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ハーレム100 作者:松宮星

精霊界

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気ままな風と共に  【アウラ】(※)

《おにーさん、あたしと遊ばない?》

 目の前に、突然、綺麗な女の人が現れた。
 疾風と共に。

 風をはらみ宙を舞っているのは、短い緑の髪と薄緑色のベールだ。
 細く長いベールを何枚も体に巻き、その両端を垂らしているのだ。
 身にまとっているのは、半透明な薄緑色のベールだけだった……
 ヒラヒラと薄手のベールの端が、宙を舞う。
 胸に腰に腿に巻きついた薄布。
 その合間から、素肌が見える。
 ほっそりとして、しなやかで……それでいて弾けるような若々しさのある体が……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと七十四〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 はや。

 オレもお師匠様も仲間達も、あっけにとられてしまった。

 風の神殿に出現してからわずか数十秒で、オレは風の精霊を手に入れたのだ。
 炎界じゃ二日、水界じゃ五日かかったってのに!

《即断即決! 素敵よ、おにーさん》
 ケラケラ笑っていた風の精霊が突然まじめな顔で膝をついて頭を垂れ、オレに挨拶をする。
《アウラです。しもべになるのは、六度目にございます。心をこめて精霊支配者様にお仕えいたします、どうぞご寵愛くださいませ》
 しもべ経験豊富なベテランなのか。挨拶も堂に入っている。

 しかし……

 アウラさんの周囲に、何枚ものベールの端がふよふよと浮かぶ。
 脱げそで脱げない。
 落ちそで落ちない。
 風の精霊だけあって、薄絹のベールをうまいこと風に舞わせ、大切な部分をきっちり隠している。

 ベール、邪魔。

 綺麗な肌だ。
 腰がきゅっとくびれてて、スタイルいいなあ……
 でも、あんま大きくなさそうだ……
 どっか〜んな方が好きなんだけど、ちっちゃいのも、まあ、それはそれで……

 膝をついていたアウラさんが、顔をあげる。

 厚い唇が、お色気たっぷりに笑う。

《エッチ》

 う。

 しまった!
 精霊は人間の心が読めるんだった!

 切れ長の瞳を細め、アウラさんが立ちあがる。
《ご命令とあらば、脱いであげるわよぉ、おにーさん……》

 そして、優美な仕草で、肩にかかっていたベールを一枚、ふぁさぁっと外した。
 彼女の足元へと、薄緑色のベールが落ちてゆく。
 アウラさんの手が次にお腹に巻きついていたベールへと向かう……腰をくいっくいっと突きだすようにくねらせ、二枚目のベールも剥がしてゆく……

 こ、これは……
 もしや……
 ストリップ……というやつでは……

 オレのハートは、キュンキュンキュンキュン! と鳴った……
 鳴り響いた!

 んだが……

「駄目です、アウラさん、こんな所で!」
 慌てて止めようとしたオレは、
余所(よそ)でならいいのかッ、馬鹿ッ!」
 と、暴力魔術師に背後から杖でぶん殴られた……

 サラの他にも、お師匠様もジョゼもマリーちゃんもイザベルさんも居るし、炎の精霊ティーナも水の精霊マーイさんも見守ってるんだ。
 ストリップはマズいでしょ。
 てか、オレがだらしなく鼻の下をのばすのがマズい!

 アウラさんが三枚目のベールも外してしまう……

《恥ずかしがらなくてもいいのよ……全部、見せたげる》
 え、あ、あの……
《見たいんでしょ?》
 いや、あの、それは……
 ものすごく……
 でも!
「駄目です! やめてください!」

 アウラさんが、ケラケラと笑う。
《見たくないなら目をつぶればいいのよ》

 断言する!
 オレは、絶対、見る!
 目をつむっても、絶対、薄目を開けちゃう!
 両手で顔を覆っても、絶対、指の間から見ようとする!
 だって、誘惑に弱いから!

 魅惑的な裸があったら無視できるはずがない!

 見たら『スケベ』の烙印を押されるとわかっていても……
 女性陣から総スカンをくらいかねんとわかっていても……

 本能のままにオレは見てしまうだろう!

《残り……一気にいくわよ……》
 アウラさんが両手を交差させる。残りのベールは五枚。だけど、風の精霊なんだ。思いのままに、外せちゃうはず。

 彼女のかけ声と共に、風が動く。全ての布が落ちてゆく……

 そうとわかったから、オレは背を向けた。

 背中を向けりゃ見えない! 

 後ろがすっごく気になるけど……

 振り返りたくってたまらないけど……

 我慢だ……

 ぬいぐまを抱っこしてるサラと目が合う。鼻のあたりを赤くしたサラが、フンと鼻息も荒くオレから顔をそむける。拗ねた時の顔だ、本気では怒ってなさそうな。良かった……
 ジョゼは驚いた顔でオレの背の向こう……アウラさんを見ていた。が、すぐにオレへと顔を向け、照れたように弱々しく笑った。
 お師匠様はいつもの無表情。
 マリーちゃんは、ほんわか顔。
 イザベルさんは、うふふと笑ってるだけだ。

 とりあえず、オレ……好感度マイナスだけは避けられた……?

《やせ我慢しちゃって、かわいい》
 ケラケラとアウラさんが笑う。

《ご褒美あ・げ・る。見せたげるわね、おにーさん》
 アウラさんが右から回り込もうとしたんで、オレは急いで目を閉じうつむいて体を左回りさせた。
「いいです」
《見ないと後悔するわよ》
「後悔してもいいです、見ません」
 オレは内なる獣に抗い、理性をもって答えたんだが……

「目を開け、風の精霊を見ておけ」
 お師匠様が淡々とした声で言う。
「実際に目にすれば勉強になるぞ」
 えぇ?
 勉強って……そんな……お師匠様……

「見とけば?」
 つっけんどんな声でサラ。
「あんたの大好きな巨大胸はないけど、それなりには楽しいんじゃない?」
 それなり……って、どんぐらいだろ……

 いや。
 待て。

 サラが許すなんて……
 ありえない!
 おかしいだろ、絶対!

 オレはカッ! と、目を見開き……

 ああ、やっぱり……と、うなだれた。

 覚悟して見たからダメージは少なかったけどね……

「風の精霊は 空気の屈折率を変える事ができる」
 お師匠様の解説を耳にしながら、オレはアウラさんを見つめた。
 アウラさんは、一糸まとわぬ姿になっている。
 しかし……
 のびのびとした手足、細い首、いたずらっぽい笑みを浮かべている顔、風もないのに靡く髪……
 見えるのはそのぐらいだ。

 体があるべき場所には、何もなかった。
 体が透明になっているんだ。
 首から上と両手が宙に浮かび、足首から膝までが床に立っている……ようにしか見えない。
 空気の屈折率を変え、目に偽りの映像を見せているんだ。

《一部だけではなく、全身を透明にする事もできるわ。それに、こういう事もね》
 アウラさんが右手を振るうと、オレの左手だけが透明になった。
 だけど、動かせるし、右手で触れてみると触れた感触も触れられた感触もあった。

 アウラさんの左手の一振るいで、オレの手はもとどおりとなった。
《風の精霊には風を自在に操る力の他に、ご主人様、及び、ご主人様が触れているものを透明にする力がございます。必要な時は、いつでもご命じください》
 しもべモードになって、アウラさんがオレへと頭を下げる。
 しかし、その顔にはじきに悪だくみをする子供のような笑みが刻まれた。
《着替え中の女の子も、お風呂も、寝室も覗き放題よ〜 いつでも命じてね〜》

 しません!
 てか、できません!
 暴力魔術師が杖を片手に、オレを睨んでますから!





 風界でしもべ探しをしたいとイザベルさんが願ったんで、オレらは風の神殿にとどまった。
「滞在時間は一時間だけ。私に興味のある方はいらっしゃ〜い、って呼びかけてみるわ」
 と、イザベルさんはうふふと笑った。
 造りは炎や水の神殿とまったく同じだけど、風の神殿は柱も天井も床も全てが緑だった。
 そして、神殿の外は何もなかった。何処かに光源があるのか明るい事は明るいんだが、太陽も雲も大地も海も無く……空気があるだけの空間を、ゴーゴー、ピューピュー風が吹いているだけなんだ。

 待ってる間、オレらはアウラさんからしもべ体験を聞いた。
 ティーナもマーイさんもオレが初めての主人なので、興味津々って感じ。
 ティーナはクマのぬいぐるみの首を飾るチョーカーの飾りに宿っていて、マーイさんは黒の仮面をつけた人型になってる。

 アウラさんが仕えてきた主人は、五人。
 主人ごとに仕え方は違ったそうだ。
 一人目の時。普段、風界に暮らし、召喚がかかった時だけ主人のもとへ飛んでいった。
 二人目の時。主人の側でネコに変化して暮らしていた。
 三人目の時。女召使になって、主人の私生活まで面倒をみた。
 四人目の時。主人の体内に宿って、魔力の一部となっていた。
 五人目の時。契約の証だけ貰って、あとはフラフラさせてもらった。
 主人達が老衰で亡くなるまで忠実に仕え、主人達とさまざまな世界を旅したらしい。
 どんな形での奉仕が欲しい? って聞かれたから、好きなのでいいよと答えといた。
 アウラさんは、五人目のパターンを選んだ。

《精霊界は居心地がいいけど、何の変化もない場所だもの。退屈なのよ。主人を無くす度に、すぐに新しい主人を探してきたわ》
 誰でもいいから声をかけてたのだ、とアウラさんは笑った。
 オレは、たまたま、タイミング良くやって来ただけらしい。
 そんな理由か……ちょっと残念。

《でもないわよ。覗いてみて心が醜いとわかったら、本契約前に逃げてるから。おにーさんはスケベだけど、まーまー悪くないから、合格よ》
 まーまーかよ。
《めくじらたてない。契約を結んだら、ちゃ〜んと仕えたげるから》
 アウラさんがニヤニヤと笑う。
《でも、しもべは奴隷とは別物よ。そこだけは間違えないで。あたしは、おにーさんの頼みを聞いてあげるお友達ってとこ。どーしても嫌なことは拒否するからね》
 どーしても嫌なこと?
《存在にかかわること。性質に反すること。エッチなこと、よ》
 ぐ。
《見せたげるわよぉん、友達以上の関係に進んでくれるなら。あたしを本当の伴侶にしてくれるなら》
 ケラケラとアウラさんが笑う。
《あたしだけを愛してくれる男になら、何でも応えちゃうわ。おにーさん好みの超乳になったげてもいいわよ》

 イザベルさんから貰ったエメラルドのペンダントを契約の証にして、本契約を結んだ。
 エメラルドは、安定や希望、それに明晰さを示す宝石なのだそうだ。

 どっちが宝石を持ちます? って尋ねると、アウラさんは真面目なしもべモードになりオレを諭した。
《精霊との契約の証は、ご主人様がお持ちください。これから先の契約でも、精霊の意思をお尋ねになる必要はありません》
 でも、オレ、精霊を仲間と思ってるし。契約の証を盾に、支配する気はないんだけど。
《身につけていただく方が、仕える側は楽なのです。お側を離れていても、石を通してご主人様のお声が聞こえますので》
 そういうものなのか。
《むろん、契約の形はさまざま。契約の証をご自身の装飾品となさらなくとも結構です》
 そう言ってアウラさんは、ぬいぐるみの首の飾りになってるティーナと、契約の証付きの仮面をつけた人型のマーイさんを見渡した。
《ですが、必要があれば精霊側からお伝えいたします。特に申し出がない限りは、どうぞ契約の証を御身にご装備くださいませ》
 オレはアウラさんに頷きを返し、ペンダントを首にかけた。

 オレらがそんな話をしている間、冷たい風、なまあたたかな風、突風などが神殿を吹き抜けた。
 風の精霊達が次々と神殿に姿を見せては《しもべ、いりませんかー?》と、明るく声をかけてゆく。

 その中からイザベルさんは『ヴァン』という名の精霊を選び、エメラルドの指輪に宿らせた。
 左の小指のルビーの『フラム』、薬指のサファイア『エミュー』、そして中指のエメラルドの『ヴァン』。
 イザベルさんが手に入れた精霊はこれで三体目だ。
「八大精霊を全て手に入れるんですか?」
 尋ねるとイザベルさんは、うふふと妖しく笑った。
「互いの星が交わりあえたら、ね」

 精霊支配者は、精霊に自分の所有物である印をつける。
 サラは、魔力でアナムに刻印を刻んだらしい。
 けど、オレもイザベルさんも魔力が無いんで、宝石を契約の証としている。
 契約の証が存在する限り、主従契約が生きる。しもべ達はオレらについて異世界へ行けるし、オレらはしもべにあれこれ命令できる。

 契約の証は何でもいいらしい。体の一部でも小枝でも石ころとかでも。
 けれども、無くさないようずっと持ち続けるのならば、宝石が良いとイザベルさんは言う。
「美しいものに宿ってもらう方が楽しいし、愛着が持てるもの。その子によく似合う物を見立ててあげるのよ」

『ティーナ』のルビーの飾りつきボウタイチョーカーも、
『マーイ』のアクアマリンが額に埋め込まれた黒い仮面も、
『アウラ』のエメラルドのペンダントも、タダでもらってしまっている。
 この先もオレが仲間にする子に合わせ、ふさわしい宝石をイザベルさんは準備してくれるようだ。
 いつどんな形でお返しすればよいのかと尋ねると、何もいらないとの答えが返った。
「あなたを、よりよい未来に導いてさしあげるのが私の使命ですもの。お気になさらないで、勇者さま」
 左手を口元に添えてイザベルさんが笑う。左手には、精霊が宿った三色の宝石が美しく輝いている。
 本当……いい人だなあ、イザベルさん、タダでいいだなんて。

 魔王が目覚めるのは、七十六日後だ。

 精霊界の最長滞在は二十日の予定。
 炎界で二日、水界で五日も過ごしてしまった。が、風界は一時間で済んだ。
 残りは、土氷雷光闇の五エリア。
 五エリアで十三日なら、何とかなるかも……?


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№026)

名前 アウラ
所属世界   精霊界内の風界
種族     風の精霊
職業     風の精霊
戦闘能力   きっと高い
戦法     風でビュービュー
留意すべき点 氷に弱い
職業の説明  風を司る
特徴     透明になれる。主人も透明にできる。
       五度もしもべ経験のあるベテラン。
       オレは六人目。
       男のスケベ心を弄ぶ意地の悪いところも。
       体に何重も薄緑色のベールを巻いている。
年齢     五度のしもべ体験をしているから、
       五百歳以上?
容姿     本体は風。いろんな姿に変化できる。
       人型になると、髪は緑の短髪。
       スタイルはいいけど痩せ型で、
       胸はあまりなさそうだ。
口癖    『見せたげる』
好きなもの  男をからかう事。
嫌いなもの  退屈。
勇者に一言 『おにーさん、あたしと遊ばない?』

挿絵(By みてみん)
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