ」
「はい、ご主人様にお会いできると伺いましたので、スーツケースを持って参りました。とっておきの三着がござます」
「じゃ、他の……あ、いや、今は、いいや」
 オレは慌ててかぶりを振った。幼馴染やジョゼの視線が痛い事に気付いたからだ。鼻の下を伸ばしている暇があったら、やる事やっとかなきゃ。
 メイドさんはシュンとして、悲しそうにオレを見上げた。
「残念です。瑠那の別バージョンもご主人様にお見せしたかったのに……」
 う。
 媚びるような、責めるような、大きな目が何とも……ラブリー。
「では、メガネなどいかがですか? つけぼくろもございますよ?」

「遊んだげて」
 アオイさんがクスクス笑う。
「その子、可愛いって褒められるのが生きがいなの」
 はあ。
「異世界行きも、もう承諾済みよ。魔王の衣装が見たいんですって」
 へ?
「勇者さんの事情は私が後でちゃんと伝えておくから、ちょっとこの子のメイドごっこにつきあったげて」
 まあそういうことなら。

「じゃ、他のメイド服も見せてくれますか?」
「承りました。リクエストはございますか、ご主人様?」
 メイド服のリクエスト……?
 思い浮かばん。
「……ルナさんのお勧めで」
 ルナさんが満面の笑顔となる。顔立ちが子供っぽいから、無邪気な笑顔って感じ。
「少々、お待ちください。ご主人様にお喜びいただけるよう、瑠那、がんばります」

 メイドさんが廊下に消える。出口そばの部屋へと入って行くようだ。

 サラやジョゼどころか、マドカさんやカガリさんの視線も痛い。オレ、みっともないほどにデレデレだったのかな?
 オレは照れ隠しに咳ばらいをした。
「……お友達、あと何人ぐらい来る予定なんですか?」と、カガリさん達に尋ねてみた。

「あたしの知り合いは、あと一人です。スイミングのコーチです」と、カガリさん。今日はOL服じゃなくって、スーツ姿だ。
「アタシの友達は、もうおしまい」と、フリフリエプロンがかわいいマドカさん。
「私も連絡ついた子はあと一人。日曜だから、忙しい子、多くて」と、アオイさん。

「じゃ、その二人と会ったら、街を案内してもらえますか? いろんなジョブの女性に出会えそうな場所に行きたいんです」
 オレがそう言うと……
 マドカさんとカガリさんが、何とも言えぬ表情となった。
「勇者様、一行を、外へ、ご案内する……んですか?」
「しかも、人通りの激しい所へ……?」
 何となく嫌そうな感じ。

「勇者さん達、目立つのよ」と、アオイさん。
「この世界のファッションに合ってないの。マントはNGだし、ローブみたいなズルズル長い服、普通は着ないの」
 あらま。
「変は変でも、ま、格闘家と狩人はぎりぎりOKかな? 私的には一緒に歩きたくないけど。あ、武器は、外してね」
 武器?
「片手剣も弓も、狩人さんの腰のナイフも駄目。武器を持ち歩いていると、銃刀法違反で警察に逮捕されちゃうの」
 へぇー そうなのか。さすが、平和な世界。
 アオイさんに同意するように、マドカさんとカガリさんが頷いている。

「それから、そっちの魔法使いさん、」
 と、アオイさんはサラを指差した。
「その杖も外に持ってちゃ駄目」
 サラは、自分の右手の杖を改めて見直した。天才魔術師シャルロットちゃんから贈られた杖だ。杖頭のダイヤモンドが大きくて見事だ。
「そのてっぺんのヤツ、本物? そんな巨大なダイヤ、私達の世界じゃ滅多にないの。博物館収蔵クラスよ」
 いや、オレらの世界でも滅多にない大きさだよ。かなり高価なはず。お金持ちのシャルロットちゃんだからこそ、プレゼントに贈れたんだ。
「そんなの持ち歩いたら盗まれちゃうわ」
 え? 盗まれる?
「英雄世界には盗賊は居ないんでしょ?」
 オレの問いに、アオイさんが声をたてて笑う。
「ま、『盗賊』みたいな呼び方のは、居ないわねー このへんじゃ。でも、スリも泥棒もいっぱい居るわよ」
 そうなのか。法が発達した、治安の良い理想郷だって聞いていたんだが。

「外行くんなら、その格好、どうにかしなきゃね」
 アオイさんが、オレを上から下までジロジロ見る。
「マントを外したら、どうです?」
 それだけじゃ連れて歩くのは嫌だとばかりに、アオイさんがかぶりを振る。

 そんなら……
「マドカさん、旦那さんの服を貸してもらえませんか?」
「え?」
 幼妻のマドカさんが、顔をひきつらせる。
「ダーリンの服を……?」
 マドカさんと旦那さんの写真は、リビングの壁や棚にいっぱい飾られている。旦那さんは、多分、同じくらいの背格好だ。

 マドカさんは、口をわなわなと震わせている。
「で、でも……正孝さんの方が足が……もっとすらりと……」
 長いのか、くそ。
「多少、合わなくてもいいので、貸してもらえませんか?」

 しばらく口をパクパクさせてから、マドカさんは弱々しく微笑んだ。
「よろこ……んで……」
 そして、顔をバッと両手で覆って、シクシク泣きだす。
 駄目なんですか? って聞くと駄目じゃないと答えるし……マドカさんの感情の起伏はどうもよくわからない。

「着替えなんて、スウェット上下でいいんじゃない? 駅前の激安衣料店ででも買ってくれば」
 と、OLのカガリさんは言った。が、アオイさんは承知しない。
「そんなんじゃ、商店街ぐらいしか歩けないわ。みっともない男と電車に乗るのは嫌よ。まどちゃん、旦那様の服、借したげて」
「電車? 勇者さま達と〜?」
 カガリさんが大声を出す。
「常識ない……いや、この世界に慣れてない人に、電車は無理よ。車、出すわ」
「今日はそれでもいいけど、明日以降どうするのよ? 篝さん、仕事でしょ?」
 ん?
 仕事?

「明日からお仕事の予定なんですか?」
 オレがそう聞くと、カガリさんは顔をしかめ、頷いた。
「でも、あたし、勇者様のお仲間探しを手伝わないといけないので……コマンドが……」

「いや、いいですよ」
 オレは頭を横に振った。
「こちらの生活を大事にしてください。手伝いは、できる時だけで」

 オレがそう言ってから、しばらくすると……
 カガリさんの顔がパーッと明るくなった。
「『リアル優先。勇者の手伝いは余暇で』にコマンドが書き変わったわ!」
 オレの思考でどんどん変わるものなのか〜と感心してるそばで、『悪いわね、まどか』とカガリさんは快活に笑い、マドカさんは『ずるいずるい』とお姉さんをグーパンチでポコポコ殴っていた。

「失礼いたします」
 ノックの後、断って部屋に入って来たのは、黒髪を結いあげたメイドさんだった。長いスカートのすそを少しつまんで持ち上げて、お辞儀をする。
 メイドキャップが清楚な感じ。濃紺のロングスカートのワンピース、フリルで飾られた純白のエプロン……
 オレらの世界のメイドさんによく似ている。
 かわいらしさの中に慎みの窺える、メイドらしいメイドだ。

 オレのハートは、キュンキュンキュンキュンと鳴った……

「全然、違いますね」
 オレは、メイドさんをまじまじと見つめた。
 お化粧のせいだろうか、さっきまでの愛らしいルナさんとは別人のようだ。
「品があるっていうか……ベテランのハウスメイドのような落ち着きがあって……心がなごみます。あ、いや、さっきのメイドさんも超かわいかったです。大好きです。でも、今のルナさんも大人っぽくてステキです」
 ルナさんは目元に涼しげな笑みを浮かべた。
 不思議だ……すっごいお姉さんみたいだぞ……

「漏れ聞こえたのですが、お洋服にお困りのようですね。ご主人さま、ご衣装の事でしたら、わたくし瑠那は、お力になれるかと存じます」
 ルナさんは、やわらかに微笑んでいる。
「裾上げ、袖詰めでしたら数分でできますし……ここにいらっしゃるみなさまにぴったりのご衣装を短時間で見立ててくることもできます」
 おぉぉ。
「全員分の衣装の購入をお願いできます?」
「かしこまりました。ご主人さま、申し訳ございませんが、お財布をお貸しくださいますか? それから、荷物を運ぶのをどなたかに手伝っていただきたいのですが」

「マドカさん、お金とお手伝い、お願いできますか?」
 この世界の貨幣をオレらは持っていない。
 けど、滞在費として宝石袋をマドカさん達に渡している。アレで足りるはずだ。

「……わかりました、みなさんのご衣装の購入ですね。アタシがお金を払います……」
 マドカさんは、又、しくしくと泣いている。『ああああ、アタシって不幸!』とかつぶやいているし。買い物、行きたくないのかな?

「私もご一緒させてくださいな、若奥様」
 芝居ががった仕草でカトリーヌが、マドカさんにお辞儀をする。
「武器を置いていけば、私、外へ出られるのでしょ? 心をこめて若奥様のお手伝いをいたしますわ」
 そう言って、さりげなくマドカさんの両肩を背後から抱く。
 そうか……
 獲物を決めたんだな、カトリーヌ……
 まあ、無理やりじゃなきゃいいか……

「わ……私も、お手伝いしましょうか? 私も……外に出られるんですよね……?」
 ジョゼが積極的なんで、ちょっと驚いた。オレの側を離れて、『ほとんど知らない人』達と一緒に異世界の街へ行こうだなんて。内気で人見知りな自分を変えようと、頑張ってるんだな。
 ジョゼの肩には、今日も紫の小鳥がとまっている。ジョゼのしもべ、雷の精霊レイだ。

《あたしも行くー》と、ニーナ。暇をもてあましているようだ。
 ニーナはマズいだろう。真っ白だし半透明だし。
《姿、消せるよ。見えなくなればいい?》
 そう言うや、ニーナの姿がパッと消える。
 空気に溶け込んでしまったようだ。
 一度、消えるところを見てるけど、いきなりだと心臓に悪い。
 この世界の四人もびっくりしている。『大丈夫よ、若奥様』なんて言ってカトリーヌは、震えるマドカさんをほくほく顔で抱きしめている。慰めるふりして、けっこうサワサワしてるなあ。
《ほら、これならわかんないでしょ?》
 何処からともなく、得意そうなニーナの声がした。
 ソファーに座るオレ。その膝の上に何かがのっかってくる。首筋のあたりがぎゅっとされ、やわらかなものが抱きついてくる感触がした。
 ニーナに抱きつかれたんだ。でも、見えない。抱きつかれる前と、視界はまったく変わっていない。

「ジャン、装飾品に宿る精霊を呼び出し、三人の護衛につけろ」
 と、お師匠様。
「英雄世界は平和だが、事故はありうる。又、土地に不慣れなせいで帰還できなくなられても困る。皆、魔王戦に必要な戦力だ」
「だから、護衛の精霊をつけるんですね?」
「そうだ。どんなに離れていても、契約の絆は切れない。おまえが宝石に望めば、精霊はジョゼ達を瞬時におまえの元へと運ぶ事もできる。別行動をとる時には、仲間に精霊の護衛をつけるようにしろ」
 ほほう。精霊にそんな使い方があったのか。
 学ぶべきことは、まだまだいっぱいあるなあ。

 洋服の買い出しに行くんだから……呼び出すのはファッション好きな彼女がいいだろう。
 オレはホワイトオパールのブローチに、助力を願った。
「ルーチェさん、出てきてください」

 ふいに空が揺れ……
 真っ赤な髪を結いあげた少女が現れた。
 一瞬、間違えて違う精霊を呼び出したかと思ったよ。光の精霊ルーチェさんの七色ファッションの別バージョンだ。この前は金髪だった髪が赤くなってる。
 膝上の裾の広がったドレスは地は淡い緑で、青・藍・紫・黄の花が大胆に散ったフラワープリントだ。橙は何処だ、又、下着か?

《ご用は何でしょうか、勇者ジャン?》

 幽霊が消えるのにつづき、光の精霊が唐突に登場。この世界の皆が驚いている。
 マドカさんはもうパニック。キャーキャー叫んでカトリーヌに抱きついている。多分、女狩人にセクハラされてる事すら気づいていない。
 アオイさんは口元を覆って『本当に勇者だったのね……精霊使い? すごい』と感心してた。

 そして、ルナさんは……
 オレがルーチェさんに三人の護衛といざって時の緊急帰還を頼んでいる間、無言で光の精霊ルーチェさんを見つめていた。

 命じられた事を復唱した後、ルーチェさんは媚びるように微笑んだ。
《よろしければ、この格好について、ご意見をいただけますか?》
 精霊は心が読める。嘘をついてもしょうがない。正直に答えた。
「ちょっと奇抜だけど、ステキだと思います。虹色ファッションの別バージョン、よく似合ってますね」

「ご主人さま」
 ルナさんだ。オレに対し深々と頭を下げる。
「一度、下がらせていただきます。買い物に適した服に着替えて参ります」
 確かに、今のメイド服じゃ裾が長すぎる。着替えた方がいいだろうとは思った。

 だが、戻って来たルナさんは、何とも独特な格好をしていた。
 水色のミニのメイド服に、赤いリボン付き白とピンクのフリルのエプロン、白×黒のボーダー入りのニーハイソックス。黒ネコの耳をかたどったカチューシャをさした頭は、オレンジのショートヘアーのカツラになっていた。

 その格好はこの世界的にも奇抜らしく、アオイさんが
「なによ、その水色メイドは! 外に買い物に行くんでしょ! 着換えなさい!」
 と、怒鳴っていた。

 しかし、ルナさんは『いいのよ、これで』と言ってから、ズンとルーチェさんの前に立ち、両腕を組みフフンって感じに顎をしゃくる。
 光の精霊ルーチェさんは顔だけをルナさんの正面に向け、体を斜めとし、首筋で両手を交差させ、胸を張り、お尻をきゅっとつりあげた。体のラインがとても綺麗に見えるポーズとなって……にっこりと微笑んだんだ。
 すると、ルナさんは顎を引き、腰に手をそえ、可愛らしいエプロンを強調するようなポーズで、ルーチェさんを見下すような冷たい顔となる。

 見つめあったまま、次々にさまざまなポーズをとる二人。

 二人の間に、すごい緊張感が漂っている……

 ルーチェさんの七色ファッションが、ルナさんの何かを刺激してしまったのか……?

 買い物に行くんじゃなかったの……?
 つーか、この争い、どうやったら決着つくんだよ?
 どっちかが敗北を認めるまで、延々とやる気?

「あ……あの……」
 声をかけると、二人が一斉にオレへと顔を向ける。

「その……」
 二人は何も言わない。
 だが、目が雄弁に語っている。判定を下してくれ、と。

「えっと……二人ともステキだけど……」
 そんな答えじゃ駄目だと、二人がオレを睨む。

 何か言わなきゃ……
 う〜ん……

「ルナさん……エプロンやドレスもだけど、そのカチューシャ、可愛いね、黒ネコで……」

 ルーチェさんが眉をしかめ、ルナさんが得意そうに笑う。
 心読めるから、わかってるよね、ルーチェさん。オレ、二人ともすっごく良いって思ってるから! ルナさんの水色メイド服には何のコメントもしてなかったから! それで言っただけだから!
 そんなおっかない顔で睨まないでよ……
 ごめんよ……

 ルナさんは満足そうに微笑んでいた。が、オレと目が合うとぷいっと顔をむけた。
「別に、あんたなんかに褒められても嬉しくないんだからね。瑠那は、キモおた男なんか興味ないもん。ま、まぁ、どうしても見たいって言うんなら、瑠那のドレス姿、見せたげてもいいけど……見せるだけだからね、触ったら殺す!」

 こ、これは……
 ルナさんの水色メイド・バージョンは……
『勇者の書』で絶賛されていた、アレ!
 ツンデレメイドか!





 魔王が目覚めるのは、六十日後だ。

 ルナさん達は出かけた。

 ルナさんとルーチェさんの間には、火花が散りまくりだったけど。
『迷子にならないよう、若奥様のおそばに居させて』と、カトリーヌはマドカさんにくっついてたけど。
 ジョゼと手をつないだニーナは、透明になってたけど。

「あのまんま街に出るとか、もう最低……ま、瑠那が変すぎるから、狩人も格闘家も紛れるわよね……」
 と、アオイさん。
 オレはリビングから廊下の先を……皆が消えて行った玄関を見つめていた。

 何か、胸がもやもやする。
 出がけにジョゼは、肩の小鳥と話をしていたんだ。
『洋服にもなれる……? どんな格好も思いのままって……待って、レイちゃんを服として着るなんて、無理……そんな……恥ずかしい……』
 ジョゼは頬を染め、肩の小鳥……いや、小鳥に変化した雷の精霊から顔をそむけた。
 恥じらっている義妹は妙に大人びて見えて……オレの胸はズキンとした。

 雷の精霊の本当の姿は、雷そのもの。
 実体なんかない。
 性別も無い。

 だけど、雷の精霊レイとジョゼが一緒に居る姿を見ると……
 何か……すっきりしないんだ。


* * * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№035)

名前 ルナ(本名ではない)
所属世界   英雄世界
種族     人間
職業     メイドさん
       ウェイトレスらしい。
特徴     アオイさんの友達。
       お裁縫が得意。
       いろんな衣装を着て
       その役になりきるコスプレイヤー。
       メイド服は八種類あるそうだ。
戦闘方法   不明
年齢    『瑠那は永遠の十六歳で
       ございます、ご主人さま』
容姿     黒髪ストレートのセミロング。
       黒目の大きい童顔。
       だけどお化粧次第で
       大人っぽくなったりする。
口癖    『ご主人さま』
好きなもの  かわいいと言われること。
嫌いなもの  ファッション勝負で負けること。
勇者に一言 『瑠那、愛情をこめて
       ご主人さまにご奉仕いたしますね』
挿絵(By みてみん)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ