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ハーレム100 作者:松宮星

さらば愛しき世界よ

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ジョゼフィーヌの手紙

 レイちゃん。

 早いものです。あなたがいなくなってから、一年が経ちました。

 もしもの時の為に、あなたに手紙を書いておく事にしました。
 私はとても元気です。けれども、明日も元気とは限りません。
 夕方には帰る、と手を振ってお出かけになったお母さまとお義父さま。そのままお二人が帰らぬ人となった日の事を、私は忘れる事ができません。

 イザベルさんから教えていただきました。
 精霊支配者を失ったしもべは、精霊界に強制送還されてしまうのだそうですね。私が死んだら、再生して復活した途端、あなたはこの世界から消えてしまう。

 この手紙を、あなたと同族の雷の精霊に託します。
 あなたが遠い雷界へ行ってしまっても、私の気持ちが届くように。

 レイちゃん。
 心から感謝しています。
 ありがとう。

 精霊界、英雄世界、ジパング界、天界、魔界、エスエフ界、冒険世界、裏冒険世界、裏ジパング界、裏英雄世界……
 あなたと一緒に十の世界を旅しました。

 ジャンお兄さまとケンカをしてしまった時、他の女性と仲良くなさっている姿に嫉妬した時、お兄さまと離れ離れになってしまった時、賢者さまが石化された時、お兄さまが貧乏神様のお力で眠りについてしまった時、シャルル様との婚約解消のことで悩んでいた時……
 ずっとあなたは、私の話に耳を傾けてくれた。
 励ましてくれ、
 どうすべきか一緒に考えてくれ、
 時には、私の代わりにお兄さまを怒ってくれましたね。

 私が旅を続けられたのは、あなたのおかげです。

 英雄世界で究極魔法の秘密の一端を知った後……目の前が真っ暗になりました。
 あなたが側に居て支えてくれなかったら、私、きっと……お兄さまを問い詰めたでしょうし……
 お兄さまを失う未来を恐れるあまり、泣き暮らして、又、昔のように心を病んでいたでしょう。

 小さい時の事は、あまり覚えていません。
 けれども、全てが黒く醜く歪んでいて……他人の口から出る言葉が刃のように痛かった……
 何もかもが怖かった……
 臆病な私はお母さまの背中に逃げ込み、目を閉じ、耳を塞ぎ、震えてばかりいた。

 お兄さまに出逢えたから……私は死ななかったのです。
 明るくてお優しいお兄さまが、私の世界から闇を祓ってくださった。
『おいで』と差し伸べられた手……私の手をお兄さまがしっかりと握ってくれたから……生きてこられたのです。

 お兄さまが私の全て。
 お兄さまを失ったら、私はもう生きていけない……

 心を乱す私を、あなたは支えてくれた。
 死なせたくないのなら守ればいい、守れる技量が無いのなら強くなればいい、強くなりたいのなら手伝おう……そう励ましてくれて。
 私が気弱になる度に、慰めてくれて……

 本当に、ありがとう。

 あなたが一緒に居てくれたから、私、強くなれた……

 お兄さまの最愛の方が誰か気づいた後も、耐える事ができた……


 でも、魔王戦の事では、怒っています。
 ピッカリ拳の真の力を引きだしたら、あなたがこんな形で消えてしまうのだと知っていたら……使わなかった。

 けれども……
 私がピッカリ拳を使わなかった為に、お兄さまがお亡くなりになったら……
 その時、私の心はどうなっていたか……

 よくわかっています。あなたは、私の心を守ろうとしてくれたのだと。だから、何も教えずに四散したのでしょう?

 だけれども、悲しいのです。あなたに守られただけで、私はまだあなたに何も返していない。


 あなたはよく、私が幸せになった姿が見たいと言っていましたね。私が幸せになるまではしもべで居たいとも。

 私にシャフィロス星の昔の女王様の面影を求めていたのだと知ったのは、エスエフ界に行ってからでした。
 あの時、初めて気づきました。
 私は、あなたの事を何も知らないと。
 話を聞いてもらうばかりで、あなたの事を何も知ろうとしていなかったのだって。

 それから、いっぱいお話を聞かせてもらいましたね。

 エスエフ界の他にも二つの世界でしもべをしていて、私は四人目の主人なのだと知ってびっくりしましたし……
 異世界のしもべ経験の話は、面白かった。
 二人目と三人目のご主人の方もシャフィロスの女王様の面影のある方だったと教えてくれた時のあなたは……照れいていて、かわいらしかった。

 あなたと雷神無双神鳴り拳の稽古をするのも、大好きでした。
 格闘の知識があるだけでなく、レイちゃん自身が素晴らしい格闘家だったから。
 動きの型も、技の組み立ても、返し技も、いっぱい教えてもらいましたね。
 組み稽古が特に好きでした。一緒に体を動かしていると、昔に戻ったみたいで……お母さまやお兄さまと一緒に稽古を積んだ時みたいだった。楽しかった。

 あなたと一緒にいるのが自然で……
 ずっと一緒にいられるのだと思っていました。

 あなたとずっと一緒にいたかった……

 次に、あなたと出逢えたら……
 幸せになった私を、あなたに見てもらって……
 あなたが幸せになれる日まで、今度は私がお手伝いをしたい……

 今は、そう思っています。

 けれども、この手紙があなたに届いているという事は、私はもう亡くなっているのですよね。
 お手伝いができなくて、ごめんなさい。
 でも、あなたにも幸福になってもらいたい。
 心から、そう思っています。

 それから、もう一つ、謝ります。
 ごめんなさい。

 レイちゃんは、本当は……レイ君なのですよね?
 初めて会った時は若い男の方の声だったし、シャフィロスの女王様を愛していたのですもの。
 精霊には性別はないけれども……男性形が好きなのでしょう?
 それなのに、私のせいで……
 男の方の声だと私が緊張してしまうから……それで、女の子の声で話してくれたのでしょう?
 ごめんなさい。
 でも、今なら大丈夫です。
 どんな姿でも、どんな声でも、平気です。
 レイちゃんはレイちゃん……
 私の大切な、たった一人の……レイちゃんです。


 そうそう。
 伝えていませんでしたね。

 お兄さまは、勇者として魔王を退治しました。
 とても格好良かったのです。
 お強くって、お優しくって……
 勇者の中の勇者でした……
 お兄さまの勇姿を、あなたにも見せてあげたかった。

 一時はとても危ない状況になって……
 サラさんやお兄さまがお亡くなりになるのではないかと、心配でした。

 それで……
 私、泣いてしまいました。
 小さな子供みたいに、大泣きしたのです。
 みなさまの前で、ですよ?

 笑ってしまうでしょう?

 少しは大人になれたかと思っていたのですが、あなたの支えがあっての事でした。
 一人になった途端、子供返りをしてしまったのです、本当に恥ずかしい……

 けれども、『強くなる』とあなたと約束したのですもの。
 その後は、私なりに頑張っています。

 魔王戦の後、思いもかけぬ事がいっぱい起きましたけれども……
 私の身にも、お兄さまの身にも……

 今、お兄さまは……
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