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ハーレム100 作者:松宮星

さらば愛しき世界よ

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仲間達の戦い

 魔王カネコは、魔王城の何もないだだっぴろい玉座の広間に座っている。人間の五倍の大きさだ。

 残りHPは、1842万と996。
 HPの五分の四以上を削られたというのに、カネコの様子に変化はない。どんな傷も、瞬時に回復してしまうからだ。

 悪魔を思わせる、角と背の翼。
 鋭い爪のある手、蹄のある足。
 双眸は、まるで燃える松明だ。
 髪とも刺とも見える黒い毛に、手足も全身も顔すらも覆われている。茂った黒い森のように。
 ぶ厚い毛が邪魔で、はっきりとは見えない。が、魔王にとりこまれたヴェラも見える。魔王の胸から上半身だけを生やし、力なく頭を垂らし、黒い長髪をだらりと床へと向けている。両腕も二の腕から先がない。魔王の体にめりこんでいるようだ。

 人外のものとなり果てたカネコは、痛みも苦しみも感じないのだろうか?
 それとも、伴侶達の攻撃をくらう度、死の苦痛を味わってきたのだろうか? 1億のHPが無くなるまで、何度も死に続けねばいけないのだとしたら……地獄の苦しみだ。

 だが、魔王を倒さない限り、オレの世界は滅びる……女神様はそう告げた。
《彼女いない歴(イコール)年齢な奴なの〜 一方的にリアカノ認定してた子からガチ無理されて、魔王パワーに目覚めちゃったのねぇ 男を皆殺しにして、奴隷ハーレムをつくりたいみたい〜》
 カネコが魔王に堕ちた理由も、女神様から聞いた。真実かどうか、わからない。
 今のオレは、女神様への不信でいっぱいだ。

 けれども、歩みを止めるわけにはいかない。

 目覚めた時の、カネコははんぱなく凄かった。
 そこに存在するってだけで突風のような瘴気を放ち、獣のような咆哮をあげオレ達を恐慌状態とした。

 倒しておかねば、この世界をメチャクチャにされる。
 この世界の為、オレを信じて力を貸してくれている伴侶達の為、そして明日目覚めるお師匠様の為、魔王を倒すのだ。
 命を懸けてでも。





 攻撃可能な人間は、オレを含めて十人。
 十人で魔王の残りHPを削りきらねば、いけないのだ。

「攻撃順番を、変更します。カトリーヌさん、リーズ、パメラさん、アナベラさん、ルネさん、マリーさん、ジョゼフィーヌさん、サラさん、100人目、勇者様でお願いいたします」
 きりりとした顔で、セリアがオレ達を見渡す。

「なんで、順番を変えるの?」
 リーズの問いに、セリアは事務的な口調で答えた。
「その方が、みなさまがより戦いやすい状況となると判断しました。異存がございますか?」
「いや。ねーけど」
 順番変更は、たぶんリーズの為だ。おそらく100万以下のダメージしか出せないし、わりと神経はまとも。そんなリーズを、この状況下の中盤で戦わせるのは酷すぎる。
 パメラさん、アナベラ、ルネさん、マリーちゃんは大らかだ。プレッシャーのあまりミスるって事もないだろう。

 ジョゼへと視線を向けた。最後から四番目で大丈夫だろうか? 緊張で押しつぶされないだろうか?
 オレの視線に対し、義妹はほわっと愛らしく微笑む。『ご心配ありがとうございます。でも、ジョゼは大丈夫です』と答えるかのように。
 どうも、駄目だ……オレはすぐにジョゼを子供扱いしてしまう。ちっちゃくって泣き虫で人見知りだった義妹は、強く成長したというのに。

「それでは、変更順で攻撃をお願いします。勇者様、何か一言ございますか?」
 う。
 いきなり振るなよ、心の準備が……
「みんな、今までありがとう。後もうちょっとだ、がんばってくれ」
 全員を見渡し、セリアに視線を止めた。
 感情を排除した、学者的な顔つきをしている。
 いつもと同じだ。しかし、こう見えて、セリアはパニックになりやすい。不測の事態になると、気が動転して、無茶苦茶な事を言い出したりするんだ。
 よく知っている……

「特にセリアさん、ありがとう。セリアさんが参謀役として陰日向になって働いてくれたからこそ、オレはここまでやってこられたんだと思う。心から感謝している」

「私を正しく評価していただけて、たいへん嬉しく思います。ですが、そういうお話は、後ほどにしていただけませんか?」
 メガネのフレームを押し上げながら、スパッとセリアが言い切る。

「賢者となられたあなたからいただく方が、謝恩の言葉の価値も高まりますから」

「セリアさん……」
「今、勇者様は苦境にいらっしゃいます」
 セリアが、微笑む。ツーンと澄ました彼女らしくない、優しい顔で。
「しかし、どんな状況下にあろうとも活路を見出し、勇者様に助言をさしあげるのが私の役目。これから先も、勇者様の勝利に貢献できるよう思索を続けます」
 焦ってパニックになってる様子はない。借金まみれの今の状況も、セリアには想定済みの事なのだろう。


「勇者さまの未来の多くは、今日、閉ざされていた……。けれども、幸福な未来へと通じる道もあったのよ。水晶が私に教えてくれたわ」
 イザベルさんが、オレにセクシーに微笑みかける。失った水晶珠を懐かしむかのように、手をそっと重ね合わせながら。
「とても細いまがりくねった道だったけれども……あなたなら、その先に行き着けるはずよ」
 諦めるな……
 歩みを止めるなって事か。


《……おにーちゃん》
 ニーナは、大きな目を見開いて、不安そうにオレを見つめていた
 ピンクのクマのぬいぐるみと、ポチ2号の培養カプセルを抱きしめて。
 幽霊のニーナは、髪も、顔も、体も、全てが白く半透明だ。ピンク・ローズの花飾りだけが、華やかにニーナを彩っている。
「そっちに行ってもいい?」
《……うん》
「オレを入れて、アタッカーはあと十人だ」
 ニーナに近寄り、その白い髪を撫でた。
「オレが魔王を倒したら、すぐに逝くの?」
《うん……たぶん》
 小さなニーナを抱きしめた。
 ニーナも、オレを抱きしめ返す。
《あたし、アンヌとおない年だもの。ちゃんと、一人でゆけるよ。向こうで待ってるから……》
 小さな声でニーナが言う、ついて来ちゃだめだよと。


 ニーナのすぐそばには、ソワが居る。
 黒髪、黒い肌、黒い服。真っ黒な闇の精霊ソワが、濡れたような瞳でオレをジッと見つめている。
 ソワの大好きなニーナは、もうすぐ昇天する。
 その上、オレまでいなくなってしまったら、悲しいだろう。仲良くなった、アウラさん達とも別れ闇界に強制送還だし。
 ソワが、かぶりを振る。
 オレの心を読んで、違うと言っている。
《あたし……闇界に戻ってもいい。ジャンがずっと生きていてくれるのなら……こわくない。一人になっても平気だよ》
 絶対死なないで、と心にソワの声が届く。


 精霊達の声が聞こえる。オレだけに話しかけているんだ。
《勇者ジャン、あなたの戦いを見届けます》
《しっかりね、おにーさん》
《ジャン。私の犬として、いかなる時も品を保ちなさい》
《魔王戦の後、ご褒美あげるから! 諦めちゃやだよ!》
《ご主人様のトホホ顔、これからも観察したいです。正直に言えば、自爆魔法の痛みの共有も魅力的なんですけど……ご主人様と共に千々に砕ける、わ・た・し。ああああ……》

《ご主人様……》
 水色の長髪、契約の石が埋め込まれた黒い仮面、水色のドレス。
 空気中の水分に潜み、旅の間、オレを護衛してくれていた水の精霊がそっとオレに寄り添う。
《どんな未来になろうとも、私はずっとご主人様のお心と一緒です……》
 水の精霊に頷きを返した。

ご主人様(マスター)……あのね……》
 珍しいことに、ティーナが言い淀む。
 チラチラと視線を彷徨わせる、炎の精霊。炎そのもののような長い髪をゆらゆらと揺らし、ティーナが上目づかいにオレを見る。
《ずっと気を抜かないで……わたしから言えるのは、それだけ……》
 ん?
《みんなの戦いを、ずっと見て……。勇者として》
 見るつもりだけど?


 カトリーヌは、既にアタッカー位置に移動していた。
「奴隷ハーレムとか……ふざけんじゃないわよ」
 まばゆく青く輝く矢をつがえ、伝説の黄金弓を構えている。

「権力・財力・当人の魅力……女の子を集めたい奴は集めるがいいわ。でもね、」
 女狩人が、きりりと矢をひきしぼる。
「女性をモノとしてしか扱わない最低男は、許さない! 愛しいと思うから、愛でるのよ! 互いに惹かれ合うから、共に生きるのよ! 愛の無いハーレムなんて、認めない! 愛の狩人カトリーヌが打ち砕いてやるわ!」

 黄金弓から、青い光の矢が放たれる。
 光は一直線に、魔王を目指して走っていった。

 99万9999ダメ。
 伝説の黄金弓は、固定ダメージを魔王に与えた。
 魔王の残りHPは、1742万997だ。

「カトリーヌ……素敵……」
 マルティーヌ先生が、うっとりと女狩人を見つめる。

 パメラさんは、ただ、幼馴染を見ていた。
 オレが出逢った頃、パメラさんはカトリーヌから逃げ回っていた。熱烈な求愛に怯え、カトリーヌを怖がっていた。
 だが、今は普通に幼馴染を見ている。『あたしにはカトリーヌの考えはわからない。でも、がんばってるから応援するわ』ってところか。


 次は、リーズの番だ。
 手に持っているのが、西方の遺跡から見つけたという小剣だ。魔法剣らしい。
 風のように走り、リーズが軽やかに跳躍する。魔王の膝の上にのり、肘かけへとジャンプし、魔王の肩へと降り立つ。
 軽業師のような体術だ。
 リーズの小剣が、魔王カネコの喉を斬り裂く。

 37万6501ダメージ。

 リーズがチッ! と舌打ちを漏らす。大ダメージが出なかったことは、当人も良くわかっているようだ。

 すれ違いざまに、リーズが「すまない」とつぶやいた。
 オレはかぶりを振った。
 リーズは盗賊。素早さを生かして、敵を翻弄したり、手数を増やしたり、逃げるのは得意だ。しかし、剣の一撃はさほど重くない。
 わかっていた事だ。
 その分、リーズは遺跡盗掘で役に立つアイテムを探してくれ、仲間探しにも協力してくれた。
 充分すぎるほど、オレの為に働いてくれたんだ。

 オレは目を細め、カネコを見つめた。
 魔王の残りHPは、1704万4496だ。
 残るアタッカーは八人……
 ちゅど〜ん無しで勝つには……八人で割ると……えっと……一人あたり……200万ちょい出してもらやいいのか?
 オレも……か。オレも200万以上を……?
……できるのか?

 もう駄目だ、究極魔法を使うしかない……理性は強くそう主張する。
 だが、思うそばから否定した。
 今のオレがやれる事は何もない。オレの番が回ってくるまで、仲間の戦いを見届けるだけだ……勇者として、仲間を信じて。


「おねがい、ドラちゃん」
 パメラさんの体に絡みついていた白龍が、まばゆく白く光を放ち、するするっと上昇してゆく。
 その鳴き声は、獣にも鳥にも似ている。
 くなくなと身をくねらせ、宙を飛ぶ白龍。
 玉座の間の闇を祓うかのように、水龍は神々しく輝き……

 嵐を呼んだ。

 目の前がけぶるほどの大雨が降る。ポチの防御シールドのおかげで、オレらに雨は届かないが。
 魔王に稲妻が落ちる。
 ドドンと耳をつんざく音がし、光の衝撃が走る。

 120万ダメージ……

 五日前に産まれたばかりなのに、よく頑張ってくれた。

 ドラちゃんが魔王から遠ざかると共に、雷雲は散り、雨は消え失せる。雷に削られた床も平らとなり、浄化の光を含んだ雨水も乾いてゆく。

 体に戻って来たドラちゃんを、パメラさんが愛しそうに撫でる。

 魔王の残りHPは、1584万4496だ。
 残り七人……


「勇者さまー!」
 アタッカー位置のアナベラが、振り返る。ニコニコ笑顔で、オレにぶんぶんと手を振る。
 ぷるんぷるんの二つの山が、素敵に揺れ動く。
「みててねー あたし、ちゃんと約束分のダメージだすからー」

「約束……?」

「約束したよー 100万以上のダメージを出すって」
 む?
 約束?
 したっけ?

「あたしは攻撃して、100万と……」
 口を半ばあけたまま、アナベラが天井を見上げる。
「えっと……100万と……」
 しばらく首を左右にかしげてから、ま、いっかって感じに、アナベラがパシン! と左の二の腕を叩く。裸同然の胸が、魅惑的に揺れ動く。
「ぜったい100万とちょっとのダメージを出すね!」
 できれば、200万以上でお願いします!

 ビキニ戦士が、大剣を背負ったまま、走り、跳躍する。
 リーズほどは素早くないし、跳躍力も低い。だが、ぷりんぷりんなお尻を揺らして、器用に魔王の体を駆け昇ってゆく。
 肘かけの上の腕をつたい、肩へ、そして耳を伝わり頭頂へと昇ったアナベラが剣を抜く。
 南の古代遺跡で見つけた、魔法剣だ。
 ビキニ戦士はかけ声と共に跳躍し、渾身の力をこめ刃を振り下ろした。

 カネコの頭部が陥没する。

 151万7867ダメージ。

 ぶるっと身震いがした。
 鋭く、重い一撃だ。
 凄い。
 剣でまともにやりあったら、オレでは万に一つもアナベラに勝てまい。

「お仕事、かんりょー!」
 振り返り、ビキニ戦士がえへへと嬉しそうに笑う。まだカネコの頭頂に居るってのに、気にせず明るく手を振ってくる。
 アナベラらしい。
 ビキニ戦士に、手を振り返した。

 魔王の残りHPは1432万6629だ。


「勇者様、私の発明品はどれも最高です!」
 ロボットアーマーの人が、作り物の手をぐっと握りしめている。
「今回は、いろいろとアクシデントが重なって残念な成果しか出せていませんけれど! でも、信じてください! 私、勇者様に拾っていただいて、大感謝なんです! 異世界で私の発明品をいっぱい使ってもらえたし! シャルル様(スポンサー)もゲットできたし! 私、感謝を形に表したくって、全力で発明してきたんです!」
 うん、そうだよね……ほとんど寝ないで武器開発、最後の三日は完徹で仕上げをしてくれたんだもん。
 ルネさんや工房の人には感謝しているんだ、オレも。
 どーでもいい発明や外れも多かったけど、ルネさんの発明品が役に立ったこともある。『どこでもトイレ』は大活躍だったしな。だけど……
「私に最後のチャンスをください! 『迷子くん』で大ダメージを出してみせますから! 私の発明品にスポットライトが当たるチャンスを!」
「ルネさん……あなたの発明の優秀さは、よく存じています。あなたは百年に一度、現れるか現れないかの逸材……天才です。九十九の失敗が続こうとも、最後には全ての失敗を無かった事にするほどの大発明を成し遂げられる方だ。確信しています」
「あああああ、ありがとうございます、勇者様! 私、がんばります! 決して後悔させませんよ!」
「ハハハ。実に愛らしい方だ。さ、ルネさん、こちらへ。魔王への攻撃がそれぬよう、すぐそばまでエスコートいたしましょう」
「さすが、勇者様! お優しい! 勇者の中の勇者ですね!」

 オレは、去りゆくルネさんの背を見送った。
 ルネさんのロボの右手を支えているのは、オレではない……シャルルだ。
 全然、似てねーのに、何でオレとシャルルを間違えるんだよ。寝不足で、意識が朦朧としているからって。
 これだから、いまいちルネさんに感謝しきれないんだ。ずいぶん助けてもらってるんだが。

『おたべになって ちゃん』は、魔王に1000万以上のダメを与えられるだけの攻撃力があった……魔王には当たらなかったけど。
 オレは手を合わせた。
 そこまでいかなくとも……ルネさんの発明品なら、あるいは……この現状を打破できるかも。
 むろん、『おたべになって ちゃん』は、神がかり的な偶然が重なって生まれた一発屋かもしれない。
 奇跡の産物だった可能性は、ものすご〜く高い。あんな武器は、もう無いのかもしれない。ルネさんの発明は、いつもギリギリのバランスで動いているのだから。
 けれども!
 ノリは、苦しい時の神頼み。
 頼む、ルネさん……『おたべになって ちゃん』の再来を是非! 魔王に大ダメージを!

 魔王のすぐ前まで、シャルルに連れてってもらったルネさんが突進する。自分の背ほどの大岩を一撃で砕いたという、ロボの右手を突き出して。
「迷子アターックっ!」
 至近距離だから、さすがに攻撃は外れなかった。
 魔王の右足を直撃。

 154万2333ダメージ。

 150万越えだ、普通に強い。
 でも、非常識なほど強かった『おたべになって ちゃん』に比べると、あまりにも……

 オレは、がくっと頭を垂れた。

 いやいやいやいや! うなだれるな、オレ!

 魔王の残りHPは、1278万4296だ。


「勇者さま」
 スローテンポの、かわいらしい声がした。
 澄み切った青い瞳が、まっすぐにオレを見つめている。
「勝ちましょうね、勇者さま〜 勇者さまが、お幸せになれる、形で〜」
 幼く見えてしまうほどあどけない聖女様が、微笑む。
 ほわ〜とした顔で、オレに聖なる印を切ってくれる。
「勇者さまに、神の、ご加護が、あります、ように〜」

 そして、マリーちゃんは体を明け渡した。
 光の結界布の外に出て、『マッハな方』を受け入れたのだ。

 マリーちゃんが、オレを見る。
 顎をつきだし、目を微かに細めて。
「マリー・・思いは受け取った・・」
 フッと笑みを浮かべる。あのお方にしては珍しく、穏やかな顔だ。
「ククク・・今のおまえなら、俺を深く受け入れられよう。望みに応え、俺も本気となる・・・」
 え?
 今まで本気じゃなかったんですか?
聖気(オーラ)を10%ほど解放しようか・・」
 は? 本気なら、100%なんじゃ?

「すみません、100%にしてくれませんか? 今、かなりヤバイ状況で……」
 マリーちゃんが、ジロリとオレを睨む。
「10%とあなどるな。俺は聖なる血を受け継ぎし、神の使徒だ・・・俺が本気となれば、邪悪ともどもこの世界は、マッハで滅びるだろう」

 え〜

「じゃ、100%じゃなくていいです! 魔王に1000万ぐらいダメージを与えてくだされば、おっけ〜ですから!」
「それは、無理というものだ、マリーの下僕よ」
 尊大な顔で、『マッハな方』がククク・・と笑う。
聖気(オーラ)の放出に微調整はきかん。0%か10%、でなければ120%。その三択があるのみだ」
 うわぁ……使い勝手悪ぅ〜

『マッハな方』が悠然と歩く。
 アタッカー位置まで進み、マリーちゃんは右手を突き出した。ずっと持っていた護符を、ぐっと右の掌で握りしめて。HP&MPが回復する魔法道具だ。
「魔王に堕ちた醜きクズよ。妄執に囚われし愚か者よ。異世界に『(ほとけ)の顔を三度まで』という名セリフがある。きさまとの勝負は、これが四度目。今度こそ、マリーと俺でガツンといく。綺麗さっぱり、まったく、完璧に、完膚なきまでに、きさまの穢れを根こそにしてくれよう」
 へー 異世界のどっかじゃ、四度目に本気になるのか。
「俺とマリーと内なる俺の霊魂が、マッハで、きさまの罪を言い渡す」
 シャルルから奪った護符を握りしめ、『マッハな方』がビシッ! と親指をたてる。
「有罪! 浄霊する!」

 マリーちゃんの全身からまばゆい光が一気にふくれあがる。
 光の広がりが半端ない。
真・終焉ノ(グッバイ・)滅ビヲ(イービル・)迎エシ神覇ノ(ファイナル・)贖焔(バーン)』か?

「その目に刻め、邪悪掃討魔法の最終進化形を! 魔王戦用のスペシャルチューニングだ!」

 お?

 高まった霊力が神々しすぎる。どデカい白光の玉が、凄まじい勢いでふくれあがってゆく。
「その死をもって、己が罪障を祓え・・・極・終焉ノ(グッバイ・)滅ビヲ(イービル・)・・」
『マッハな方』がカッ! と目を見開く。

迎エシ神覇ノ(アルティメット・)贖焔(バァァァン)!」

 アルティメット、きたー!

 讃美歌が聞こえる……
 有り難い鐘の音も、ゴゴーンと響く。
 パイプオルガンやらベルやら鈴の音やら太鼓やらの清らかな音楽が、ごちゃごちゃに混ざり合い……
 神々しすぎて、やかましい。
 頭の中が、しっちゃかめっちゃかにかき回され……

 そして……
 強大な浄化魔法が、爆発的に周囲に広がっていったのだった。 


 177万7777ダメージ。

 さすが、アルティメット! 人間離れした攻撃力! 人外の方を除くと、最高値では?

 しかし、聖気(オーラ)10%の為か、残念なことに200万には届かなかった……

 魔王の残りHPは、1100万6519だ。


 まだ攻撃をしていないのは、ジョゼとサラ、100人目、そしてオレ。

 四人だ。
+注意+
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