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ハーレム100 作者:松宮星

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天才?発明家のしもべ【ルネ】

 ダーツの矢は、【ルネ】に当たりました!

※この章の各話は、それぞれ独立した話です。共通の設定もありますが、ストーリーに繋がりはありません。
「私の『うるおい君』注目なさるなんて、さすが賢者様。お目が、高い!」
 いえ、たまたま視界に入っただけです。
 ルネさんの発明部屋には、発明品が雑多に置かれている。
 次々にあれこれ作るもんだから、部屋の中はごちゃごちゃだ。どれが完成品で、どれが作りかけなのか、当人にもわからないんじゃないか? 棚にもテーブルにも椅子にも床の上にも発明品が転がっている。

 その中でも、『うるおい君』とやらはデカい。どうあっても、目に入る。

 空の風呂桶のまん真ん中に台があって、大型の両手鍋が設置されていて……
 切っ先を上にした剣が蓋に刺さっているというか、生えているというか……まあ、そんな感じ。

「なんのおまじないなの、これ?」
 オレの疑問に、ロボットアーマーの人がヘルメットの頭を横に振る。
「おまじないじゃありません。永久機関です」
「永久機関?」
 なに、それ。
「永久機関というのはですね、外部からのエネルギー供給無しに自力運動を続ける装置です。自給自足。独立独歩。誰の助けも受けずに、永遠に動き続ける機械なんですよ。発明の理想の一つなんです!」
 ふーん。
「この剣は、私達の世界では創造不可能な魔法的物質で出来ていて、振動すると、なぁんと魔力が発生するのです。それをガガッとキャッチして魔法炉に注入できるよう導管をセットしました! 機械部分やチューブが劣化したらそこまでですが、『うるおい君』は、ほぼ! 永久! に、運動を続ける夢の発明品なわけですよー」
 ルネさんの説明は、学者様の講義と一緒だ。
 何を言ってるんだか、オレにはよくわからん。

「それでは、実際に動かしてみましょう」
 鍋の側面にあるボタンを、ルネさんが嬉々として押した。

 どぎゃん、どきゅぅぅん、バリバリバリバリっと発明品がやかましい音をたてる。
 まあ、いつものことだが。

 で、鍋の上の剣が動きだす。
 振り子の要領だ。
 右へ左へと大きく動き、神秘の力を発揮する。
「ただの振り子と思っては嫌ですよ。エスエフ界で見たワイパー。あの動きを参考にしましてね、潤いを生産する発明品をつくってみたんですよ」

「つーか、これ……」
 オレはルネさんの発明品に顔を近づけてみた。
 鍋の上で左右に動く剣。青白い綺麗な剣身。厚みはそこそこあるが、短い。というより、折れてる。剣身の途中でポッキリ折れたモノを、鍋の蓋にくっつけてるんだ。
「……オレの剣じゃん」
「その通りです! さすが賢者様! よくぞお気づきになりましたね!」
 いや。普通、気づくでしょ。水が飛び散ってるんだから。

 剣が左右に動く度に、剣身から水が生まれ、風呂桶へと落ちて行く。
 まるで雨だ。
 間違いようもない。
 これは、追加効果『水』の魔法剣。勇者の剣が仕上がるまで腰にさしておきなと、幻想世界のドワーフのケリーさんがくれたヤツ。振ると剣身から水が生まれるんで、火属性の敵に大ダメージを与えられるし、飲み水には困らないぜと言われていた。

 その魔法剣をオレは折ってしまった。お師匠様が石化した時に、プッツンして。何がなんでもニノンを殺そうと暴れて、無茶使いをしたせいだ。切れ味も強度も(はがね)の剣よりちょっと強い程度だって、注意されていたのに……

 折れた剣がどうなったのか知らなかったが……

「ルネさんが持ってたのか……」
「はい。剣は折れたら使えません。でも、この子は、まだ有能なんです。捨てたらかわいそうでしょう?」
 ロボットアーマーから明るい声がする。

「鍛冶も発明も、ものづくり。分野は違いますが、魂は一緒です。生活をより豊かにし、みんなに笑顔を運ぶ為にあるんです。愛され、お役にたってこそ、生まれてきた甲斐があるというものです」
 つくりものの手が、『うるおい君』を指さす。
「灼熱の砂漠! 大ひでり! 水の乏しい土地! 水がないなあ困ったなあという時には、これです! 外部動力無しに半永久的に動き続ける『うるおい君』! 一品ものですので、残念ながら販売無し! レンタルのみの商品です! 水不足の土地に貸しまくって、みなさんはにっこり、私はがっぽりの夢のような発明品なんです! いかがでしょう?」

「いいんじゃない?」
 笑みが漏れた。
 ルネさんは正直者だ。
 世の為、人の為の、滅私奉公は絶対にしない。
 自分がもうかる、有名になる、発明して楽しい……メリットがあるから何かを作り出すんだ。
 けど、一番好きなのは発明品が愛されること。それを使うのにふさわしい者に愛用される事なのだ。



 魔王戦の後、ルネさんの工房は国王御用達(ごようたし)の看板をいただいた。

 きっかけは、国王の前で『撮っちゃうんですクン』撮影映像を再生したこと。
 撮影映像が空中に立体的に浮かび上がるんだ。確かに、画期的な発明だ。
 つっても、立体映像機械自体はエスエフ界から持ち込んだもの。一品ものだし、ルネさんは同じものを造れない。
『撮っちゃうんですクン』を欲しがる王侯貴族に対し、『こちらは販売できませんが、私が後ろ盾となっている発明家は他にもこのような物を発明しておりまして……』とスポンサー(シャルル)が言葉巧みにルネさんの発明品を宣伝し、ルネ工房は着目を浴びて……

 あれよあれよという間、売れっ子工房になってしまったのだ。

 現在の一番の売れ筋は、即席絵画製造機械『撮れルンです君』&その絵を複製できる『写せルンです君』のセット。
 携帯灯り『ランプくん』、『蟲虫ノックアウト』、『どこでもトイレ』、野菜切り器『ぶんぶんナイフ』もそこそこヒット商品。
 遠くに居る人間と会話できる『もしもし電話くん』や『スパイ 大々々作戦』は特殊部隊の標準装備として軍に納入が決まったのだとか……世の中、わからん。

『悪霊あっちいけ棒』と『悪霊から守るくん』の製造・販売権利を聖教会に無償で譲った時には驚いたが、それにもルネさんらしい理由があった。
『なにせ国中が信者ですからねー 聖教会に悪印象をもたれたら、私の発明家人生はピリオドを迎えます。聖教会には恩を売っておくに限ります』。
 ルネさんは聖教会から敬虔深い信者と称えられ、王都の教会内に銅像をつくってもらった。宗教画の中に供物を捧げた信者としても描かれているらしい。
 だが、当人はそんな事どうでもよいのだ。『聖教会のお偉い方がスポンサーを約束してくださいました! 大物スポンサー、げっとぉぉぉ!』と、その点だけにはしゃいでいた。


 ルネさんの工房には、さまざまな商品の予約が殺到中。

 ルネさんは大金持ちとなった。

 だが、働いていない。

 工房の経営は助手任せ。
 大量の注文品を大車輪でつくっているのも、助手達だ。

『一度完成させた物を改良無しに、そのまま作るだなんて……つまらないじゃないですかー モチベーションが下がっちゃいますよ。思いついたら即発明! アイデアは全て生かす! それが私のモットーなのです!』
 などと言うわがまま発明家を、筆頭スポンサーが、
『仕方ありませんね。ルネさんは職人ではなく、天才なのですから。雑事は私が人にやらせましょう。どうぞ発明に専念ください』
 と甘やかしやがるから、ルネさんに進歩がないのだ。

 オレの雷の精霊相手にくだらない発明のアイデアを語り、絶賛をもらっては気をよくし、発明工房にこもっている。
 怪しげな機械を作っては、ドカンドカンと爆発させている。

 最近のルネさんは、平和的な発明品を作っている。
「魔王戦は終わりました。武器発明は、しばらくお休みです。時代は今、生活便利グッズ! 趣味! 娯楽! 生活を豊かにするアイテムこそ、求められてると思うんですよねー」

 だが、しかし……

『肩たたき君』は強弱のスイッチが壊れていて、巨大ハンマー並の打撃力だった。これじゃ『肩骨くだき君』だろと文句を言ったら、素晴らしいネーミングセンスです! さすが賢者様と返された。
『ばっく みゅーじっく君』には、何故かマリーちゃんの歌声しか入って無かった。文句を言ったら、聖女様の歌声にこそ人は癒されるのです! と返された。マリーちゃんの歌声は、ルネさん的にはダメージにならないようだ。
 足の不自由な方用の『お出かけ君』は『かっとび君』並のスピード。子守りベッドの『ゆりかご君』は、暴れ馬並の運動性。『テーブル・マナー矯正ちゃん』はマナーを破るとレーザー・ビームを発射してお仕置きをするという……

 ろくでもない発明品ばかりだ。

 ルネさん()に遊びに行くと、そんな素晴らしい新発明を山のように見せられる。
 でもって、よく実験体(モニター)にされる。

「勇者様が賢者様になって、本当に良かった! 精霊という護衛付きの上、ご本人が不死なんですもの! うっかり木端微塵に死なせちゃっても、もとの姿で復活しますものねー 遠慮なくいけます!」
 いやいやいやいや!
 オレはルネさんの発明の被験者になる為に、賢者になったんじゃありません!



『うるおい君』の性能を、ルネさんが語り続ける。
 オレに聞かせるのが、楽しくってたまらないって感じだ。
 発明に夢中のルネさんは、嫌いじゃない。
 何かに情熱をそそぐ人間には好感が持てるし、大好きなものを語るルネさんはわりとかわいいと思う。


 クソ馬鹿女神の運命のダーツのせいで、オレの本当の伴侶はルネさんという事になった。

 うやむやのうちに、結婚もした。

 賢者の館と発明工房と、完全な別居生活だが。

 訪ねれば、ルネさんは大喜びでオレを迎えてはくれるものの……
 愛しい男性としてというよりは、被験者として歓迎されているのではないかって気がひしひしと……
 あと、歓迎されてるのは、『賢者の妻』であることか。工房に『賢者の妻』ブランドを使えるから……

 オレらの間に愛はあるのだろうか?

「ルネさん……ヘルメット」
 文句を言ってみた。
 二人っきりの時は、『迷子くん』を脱いでくれ、面倒ならせめてフルフェイス・ヘルメットだけでも取ってくれって言い続けているのに、一向にルネさんは改まらない。
 忘れてしまうのだ。
 関心があるのは発明品のことだけで、それ以外はどうでもいいから。

「あー そうでした。すみません。賢者様の前では外すんでしたよねー 失礼しました!」

 そして、彼女はフルヘルメットを外した。
 さらり流れ出た黒髪は、肩の所で切り揃えられている。アンバー(琥珀色)の瞳は大きく、頬はふっくら、唇は愛らしい。
 一言で言えば、童顔。オレよりずっと年上なのに、やたらかわいい顔をしている。

「そうだ! 私、賢者様にお願いがあったんです!」
 ルネさんが、にっこりと笑う。
 ドキンとした。
 性格はいろいろとアレだけど……可愛いことは可愛いんだ。巨乳だし。
「なに?」

「私とそろそろ、子作りしませんか?」


「………」


 はっ。

 頭が真っ白になっていた。

「……子作り?」
「はい!」
 ルネさんが大きく頷く。
「賢者様の子供が欲しいんです!」

 顔中がカーッと赤くなった。

 賢者は不老不死。
 老化とも病気とも縁の無い体だ。
 肉体的変化がないんで、女性のお師匠様は、賢者期間中に妊娠ができなかった。
 けど、オレは十八の健康な男の肉体のまま賢者になったから……
 その気になりさえすれば、やれない事はないわけで……

「……いいの? 子供ができたら、発明どころじゃ……」

「大丈夫です! 妊娠・出産・育児期間中は、私の助手エクレールが働いてくれます! 私のアイデアを、彼女が形にしてくれます! 約束してくれました!」
 いや、あなたの助手ではなく、オレの精霊です。
「結婚したんです。せっかくなので、それ専用の発明生活をエンジョイしたい! とりあえず! つわり軽減グッズ、妊婦運動機械、健康診断装置などをそれぞれ十二種類ぐらいつくってみましたー 赤ん坊が生まれるまでには、育児機械を百一種類ぐらいつくってみせます!」
「へ?」
「どんな困難な状況になろうとも、私の発明品があれば大丈夫! 赤ん坊のことは私に任せ、賢者様は心おきなく世の平和の為にお尽くしください!」

 もしかして……
 赤ん坊を実験体(モニター)にしたいだけ……?
 いや、それなら余所から借りてくるって手もあるし……貸してもらえるかは微妙だが……

「そんな心配な顔をなさらなくとも、大丈夫です! 成人するまでは改造しませんから!」
 改造するのかよ!
「本人が望んだら、です! 母として否とは言いません! でも、成長期の体に不必要にメスを入れるのには反対でーす! 私は良識ある発明家ですから!」
 本当か? 本当にそうなのか?

「それとも……賢者様はお嫌ですか? 子供が欲しくないとか?」
 ちょっぴりうつむき加減。ルネさんの大きな瞳が、悲しそうにオレを見る。
「子供はお嫌いですか?」

「……いや。そんな事はない」
「良かったー」
 ルネさんの顔が、パーッと輝く。にっこりと笑う顔が愛らしい。
「では、早速、始めましょう! 人工授精にも興味がありますが、最初はやはり自然に! 下手な鉄砲も数を撃てば当たるんです! 大当たりになるまで日々励みましょう!」

 て、いきなり?

 その気になっているルネさんが、オレに接近してくる。
「さ、賢者様」
 わくわく顔でオレの前で立ち止まり、唇をとがらせて、つきだしてくる。
 接吻をねだって……
「私を食べてください……」

 オレのハートは、キュンキュン! と、鳴った!
 鳴り響いた!

「愛しています、賢者様……私、賢者様の子供が欲しいんです……」

 アレはアレだけど、かわいいことはかわいい……

 顔がどんどん熱くなる。
 血がみんな顔に集まっているっぽい。
 そのせいか、足元が冷たいような。

 オレはツバを飲み込んだ。

「ルネ……」
 初めて呼び捨てにした。

 ロボットアーマーを着たままなのがナニだが、脱いでもらやいいんだし。

 愛しい伴侶を抱きよせようとして、両手をのばした。
 が、駄目だった。『迷子くん』は乳牛並の重量だ。オレの方から歩み寄らなきゃ。

 そう思って、一歩踏み出し……
 妙な抵抗を感じた。

「あ」

 下を向く。
 オレにつられて、ルネさんも下を向いた。

「うわぁぁぁ!」
 そのかわいらしい顔が、サーッと青ざめる。

「しまったぁ!」
 ルネさんが頭を抱えた。

 周囲は、水、水、水。
 部屋中が浸水。
 オレの膝下までが、水につかっている。

 左右に激しく魔法剣を振って、『うるおい君』は稼働中。
 なみなみと水が満ちた風呂桶から、ダボダボと凄い勢いで滝がこぼれている。

「この部屋、防水加工前の発明品だらけなのに! 故障しちゃったかも! と、いうか、このままじゃ!」

 アレか……

「アウラさん」
 オレは風の精霊を呼び出した。ルネさん()に来る時は、いつも用心している。防御結界を作れる風の精霊には、スタンバイしてもらっているのだ。



 いろいろと爆発した。

 ルネさんの部屋は、とうぶん使い物にならないだろう。
 けど、発明部屋は他にも九あるし……
 ルネさんの発明活動がとどまる事はない。


 こんな環境じゃ子育てなんか無理。というか、育てられる赤ん坊がかわいそう。

 けど、その気になってしまったルネさんが、簡単に諦めるはずがない。

 賢者の館、発明工房、それにもう一軒、育児&家族団らん用の家を持つしかないかも。
 三重生活になりそうな、予感がしている。
【天才?発明家のしもべ 完】

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 次回は、リーズとの話。約束の九十六万ゴールドを払う日がやってきました。
 9月14日(土)更新予定です。
+注意+
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