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ハーレム100 作者:松宮星

精霊界

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美少女は七色の光  【ルーチェ】(※)

 何事も気迫が大事だ、とサラは言った。
 思ってることを全面に押し出してアピールしろとも。

『積極的に攻めないで、どーすんのよ? 頑張りなさいよ! 相手任せで流されてる限り、萌えはこないわ!』

 昨晩、サラは切れた。
 今後のことを皆に相談している時、光界のあり方についてオレが愚痴をこぼしたせいだ。

 光界のしもべ探しは、完全に人任せ……正しく言えば、精霊任せだ。
 どんな精霊がどれぐらい欲しいかを神殿に希望を伝え、基準を満たすモノがいる場合には紹介してもらえるという……
 結婚情報サービスというか、結婚相談所的なシステムなんだ。
 つまり、神殿は、精霊支配者としもべ希望の精霊に、契約を前提とした出会いを提供し、出会いの調整から、お引合せ、交際から契約に到るまでのフォローなども含めたサービスを提供する場所なんだ。
 その係が、『導き手』。神殿中央に浮かぶ光の球だ。
 一見、でっかいボールなそれは、光の精霊の変化で、光界の公務員みたいなモノらしい。

 なんでそんなシステムになっているかというと、光界が過疎エリアだからだ。
 光の精霊は、昔っからどこの世界でも、魔法使いだけじゃなく聖職者にまで超人気。契約したがる異世界人が多すぎるんで、慢性的な人(精霊)不足に陥っているんだ。
 だから、神殿が出会いサービスをしているんだが……

 光は光でも紫外線しか制御できない精霊とか……
 光速に魅せられたスピード強とか……
 女性化するのを嫌がる、ボディビルダーな奴とか……
 会話すら成り立たない、壊れちゃった奴とか……
 光の精霊のくせに時代の最先端だと言いはって、邪悪な死人使いを目指してる奴とか……

 ろくでもない奴しか、紹介してもらえなかったんだ。
 氷・雷界のように戦闘があるのなら、工夫のしがいがある。けど、光界のしもべ探しは、導き手からの紹介待ち。人任せで待たされたあげくにハズレをあてがわされる、その繰り返しにはうんざりだ……そんな事をオレは言った。

 けど、それはオレが悪いとサラは言った。
『細かい条件を提示しない客が相手なんだもん、不良在庫を押しつけるのは当たり前じゃない。売れ残りつかまされたくなきゃ、きちんと希望を伝えればいいのよ』
 不良在庫。
 売れ残り。
 誰にも拾われず光界に残ってるんだ、問題ありな奴らが多くて当然。その通りなんだけど……なにげにサラはひどかった。

『光界に精霊が少ないだの、細かい条件をつけたら紹介してもらえないだの、遠慮してどーすんのよ! 心惹かれるからキュンキュンするわけでしょ? ゆるい条件で集めたって、あんたにとってそれなりの相手しか来ないわ。絶対、萌えられないわよ!』 

『命がけで、光の精霊探しをしてるんでしょ? 世界平和の為! アタシ達を魔王から守る為! 男のあんたが皆殺しの目に会わない為! やんなきゃ終わりなんだから、開きなおれ! 光界に挑戦状を叩きつけるぐらいの根性でいけ! 光の精霊はクズばっかじゃないって、オレに見せてみろ! オレが萌えられる奴を紹介しろってね!』

 神聖魔法が使える光の精霊は、魔王戦で大ダメージを出してくれるはず。
 是非とも、仲間に欲しい。

 ので、オレは攻めの姿勢に出ることにした。


《勇者ジャン……九回目の出会いを求めるのですね?》
 光の神殿中央に浮かぶ光の球……『導き手』にオレは頷きを返した。眩しいので目を細めながら。
 光界は神々しすぎて、ひたすら目に悪い。
 神殿外はもちろん、内の床や柱も白光に光り輝いている。だが、一番キラキラしているのは精霊だ。
 導き手も精霊なんで、ずっと見てるのはつらい。
 視覚的な防御壁が張られてるんで、目を痛める事はないはず。でも、眩しいものは眩しいんだ。
 導き手が、オレらの周囲に結界を張る。しもべ探しの間の導き手との会話は秘される。第三者に聞かせないのが、ここのルールなんだ。

 近くに、仲間達が居る。
 お師匠様は、いつもの無表情。マリーちゃんはニコニコしてる。イザベルさんもにこやかだ。
 サラはブスくれた顔で、紫の小鳥を肩にとまらせたジョゼは祈るように手を組み合わせてオレを見ている。
 会話が聞こえなくなるとわかってるのに、皆、注目してくれているんだ。応援してくれる気持ちが嬉しい。

《私が手助けできるのは、今回を含めあと四回です。ご自覚の上、ご利用ください》
 その言葉に対しても、オレは頷きを返した。
 導き手は、異世界人の希望に合致する精霊を紹介してくれる。
 けど、利用は十二回まで。その回数を過ぎたら、縁が無かったと諦め、光界を去るのがルールなんだ。
 とはいえ、精霊界にとどまれる日数は今日を含め三日。もう潮時だ。今日、駄目だったら、オレは光界で仲間を増やすのはあきらめ、闇界へ行く。

 希望をちゃんと伝えずナニな精霊を紹介されるぐらいなら……
 この最後のチャンスに夢を叩きつけるべきだろう。

「希望する精霊は、魔王に100万ダメージ以上を出せる萌えな精霊です!」

《萌え……?》
 導き手は、ピカピカと光を明滅させた。

《あなたの希望が抽象的すぎてわかりません。心を見ても『萌え』とは何かの定義がなされていません》
 そりゃそうだ。萌えは理屈じゃない、心で感じるものだ。

「精霊相手に萌えられる可能性は二つ! 変化時の外見! 或いは内面です!」

《変化時の外見と内面……》
 導き手が、再びピカピカと光を明滅させた。
《あなたの好みの外見となり、あなた好みの言動をとれる者という事ですね?》

「違います! それは模倣だ! 萌えじゃありません!」
 導き手の明滅が消えない。オレの頭の中が理解できないようだ。

「オレはどっちかというと綺麗系が好きです! でも、可愛い子も好きだし、幼く見える顔立ちでもオッケェ! ネコ耳、メガネ、ツインテール、姫パッツン、オールオーケー! こだわり無し! 髪型や服装は何でもいいです! その子に似合ってれば、奇抜でも構いません! 決まった外見に、萌えてるんじゃないんです!」

「見た目だけでキュンキュンしちゃう事もあります! でも、見た目+内面なんです! プラスアルファーなんです! その子独特の世界ができてるからこそ、萌えるんです!」

「たとえば! オレは巨乳が好きです! だけど、ちっちゃくても萌えます! 貧乳の子が巨乳に囲まれてやるせなさそうに恥じらう姿なんか、ちょー好き。キュンキュンきちゃいます!」

「萌えというのは瞬間加速度的に訪れることもあります! たとえば、うつむいた時のうなじ! 手を振った時の二の腕! ミニなスカートから見える白い太もも! ぷるんと揺れる胸! ぷりりんとしたお尻! サンダルを脱ぐ時に片っぽだけあげた足! 椅子に座って、ゆったりと組んだ足! その時その時の状況と相手によって萌えは変わるんです! わかりますか?」

 導き手のチカチカが止まらない。
 オレの心を読めるくせに、何でわかってくれないのか。
 いや、この場合、共感してもらってないって言うべきか。
「異性への萌え! かわいいものへの萌え! 格好いいものへの萌え! 憧れへの萌え! 未知なるものへの萌え! 萌えツボは、いろんなものに反応します! キャラクターさえしっかりしてれば、萌えは存在するんですよ! 子供でもウサギでもクマでも髭でも馬でも、オレは萌えられます!」

《キャラクター……》

「おとなしい子も、陽気な子も、真面目な子も、勝気な子も、ちょっと意地悪な子も、妖しい子も、みんな好きです! その子らしい魅力があれば、萌えは存在するんです!」

《あなたの言葉は曖昧すぎます。このままでは、しもべ募集をかけられません》

「誰も来ないなら、それはそれでいいです!」
 オレは拳を握り締めた。
「全力で突き進んで、現実という壁につきあたって玉砕するんなら、それも運命! オレは女の子を100人集めて魔王を倒す勇者です! 世界を救う為にナンパしてるんです! 萌えられなきゃ、オレ達の世界は終わりなんです! 萌える為に、妥協はしません!」

 ピカピカ光っていた導き手の点滅が、止まった。

《萌える為に妥協はしない……なるほど、わかりました。納得はできませんが、それがあなたの生き方と理解しました》
 しもべ募集にのっからなきゃ、光の精霊に会う事すらできないんで、システムを利用させてもらってるけど、しもべが欲しいわけじゃない。伴侶が欲しいんだ。萌えられなきゃ、光の精霊を探す意味がない。
《あなたの希望に応えられるか、少し検討してみましょう》

 光の神殿中央に浮かぶ光の球……『導き手』の光が弱まる。まばゆいばかりだった輝きが、淡いものとなる。
 ここ数日の経験からわかる。この状態の時は、話しかけても導き手は返事をしない。同朋達に募集をかけ契約の場をセッティングするのに、忙しいのだろう。こっちの様子を覗いてはいるようだけど。

 しもべ希望者は来てくれるのか?
 来てくれた子に萌えられるのか?
 うまくいかないかもしれないけど、やる事はやった。
 サラの助言通りにして、すっきりした。
 光界に来てから、何もできなくってイライラしてたんだ。
 やるだけやって駄目だったんなら、しょうがない。
 スパッと気持ちを切り替えて、闇界に行くさ。
 結界外のサラと目が合ったんで、笑いかけた。
 サラがグッと拳を握ってみせた。まだ仲間が決まったわけじゃない、最後まで気を抜くな、気迫負けするなよってとこだろう。
 オレもサラに対し、握った拳を見せた。わかった! って伝えたくて。

 ふいに空が揺れ……
 オレの目の前には、大きい紫のリボンを頭につけたブロンドの美少女が現れた。透きとおる白い肌、やや目尻の下がった可愛らしい緑の瞳、可憐な赤い唇。素直そうな愛らしい顔をしている。
 すっごくかわいい。
 白っぽくないけど、光の精霊……なのか?
 ピンクのフリルのドレスがぴったりなかわいさなのに、身にまとっているのは青のバルーンミニドレスだった。
 けど、似合ってないわけじゃない。
 青系でまとめたファッションは、ちょっぴり大人っぽく背のびをしてみましたって感じ。
「君、魔王に100万以上のダメージを出せる精霊なの?」
 ドキドキしながら尋ねると、少女はにっこりと微笑んだ。
 笑うと、えくぼができる。
 こっくりと頷く仕草が、あどけない。
 とてもとても、かわいらしかった……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと七十〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 光の精霊ゲット?
 こんな簡単に?
 信じられない。

《あなたのこだわりは理解できませんが、魔王戦に全てをかける熱意は伝わりました》
 導き手は、まばゆさを取り戻していない。光は鈍いままだ。なのに声が聞こえる。
《私にとって、あなたは興味深い存在です。上司にかけあい、休暇をもらいました。魔王討伐までの六十五日でよろしければ、私があなたをサポートいたしましょう》
 そう言って少女が、にっこりと笑う。
「もしかして……君は導き手さん?」
 少女が肩をすくめる。
《導き手は役職名です。ルーチェと呼んでください。光系攻撃魔法・浄化魔法・治癒魔法・移動魔法・弱体魔法・強化魔法など一通りの魔法は使えます》
 おぉぉ!

《私、萌え対象になります?》
 と、聞かれたので、素直に『萌えた』と答えた。
 ドレスがお洒落と褒めたら、ルーチェさんは嬉しそうに教えてくれた。
 白光には虹色が含まれている。その美をルーチェさんはずっと愛でてきたんだけど、光(イコール)神聖(イコール)白が仲間にも異世界人にも定着しすぎていて、自分のファッションセンスは理解されなかったんだと。
《六十五日、好きなファッションで過ごしてもよろしいでしょうか?》
 似合うなら何でもいいよって答えた。女の人が綺麗でかわいければ、それだけで、オレ、幸せな気分になれるし。
《そのおおざっぱさが、あなたの一番の美点に思えます》
 そう言って、光の精霊はコロコロと笑った。





 オレが光の精霊を仲間にできたんで、みんな喜んでくれた。 

 サラは「とりあえず、おめでと。けど、これからは、勝手に萌えてちょうだい。あんたの彼女選びの手伝いなんて、もうこりごりだから」と、毒づきながら祝福してくれた。
「ナンパしなきゃ魔王に勝てないから、しょうがないけど……アタシ、ナンパ男って大嫌いなの! もっとしっかりしてよね! さっさと百人集めて、魔王を倒してちょうだい!」
 そう言ってぷいっと顔をそむけ、サラは離れて行ってしまった。
 なんか……
 昔より、怒りっぽくなったような……?
 そう言うと、ジョゼは困ったような顔でオレを見つめた。
「仕方ないと思います……」
 そう?
「お兄さまがいろんな方達と仲良くするのを、横で見ているんですもの……」
 ん?
「サラさんの言うとおり……早く百人を集めて、魔王を倒しましょう、お兄さま……」
 オレは、義妹に頷きを返した。

 ホワイト・オパールのブローチを、契約の証とした。
 イザベルさん曰く、ホワイト・オパールは、角度によってさまざまな色に輝く、虹色の石なのだそうだ。潔白・友情・真実を表し、自由や自分らしさを引き出す宝石なのだそうだ。ルーチェさんにぴったりだ。


 魔王が目覚めるのは、六十五日後だ。


「イザベルさん〜 お願いが、あるのです〜」
 マリーちゃんがニコニコ笑いながら、イザベルさんに手を合わせる。
「闇界に、滞在の間〜 マタンさんに結界を、張って、もらいたいんです〜 私、その中で、暮らしたいんです〜」
 マタンというのはイザベルさんが、光界に滞在中にゲットした光の精霊だ。オレと違ってたった一回のお見合いで主従契約を結ぶに至っている。
 今、マタンはイザベルさんの右手の三の指に宿っている。正しくは、ダイヤモンドの指輪にだが。
「闇の精霊の、全てが、そうだとは、言いませんが、中には、邪悪な性質の方も、いらっしゃいます〜 神殿に一緒に滞在する異世界人の中にも、善じゃない方、いらっしゃると、思うんです〜」
 まあ、闇使いで悪魔崇拝者とかいるよな、普通に。
「私〜 邪悪な存在に出逢うと、人格が、変わってしまって〜」
 あ。
「『マッハな方』は、邪悪を、駆逐しきるまで、私から、離れません〜 あの方、見境なしなので〜 闇精霊を、浄化しまくったり、異世界人を、殺したり、しそうで〜」
 う。
「聖なる結界の内で、邪悪と対峙せずに、いたいんです〜 清らかな、ものの中に、いれば、あの方、降りてこないので〜」
「イザベル、マリーの言う通りにしてくれ。私からも頼む」
 お師匠様も、イザベルさんに頭を下げた。いつも通りの無表情だけど、ちょっぴり憂いを含んだような顔。
 オレからも、イザベルさんにお願いしといた。
『マッハな方』が大暴れしたら、仲間探しどころじゃなくなる。オレら闇界から追い出されかねないもんな。

 導き手用の光球に新たに宿った光の精霊に、ルーチェさんが業務引き継ぎをする。
 それが終了したら、次の闇界へと行くのだ。

 精霊界の最長滞在は二十日の予定。
 残りは闇エリアのみとなった。
 しかし、闇エリアも光エリア同様、過疎地らしい。闇の宗教が闇精霊を欲しがるからか……

 あと二日しかないけど、頑張って闇の精霊を仲間にしよう。


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№030)

名前 ルーチェ
所属世界   精霊界内の光界
種族     光の精霊
職業     光の精霊
戦闘能力   絶対、強い。
戦法     光でピカピカーン。
留意すべき点 闇に弱い
職業の説明  光を司る
特徴     光の神殿で導き手の役職についていた。
       かなり実力の高い精霊と思われる。
       休暇中、オレのしもべになってくれる。
       虹色(赤、橙、黄、緑、青、藍、紫)が
       大好き。ファッションには拘りがある。
       性格は真面目。
年齢     しもべ経験はありそう。
容姿     本体は光。いろんな姿に変化できる。
       人型になると、虹色になる。
       出逢った時の姿は、リボンは紫、髪は黄色、
       目は緑、唇は赤、ドレスと靴は青と藍。
       何処がオレンジ? って聞いたら
       下着との答えだった……
       七色ファッションの他バージョンも
       あるらしい。どんなんだろ?
口癖    『よろしければ』
好きなもの  虹色のファッション
嫌いなもの  ファッションを理解してもらえない事。
勇者に一言 『あなたをサポートいたしましょう』

挿絵(By みてみん)
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