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ハーレム100 作者:松宮星

さらば愛しき世界よ

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何でも叶えちゃおうコーナー

「魔王の説明がずいぶん違いますね」
 お師匠様の姿の女神様を、オレは睨みつけた。
「あんた、言ったじゃないですか。カネコは男を皆殺しにして、奴隷ハーレムをつくりたいんだって」

《あ〜 それはね、ウ・ソ》
 なにぃ?
《だってさー あの時、キミはまだ立花詩織ちゃん達と知り合ってなかった。見ず知らずの子達が生きようが死のうが、カンケーなかったわけだし〜 キミを本気にできないんじゃないかなーと》
「……で、嘘をついたんですか?」
《うん》
 あっさりと女神様が答える。

《シルヴィちゃんや義妹や幼馴染……身近なものに危険が迫ってるって教えりゃ、馬鹿なキミは必死になる。キミが百人の伴侶を集める勇者だから、そのライバルはハーレム魔王にしたわけー》

 オレは拳を握りしめた。
 まだ、だ。
 怒るのは、まだ先だ。
 聞くべき事を、全て聞いてからだ。

「アシュリン様達の攻撃がカットされたのも、賭けのせいなんですね?」
《ピンポーン♪ 召喚者はこの世界基準の攻撃力に再設定されて、ゲームに組み込まれる。だってさー この世界じゃボーンの駒が、クイーンの強さで参入したら、ゲーム・バランスが破壊されるだろ? 賭けが成り立たなくなる》
「アシュリン様やナディンは300万ダメージ、ドゥルガー様と魔界の王は600万でしたね」
《S級の神魔の上限値は300万、主神相当のウルトラS級は600万。昔から、そうと決まっている》

「100人目をなかなか仲間にできなかった理由は? それも賭けのせいですか?」
《ん〜 そっちは、託宣のせい。キミの学者さんが推測した通り、100人目は特別な愛である必要があった。けど、玉座の広間で結婚式は予想外〜 あの学者さんにも笑かしてもらったよ〜 司祭役なんかやりたくなかったろーにねー キミの為に頑張ってたよねー》
「二人のどちらかと結婚しても、託宣は叶ったんですか?」
《叶った。でも、キミの未来は閉ざされた。100人目の攻撃は、がんばって200万。魔王の残りHPを削りきる為に、キミはちゅど〜んするしかなかった》

 女神様が笑う。
 ドキンとした。
 ほんの微かに口元をほころばせて微笑むその顔は……お師匠様ならこんな風に微笑むだろうと、オレが想像していた通りの顔で……

《生き延びてくれて嬉しいよ、ジャン君。キミの昇天を見送らずにすんで、良かった》

「つまり……ヴェラさんを選ぶのが正解だったんですね?」
《正解も外れもない。だが、そうであって欲しいとは思っていたよ》
 先ほどの酷薄な顔が嘘みたいだ。
 女神様は優しく微笑んでいる。


 ガキの頃から、お師匠様に憑依する女神様に会ってきた。
 無表情のお師匠様が豹変し、きゃぴきゃぴするのだ。すっげぇ違和感があった。が、お気楽で明るい女神様も、お師匠様と同じくらいに好きだった。

《やっほぉ〜 ジャン君、おひさしぶりぃ〜》
《剣の稽古? おお、えらいぞ。がんばってるねぇ〜 キミは努力家だ〜》
《ん? 魔法が使えない? へーき、へーき。魔法なんかなくても、なんとかなるなる〜》
《真の勇者への道は困難だけど、キミはラッキーだぞ。美人でかわいいお師匠様と、ラヴラヴうっはうは〜な修行なんだから〜 シルヴィちゃんのためにも、がんばって立派な勇者になるんだぞ》


 女神様は、ずっとオレを見守っていた。
 オレだけじゃない、お師匠様の事も気にかけていた……

「……歴代勇者や賢者たちを愛していますか?」
《もっちろん、みな、愛しいよ》
 神様が静かに微笑む。
《愛しいに決まってる……全てを捨て、勇者や賢者は愛するものを守ってきた。その生きざまを、女神として見守ってきたんだから》
 二千年近い時を思い出すかのように。
《かなう事なら、みな死なせたくなかった。できない願いだけどね……この世界は大きな破滅を回避する為のゲーム盤だもん……》

 女神様への不信は消えない。
 だが、それでも……怒りと憎しみ以外の感情も、オレの中には確かにあるのだ。

「……勇者と賢者のあり方、おかしいです。勇者を育てる為だけに賢者が生きていて、逃がさない為に勇者を賢者の館に閉じ込めて育てるとか……オレ的に許せないんですけど」
《じゃあ、変えれば?》
「変えていいんですか?」
《ある程度はね〜 賢者が勇者の教育係であることは変えらんない〜 でも、そればっかをやる必要はないし、協力者を募ってもいい》
「オレもそう思います」

《賢者の館って、昔はなかったんだよ。勇者は賢者と共に、王都で暮らしていたんだ》
 へー
《だけど、魔王討伐をやりたくないって勇者が逃げだすわ、王宮の陰謀に巻き込まれるわ、魔王の信者に命を狙われるわで、ダメダメでさー 十九代目ウーゴ君の代に、賢者のモーリス君がつくったわけー》
「モーリスって……初代勇者モーリス?」
《うん》
「十九代目の時代にも、まだ賢者だったんですか?」
《うん。責任感の強い、真面目な子だったからねー あれこれ協力してくれたー 引退したのは、賢者の館ができた後ー 二十代目ヴァレリー君に賢者を譲った〜》
「勇者を外に出さない、第三者を賢者の館に招かない、外界との手紙のやり取りさえも駄目……。ルールを決めたのは、初代?」
《そう。暗殺防止と、勇者に里心をおこさせない為〜 あの子が勇者の為に考えたルールだけど、ふさわしくないんなら変えればいい。おっけぇ?》
「……おっけぇです」
 口元に笑みが浮かんだ。
「オレが賢者になったら、システムを変えますよ」

《構わないよ〜 勇者をちゃんと育ててくれるんなら、ね。まあ、キミが賢者になれなくとも、水の精霊に意志は託してるし〜 大丈夫でしょ〜》
 ん?
「オレは賢者になりますよ」
 女神様が微妙な顔で笑う。

《他に質問は? ないなら、そろそろ『何でも叶えちゃおうコーナー』にしようか》
「いや、あります」
 オレは慌てて、質問を口にした。

「『マッハな方』のことなんですが」
《回答拒否》
 む。
《あの子は、他の神の管轄だもん〜 情報漏らしたら、怒られちゃう〜 知りたかったら、そっちに聞いて〜》
「何処の世界の何って神様に聞けばいいんです?」
《ひ・み・つ♪》
 く。

「んじゃ、質問を変えます。マリーさんは三つの時にこの世界に来たけど、転移の時は眠っていたそうですね。転移の試練は、誰が受けたんです?」
《マリーちゃんじゃない子》
「誰です? 『マッハな方』ですか?」
《ひ・み・つ♪》
 このぉ……

《他の質問は?》
 女神様がニヤニヤ笑っている。

「カネコですが、」
 オレは女神様をまっすぐ見つめた。
「どうなるんですか?」

《消滅する》
 女神様がさらっと言う。
《HPがゼロになったんだ。死ぬのが当然だろ? ご褒美タイムの後、邪悪なあの子には消えてもらうよ》

「邪悪なのは、魔王『カネコ アキノリ』でしょ? 人間カネコとヴェラさんは、消滅する必要はないはずだ」

《へー》
 意地の悪い顔で、女神様が笑う。
《ヴェラちゃんはともかく……金子くんは、幼馴染や恩人それに知人の皆殺しを望んで魔王になったんだよ? ンな人間を邪悪じゃないと、キミは言いきれちゃうわけ〜?》

「言いきれません」
 正直にオレは答えた。
「オレはカネコを知らない。噂を聞いただけで、直接話してない。どんな奴かわかりません」
《だね》
「でも、皆殺しを願ったのは一時の感情かもしれない。冷静になってから、後悔したかも。……オレだってカーッとなってニノンを殺そうとした。伴侶達に失礼な思いを抱いた時もあった。だけど、いっぱい間違ってもいいんです。正しい道に戻れれば。アネコ様がそうおっしゃっていたし。それに……」
《それに?》
「オレはタチバナ シオリさんは知っている。彼女がカネコをあれだけ大事に思ってるんだ。悪い奴のはずがない。そうだろうと信じる事はできます」

 ププッと女神様が吹き出す。
 馬鹿にしきった眼で、オレを見てるし……
 非常にむかつく〜


「ご褒美の一つ目、言います!」
 オレは女神様に対し、一歩前に踏み出した。
 魔法戦の後、勇者はどんな望みでも一つだけ神様に叶えてもらえる。
 歴代勇者はみな一つだけだったが、オレは特別に二つのご褒美をもらえる。

「魔王『カネコ アキノリ』とされていた人間を救ってください。英雄世界の高校生とヴェラさんを、もとの姿でもとの世界に還してください」

《本気?》
 冷たい声がする。
《それを、女神に願うの?》
 女神様から、軽薄そうな表情が消える。
 凍てつく氷のごとき顔といおうか……全てを見下す、無慈悲な女神の顔だ。
《タブーをわきまえよと教えたはず。我が教えに反する願いは退ける……忠告したはずだ》
 口調まで変わりやがった。

 確かに、女神様は言った。聖教会の教えに反する質問や願いは聞き入れないって。
 死者の蘇りを願うのは、聖教会的に禁忌。フォーサイスの蘇りを望んだお師匠様の願いは退けられた。
 知っている。
 知っているが……
 ここは一歩も引く気はない。

「もっかい言います。最初のお願いです。二人を人間として蘇らせてください」

 眉をひそめ、女神様が冷笑を浮かべる。
《勇者よ。女神の言葉を忘れたか?》
 風もないのに、突風を感じた。
 空気が痛い。肌につきささるようだ。
 淡く輝いていた女神様が、まるで太陽のように神々しくまばゆく輝いている。急いで眼を閉じ、うつむいた。
 頭上から何かがのしかかっているような、圧迫感。
 足は根が生えたかのようだ。動かない。
 胸が、どんどん苦しくなる。
 冷たい汗が全身を流れる。
 みっともないほど全身が震える……

 さすが、女神。
 いとも簡単に、オレを恐慌(テラー)にしてくれる。

 だが……

 ぜったい、負けねえ!

 オレは剣の柄に手をかけた。

「女神様のお言葉はよ〜く心に刻んでいます! だからこそのお願いです!」
 まぶしいから顔はあげられない。下を向いたままなのがマヌケだが、仕方が無い。そのままオレは叫んだ。

「さっき言ったじゃないですか! 勇者にご褒美、魔王にもご褒美で、平等だって!」
 剣の柄を握りしめる。
 勇者の剣の柄と鞘は、まばゆい宝石で彩られている。宝石は十二の世界の伴侶達を表している。
 そして柄頭のドラゴンは……お師匠様のファントムクリスタルをくわえている。
 みんなが一緒に居てくれるんだ。
 恐れる事はない。
 オレは勇者として、心のおもむくままに生きる!

「ブラック女神は、カネコのどんな願いでも叶えるんでしょ? なら、平等にしてください! オレの方もどんな願いでも叶えるべき! 聖教会の教えに反しようが、何だろうがいいじゃないですか! できないとは言いませんよね? あんた、全知全能の女神様なんだから!」

 唐突に、目が楽になる。
 瞼を閉じていても尚、感じていた光が止んだのだ。

 おそるおそる顔をあげてみた。
 女神様はギラギラ輝くのをやめたようだ。
 だが、その顔は冷たい。口元に酷薄な笑みを浮かべて、冷たく鋭い眼差しでオレを見つめている。

《神の教えに反すると承知した上で、頼むのか?》
「そうです! 死んだのは魔王『カネコ アキノリ』だ! 人間の部分を蘇らせてください! オレの知ってる女神様は、ちゃらんぽらんだけど優しい方だ! この世界も勇者も愛していた! 慈悲のお心をもって、気前よくバーンと願いを聞き届けてください!」

《勇者ならば、罪なき者に情をかけよ。魔王の願いで殺されるであろう人間を見捨て、なにゆえ魔王のみの助命を願う?》
「カネコの知人は殺されない!」
 オレは拳を握りしめた。
「女神様がンな非道をするわけないし、分身のブラック女神にもさせるはずがない! 信じてます!」

 すみれ色の瞳がオレを見つめる。
 目をそらさず、オレは視線を返した。

「神罰を下すんなら、どうぞ。でも、その前にご褒美を聞き届けてください。あともう一つの願いも決まってる。貰えるもの貰ってからなら、何だって罰を受けますよ」

 木の葉にさやぐ風のような……
 それでいて、讃美歌を唱えるような……
 綺麗で厳かな澄みきった声がした。

 神様は笑っていた。
 刃の切先にも似た怜悧な美貌は消え、あたたかく優しく……慈悲深い女神にふさわしい顔で微笑んでいた。
《素晴らしいよ、ジャン君。それでこそ、愛で戦う勇者だ。キミは予想以上のことを成し遂げてくれた》
 何というか……
 可愛い。キラキラと笑顔を輝かせ、本当に嬉しそうに笑っているのだ。

《キミの願いは叶う》
「本当ですか!」
《というか、キミがそう願ったから、金子くんの願いが叶う》
 神様がふふふと笑う。
《魔王戦後、彼は願いを変えたんだよ。もとの世界に還りたい……やり直したいってね》
「え?」
《魔王戦をしてたら、馬鹿馬鹿しくなったわけ〜 詩織ちゃん達は戻って来いって必死に叫ぶし〜 勇者はバカすぎるし〜 『目を覚ませ』って殴りに来て落下死しちゃうし〜 自分だけ冷酷な魔王に徹するのが阿呆らしくなったんだってさ》
 神様がケラケラ笑う。
《で、皆殺しの願いは取り下げたんだよ〜》
 おお!

 ユナ先輩は言っていた、カネコを救いたいからシオリさん達にずっと話しかけてもらうって。
『思いやりのこもった言葉は、武器にも救済にも浄化にもなる。詩織さん達が情をこめて話しかければ、人間『カネコ アキノリ』の心が蘇るかもしれない』
 ユナ先輩の言った通りになった。さすが、言霊使い! 

《だけどね〜 魔王のご褒美は魔王化前の願望の成就なわけで〜 原則、変更できないの〜 それがルール。皆殺しか〜 ご褒美放棄かの〜 二択しか本来ないわけ〜》
 え?
《た・だ・し、特例救済措置がある。魔王の新たな望みと同じことを、勇者が自分のご褒美で願えば、願いを変更できるんだ。魔王が何を望んだかの情報無しで、神の脅しにも屈せず、願わなきゃいけないわけで〜 まあ、普通、勇者と魔王の願いが一致するわけないんだけど〜》

 女神様が微笑む。
《百一代目にしてキミは、初めて成し遂げたんだよ。誰も殺さず、自分も、魔王であった者も犠牲にせず、勇者世界を守った。無血の勝利だよ。おめでとう、ジャン君》

「犠牲はでました。レイが……」
《義妹の雷の精霊? アレは死んでないし。復活を早めたいのなら、同族の精霊に契約の石に力を注ぎ続けてもらえばいい。数年から数十年、復活時期を短縮できる》
 おぉぉ〜!
「ありがとうございます! 初めてお役立ち情報を貰えた気がします!」
 女神様が唇を尖らせる。
《失敬な。いつだって、役立つこと教えてるのに〜》


 オレは女神様を見つめた。
「二つ目のお願いを言います。勇者システムなんですが、」
《ストップ!》
 女神様がオレの口を両手で押さえる。
《二つ目は保留しといた方がいい。身の振りが決まってからにしなよ》
 む?

 ややうつむいて、女神様が上目づかいにオレを見る。媚び媚びの視線だ。
《このまえ、言ったよね〜 キミには、いろいろとすまないな〜と思ってるって。シルヴィちゃんのことも含めて〜》
「あああ……そんな事、言ってましたね。裏ジパングから還った時に」
《女神にもいろいろと制約があるわけ〜 この世界を維持する為に、あっちこっちの世界に頼っているんで、立場が弱くてさ〜 今、ややこしい事になってるんだよ〜》
 ん?

《ジパング界のキミの伴侶に、ヨリミツちゃんがいるだろ?》
 ミナモト ヨリミツ。赤の大鎧の侍大将だ。
 真面目で思いこみが激しくて一途でけなげ。この前、会った時、可愛くってやたらキュンキュンしちゃったんだよな〜
《あの子さ、キミが魔王を倒せるように、ものすご〜く熱心に神仏に祈願してさー》
「みたいですね」
《精進潔斎して水垢離して、お百度踏んで〜 それはそれは熱心にキミの勝利を祈ってくれたわけ〜》
「ありがたいです」
《でさー ついでにあの子、キミとの未来も願っててさ……これまた熱心だったもんで……》
 てへ★ペロって感じに、神様がポーズをとる。
《神意にかなっちゃったんだよね〜》

 は?

 神様が右の人さし指で宙を指す。
 そこに、【VOICE ONLY】と記された黒い画像が浮かんでいた。
《信者の篤い祈願には、神として応えずばなるまい。我が信者ヨリミツが欲しておるのだ、勇者を我が世界に寄こせ》(ジパング界 武神)


 神様が頭を掻く。
《さらに言うとさー 裏冒険世界の伴侶にアンジェリーヌちゃんっているだろ?》
 嫌な予感しかしなかったが、オレは頷いた。
 アンジェリーヌ姫。可憐で可愛らしいお姫様だ。
《あの子さ、キミと結ばれる日を夢見て、それはそれはもう清らかな心で神様にキミの無事と婚姻をお願いしちゃって……》
 てへ★ペロって感じに、神様がポーズをとる。
《これまた、神意にかなっちゃったんだよね〜》

 えぇ〜?

 神様が左の人さし指で宙を指す。
 そこに、【VOICE ONLY】と記された黒い画像が浮かんでいた。
《信心深き者は、幸いである。神の愛は、その者のものである。というか……たまには神らしい事をしないと、信者に逃げられてしまいます! 勇者ジャンを我が信者アンジェリーヌにください!》(裏冒険世界 光の神)


「女神様! オレをよその世界に売り飛ばしたりしませんよね! そこまでアコギじゃないですよね!」
《いや、まあ、そのね……》
 てへ★ペロって感じに、神様がポーズをとる。
《二世界が争ってたら、こんなになっちゃってさ〜》

 神様が両の人さし指で、オレの背後を指す。
 振り返ると、そこには……


【協力世界の方々の声 VOICE ONLY】

《ずっるーい! 二世界だけで勇者争奪戦をするなんて! あの子、うちにも来たんだから、あたしも参加する! 祭りには参加させろ!》(英雄世界 日の女神)

《ジャン? 誰ぇ?……え? 勇者なのぉ? 欲しいー もらう、もらう! 正義の味方は誰でも大歓迎ッ!》(裏英雄世界 創造神)

《あれは、ええ子じゃ。みな好いておる。置いてやってもええよ》(裏ジパング界 長老神)

《来る者拒まず》(冒険世界 主神)

《ピーガガガ、ピーガガガ、ピー》(エスエフ界 機械神)

《あの人間は、予の伴侶だ。興味はないが、神々を喜ばせるのは不快である。争奪戦には参加しておく》(魔界 魔界の王)

《勇者ジャン? 何者じゃ? 聞いた事もないが……魔界の王には絶対渡さん。争奪戦参加を希望する》(天界 天界神)

《人間ごとき下等な生物、我が世界では生きられぬだろう。だが、誇り高き精霊は何事にも退かぬ。棄権はせん》(精霊界 創造神)

《ここは平和的に、アミダで決めませんか? 私ですか? 参加します。私一人が不参加では調和が乱れますから》(幻想世界 調和神)



 ほとんどの世界、オレを欲しがってないじゃん!

 誰でもいいのノリか、なりゆきか、対抗意識か。
 いらねーなら、いらねーって言ってくれよ!

 てか、魔界や精霊界に転移させられたら、オレ、生きていけないと思う!


 転移なんて、冗談じゃない!
「神様! オレはこの世界で賢者になりたいんです!」
 オレは女神様にすがりついた。

 神様が、慈悲深い女神モードで微笑む。
《わかってるよ、ジャン君。キミの希望は女神として叶えたいと思う》
「ありがとうございます!」

《でもね、しがらみもあるから〜 協力世界のみなさまの声も無視できないんだよね〜》
 なにぃ!
《てなわけで! みなさまのご意見をいれて、こちらをご用意!》
 じゃじゃーんとばかりに、女神様が自分の背後を掌でさした。

 そこには……
 大きくてカラフルな円形の盤が浮かんでいた。

 円盤は細かく区切られていて、一つ一つに文字が刻まれていた。
 右半分にあるのは、人の名前だ。上から、ジョゼ、サラ、マリー、アナベラ、セリア、イザベル、リーズ、ルネ、パメラ、カトリーヌ、ニーナ、ヴェラ。さっき書き足しましたって感じに、ヴェラだけ手書き文字だ。
 左半分は世界名。下から、幻想世界、精霊界、英雄世界、ジパング界、天界、魔界、エスエフ界、冒険世界、裏冒険世界、裏ジパング界、裏英雄世界と記されていて……最後にちょこんと『自由選択』の欄があった。

「何なんですか、あれは……?」
 円盤を指さすオレに、女神様がにっこりと微笑みかける。
《ルーレットダーツボード》
「見りゃわかります!」
《矢がささった所が、キミの未来だ。転移するも、真の伴侶を誰にするかも、自分の手で選べるわけ〜》
 でもって、オレの右手にダーツを渡しやがった

《さ、さ、未来を選びたまえ〜》

 え?

 えぇぇ?

《ボードは二十四分割されてる〜 どの未来も二十四分の一の確率〜》
「未来をダーツで決めろと?」
《しょうがないよ、こうしなきゃ、よその神々が納得しないんだもん》
「だけど!」
《ダーツしないんなら、十一世界によるアミダだよ。この世界残留の目はなくなる》
 ぐ。
《ちなみに、外した場合も、アミダになるからね》
 ぐぅぅ。

 女神様がニコッと笑う。
《頑張ってこの形にした! 喜べ! 五十%はこの世界に残留だ!》
「けど! 右の欄、それぞれに名前があるんですけど!」
《文句を言わない! 残留確率を高める為に、この世界だけ真の伴侶決定欄にしたんだから! ダーツが刺さった子が自動的にキミの真の伴侶になるからね〜 おっけぇ?》
「自動で〜? そんな……」
《いいじゃん、どーせ、伴侶って形で仲間にしたんだ。誰を真の伴侶にしても、たいして差はないない》
 いやいやいやいや!
「オレの意志は?」

《あるよ、ここに》
 女神様が左の欄の一番上を指す。そこには『自由選択』の欄が……
《ここに刺さったら、どこに転移するも誰を選ぶかもキミの自由〜 何処の神もキミの未来に介入しない》

「オレの意志は、そんだけなんですか?」

《贅沢言わない。ほんとは、ここ、神々によるアミダ実行の欄だったんだぞ〜》
 へ?
《裏英雄世界のキミの伴侶、みどりちゃんがミラクル・エクスプロージョンで『自由選択』に書きかえてくれちゃってさー》
 迷惑だ、と神様が小声でつぶやく。
 そうだ……ミドリさんは七回のミラクルうちの一回をオレの為に使ってくれた。オレの幸福な未来を願うと言って……
 あああああ、ありがとう、ミドリさん! でも、できれば、もうちょっとミラクルを! そこに必ずダーツが当たるように奇跡を!


《んじゃ、始めるよ〜》
 ダーツボードが、ぐるぐると回転を始める。
 目に止まらぬ速さ。
 独楽みたいだ。
 何がどこに書かれているのか、さっぱりわからない。

《早く、早く〜》
 女神様がオレをせかす。

《やんないんなら、代わるよ〜 キミの未来はこの女神に託されるんだ〜 おっけぇ?》
「嫌です! 未来は、せめて自分の手で選びたい!」
《んじゃ、早く投げてよ〜 あんまり遅いと、女神の番になるからね〜 おっけぇ?》

 女神様を睨んでから、オレは呼吸を整えた。
 ゆっくりと右手をあげ、矢を投げる。

 ダーツの矢は、まっすぐに飛んでいって、そして……


* * * * *


★ダーツはどこに当たる?

●裏英雄世界と思う方は「勇者ジャスティス」へ
 裏ジパング界と思う方は「おとぎのくにで」へ
 裏冒険世界と思う方は「お姫さまといっしょ」へ
 冒険世界と思う方は「ナディンの日記」へ
 エスエフ界と思う方は「機械神への祈りの巻」へ
 魔界と思う方は「死霊王の道化」へ
 天界と思う方は「女神の慈悲」へ
 ジパング界と思う方は「鬼を平らげし勇者」へ
 英雄世界と思う方は「恋の呪文」へ
 精霊界と思う方は「閉ざされた世界で」へ
 幻想世界と思う方は「ドラゴンの決意」へ

●ヴェラと思う方は「癒しの時」へ
 ニーナを狙うぞ! という方は「生まれかわれたら」へ
 カトリーヌを狙うぞ! という方は「女狩人は死なず」へ
 パメラを狙うぞ! という方は「もこもこキュンキュン」へ
 ルネを狙うぞ! という方は「天才!発明家のしもべ」へ
 リーズを狙うぞ! という方は「盗賊賢者」へ
 イザベルを狙うぞ! という方は「不死を捨てた者」へ
 セリアを狙うぞ! という方は「ツンデレ年上メガネ」へ
 アナベラを狙うぞ! という方は「ぷりんぷりん」へ
 マリーを狙うぞ! という方は「聖女と神の使徒と」へ
 サラを狙うぞ! という方は「伝説の魔術師?」へ
 ジョゼを狙うぞ! という方は「義兄でも義妹でもなく」へ

 ジャンの自由で! という方は「死が二人を分かつまで」へ
次回は、後日談です。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
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