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ハーレム100 作者:松宮星

幻想世界

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白い姐さん     【シロ】(※)

 寝るまで、特訓の時間となった。

 お師匠様は賢者だ。
 賢者は、勇者の教育係ってジョブ。賢者になった途端、あらゆるジョブの指導者になれる知識を、神様より与えられている。みんなの教師役なのだ。

 お師匠様は、ジョゼの両手足に重たげな荷重バンドを着けさせた。
 で、演武を繰り返すよう命じていた。腕力や脚力を伸ばすトレーニングみたいだ。

 パメラさんには、オレの顔を見続けるよう命じた。
「人間とて、獣の一種。怖がる事はない。恐怖心が無くなるまで、見つめ続けるのだ」
 びくびくと怯えながら、パメラさんがオレを見る。
 神像のように美しいパメラさんと見つめ合えるのは、嬉しい状況だ。
 けど、怖がった表情を張りつかせたまま、泳いだ視線を向けられるのはなあ……いろいろせつない。

 お師匠様が最も時間を割き、熱心に教えているのはサラだ。
「幻想世界は大気にまで魔力があふれている……目を閉じ、感じるのだ。空気の中の輝く波動を……」
 もとの世界で教科書を読ませたのは、魔法理論の学習だろう。
 今は、イメージトレーニングの段階のようだ。

 サラは、しかめっつらで、う~んう~んとトイレにこもっている人のような声をしぼり出していた。
 魔法の波動を感じられないらしい。

 お師匠様がジョゼやパメラさんの指導をしている間は、マリーちゃんがサラの指導をしていた。
 優秀なマリーちゃんは、魔術師の魔法も使えるのだ。
「全ては、感じられなくても、いいのです~ サラさんと、波長のあう、ものだけ、探して、みましょ~」
「アタシと波長が合う?」
「炎は、いかが、でしょう~? 情熱的な、サラさんなら、炎と、同調、しやすいと、思います~」
 怒りっぽいしなあ、サラ。炎ならイケそうだよな。
 オレの視線に気づいたサラがキッ! と、こっちを睨む。見るな! って感じで。
 お互い、明るい火の側にいるんだもん。しょーがないじゃん。

 パメラさんと向かい合うオレの背にには、ミーが抱きついている。
 クンクンとオレの匂いを嗅いでは、うっとりとしている。

 ミーの目は時折、サラやジョゼに向かうんだが……
 その瞳には侮蔑の色があった。

『勇者の書』には、たまに獣使いが登場する。
 だから、知ってるんだが、獣ってのは上下関係にシビアだ。
 相手が、群れの中の上位か下位かを見極めたがる。
 で、自分がかなわない相手なら服従するが、見下した者を徹底的にあなどる。
 それが普通なんだ。

 ミーはパメラさんを猛烈に慕い、オレをいい匂いの人として好いている。が、それ以外の奴は相手にしていない。
 特にサラとジョゼを、最下層と思ってるっぽい。
 サラとジョゼも、ミーを嫌ってるし……
 うまくやってけるのかなあ。


 翌朝、オレらはミーの案内で、ドワーフの洞窟を目指し出発した。

「よーするに、おにーさんは、かわいくて、強い、お嫁さんを、さがしてるんだ、にゃー?」

 魔王を倒す為だとか、百万ダメージ以上を出せる人を探してるだとか、ジョブが被る子は駄目なんだとか……
 難しいとこは全部すっとばして、ミーは、オレの事情を理解したようだ。

「ミー、かわいくって強い子って誰だと思う?」
 幻想世界の住人のおすすめ種族って何だろう、と思ったんで聞いてみた。
 ネコ娘は、耳をピクピクと動かした。

「……人魚?」
 いや、それ、もう仲間にしたし。

「……クラーケン?」
 タコは問題外。

「……シーサーペント?」
 大海蛇のどこに萌えろ、と?

「……クジラ?」
 もしも~し?

「……エビ? ザリガニ? イカ? サンマ? イワシ? マグロ?」
 わかった……君のかわいい(イコール)食べたい、なんだね……
 サンマやイワシの何処が強いのかは、わかんないけど……

 先頭に立って道案内をするネコ娘。
 そのやや後ろを、オレとお師匠様が続く。パメラさんは、まだ人嫌いを克服できてないんで、お師匠様の背にすがりついている。
 マリーちゃんはその後、サラとジョゼは更に後ろを歩いている。

 今、オレらは野原を進んでいる。
 ミーはネコ族が通らない道を選んでくれてるんだが、朝からずっとネコ族どころか誰にも出会わない。
 安全にこした事はないが、できれば仲間探しもしたい。
 お師匠様に頼まれ、パメラさんが、ネコ娘に質問する。

「ここから……ドワーフの洞窟に向かうまでの間に出会える……種族……ネコ族以外……何がいるの?」
 ネコ娘は、耳をピクピクと動かした。

「マスター……ミーに、案内させるのか、にゃ?」
 ネコ娘が、ドラゴンのきぐるみの人を上目づかいに見つめる。
 う。
 媚び媚びのそのポーズ……ちょっと、かわいいぞ。

「あなたが苦手な種族なら……近くまで連れてってくれるだけで、いい。強い、お友達がいるのなら、紹介して」
 ネコ娘は、パッと顔を輝かせた。

「女侠客のシロさんが、この近くに住んでるにゃ」
 女侠客……?
 侠客って、確か……強きをくじき弱きを助ける、正義の味方だ。異世界出身の、二十二代目勇者がそうだった。

「シロさんは、やさしい(ヒト)なんだにゃー 地下迷宮の暴れん坊達に絡まれてたミーを助けてくれたにゃー」
 ほー

「暴れん坊達は、シロさんの子分になったにゃー シロさん、今では、地下迷宮の親分なのにゃ」
 何か強そう。よさげな感じ。

 この世界の住人は、最弱と呼ばれる小人ですら、オレらの世界の一流の戦士より強いそうだ。ハズレは、ほぼ居ない。
 地下迷宮の親分となるような生き物なら、会ってもいいんじゃないか?
 どうせ萌えなきゃ、仲間にできないんだし。
 会うぐらいならいいんじゃないか?

 そう思って、案内してもらった。

 タンポポの咲く野原の真ん中に、地下迷宮の入口があった。
 小動物じゃなきゃ見逃しそうな、ちっちゃな穴だ。
 その中にミーだけが入って行って、中からシロさんを連れて戻って来てくれたんだが……

 会ってから後悔した。
 せめて……シロさんの種族を聞いておくべきだった。

 こ、こんな、お方、では……
 会った途端、理性がふっとぶ……
 メロメロになっちゃうに、決まってるじゃ、ないか…… 

 体温が上昇し、心臓がバクバクする……

 シロさん、か、か、か、か、かぁわぁいぃ~~~~!


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ~ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと八十六~ おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


「はじめまして、みなさま」
 シロさんが、オレ達を見上げる。

 後方にいたはずの、ジョゼとサラがオレの真横まですっ飛んで来る。
 マリーちゃんも、にこにこ笑いながら、パメラさんの脇からシロさんを覗く。

「シロと申します」
 長い耳と、つぶらな赤い瞳、ヒクヒク動く鼻。全身を覆う毛は見事な白色だ。
 後ろ足で立ってるんだが、背はオレの膝ぐらいまでしかない。耳を合わせても、腿の途中までだ。

 どこから、どー見ても、ウサギ。
 白ウサギ。
 めっちゃ、かわいい~~~~~
 そんなちっちゃなシロさんが……

 道中合羽を羽織り、腰に刀を差して、長い楊枝ならぬ牧草をくわえているのだ。
『渡世人』装束! 
 ニ十二代目『勇者の書』にあった伝説のヒーロー姿だ!

 ヤクザな白ウサギ……

 このアンバランスさが、もう……凶悪なほど……

「かわいい! かわいい! かわいい!」
 ドラゴンのきぐるみの人が、シロさんがぎゅっ! と抱きしめる。
 あぁぁ……いいなあ……
 オレも、ぎゅっ! したい……

「次! あたし! あたしにも貸して、パメラさん!」
 サラは、目の色が変わっている。

「パメラさん……私にも、ウサちゃん、抱っこさせてください……」
 ジョゼが、左手の腕人形の蛇の口をパクパクさせながら、獣使いに頼む。
『スネちゃん』持って来てたのか……偉いぞ、ジョゼ。

「ふわふわで、ほんと~に、愛らしい、お姿ですね~ ぬいぐるみ、みたい、です~」
 マリーちゃんは、いつも通りっぽい。けど、シロさんから目を離せないようだ。抱っこしたいんだよね、マリーちゃんも!

「おやめになってください、姐さん」
 パメラさんの腕の中で、シロさんが耳をピンと立てる。
「あっしは、ヤクザな女。関わりすぎると、ケガしますぜ」
 そして、シロさんは口をもぐもぐと動かし出す……
 くわえてる牧草は、どんどん短くなってゆき……
 全てが、シロさんの口の中へと消えた……

 シロさんが、ごっくんと喉をならす。

 くわえてたのに……
 牧草、食べちゃったんだ……
 か、かわいい……

 すかさず、横からシロさんの口の前にタンポポの花が差し出される。
 お師匠様?
 無表情のまま、タンポポをグッとシロさんの口へと近づける。

 シロさんは鼻をぴくぴくと動かし……
 ぱっくんと、タンポポを、口にくわえ……
 モグモグ、モシャモシャして、ごっくん……した。

 うぉぉぉ! 食べた!
 タンポポ食べたよ!

 オレも、やる~~~~!

『アタシも!』、『私も!』、『私も!』と、みんなでタンポポを摘んではシロさんにあげた。
 シロさんが、『もう、けっこうでござんす』と、言うまでプレゼントし続けた。


 シロさんに頼み込んで一回づつ抱っこさせてもらったんで、みんな、ちょっとだけ興奮がおさまった。
 ちっちゃなシロさんが後ろ足で立って、オレ達を見上げる。

「あっしの妹分のミーから、聞きやした。姐さん方は、ドワーフの洞窟を目指していらっしゃるそうで」

 あくびをしながらゴロゴロしていたネコ娘が、愛情深い目でオレの隣の人を見上げる。
「そーだよね、マスター?」

 シロさんとミーの視線は、緑のきぐるみの人に向いていた。

 あの……
 一応、このパーティ、『勇者一行』なんですが……
 獣なお二人の目には、獣使いが一番、偉い人に見えるんですね……
 うぅぅ……

 獣人とは普通に話せるパメラさんが、小さく頷いた。
「ドワーフの洞窟から……荒野のドラゴンの支配地まで行くの……ドラゴンの女王アシュリン様にお会いしたいの……」

「にゃ? ドラゴン?」
 ネコ娘が、毛を逆立てる。

「あ……いいのよ、ミーちゃん……あなたは、行ける所まで、案内してくれれば、それでいい……荒野なんて、こわい所まで、行かなくても、いい」

「だけど……」
 ネコ娘が、パメラさんとオレを順に見つめる。
 大好きなマスターとは離れたくないし、美味しそうなオレは食べたい……その顔は、そう語っていた。

「そいつは、又、願ってもないこって」
 シロさんが、プフプフと鼻を鳴らす。
「姐さん、あっしも、その旅に同行させてもらえませんか?」

 え?

「先日、あっしは、地下迷宮の主人となりやした。筋を通したいのでござんすよ」

 筋を通す?

「地下に暮らすあっしらウサギ族と、洞窟に暮らすドワーフ族とは近しい間柄でして。ウサギ族は、代替わり襲名には挨拶を欠かさず、仁義を通して参りやした」

 はあ。

「しかし、最近、ウサギ族のテリトリーの周囲が物騒でして……あっしらをかどわかそうとしやがる、ならず者どもがおりやして」

 何ぃ?

「危険とわかっていて、子分どもを使いに出すわけにはいきやせん。あっしは、もともと風来坊。旅慣れておりやす。あっしが自らドワーフさん一家までご挨拶に伺えばすむ話。そう思ったんですが、子分どもが心配し、泣いて引き止めるんでやんすよ」

 そりゃあ……
 こんなかわいいシロさんを、危ない一人旅には出せないよな……

「獣使い一行との旅ならば、子分どもも安心して、あっしを送り出してくれるでしょう。どうかご同道をお許しください」
 シロさんがぺこりと頭を下げる。長い耳が揺れて垂れる……キュート!

「しかも、姐さんは、ドラゴンの女王様にまでご用があるとのこと。ドラゴンは、あらゆる獣の王、あっしらの大親分にあたられるお方。はからずも、このシロ、ウサギ族の親分となりやした。しかし、なったからには、筋はきっちり通しやす。大親分にご挨拶したい。それが任侠道にござんす。ぜひ、ぜひ、荒野までご一緒させてください」

 駄目! と、言う仲間が居るはずもない。
 シロさんは荒野まで、オレらと一緒に行く事になった。
「姐さん、お仲間のかたがた、よろしく、おひきまわしのほどを」


 地下迷宮の子分達が、シロさんの見送りに現れた。
 茶色や灰色、三毛やブチといった、いろんな毛色のウサさんが、地下迷宮=(巣穴)から現れてシロさんに、群がる。

 ネコ娘は、パメラさんの後ろで縮こまっていた。
 おまえが絡まれた『地下迷宮の暴れん坊達』って、このウサさん達か? みんな、後ろ足で立ってもオレの膝ぐらいしかないんだけど……





「よろしければ、ちょいと森まで足を伸ばしていただけやすか? ほんの半日ほど回り道になりやすが、知己を紹介できやす」
 パメラさんに抱っこされて運ばれながら、シロさんが言う。
「森の王者ワーベアー……そん中でも、とびっきり強い娘を紹介いたしやしょう」

 かわいいだけじゃない。
 頼りになるなあ、シロさん……

 ジョゼもサラもニコニコしてる。オレと目が合うとツーンとするものの、ちょっと機嫌が直ったっぽい。


 魔王が目覚めるのは、九十ニ日後だ。

 シロさん、戦闘力はあんまなさそうだけど……
 でも、いい!
 かわいいから、許す!
 ワーベアーに期待しよう!


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№014)

名前 シロ
所属世界   幻想世界
種族     ワーラビット
職業     侠客・女親分
特徴     どこからどー見ても白ウサギ!
       なのに、伝説の『渡世人』スタイル!
       姉御肌。仁義を通す、昔気質のヤクザ。
       ご機嫌な時、プフプフと鼻を鳴らす。
戦闘方法   腰の刀?
年齢     苦労人っぽいから、わりとお姉さん?
容姿     白ウサギ……
       背はオレの膝までしかない。
       ちっこくて、ふわふわでかわいい……
       もしかしたら、今までで一番、萌えた
       かも……
口癖    『筋を通したいのでござんす』
好きなもの  義理・人情
嫌いなもの  仁義に反すること  
勇者に一言 『よろしく、おひきまわしのほどを』
挿絵(By みてみん)
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