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ハーレム100 作者:松宮星

幻想世界

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髭でアニキな鍛冶師 【ケリー】(※) 

 エポナの街で、オレは無力感でいっぱいだった。

 小人のモーリンちゃんの案内で、お師匠様とパメラさんは、市長達との話し合いに出かけた。サラも助手って事で、スネちゃんを装備した上で同行している。
 獣人の三人は、獣人街へ行った。
 みんな、忙しそうだ。

 けれども、勇者なオレは、市庁舎の一室に隔離されている。
 下手に、市民と接触しないように。
 エポナは大きな街だ。小人さんがいっぱいいるし、人間もたくさんいる。
 両種族の中にも、魔王に大ダメージを出せる超人級の者が居るはず。でも、ごくごく少数。その辺の道行く人に萌えないよう、閉じこもってる方が無難なのだ。

 これからワーウルフとの戦いになるかもしれないってのに、オレは役立たずだ。
 その上、オレの護衛役で、マリーちゃんとジョゼまで一緒に部屋に籠らせている。
 役立たずどころじゃない、お荷物だ。

『女の子100人強制仲間入り』以外に、オレには特殊能力が付与されていない。

 勇者固有の能力にしたところで……
 勇者(アイ)は『仲間や敵の、攻撃値と残りHPを見る』能力。
 自動翻訳機能は、勇者とその仲間達が異世界で会話可能になる能力。
 そんなものだ。

『勇者や賢者のみが使える魔法』も知ってるけど、攻撃系のものはアレしかない。
 究極魔法という名の……自爆魔法だ。
 チュドーンして、4999万9999の固定ダメージを敵に出す魔法。
 まさに、必殺技。
 必ず死ぬのが、オレの方なんだけど。
 人生で一回しか使えないしな。

 十年間、剣修行はしてきたものの、さほど強くないし、剣は海に沈んでしまった。丸腰だ。

 考えれば、考えるほど、暗くなる。
 勇者として、オレは……弱すぎる。
 知恵もない、役立つ魔法も技術もない。
 狼獣人に狙われている街の人達に、何もしてあげられない。
 女の人に不用意に会えないから、バリケード作りとか警備の手伝いをしに外にも行けないし。

『あなた、本当に、勇者なの?』
『貧弱な勇者』
『狼の爪の一撃で沈むような男はいらない』
 エルフのイーファさんや小人のモーリンちゃんの言葉が、頭の中をぐるぐるする。

 正義を貫き、弱きを助け強きをくじくのが、勇者だ。

 だけど、オレは街中すらまっとーに歩けない……役立たずのひきこもり勇者なんだ。


「いかが、なさいました〜 勇者さま〜 何か、お心を、悩ます、事が、おあり、なの、ですか〜?」
 へこんでいたのが顔に出たんだろう、マリーちゃんが優しく声をかけてくれる。

 女の子に弱音を吐くなんて、出来ないよ。何でもないって答えといた。
 けど、マリーちゃんは小さな手でオレの手をそっと握りしめ、ほんわかした顔で微笑んだんだ。
「勇者様に、暗い顔は、似合いませんわ〜 いつも、明るく、前向きに、勇者様が、つきすすんで、くださるから、私や、ジョゼさん達も、安心して、ついて、いけるん、です〜」
 ジョゼ?
 義妹もオレを、心配そうに見ている。オレ、よっぽど、みっともない顔してたんだな。失敗した……
「話すだけで、気持ちが、楽になることも、あります〜 よかったら、お心の、うち、教えて、くださいませんか〜?」
 のほほんとしたその声を聞いているうちに、不覚にも涙が出そうになった。

 情けない勇者である自分が恥ずかしいのだと、マリーちゃんに伝えた。
 いろいろ、話した。口にすべきじゃない事は、むろん、内緒にしたけど。
 特に究極魔法は、勇者と賢者だけが知っていればいい事。誰にも話さずにきたし、最後まで誰にも言う気はない。データ収集好きのセリアさんにも内緒だ。
『いざとなったら、オレ、自爆して魔王を倒すわ』なんて言ったところで、みんなの心を乱すだけだ。
 ジョゼなんか、卒倒しちゃうだろうし……
 サラも……

 マリーちゃんは、オレの話を聞いてから、にっこりと微笑んだ。
「勇者様は、気づいて、ないだけで、多くの、方を、救って、いますよ〜 大丈夫、です〜」
 そして、又、オレの手を強く握ってくれる。
「私達が、今、ここに、居るのは、勇者さまの、おかげ、です〜 勇者様が、パメラさんを、お仲間にして、パメラさんの、お願いを、聞き届けた、からこそ、私達は、エポナに、来たのです〜 勇者様は、みなさまの、御力に、なってますよ〜」
 そうかなあ……
「この地でも、勇者様は、勇者様の、使命を、お果たしに、なります〜 必ず、です〜」
 必ず?
「そう、なります〜 私、信じてます、から〜」
 マリーちゃんは、子供のような顔で微笑んでいる。
 無条件にオレを信じてくれる、その笑顔がまぶしい。

 オレの背に、そっと手がそえられる。
 うん……ありがと、ジョゼ。
 おまえも、オレを信じてくれるんだな。


 武器が欲しいなあ……
 ドワーフに鍛えてもらうにしても、それまで、丸腰はつらい。
 女の子に守られるのではなく、守ってあげられる男になりたい……

 そう言ったら、ジョゼが遠慮がちに声をかけてきた。
「お兄さま……あちらを……お調べになってみては……?」
 と、ジョゼが指さしたのは、部屋の隅に置いた荷物。その中でもひときわ大きな革袋『ルネ でらっくす』だ。

『勇者様、困ったなーという時にはこれです!』
 発明家ルネさんの言葉が、頭の中に甦る。
『私の発明品を詰めた、その名も『ルネ でらっくす』! あらゆる危機に対処できる、発明品を詰めておきました! 旅のお伴にどうぞ!』

 ルネさんの発明には、ナニなイメージがある。
『悪霊あっちいけ棒』は、失敗作だった。
『悪霊から守るくん』も、多分……
 けど、あのフル・ロボットアーマーは凄い。片手で岩を楽々と砕き、背中のロケットエンジンで空も飛べるのだ。
 たとえ、左手が傘になろうが、子守唄歌唱機能が付いていようが、レンジだの無駄なオプションが満載でも……強いことは強い。ルネさんは最強だと、アナベラも言っていた。

 もしかしたら、最強への道は『ルネ でらっくす』の中に……?

 この世界に来て四日目にしてオレは……
 禁断の袋を開けてしまったのだった……

 しかし……

 すぐに、後悔した。

 発明品をテーブルの上に並べ、革袋の中に一緒に入っていた『取扱説明書』を読む。
 携帯洗顔器『お顔ふき君』、説明不要な『どこでもトイレ』、携帯灯り『ランプくん』、『蟲虫ノックアウト』は自動虫退治機……
『ぶんぶんナイフ』は、簡単野菜千切り器だ。
『キャンプなファイア君』は、薪無しにキャンプファイアができる携帯燃料……。

 武器ねーじゃん!

 オレが求めてるのは、旅先便利グッズじゃねえよ!

 ノックがした。
 オレは急いで目隠しをつけてから、「どなたですか?」と尋ねた。

「あんたの世界の賢者様に言われて来た、ドワーフの鍛冶師、ケリーだ」

 ドワーフの鍛冶師……?

「どうぞ」と、言うと、乱暴に扉が開閉し、ドタドタとした足音が近づいて来た。
「目隠しはいいってさ、あんちゃん。あんたの世界の賢者様からの伝言だ」
 口調は乱暴だけど、声は女性だ。
 て、事は、入室して来たのは、お師匠様が『魔王に100万ダメージを出せる』と見込んだ人物なわけだ。

 目隠しを取ると、そこには……
 オレの胸ぐらいしかないものの、横幅はがっしりとある、逞しいドワーフがいた。

 櫛を入れたことのなさそうな長い赤い髪、そして顎から下には髪と同じ色の髭が垂れていた。
 ドワーフは女性にも、髭がある。女の人に髭なんて、ちょっと違和感があった。が、髪と同じ鮮やかな色の髭は、彼女によく似合っていた。
 眉は太いものの、目は丸っこくって、口元はニコニコ笑ってる感じ。ひとなつっこそうな顔だ。
 職人らしい大きなエプロンをつけている。

「あんたが、異世界の勇者か」
「はい。勇者ジャンです」
 ドワーフが手を差し出してきたので、握手かと思ったんだが……
 右手を、ぎゅ〜〜〜〜〜と握られてしまった。すっごい握力。
「ふん、ふん、ふん」と、一人で納得するかのようにつぶやき、ドワーフは胸元から手帳を取り出し、何かを書きこみ始めた。

「賢者様から頼まれた。あんたの武器、俺が作るぜ」
 赤髪のドワーフがメモを取りながら、そう言った。
「あなたがオレの武器を……?」

 ドワーフがニカッと笑う。
「異世界人とはいえ、あんたは勇者だ。勇者の剣を鍛えられるなんざ、ドワーフの鍛冶師にとっちゃあ、最高の栄誉だよ。俺に、どーんと任せてくんな」

「最高の栄誉……」
 そう言われても、いまいちピンとこない。
 オレは勇者ではあるものの、物凄く強いわけではない。

「女が職人だからって、がっかりするなよ? 俺は、ドワーフ王の次女。親父譲りの腕前だ。そんじょそこらのヘボ野郎どもより、よっぽどいいモノ造るぜ」
 カカカとドワーフのケリーが笑う。
「職人としても、戦士としても、俺は一流だ。俺にかなうドワーフは、親父ぐらいだ」
 全然、女性って気がしない。性格も、外見も。さばさばした、陽気なあんちゃんと居るようだ。

 ケリーは、住まいはドワーフの洞窟なのだそうだ。人馬の友人に届け物をする為に、たまたまエポナに来ていたらしい。
「造るのは、洞窟に戻ってからだが、その前にイメージを固めときたい。採寸するぜ」

 椅子にのっかって、ドワーフはオレの腕の長さや腕回りや腰や肩幅などを測り、メモを取る。
 さまざまなポーズをオレにとらせ、メモを取る。
「手の大きさ、膂力、腰のすわり、脚力、重心をかける癖は、皆、それぞれ違うもんなんだ。持ち手にとって持ちやすい武器を造ってこそ、一流の鍛冶師なのさ」
 そういうものなのか。
「ま、親父の受け売りだがな」
 椅子の上に立つケリーが、カラカラと笑う。

「で? あんた、どんな感じの武器が欲しい? 片手剣でいいんだよな? 他に希望があったら聞くぜ」

 オレの武器……

「オレが、どういう勇者かは聞いています?」
「百人の女を仲間にする勇者だろ? 賢者様から託宣も聞いたぜ」
「はい。オレは百人の仲間と共に魔王に挑みます。けど、オレも仲間も攻撃の機会は一度だけなんです。一度しか攻撃ができないんです」

 オレは椅子の前で、姿勢を正した。

「魔王戦想定の木偶人形に対し、どんなに頑張っても、オレは、6000ダメしか出せませんでした……嫌になるくらい、弱っちい勇者です……でも、それじゃ、駄目なんです」

 オレはドワーフに対し、深々と頭を下げた。

「オレは魔王に勝ちたい! 共に戦ってくれる仲間を守りたい! 魔王に大ダメージを与えられる剣が欲しいんです!」

「どんぐらいのダメージが欲しい?」
 ここは、駄目もと!
 オレは顔をあげ、ぐっと拳を握り、気合をもって叫んだ。

「1億ダメ!」

 そこで、言葉を区切った。
 が、辺りはシーンとしている。
 ドワーフのケリーは、表情も変えず、オレを見ている。呆れた感じも、馬鹿にした感じもない。ふ〜んって感じに、ただ、オレを見ている。

「1億が無茶なら、4999万9999ダメージ以上を希望! ともかく大ダメージ! ともかく強い剣! オレみたいなへっぽこを『漢』にしてくれる剣を希望します!」

 椅子の上のドワーフはオレをジーッと見つめ……
 それから豪快に笑い、オレの肩をバンバンと叩いた。
「あんちゃん、良い事、言うなあ! 『漢』になれる剣を、俺に造れだぁ? 気に入ったぜ! しかも、1億?」
 ケリーがバンバンとオレの肩を叩き続ける。
 ドワーフの鍛冶師は怪力だ。加減してるんだろうけど、ものすごく痛い!
「でっかい事はいい事だ! 任せろ、1億とまではいかないが、持てる技術の全てを使って、どっか〜んな剣を造ってやるよ!」

 おぉぉ!
 ケリーさん!

「それにな、あんちゃん、あんた、へっぽことも限らねえよ」
 え?
「魔王戦想定練習の時、どんな剣、使った?」
「鋼の剣です」
「魔法剣じゃないんだな?」
「いいえ。武器屋で買える、普通の剣です」

「やっぱな」
 ケリーさんが腕を組み、にやにや笑う。

「鋼の剣で、魔王並の強度のものに6000出したんなら、一流だよ」
 え?
「あんた、強ぇよ」
 えぇっ?
「武器さえ良きゃ、ダメージはガンガン伸びるぜ。十倍、百倍、千倍だって夢じゃねえ」
 えぇーっ?
「いや、千倍の上を目指そうぜ。この俺様の武器とあんたで、新たな伝説をつくろうぜ」

 ケリーさんは、自信満々だ。

 力強くって、頼りがいがあって……

 イかす……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと八十一〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 姉貴というか……
 兄貴だな、ケリーさん……
『伴侶』的な萌えとは違うような気もするけど……

 惚れたよ、ケリーさん!





 お師匠様達と部屋に戻って来たサラは、赤毛赤髭のドワーフと肩を抱き合うオレを見てびっくりし、オレが萌えて仲間にしたとジョゼから聞いて絶句した。
「……女なら、何でも良くなっちゃったわけ?」
 とか失礼な事をぬかしたから、ケリーさんに失礼だぞ、謝れと怒鳴っておいた。

「明日、俺のダチを連れて来ていいかな?」
 オレがさっき並べたルネさんの発明品を、チラチラと見ながらケリーさんが言う。
「手先が器用なヤツでな、こうゆう細々(こまごま)としたモノが好きなんだ」
 そう言うケリーさんも、興味津々って顔で発明品を見渡している。
 異世界の発明品に、職人魂が刺激されたんだろうか。


 魔王が目覚めるのは、九十日後だ。
 オレが死ななくても魔王に勝てるんじゃないか……そんな気がする。今夜は熟睡できそうだ。


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№019)

名前 ケリー
所属世界   幻想世界
種族     ドワーフ
職業     鍛冶師
特徴     頼りがいがあって、豪快。
       イかす姉貴。と、いうか兄貴。
       ドワーフ王の次女……
       って事は、お姫様……? むむむ。
       オレの為の剣を鍛えてくれる。
       鍛冶師として一流だし、
       戦士としても一流だそうだ。
       エポナに人馬の友達が居る。
戦闘方法   戦斧
年齢     鍛冶師としてかなりな経験を積んでる。
容姿     赤髪、赤髭。愛嬌があって、
       人懐こそうな顔をしている。
       職人用エプロン着用。
口癖    『俺に任せろ』『どっか〜ん』
好きなもの  良いものを造りだすこと。
嫌いなもの  作品が正当に評価されないこと。
勇者に一言 『俺様の武器とあんたで、
       新たな伝説をつくろうぜ』
挿絵(By みてみん)
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