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ハーレム100 作者:松宮星

幻想世界

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森の王者      【ピア】(※※)

「こ……この子が……最強の、ワーベアー……?」
 クマ獣人を指す、オレの指はぶるぶると震えていた。

「さようでござんす」
 どこからどう見ても白ウサギなシロさんが、頷きを返す。
 長い耳と、羽織った道中合羽、口にくわえたシロツメクサまでもが揺れる。
「あっしと義姉妹の契りを交わした、村一番のクマ娘にござんす」

 オレ達はシロさんの案内で、森のクマさんに会いに来たわけだが……
 シロさんが連れて来た子は、最強のワーベアーとは思えない者で……

 いや……
 最強は、最強かもしれない……
 ある意味……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと八十五〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 あ〜ぁ……
 萌えちゃった……
 いいのか、オレ……こんなんで……

「こんにちは」
 クマさんが、オレ達に挨拶をする。
「こ、こ、こんに、ちは」
 ドキドキしながら、オレは挨拶を返した。

 クマ獣人は、シロさんと並んでいた。
 後足で立っているんだ。

 クマ獣人なんだから、爪や牙が武器なんだろうとは思う。

 しかし……
 戦う姿なんて、想像できない。

 クマさんは……
 茶というよりはオレンジな毛皮で、口から鼻のあたりだけが白みがかっている。もこもこの毛皮、つぶらな黒い瞳、小さなお鼻、小さなお口、丸いかわいいクマ耳。
 頭が、とっても大きい。だもんで、体は丸々としてるんだけど、細く見える。アンバランスだ……二頭身しかない。
 これは……まさにぬいぐるみだ。ぬいぐるみ以外のなにものでもない。

挿絵(By みてみん)

 大きな頭をもたげるクマさんは……
 ふわふわのシロさんと、同じくらいの身長だ。
 真っ白で道中合羽なシロさんと、オレンジでぬいぐるみなクマさんが、並んでいる。

「ピアでーす。はじめましてー」
 クマさんは、短い前足をあげ、威嚇なのか、挨拶なのか、
「がぉー」
 と、吠えた。
「がお〜」
 パメラさんが低い声をつくり、吠え返す。

 あああああ、もう、駄目!
 フォーリン・ラブ!
 クマさんの掌に、ピンクの肉球があるよ!
 ぷにぷに、っぽい!

 萌え〜〜〜〜!
 シロさん以上に萌えるヒトに、出会ってしまうとは……

 オレをつきとばし、飛び出たのは、サラだ。
 クマ獣人をぎゅ〜〜〜と抱き締め、頬ずりをする。
「いやん、もう! かわいい! かわいい! かわいい!」

 堕ちたか、サラ……
 クマのぬいぐるみ、大好きだったもんなー

 パメラさんが、指をくわえる。
 ジョゼもマリーちゃんも、抱っこしたそうに側をうろうろしている。

 オレも、うずうずしている。
 肉球、触りたい……

 クマさんは、
「あんまベタベタしないでー」
 と、不満そうだった。が、獣使いのお願いを聞いて、しばらく大人しくしていてくれた。
 ジョゼとマリーちゃんも、抱えあげて頬ずりしてる。

 オレも憧れの肉球に触りたいんで順番待ちをしてたんだが……
 できなかった。
 クマさんは、マリーちゃんの腕の中からジーッとオレを見つめ、それから、くわーっと口を開いたんだ。
 オレにむけて。
 ぬいぐるみな外見に似合わぬ、おっかない歯並びだった。

「だめにゃー!」
 ネコ獣人のミーが、横からオレに抱きついて押し倒す。身を乗り出したクマさんとオレの間に、だいぶ距離が開いた。
「このおにーさんは、ミーの! 食べちゃ、ダメにゃ!」
 へ?
 食べる……?

「クマは雑食だ。木の実、蜂蜜、キノコなどの森の幸の他に、肉や魚も食す」
 お師匠様が、淡々と解説してくれる。

 そーですよね、クマなんですよね。

 外見はぬいぐるみでも、クマなわけだから……
 人魚の残り香を漂わせるオレは、ご馳走なわけだ……

 オレはミーにお礼を言って、立ち上がった。
 ネコ獣人はクマ獣人に対し逆毛を立てながら、オレに耳打ちした。
「後で舐めさせて欲しい、にゃー ちょっとでいいにゃー」
 パメラさんが一緒の時ならいいよ、と答えておいた。
 理性失うと、おまえ、オレを喰うだろ?

 パメラさんが『食べては駄目』と、クマさんに注意をする。
「あの男は、おねえ様の何なんですかー?」
 そう聞かれ、パメラさんが首をかしげる。

「あの男は……あたしの……」
 そこで言葉は、区切れてしまう。
 おどおどした視線で、オレを見ながら、首を傾げ続ける。

 仲間! 仲間だよ、パメラさん!
 正しくは、勇者なオレの、あなたは仲間! オレが主役で、あなたはオレの協力者!

 パメラさんが、顔をパーッと輝かせる。そうだ! こう言えばいいんだわって感じで。
「尊敬する人の、持ち物なの。勝手には、食べないで」

 あぁぁ……
 ですよねー。オレ、お師匠様のオマケですよねー。
 このパーティの主役は、パメラさんだし……
 うううう……

「よろしければ、あっしの妹分ピアも、ご一緒させてもらえませんか?」
 と、シロさんがパメラさんにお願いする。

「こいつは、森で生まれ、森で育ちました。村一番のクマ娘ですが、外の世界を知らぬ、井の中の蛙。あっしが旅に出る際には、見聞を広めてやるって約束してたんでござんすよ」
 蛙な、クマか。

「ドラゴンの女王様に御挨拶ができるとあっちゃ、クマ族の者も旅を許してくれるでしょうし、」
 この世界では、ドラゴンは獣の王だそうだ。けど、荒野にいるから会いに行くのは困難。目通りかなうだけで、獣人にとっては名誉らしい。
「こいつとの二人旅でしたら、帰りの道中も安心でござんす。お許し願えませんか?」

 帰り?

 シロさんが、赤い目でオレを見上げる。
「兄さん」
 オ、オレ?
 オレ、シロさんに話しかけられている!
「はい!」
「姐さんから伺いやした。異世界の勇者さまだそうで……そんなお偉い方とは知らず、礼を失しておりやした。どうぞ、お許しください」
 許すも何も!
「気にしないでください、シロさん!」
「お優しいお言葉、いたみいりやす」
 シロさんがひょこんと頭を下げる。耳がぺたりと垂れる。かわいいなあ……

「勇者の兄さんは、仲間を求めての急ぎ旅だそうで。あっしはドラゴンの女王様のもとまでご一緒させていただきやす。が、相旅はそこまでといたしやしょう。あっしはあっしで野原に帰りますんで、勇者の兄さんはご自分の旅をお続けください」
 帰りは送らなくっていいと言ってるのか……
 かよわい白ウサギなのに!
 強いモンスターがいっぱい居る荒野に行くのに!

「ピアと一緒なら、あっしも心強い。難なく帰って来られるでしょう。どうか、あっしの妹分の同道、お許しください」
 ぴょこん、ぴょこんと、オレとパメラさんにシロさんが頭を下げる。
 ピアさんも、姉貴分に倣い、オレとパメラさんにでっかい頭を下げる。

 ぬいぐるみみたいな二匹が二人旅だなんて、危険じゃん……
 あぁ、でも、クマ獣人は強いのかな? 凄い牙だったし……


 そんなわけで、クマ獣人ピアさんも一緒に旅をする事になった。
 絶対、オレを食べない! って約束してもらった上で。

 ネコ耳、ウサ耳、クマ耳。
 充実の獣耳。
 ネコは半人間、ウサギは白ウサギそのもの、クマはぬいぐるみだが。

 シロさんは、パメラさんに抱っこされてる。
 が、抱かれるのが嫌いなクマ獣人は、自分で歩くと言い張った。
 短い後ろ足でちょこちょこと、大きな頭を揺らしながら歩く姿はとーてもかわいい。
 かわいいが……

「ピア。てめーの歩みじゃ、ハエがとまるぜ。姐さんや兄さん方の迷惑だ。誰かに運んでもらいな」と、シロさん。
 うん!
 それがいい!
 アタシがと名乗りでたサラに、クマさんは大きな頭をブンブンと横に振った。

「歩幅を広くするー 変身(メタモルフォーゼ)するねー」

 変身?

 クマさんは、かわいらしい『がおー』ポーズをとる。

 すると……
 ちっちゃなクマさんの体が、ぐぐぐぐ〜んと伸びてゆき……
 サラよりも、大きくなり……
 更に更に伸びてゆき……
 サラの倍はある、デッカい大熊となった。

 オレらは唖然とクマ獣人を見上げた。

 毛色こそオレンジで変だけど……

 そこにいるのはクマ。どー見てもクマ。間違いなくクマ。

 ぶ厚い毛皮に覆われた体、ごっつい前足、ぶっとい後ろ足。犬歯をのぞかせる丈夫そうな顎。前足の爪も凶器なまでに鋭い。
 森の王と呼ばれるのにふさわしい、野獣姿だ。

 サラが身をすくませる。

 恐ろしげなクマが、オレらを見下ろす。
 何を考えているんだかわからない、獣な瞳で。

「馬鹿野郎、ピア。三形態目になるな。てめえはデカすぎるんだよ」
 パメラさんの腕の中のシロさんが、変わらぬ口調でクマを怒鳴りつける。

「そんだけデカいと、てめえ、人間を丸ごと食わねえと腹がくちねえだろう? 変身するんでも、二形態目まで、だ」

 人間を……丸ごと……食う?

「ごめんなさーい」
 クマはシュンとして、シロさんに頭を下げる。

 そして、再び『がおー』ポーズ。
 体は、スススと小さくなってゆき……
 体毛は、薄くなってゆき……

 サラのすぐ側には……
 大きくて丸い黒の瞳、ちっちゃなお鼻とお口の、女の子が現れた。サラより背が低い。
 オレンジのふわっとした毛皮が胸と腰を覆い、もこもこの首輪をつけ、手首と足首にウォーマーを巻いてるみたいだ。
 んでもって、やっぱりオレンジの、もこもこの癖ッ毛ショートヘアーのてっぺんには、あの……
 かわいい丸いお耳……

 クマ耳!

 おおおお、かわいい!

 さっきまで野獣だったのに……
 かわいいよ、クマ耳娘!

「クマ族は三形態の変身ができやす」
 シロさんが、驚いているオレらに説明をしてくれる。
「大中小。大になりゃ、ワーウルフだって片手であしらう、強力な戦士になりやす」
 だよね……あんだけデカきゃ……

「けど、デカきゃデカいほど腹が減るってもの。森の恵みを食い尽くさないよう、クマ族は、普段は小型化して暮らしているんでござんすよ」

「ミーもシロさんも変身できるの?」

 オレの問いに、ミーが元気よく頷く。
「できるにゃ。けど、大小の二つだけにゃー クマとは違うにゃー」

「あっしも大小の二つだけで」と、シロさん。
「大中小の三段階変身ができるのは、もとの姿がデカい、一部の奴だけでやんすよ。ワーウルフの野郎どもも、まあ、できやすがね」

 その言い方から、シロさんがワーウルフに好意を抱いてないのはわかった。
 ウサギと狼じゃ、まあ、そうか。

「変身した姿、見せてくれる?」
 って、頼んだら、ミーとシロさんが顔を合わせる。何か妙な顔つきだ。

「おにーさん、今、ここで、やれって言ってるのか、にゃ?」
「今はマズい?」

「あったりまえだにゃー」
 ミーが、ぷぅっと頬をふくらませる。

「大型化したら、服、破けるにゃー ミー、すっぽんぽんだにゃー」

 ぶっ!

「あっしは大型化したら、毛が薄くなりやす。人間に近い形態になりやす」
 パメラさんに抱っこされてるシロさんが、自分の道中合羽を触りながら、ちょっと照れたように言う。
「デカくなったら、こいつじゃ、胸すら隠せません……丸だしになりやす」

 丸だし……?

 人間に近い形態で……?

「シロさん、大型化したらどうなるんです? 顔や体は?」
「耳と尻尾はそのまんまですが、後は人間みたいになりやすね」

 ウサ耳娘……
 んでもって、すっぽんぽん……

 えぇぇ!

 そ、そんな!

 心踊る!

 見たい!
 見たい!
 是非、見たい!


 オレの妄想の時は長く続かなかった。
「いやらしい想像するなー!」
 と、サラに杖でぶん殴られたからだ。





 魔王が目覚めるのは、九十ニ日後だ。

 オレ、今、裸のクマ耳娘と、裸のウサ耳娘と、大きくなったら裸になっちゃうネコ耳娘と一緒なんだな……
 何かちょっぴりエッチな気分……


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№015)

名前 ピア
所属世界   幻想世界
種族     ワーベアー
職業     クマ戦士……
       うん、『クマ』がついてるもんな。
       戦士でもOKだよな。
特徴     三形態に変身ができる。
       雑食なんで、オレが美味そうに見えるらしい。
       抱っこされるのが嫌い。
       ……肉球、触りたかったなあ。
       シロさんの妹分。
戦闘方法   爪とキバだろう。
年齢     まだ子供。
容姿     オレンジの毛並、黒の瞳。クマ耳。
       小の時は、愛くるしいぬいぐるみ。
       中の時は、童顔の美少女。
       大の時は、野獣。
口癖    『がおー』
好きなもの  なし。何でも食べる。
嫌いなもの  なし。何でも食べる。
勇者に一言 『あんまベタベタしないでー』
挿絵(By みてみん)
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