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ハーレム100 作者:松宮星

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お姫さまといっしょ 【裏 冒険世界】(※※)

 ダーツの矢は、裏冒険世界に当たりました!

※この章の各話は、それぞれ独立した話です。共通の設定がある場合もありますが、ストーリーには繋がりはありません。
 御使いは101匹いる……

挿絵(By みてみん)

 御使いは、耳がデカくて鼻が長いモンスター。象に似ているが、色はおどろおどろしい紫。
 パメラさんは『かわいい! かわいい! かわいい!』と絶賛していた。が、あの人は普通じゃない。獣なら何でも、かわいいと愛でそう。
 まあ、しいて言えば、ぶさかわいいってヤツかもしれないが……かわいいもの好きのサリーは《いらなーい》と切り捨てたのだとか。

 光の国侵攻で大暴れをした御使いは、戦後、処分されかけた。サリーが嫌ったってのもあるが、暗黒神殿を追われ、10匹を残して卵に戻された。
 けれども、暗黒モンスター使いのモードにとっては御使いは大切な友達のようなもの。光の国の王妃様に、ペットとして飼育する事は許可してやって欲しいとオレは頼んだ。

 だが、しかし……
 御使いは愛玩用ペットではなく、凶悪モンスターなわけで……

 子猫サイズでも、魔王に10万以上のダメージを出せたのだ。
 デカい御使いは、小山サイズ。攻撃力はチビの何十倍もある。
 そんなのが101匹も居るのだ。


 大侵攻してきたら……言うまでもなく……


 しかも……

《やっほー ユーシャくん》
 城壁の外に、デッカイ鎌を持ったチビッ子堕天使が居る。
 物見の塔の上に居るオレが見えているようだ。にぱっと笑って、手を振ってくる。スケスケミニドレス。愛らしい幼女に見えるそいつは……右眼をハート型眼帯で隠した暗黒神なのだ。
《また、きちゃった》
 えへへと、死神王サリーが笑う。

 暗黒神サリーが王宮までやって来るのは、これで三度目。
 光の結界の一部に穴が開けば、サリーは内に楽々と乗り込めるようなのだ。堕天前が偉い天使だったせいか、光の防御を難なく破りやがる。
 サリーの背後には、美男美女が数十人居る。全員、天使コスプレだ。サリーのお気に入りの神官やら戦士だ。

 敵の数はさほど多くない。
 だが、暗黒神サリーは、めちゃくちゃ強い。王宮に残っている神聖騎士とオレが束になってかかっても、倒せまい。
 まず、戦闘力が高い。魔王戦で200万以上のダメージを出したんだ、こいつ。
 それから、治癒能力が高い。部下が怪我を負っても、たちどころに治してしまう。
 んでもって、特殊能力もやっかい。目だけで、相手を殺すこと、身動きを奪うこと、魅了することができる。目を見ないようにしても駄目なのだ。サリーの視線を感じるだけで操られてしまう。
 その上、呪いまで使える。マサタ=カーンさんにとどめを刺せなくなる呪いをかけていたし、他にもいろいろ使えるようだ。

 タイロン国王は、今、海辺の砦だ。神聖騎士達と共に、モード部隊の上陸を防いでいる。つまり、101匹の御使いと戦っているのだ。
 主力部隊から外されているとはいえ、御使いは獰猛で危険なモンスター……人喰いなのだ。
 神聖拳闘士のタイロン国王が海辺の護りを固めてくれなきゃ、光の国は蹂躙されまくり、民は狩られまくりになっちまうだろう。

 サリーの相手は、アンジェリーヌ姫の婿……十八代目召喚勇者のオレの役目なのだ。


 引き留めようとする兵士や神聖騎士達に大丈夫だと手を振り、城壁の外へと向かう。
 護衛役の神聖騎士にも控えていろと合図を送ったんだが、律義に後をついて来る。
 ついて来たってとばっちりをくらうだけなのに……

 城門から出て来たオレに、サリーがビシッと指をさしてくる。
《ショーブだ、ユーシャくん!》
 ニコニコ笑顔の天使に、頷きを返した。
「いいよ。何を賭ける?」

《ん〜とね……》
 なんだっけ? との暗黒神の問いに、神官長メリザンドが答える。
「今年は降水量が少なく猛暑が続きましたので、葉物野菜が不作です。小麦や大豆も収穫が落ちています」
 頭に輪っか飾り、背中に羽飾りつきの白いミニドレス、白ブーツ。
 天使コスプレをしているが、スケスケドレスの下の下着は黒だし、目元にはコウモリのマスクをしている。メリザンドは、天使というより、寝室の危ない女王様のようだ。
《あたしが勝ったら、メリザンドちゃんが欲しがってるものをミツいで〜》

「わかった。オレが勝ったら、全軍撤退してくれよ」
《うん》
「てか、支援物資が必要なら、そう言やいいのに……攻めて来なくたって、必要量だけ送ってやったぞ」

《わかってないなー ユーシャくん》
 チッチッチッと、チビッ子堕天使が指を振る。
《闇が光のトミをむしりとるからこそ、イミがあるんだよー 光のセイリョクにメグんでもらうなんて、暗黒神のホコリが許さない》
 あ、そ。
 誇りを守る為に、小麦や大豆をむしり取るわけね。

《ルールはいつもといっしょー ユーシャくんが動けなくなる前に、あたしにイチゲキでもあたえれば、ユーシャくんの勝ちねー で、あたしがカンショー(完勝)した時の、今回のごほーびは》
 サリーが楽しそうにニヤニヤ笑う。


 前々回、オレは一方的にやられた。
 ズタボロになったオレをふんづけてサリーは《ショケイ(処刑)しちゃおっかなー》などと明るくからかい、《愛する者を助けたかったら、あたしのゴキゲンをとってよねー》と脅しをかけ……オレの妻に天使コスプレをさせたのだ。
 光の国の姫が、暗黒神の信徒の格好をさせられるだけでも屈辱なのに、そのデザインは下着丸見えのスケスケのミニドレス……エッチな格好なのだ。
 しかも、野外だし。王宮の家臣達から『おいたわしや、姫様』と同情され、サリーからは舐めるような視線で見られまくり、サリーのお供の天使コスプレの奴等から嘲笑されまくり……
 アンジェリーヌ姫は、殉教者のような顔で恥辱の時間に耐え……うっとりしていた。
 いろいろあって変な趣味に目覚めてしまったオレの妻は、夫の為に暗黒神の慰めものにされる自分に恍惚とした悦びを感じていた。
 アンジェリーヌ姫をしばらく連れ歩いてデートを楽しみ、サリーは満足してエグリゴーリ国に帰って行った。

 前回も、オレは一方的にやられまくった。
 サリーは、アンジェリーヌ姫ばかりかセレスティーヌ王妃にまで天使コスプレを強要し……
『姫の大事な方の命がかかっているのでは、仕方ありませんわね』と、お妃様は天使コスプレに応じた。
 内心は屈辱と思われたのかもしれないが、育ちがいいせいか王妃様には浮世離れしたところがある。ニコニコ笑顔で、天使となった。
 王妃様は髪形こそナニなものの美人だし、たいへんなナイスバティだ。十代の娘がいらっしゃるとは到底思えない、ボンキュッボン。
 熟れた美女と若々しい美少女の、両手に花。サリーは二人とのデートを楽しんだ後、ご満悦でエグリゴーリ国に帰って行った。


 三回目の今回は、何を要求する気だ? まさかオレにまで天使コスプレをさせる気じゃねーだろうな。似合わねーぞ、絶対。

《あたしが勝ったら、これをもらってくねー》
 サリーがそう言ったのを合図に、メリザンドが動く。
 暗黒結界師がぶつぶつと呪文を唱え大仰な仕草で動くと、サリーの側の宙にメリザンドの闇の結界が現れた。
 黒い蛇にも似た闇が、その内に人間を捕らえていた。力なく闇の中にたたずんでいるその女性(ヒト)は、瞼を閉ざしていた。気を失っているようだ。
 見惚れるような美形だ。
 天使コスプレがとてもよく似合っている。天上から降りて来た方はかくやと思わせる気品。
 背の半ばにまで垂れる軽いウェーブを描く金の髪、優しそうな顔立ち、長い睫毛、やわらかそうな魅惑的な唇……
 出るべきところはきちんと出て、控えるべきところはちゃんと控えている。みずみずしい肉体は白のレースの下着に隠されていて……

 オレのハートはキュンキュンと鳴ってしまった……

「ジュリエット先輩!」
 オレの背後で、バジルが叫ぶ。
 アンジェリーヌ姫の従兄(いとこ)の新米神聖騎士。オレが転移してからは、この世界に不慣れなオレの案内役兼護衛役をしてくれている。
「先輩! 大丈夫ですか? 先輩っ!」

 顔色を変えたバジルを、チビッ子堕天使が面白そうに見つめる。
《あれれ〜 どしたの、そんなにとりみだして〜 キミ、この子のカレシ?》
「ち、ちがう! そんなのではない! ジュリエット先輩は、心優しくお美しい! 使徒様の器にもなれる高潔な神聖騎士なんだ! 私とは格が違う!」
《あこがれのセンパイなんだ〜》
 ニマニマとサリーが笑う。
《ん〜 キミ、わりとかわいいし〜 ……ま、いっか。ゴーカク! この子とセットでさらったげよう〜 魔界で、対のお人形にしたげるねー》

 なにぃ?

「ジュリエットさんを魔界に連れて行く気か?」
 ついでにバジルも?

 幼女天使が、にこやかに笑う。
《新しいお人形がほしいんだー ほんとーはアンジェリーヌちゃんがいいんだけどー 王族をさらうと、光の神がぎゃーぎゃーわめいてカイニュウしてきそーなんだもん。一騎士でガマンするー 魔界でず〜っと、この子をアレコレかわいがってあげるんだ〜》

「ふざけるな!」
 オレとバジルの声がハモる。

 サリーが、楽しそうに笑う。
《いいよー そこのキミもいっしょにかかっておいで〜 二人のどっちかが、あたしに一撃でもあびせられたら、この子は返したげるー》

 水色の髪と白い翼が、ぶわっと宙に広がり、サリーの姿が変化する。
 オレより背が高くなった。等身が伸びると、翼も六枚に増える。二枚で顔を覆い、二枚で下半身を隠している。体は隠してないんで、スケスケのミニドレスと下着が丸見えだ。ほどよく膨らんだ胸はキュンキュンものだが……
 この姿のサリーは、めちゃくちゃ戦闘力が高い。
 いかめしい黒の大鎌が、鋭く光っている……

「バジル……サリーの目を見るなよ。視線も意識するな、魅了される。それから、あいつの言葉に耳を傾けるな。呪いをかけられるかもしれん」
「わかりました!」
 バジルが剣を抜く。
 オレも勇者の剣を抜いた。
「神聖騎士なんだ、聖なるものにすがれ。信仰心を力とするんだ」
「わかりました!」
 光の神が、力を貸してくれるはず。たぶん、おそらく、きっと。今、旅行中じゃなきゃ……

 かけ声と共に斬りかかっていたバジルが、たいして進まないうちに勢いよく後方にふっとばされる。

 六翼の堕天使は、そこに存在しているってだけで凄まじい気を放つ。

 戦闘モードの暗黒神には、敵味方の区別すらない。そばに寄ろうとする者は全て恐慌(テラー)に陥れられ、尚も進もうとあがく者は気の力ではじき返される。
 すぐ近くに居るエグリゴーリの奴等が無事なのは、メリザンドが結界を張ってるからだ。そうでなきゃ、みんなサリーの側からふっとばされている。
 自分が虫けらになったかのような絶望感に苛まれ、死の絶望を味わいながら。

「うぉぉぉ!」
 勇ましいのは残念ながら、かけ声だけ。バジルが、又、宙をふっとび、背中から城門にぶつかる。
 サリーは、負けん気だけで頑張ってどうにかなる相手じゃない。

 土の精霊を同化させて防御力をあげ、雷の精霊によって素早さをあげ、闇の精霊に絶えず回復をかけてもらい、オレはサリーと戦っている。
 ついでに言うと、氷の精霊に薄氷を張り巡らせてもらい、視覚反射の結界も張っている。
 でもって、炎と風の精霊に攻撃を頼んでいる。

 なのに、サリーに一撃すら与えられないのだ。

 以前、オレは……
 等身の伸びたサリーの素顔を見てみたいと思った。
 隠さずに見せてくれりゃいいのに、と。

 けど、今はサリーの素顔なんか見たくない。
 六翼のサリーはあらゆる力が飛躍的に向上する。魅了の力も凄まじくなるのだ。

 サリーは六枚の翼を開き、オレと戦っている。
 美しい。
 直接は見ないようにしてる。んだが、薄氷を通しオレは目の端でサリーを見つめ続けている。
 一見、氷のように冷ややかな美貌なのだが、見る度に印象が変わる。
 笑みを浮かべれば慈悲深い女神のような包容力を持ち、怒ればあらゆるものに死をもたらす破壊の女神のように恐ろしげになる。
 変幻自在の不可思議な美。
 その美貌をずっと見つめていたい……そんな誘惑すら感じる。

 オレの剣を軽やかに避け、ちょっとした悪戯をしかけるかのようにサリーが鎌を向けてくる。
 薄く笑うサリーは、怜悧で美しい。
 三日月のような鋭い刃を、オレはかろうじて避け、やばい時は勇者の剣で受け止めた。
 サリーの大鎌は、勇者の剣と刃を交わしてもダメージをくらわない。物理的なものじゃなさそう。
 武器破壊は無理なのだ。

 オレの横を、新米神聖騎士がふっとんでいく。バジルは、サリーに近寄る事もできないようだ。
 てか、ちっとは頭を使え、馬鹿。
「闇雲に挑んだって駄目だ! 神聖騎士なら、祈れ! 信仰心を力としろ!」
 地面に仰向けにぶっ倒れていたバジルが、ハッとしてオレを見る。
「わかりました!」
 素直に祈りのポーズをとる。
 これでいい……無茶したところで、吹っ飛ばされて怪我するだけ。それなら、大人しくしていてくれ。

 サリーは、オレがどうにかする。
 いや、すべき。
 何としてもサリーに一撃を与え、ジュリエットさんを取り返す!

 前回、前々回と、オレもそれなりに工夫して戦った。
 剣攻撃をしかけつつ、蹴り、精霊に攻撃してもらう、話しかける、等々(などなど)やってみた。
 だが、まったく効果がなかったのだ。
 ここは、やはり……
 相手の油断を誘う作戦で!

「エクレール!」
 オレの心を読んで、雷の精霊が力を高める。

 サリーの周囲に、次から次にポンポンポンと幻影が出現する。
《お?》

 エクレールが生み出したのは、オレが十二の世界で知り合った伴侶達。
 ニーナ、ミー、シロさん、ピアさん、モーリンちゃん、バイオロイドのリス、大熊猫(パンダ)、三尾の狐、アネコ様、幼稚園児、小学生……
 綺麗でかわいらしい彼女達全員に、天使コスプレをさせてみた。

《これは、なかなか絶景……みな、美しい……》
 サリーの美貌が、へら〜とゆるむ。
 もう一押し!

「エクレール!」
 オレの心を読んで、雷の精霊が力を高める。

 サリーから少し距離をとった場所に、次から次にポンポンポンと幻影が出現する。
《おおおお!》
 サリーが身を乗り出す。
 満面の笑顔で。

 しなをつくり色っぽく微笑む美女達は、全員が天使コスプレ。
 吸血鬼王ノーラ、死霊王ベティさん、蛇身王エドナ、淫魔のラモーナ。んでもって、魔界の王だ。ベティさんにはボンキュッボンの体を、想像してくっつけてみた。
 みな、サリーに愛想をふりまいている。本物なら絶対にしないエロいサービスを、いろいろとやっている。
《うわ、うわ、うわぁ〜 ノーラちゃん、見えてるし! あんなことまでしちゃって……はしたなくって……ステキ……。ああああ、魔界の気高きお方が、あたしのお人形に……。ああん、ベティちゃんもかわいい……》
 六翼姿のくせに、口調がガキの姿(バージョン)に戻っている。

 完全に闘気は消え、注意はオレからそれた!

 チャ〜ンス!

 勇者の剣をサリーへと振り下ろした。

 だが、しかし……
 当たらない。
 魔界連中の天使コスプレに心奪われ、心ここにあらずのはずなのに……
 剣が迫ると、ひょいひょいと避けてしまうのだ。

 っくそぉ……

 やけになって剣を振りまわした。が、結果は同じ。
 サリーの野郎、難なく避けやがる。

 しばらく頑張ってると、高笑いが聞こえた。

「己の世界と魔界で悪事の限りをつくす、暗黒神よ。人間を玩具とする、死神王よ。堕天したきさまに、もはや神の祝福はない。内なる俺の霊魂が、マッハで、きさまの罪を言い渡す」
 この独特のしゃべりは、『マッハな方』に違いないが……
 オレは視線を走らせた。ジュリエットさんは、メリザンドの結界に囚われたままだ。気絶してるし。
 タイロン国王もあのお方の憑依体になれる。だが、海辺の砦につめているから、ここに来られるはずが無い。
 それに、声は……
 オレの後ろから聞こえるのだ。

 振り返ると、まばゆい光が目にささった。
 目がくらむほどの光の筋を放ち、人間がたたずんでいる……

「バジル……?」
 だよな?
 だが、光り輝く神聖騎士は、ククク・・・と笑ってるんだ。

《あれ? マッハくん?》
 サリーも、ようやく気づいたようだ。

「くっ、・・なかなか霊力がたまらん・・カスのカスのカス下僕めが。だが、俺を崇め奉る高い信仰心だけはあっぱれ。神の使徒としてガツンと応えてやらずばなるまい・・・」
 バジルが、独り言をぶつぶつつぶやく。その体から白い光がふくれあがってゆく。
 そいや、バジル、積極的に『マッハな方』の下僕をやってたよな。『使徒様をお手本に、私も精進します! 早く十二の宇宙を持てるように!』とか何とか言って……
 その高い信仰心で、『マッハな方』を無理やり呼び寄せて降ろしたわけか。

《なにやってるの、マッハくん?》
「黙れ! 話しかけるな! 気が散る! 後もう少しなのだ!」
 そう言われて待ってあげるんだから、サリーも優しい。

「よし、たまった!」
 新米神聖騎士が親指をビシッと突き立て、手首をゆっくりとひねって親指を下に向ける。
「有罪! 浄霊する!」
 今更、決めポーズをとる。

「その死をもって、己が罪業を償え・・・終焉ノ(グッバイ・)滅ビヲ(イービル・)迎エシ神覇ノ(ブレイク・)贖焔(バーン)!」

 バジルから光が一気にふくれ上がり、どデカい白光の玉と化してゆく。
「ククク・・あばよ」
 そう呟くと同時に、強大な浄化魔法の奔流がサリーへと向かう。

 しかし、暗黒神の顔には余裕の笑みが浮かんでいた。(もと)上級天使のサリーには、『マッハな方』の力はあまり効かない。その上、今回は憑依体が悪すぎる。直撃をくらっても、ダメージにならないと踏んでいるのだ。

 けれども、バジルに注意が向いている今こそチャンス!
 オレは、勇者の剣でサリーを背後から斬った。

 62万ダメージ+追加効果73万ダメを与えた……





 バジルのグッバイの魔法はノー・ダメだったものの、勇者のオレはサリーを斬った。

 勝負は、光の国の勝ちとなった。

 あっさりと負けを認め、サリーは全軍をつれて国に帰って行った。



 オレは王妃様と相談した上で、エグリゴーリ国への援助物質の準備を始めた。

 困窮にあえぐ民がいる限り、暗黒支配神は何度でも戦を仕掛けて来る。
 欲しがってるものをさっさと渡して、大人しくしてもらった方が両国の為だ。
 暗黒神様のご機嫌を損ねないよう、演出もする。援助という形では送らず、暗黒神を信奉する誰かからの貢物って形で荷を積んだ船を海へ流す。途中までアウラさんに船を操作してもらい、あっちの国の海賊か魔族に渡してもらう予定。


「どうなさいましたの、勇者様? 浮かないお顔。こたびの戦は勇者様のご活躍で、大勝利でしたのに」
 寝室で、妻が不思議そうに首をかしげる。
 何でもないと言って、妻を抱きしめた。
 今日の勇者様はとても格好良かったですわ、とアンジェリーヌ姫が無邪気に微笑む。

 心からオレを愛してくれてる、可愛い妻だ。


 サリーに与えたダメージ値が、心に重くのしかかっている。
 62万ダメージ+追加効果73万。
 勇者の剣の追加効果は、オレの与えたダメージ値と伴侶の数によって決まる。オレが100万以下のダメを出した時には、仲間一人につき一万ダメージが追加されるはずなのだが……
 追加効果は73万ダメージしか無かった……

 つまり……魔王戦が終わり、オレとの絆を忘れた伴侶が27人居るって事。

 時が流れるにつれ、追加効果のダメージ値はどんどん減ってゆくだろう。

 百一代目勇者ジャンは忘れ去られてゆくのだ……


 お師匠様やジョゼ達を思い出すと、胸が痛む。

 けれども、オレは……一生、この世界で生きていく。
 十八代目召喚勇者として、この世界とオレを慕ってくれる姫を守り続ける。

 償いだ。

 裏冒険世界に暗黒神を復活させてしまったのは、他でもない。このオレなのだから……


 魔王戦で、オレはサリーを叱った。
 サリーが魔界にひきこもっていたせいでエグリゴーリ国が飢饉となったことを、責めたのだ。
『もうちょっと自分の支配世界を大事にしろよ。信奉者を幸せにしてこその、暗黒支配神だろう』
 オレがそう言うと、サリーは素直に頷いた。
《うん。そーだよね。これからはちょくちょくカオ出すようにするよ》
 オレはサリーの言葉を喜び、『それがいい。そうしろよ』などと応援した。
 あの時、オレの頭の上に居たベティさんは大爆笑した。《やっぱ、おにーちゃん、最高! 馬鹿すぎ!》と。
 何が馬鹿なのか、あの時はさっぱりわからなかったが……

 今ならわかる。
 サリーが真面目に暗黒神をやればやるほど、敵対している光の世界はヒドイ目に合う。
 オレは勇者のくせに、闇の勢力の拡大を促してしまったのだ。御使いを殺さないよう頼んだのもオレだし……


 過ちの責任は、きっちりとる。

 幸いなことに、サリーはオレをお友達と思っている。
 モードもメリザンドも、オレに恩義を感じている。

 オレが光の国にいる限り、本気の戦は仕掛けてこない。
 遊び感覚で戦争ごっこをし、望みがかなえばあっさりと帰ってくれる。

 サリーの遊びに付き合って、光と暗黒の国の仲をとりもつ……それがオレのなすべき仕事だ。


「勇者様、休みましょう。勇者様へのご褒美に、今宵は私を捧げますわ。私、どんな恥辱プレイにも耐えてみせます。どうか、心ゆくまで弄んでくださいまし」
 アンジェリーヌ姫が、うっとりとオレを見る。

 姫の勘違いは、もう修正不可能。
 そんな趣味は無いが、できる限りリクエストには応えてあげている。

 真っ直ぐにオレを慕う姫は、可愛い。
 この子を守りたい……この世界で生きていこうって気力がわいてくる。
 姫の無邪気さに、オレは救われているのだ。

 さて、姫の為に、今夜も頑張るか……
【お姫さまといっしょ 完】

+ + + + + + + + 

 タイトルに、いつわりあり。正式タイトルは、「サリーちゃんといっしょ」。

 シモーヌは、魔界でお人形生活中。
 ロザリーは、秘密兵器となっています。いざって時には『悪霊から守るくん 改・改・改』を発動し、エグリゴーリ国の者を追っ払う係。かわいそうな事に、毎回、気絶してます。魔力を注入すれば、『悪霊から守るくん 改・改・改』は稼働し続けちゃうし……。讃美歌なんで、サリーにはほぼ効かないのですが。

 タイロンとジュリエットに加え、バジルまで『マッハな方』を降ろせるようになりました!
挿絵(By みてみん)

 なのに、光の国の劣勢は変わらず。
 光の神の旅行好きは直らず、暗黒の力ばかりがどんどん強くなっています。

※この話のイラスト
 すべて 学者風家人 作
+ + + + + + + + 

 次回は、冒険世界に流されての話。故郷を失ったジャンを慰めようと、心優しい魔神が頑張ります。
 8月5日(月)更新予定です。
+注意+
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