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ハーレム100 作者:松宮星

決戦(Ⅲ)

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裏 英雄世界 その2

「レッド! ホワイト! ブラック! バイオレット! 会えて嬉しいわ!」
 ジャスティス戦隊のリーダーが、アナベラ、ジョゼ、マリーちゃん、イザベルさんに挨拶をする。
 ミドリさんの命名は、戦闘時の服の色で決まる。
 だもんだから、ヒトミちゃんもアナベラも同じレッドだ。
 しかし……マリーちゃんは尼僧服が黒いからブラックで、イザベルさんはバイオレットだったのか……初めて知った。

 ミドリさんは、アナベラが特にお気に入りだ。  
 敵の実力を見通せ、敵や味方の気配が読め、両手剣では無双。その上、ぷるんぷるんのぷりんぷりんでギャラリー受けもいいからだ。
 異世界人じゃなきゃ、正式メンバーに欲しかったのだとか。

 ミドリさんが、サラやパメラさんやルネさん達に名刺を配る。
 万年人手不足の戦隊のリーダーなんで、愛想をふりまいて、よさげな子をスカウトするのが習慣になってるのかも。
「勇者チームのみなさん、良かったらいつでも私達の世界にいらしてね。ジャスティス戦隊は、あなた方を歓迎するわ!」


「・・下チチ、魔王を祓ってもいいか?」
 両腕を組んだ『マッハな方』が苛立たしそうに、貧乏ゆすりをしている。
「俺の忍耐も、マッハで限界を迎える・・・邪悪を殺したい衝動を、かろうじて、ようやく、すれすれに、堪えているのだ。早くやらせろ」

「駄目よ、ボスへの攻撃は名乗った順番で。それが、ジャスティス戦隊の伝統です」
 チッ! と巫女さん姿の『マッハな方』が舌打ちをする。
「さっさと、やれ。花女。のろま、め。後がつかえているぞ」

 誰が花女よ、とアイリちゃんがベーッと舌を出しながら、アタッカー位置に向かう。アイリちゃんが歩くと、ヒラヒラと花びらが舞うのがラブリー。

『マッハな方』は、魔王ばかりを見つめている。
 マリーちゃんに話しかけるどころか、顔すら向けない。マリーちゃんは光の結界布から動けないのに。
 実の兄かもしれない人を見つめ、マリーちゃんは、ただ穏やかに微笑んでいる。『マッハな方』から手渡された、シャルルん()の護符を大事そうに手に持って。
『今は何も聞かない。語るべき時に、自ら語ってくださる時を待つ』とマリーちゃんは言っていたけど……

「勇者」
 びっくりした。いきなり目の前にアップで迫って来るんだもん。かわいい巫女さんも、『マッハな方』付きだと凶悪な顔つきになる。アップは心臓に悪い。
「きさまに、これを渡しておく」
『マッハな方』が左手首にはめていたものを外し、オレへとぐっとつきつける。
 白い紙を寄り合わせてらせん状に巻いて、腕輪っぽくしたものだ。所々から、雷マーク型の紙の飾りが垂れている。

「それは?」
『マッハな方』がフンと荒い息を吐く。
「口寄せアイテムだ。紙の腕輪に、神霊の名やら特徴やらが記されているのだ。装備するだけで、望む神を降ろせる」
 へー
「この巫女の神社(いえ)に伝わる巫術。俺はこれで降ろされ、憑依状態のままこの女の世界からやって来たのだ」
 なるほど。オレやティーナ達をはじいた結界は向こうで事前に準備しといたんだな。
『マッハな方』が悪人(づら)で、口元を歪めて笑う。
「この女に感謝するがいい。この女が俺を降ろしておらねば、ややこしい事になっていた」
 む?

『マッハな方』が右手をあげて、右手首も見せた。同じ紙の腕輪をつけている。
「一つあれば充分だ。そちらは、きさまに預ける。あっぱれ、みごと、エクセレントに、魔王を倒せた時の褒美だ。いらんのなら、燃やしておけ」
 はあ。
 でも、これユリカさんのじゃ?
 あいかわらず、他人(ヒト)のものでもお構いなしだなあ。

「これを装備すれば、誰でもあなたを降ろせるんですか?」
「俺が認めたものであれば、な。魔王を倒した後のきさまであれば、憑依してやってもいい」
 うわぁ〜 嬉しいような、嬉しくないような……
「てか、オレ、霊力も魔力もないですよ? 憑いても、グッバイの魔法は使えないと思いますけど?」 
「カス勇者なぞ、(うつわ)にするか」
 じゃ、何でくれるんですか、この腕輪。

 オレは、光の結界布の上の仲間をチラリと見た。
 どう使うかはマリーちゃんと相談しよう……魔王戦の後、オレが生き延びていればだが……
『マッハな方』から貰った腕輪は、ベティさんの髪の毛をくるんだヤツとは一緒にしない方が良さそう。別のハンカチに包んで、しまっておいた。


 アタッカー位置で、アイリちゃんが華麗に回転している。アイリちゃんを中心に、花びらがくるくると宙を舞う。
 かわいくって可憐。いかにもな魔法少女に、ニーナは純粋に喜んでいる。
 しかし、アイリちゃんが踊っているのは、サービスではない。お花魔法は、踊らないと発動しないのだ。

 ぴたっと止まり、アイリちゃんがステッキの先端をカネコへと向ける。

「フラワー・タイフーン!」
 ステッキの先端から色とりどりの花が飛び出し、突風にのってカネコを襲う。
 まるで花の竜巻だ。
 綺麗な花が渦を巻きながら魔王にぶつかってゆき、ボンボンボンボンと連爆した。

 87万8787ダメージ。

 100万に届かなかったか……

 くぅぅ……

 残念だ。
 けど、仕方がない。
 左腕の赤い布を撫でて、気持ちを落ち着ける。
 戻ってきたアイリちゃんには、左手を振った。戦ってくれてありがとう、と感謝をこめて。


 改造人間のミドリさんが、素早い体術でアタッカー位置へと走る。
 八年前、ミドリさんは悪の組織ワルイーゾに捕まった。人類皆怪人をもくろむワルイーゾは、ミドリさんの体の一部を機械化し、常人よりも運動能力の優れた『ミラクルみどり』に改造したのだそうだ。
 しかし、心まで改造される前に組織から逃亡。あやういところを風来戦士マサタ=カーンに救われ、共に戦い、五年前にワルイーゾを滅ぼしたのだとか。

 で、今は、ワルイーゾの後継組織NEOワルイーゾと戦っているわけだが……

 正直、あんまり改造人間っぽくない。

 エスエフ界のサイボーグは、常人では扱えない重い武器を使っていた。
 しかし、ミドリさんの武器は、銃か飛び道具の緑の羽根。わりと普通だ。

 ミドリさんが両腕を交互に内回しをし、最後に胸の前で交差(クロス)させる。
「ミラクル・エクスプロージョン!」
 そう叫んだ彼女の背後……羽根を模したマントの辺りから、緑の光の矢が生まれる。
 七つの緑の光が、カネコの全身へと突き刺さっていった。

 77万7777ダメージ。

 超能力攻撃……のような?
 あれ?
 なんなの、今の攻撃は?

「せつめー しよー。カイゾウ人間ミラクルみどりには、あらゆるキセキをおこすふしぎカイロがナイゾーされているのである」
 やや低いところから、声がした。
 赤い戦闘スーツっぽい着ぐるみを着た女の子が、えっへんって感じに両腕を組んでいた。
「ミラクルみどりはこれまでに、3回ミラクル・パワーを使用している。最初はカイゾーされてすぐの時。心をうしないたくないとねがった思いが、ゲンジツとなったのである」
 時々、言葉使いがたどたどしくなる。暗記したことを、そのまんま言っている感じだ。
「2回目はふーらい戦士マサタ=カーンのピンチをすくった時に、3回目はワルイーゾをカイメツさせた時に、ミドリは使用している」
 へー
 よく知ってるなあ。
 さすがヒーローがいっぱいいる世界の小学生。授業で習ってるのかも。
「ミラクル・パワーのリミットは7回。7回目のキセキをおこした時、ふしぎカイロはジバクする。みどりのミラクルはオノレの命をかけたモロハのツルギなのである」

 え?

 アタッカー位置から戻って来たミドリさんが、
「次はあなたの番よ。しっかりね、レッド」
 と、ヒトミちゃんの背中を軽く叩く。
「はい! リーダー!」
 元気よくお返事をして、小学生はトテトテと走って行った。

「……7回しかミラクル・パワーを使えないって、今、聞いたんですが……」
「ええ、そうよ」
 フフフと色っぽく笑って、ミドリさんはこともなげに言う。
「あなた達はジャスティス戦隊の臨時メンバーだったんですもの。仲間の危機に頑張るのがリーダーの務め。それに、うちの莫迦があなたの為にミラクル・パワーを使ってやってくれってうるさかったのよ」
 マサタ=カーンさんが?
「深刻にならないで。まだ3回使えるから平気よ。……でも、おかしいわ。ミラクル・パワーを使ったのに、魔王に変化がない。大ダメージにならなかった?」
「……ええ、まあ」
 100万いきませんでした。
「そう……。私のミラクルは、99%の努力と1%の偶然からできているの。神がかり的な、現実にはありえない奇跡は起こせないのよ」
 はあ。
「あなたに幸福な未来が訪れる事を祈ってミラクル・パワーを使ったのだけど……あまり効果がなかったのかしら? ごめんなさいね」
 いえいえと手を振った。
 全力で戦ってくれたんだ。命にかかわるような大技まで使って。それで、充分すぎる。


 アタッカー位置で、ヒトミちゃんが正義の味方っぽいポーズをとりまくっている。
「いくぞっ! マサタ=カーン・パァァンチ!」
 そう言ってヒトミちゃんが右手を突き出す。その手には、赤いカードが握られていた。
 あれは……?
 ヒトミちゃんの右手の先から炎が生まれ、魔王を包みこみ、燃やす。

 3万3333ダメージ。

 ミドリさんが、フフフと笑う。
「マサタ=カード。マサタ=カーンの炎の精霊の力を封じたカードを、魔王戦用にプレゼントしたのよ」
 精霊カードを使ったのか。

 自分の手から炎が生まれ、魔王を攻撃したのだ。
 ヒトミちゃんは、大はしゃぎだ。
 キラキラ笑顔を輝かせている。
 かわいい。

 借金は増加中だが。


 ユリカさんは、既にアタッカー位置に移動している。
 思う存分に高笑いをしてから、カネコを指さした。
「待たせたな、クズ魔王よ! 内なる俺の霊魂は、既にマッハで、きさまに罪を言い渡した!」

 光り輝くユリカさんが、右の親指をビシッと突き立てる。
「有罪! 浄霊する!」
 ユリカさんが、手首をゆっくりひねって親指を下に向ける。

「その死をもって、己が罪業を償え・・・終焉ノ(グッバイ・)滅ビヲ(イービル・)迎エシ神覇ノ(ブレイク・)贖焔(バーン)!」

 ポニーテールの巫女さんの体から光が一気にふくれ上がり、どデカい白光の玉と化してゆく。
 まばゆい光の輝きが魔王へと迫っていった……

 55万5555ダメージ。

 魔法をうち終わった後、ユリカさんは床の上に崩れ落ちた。
 うつぶせに倒れたまま、動かない。もう指一本動かす体力もないんだろう。
『マッハな方』が電脳世界で大暴れしたせいで、もともと体調が悪かったもんな……無理もない。


《警告。警告。ジャスティス・ブルーが攻撃します。当イベントの参加者は、私の攻撃後、一名のみで締め切らせていただきます。先着順です。イベントへの参加をお望みの方は、お急ぎください》

 ゲームマスターさんの機械は、アタッカー位置にあった。『MY ステージ君』のそばの床の上。ここなら誰も来ないだろうと判断して、ミドリさんが置いたのだろう。ゲームマスターさんの機械の下には、青いカードが敷かれていた。
 精霊カードっぽい。

「ゲームマスターさんも、精霊カードを使うんですか?」
「あのカードは、持って命令すれば誰でも使えるから」と、ミドリさん。
 持ってませんよ、踏んでます。
「こちらとリンクしながら、ゲームマスターはゲーム中のイベントに参加してるの。NPCとなっている彼女の音声をスピーカーから流せば、カードで攻撃は可能になる……マサタ=カーンはそう言ってたわ」

 ゲーム・マスターさんが、聞き取れない言葉を口にする。
 呪文的な何か。
『デ・ナニノ・ヲシス』ってゲーム内の呪文なのかもしれない。

 機械の下に敷かれていた青いカードが崩れ去り、魔王を津波が襲う。
 かなりデカイ波が魔王を飲みこみ、やがて消える。

 しかし、ダメージ値は……

「5000……」
「あら、やっぱり弱かった?」
 ミドリさんが、オレの肩を叩く。
「マサタ=カードの威力は、使用者の生命力・魔力・霊力・マサタ=カーンとの絆によって変化するの。魂の無い機械では、そのダメージが限界なのかもしれないわね」

《警告。警告。本イベントの参加者は、最後の一名となります。参加をご希望の方はお急ぎください》


「のりこ。あなたの番よ」
 ミドリさんに声をかけられても、部屋の左端の方に居る悪の女幹部は無視。『知るか』って感じにそっぽを向いている。

 う。

 戦う気、ゼロっぽい。

 ジョゼの懸念が現実になったのかも。
『悪を仲間にするのは簡単でも……魔王戦で手をぬくかも……。悪が悪と戦う理由はありません……』
 正義の味方なら異世界の魔王であろうが、悪は悪、喜んで戦うだろう。でも、悪では……
 それに、一方的にオレがキュンキュンしただけで、オレとアベンジャーさんは初対面も同然。
 どころか、オレはジャスティス戦隊の臨時メンバーだった敵なわけで。
 オレの為に戦う理由など、ノリコにはないのだ。

「やあ、お美しいお嬢さん。ここは天国かと思いましたよ。あなたは、まるで天使のようだ」
 ぐっ!
 おぞけものの台詞を吐き、お貴族様が悪の女幹部に近寄って挨拶をする。
 野牛の角の飾りのついた兜、背にはマント、肩や腕や脚にはメカメカしいプロテクター、でもって黒のボディスーツ。化粧も濃い。ノリコの格好は、どっちかっていうと悪魔なんじゃ……
 うさんくさそうに、ノリコが横目でお貴族様を見る。
「何の用だ、くるくるパーマ?」

「お美しいあなたには、特別に耳寄りな情報をお伝えしようと思いまして……」
 シャルルがバッと振り返り、オレを掌でさす。
「あちらに居る、あの貧相な男。ああ見えて、あの男は勇者なのです。常人には無い力を持っています」
 む。
 貧相で悪かったな。
「あの男は自分とその周囲に居る者を五人、異世界に伴える力を持っています。風来戦士マサタ=カーンの世界にも行った事があるのです」

 目を見開き、ノリコがオレを見る。
「今、ここで魔王に大ダメージを与え、あなたがあの男に恩を売っておけば……よい事があるかもしれませんね」

 ツカツカと靴音を響かせ、悪の女幹部がオレに近づいて来る。
 すげぇ怖い顔で、睨むようにオレを見つめながら。
「貴様、マサタ=カーンの世界に行けるのだな?」
 えっと……
「前に行きました……仲間探しをしに……」
「あいつの妻が居る世界だな?」
「……はい」
 ノリコが、オレの胸倉をつかむ。
「私を連れて行け。約束するのなら、魔王と戦ってやる」

「できません!」
 即答した。
「オレ、今、魔王戦の真っ最中なんです! 魔王を倒さないと、オレの世界は滅びるんです!」
「終わってからでいい」

「それでも、嫌です!」
 はっきり言った。
「向こうに行って、何をする気です? マドカさんは戦闘とは無縁の一般人なんですよ、あなたと戦うなんてできない! マドカさんにひどい事をする手伝いなんかしたくありません!」

「……あいつの妻を知っているのか?」
「オレの仲間の一人です! ちっちゃくって、かわいい人です!」

「で、巨乳なんでしょ?」
 そう言って、ミドリさんがフフフと笑う。
「童顔で胸が大きな子が、あいつの好みですもの」
 その視線は、悪の女幹部に向いていた。

「向こうに行って何がしたいの? 憎い女を八つ裂きにする?」

「みくびるな。私は、そんな、みっともない真似なぞせん」
 ミドリさんをジロリと睨んでから、ノリコはオレをみすえた。
「マサタ=カーンの真実を教えてやるだけだ。あの男が十二の異世界で何をしてきたのか……知っている限りの事実を、あいつの妻に教えてやる」

 うわぁ……
 十二の異世界で彼女をつくってて、マドカさんと十三股してるって……教えちゃうんですか?

「家庭崩壊するんじゃ……」
「真実を知らぬ方が残酷だ。約束する。あいつの妻とは話をするだけだ。暴行なぞせん。だから、私を連れて行け」

「だけど」
「いいんじゃない。連れてってあげなさいな」
 ミドリさんが、フフフと笑う。
「今でこそ悪だけど、ノリコは約束は守る子よ。あいつの奥さんに()、乱暴な事はしないわ。女心がわからないあの莫迦には、いい薬になるでしょうし」

 て言われましても……オレはチュド~ンしちまうかもしれないんですが……。

 魔王戦の後、裏英雄世界へ行ける時間がとれるかわからないってはっきり伝えた。だが、『時間とはつくるものだ。つくれ』と押しきられ、約束させられた。
 次にオレが裏英雄世界へ行ったら、ノリコの希望をかなえると。

「勇者、ジャスティス戦隊の攻撃値を教えろ」
 巫女のユリカさんは体調不良なのでダメージは伸びなかったが、と断った上で全員のダメージ値を伝える。
 レッドことヒトミちゃんと、ゲーム・マスターに関しては言わんでもいい、と怒られたが。

「みどりのミラクルが77万7777で、フリフリ娘の花嵐が87万8787、巫女が55万5555か……」
 口元に手をあてていた、ノリコがフフンと笑う。
「弱い奴等だ。私が大ダメージとは何か、教えてやろう」
 悪っぽく格好よくバサーッとマントを翻し、童顔で巨乳な女幹部が魔王へと向かう。
 これは……
 期待できる。
 NEOワルイーゾの女幹部で、発明マニア。
 未来の技術すら買って、ミライ二号なんてやばい怪人つくった人だし! 凄い攻撃が出るかも!

 アタッカー位置で、女幹部は両足を開いて立ち、やや腰を落とした。
 訪れる衝撃に備えたのだ。
「異世界の魔王! 私の未来の為に死ねっ! くらえっ! アベンジャー・ミサイルっ!」

 女幹部の肩の左右の装甲がカパッと開き、中に装填されたものが一斉に射出された。

「あああっ!」
 思わず叫んでしまった。
 それ、カーンさんに通じなかったヤツ! 全弾命中したのにカーンさんが無傷だった、ショボいミサイルじゃ!

 十数発ものミサイルが、一斉に魔王へと襲いかかる。
 全弾命中!
 爆発!
 閃光!
 爆煙があがる。

 ダメージ値は……

「え?」

 100万?

 100万いったのか!

 嘘ぉ〜ん!

 カーンさんって、魔王より防御力があるの?

《違います。防御結界を張っていたんです。あの時、櫻井正孝は風精霊をヒーロースーツに使っていたでしょう?》
 サブレに指摘されて、そうだったと思い出す。

 アタッカー位置の女幹部が振り返り、フッとオレに笑いかける。約束は守れよ、と脅すように。


《今の攻撃をもって、期間限定イベント ジャスティス戦隊VS魔王は終了します。みなさま、ご参加ありがとうございました。DQFFWZ社の『デ・ナニノ・ヲシス』は豊富なマップと追加シナリオと隠しイベントをご用意しております。ご利用ありがとうございました。またのログインをお待ちしております》





「裏英雄世界の伴侶たちよ、感謝する」

 魔法絹布の左端――裏英雄世界の魔法陣から輝きが生まれる。
 魔法陣から上向きに、渦巻く光があがる。

 オレに投げキッスをくれたミドリさん、お貴族様にベーっと舌を出してるアイリちゃん、気を失ってるユリカさん、決めポーズをしてる小学生、両腕を組んでいる悪の女幹部が、まばゆい輝きの中に吸い込まれてゆく。


「裏英雄世界6人の伴侶の総合ダメージは325万452、魔王へのダメージの累計は、8157万9004となりました」
 備忘録に現状を記し、セリアが唇を噛みしめる。

「行動を終えた仲間は91人。8157万9004から9100万を引いて……借金は942万とんで996よ」
 メモ帳に筆算をしたサラが、暗い顔で言う。

 借金は、約1000万か。

 いっそ、すがすがしい……

 まだ攻撃していないのは……ジョゼ、サラ、マリーちゃん、アナベラ、リーズ、ルネさん、パメラさん、カトリーヌ、百人目の伴侶、そしてオレ。
 十人で魔王の残りHPを削りきらねば……

 魔王の残りHPは、1842万996。

 単純計算では、一人当たりのノルマは185万。
 だが、カトリーヌは99万9999の固定ダメしか出せないし、リーズも攻撃は得意ではない。

 勇者の剣の柄に、そっと触れた。

 取り乱してもしょうがない。
 オレにできる事は……最後まで伴侶達を信じること。
 チュド〜ンな未来など訪れない……固くそう信じることだけだ。
+注意+
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