挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ハーレム100 作者:松宮星

決戦(Ⅲ)

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

187/224

裏 ジパング界 その2

《メロメロ★どっキュン!!!!》

 貧乏神が、魔王カネコに抱きつく。
 魔王の毛深い足に体をこすりつけ、むっちむっちの胸を押しつける。

《まぉう まぢきゃわ〜だぉ。 ぁっちのチョッパズゆーしゃとゎ くらべもンになンな〜ぃ。 チョーLLなンだけどぉw》

 うわ!
 そんな超ミニな着物で足をあげて、魔王の足にからみついたらマズイんじゃ!
 見えちゃいそう!

《やっふぃ♪ まぉう くんっ!!!! ぁたしガ ぃぃこと したげるじぇー きらーん☆》

 オトメさんが、魔王にぶちゅ〜っとした途端!

 どこからともなく、超巨大な(かな)ダライが降って来て、魔王の頭を直撃した。
 20万ダメージ。でもって、おまけに支援効果で20万。計40万ダメージ。

 今の何?
 オトメさんの攻撃なわけ?
 支援効果って、何の?

 お姉さんの福の神様が、淡々とおっしゃる。
《おれは いま じゃんの みかたを している。 だれかが まおうに なにかをすれば まおうへの こうげきが おまけに つく》
 てことは、支援効果20万がアネコ様の攻撃なのか。
《しかし、おれと おとめは にしん いったい。 ふたりで ひとりだ。 おれが やった ふくは おとめが すう。 それが きまりだ。 おれが じゃんに みかたすれば するほど じゃんは おとめの ちからで ふこうに ならねばならない》
 う。
《だが あれは おまえではなく まおうについた》
 え?
《おまえに もたらすはずの ふこうを まおうに あたえておるのだ》

「それって……いいんですか? オレに与えるはずの不幸を他人に押しつけるの、アリなんです?」
 アネコ様が、眉を微かにしかめる。
《よいわけなかろう。 おとめは かみの ことわりを やぶったのだ。 かえったら ばつを うけねば ならん》
 え――っ!
「罰って?」
《わからん。 よくて ふういん か ちからの はんげん。 わるければ しょうめつ だ》
「そんな! やめてください! オレのために、そこまでしてもらう理由なんかない!」

《わけなら ある》
 アネコ様が、静かに微笑む。
《おまえは おとめに やさしい ことばを かけた。 あれは ひねくれきった せいかくを しておるから よろこぶ そぶりすら みせなかった。 だが とても うれしかったのだ。 だから いまも おまえを とおざけておる。 おまえに ふこうを もたらさぬように》
 オレが優しい言葉をかけた?
 いつ?
 オレはオトメさんに何って言ったんだ?
 それすらも思い出せないのに……
「やめてもらってください! アネコ様からオトメさんに言って!」

《もう おそい。 あれは まおうに ついた。 ばつを うけねばならぬ みに なったのだ》
 そんな……

《あれの きのすむよう させてやろう》
 だけど……


《じゃん ついて こい》
 アネコ様が、オレの手をひっぱる。
「どこへ?」
《さんぽ だ》

「勇者様?」
 歩き始めたオレに、セリアが声をかける。アネコ様に手をひかれているんだと、サラが学者に説明をする。アネコ様の姿はほとんどの大人には見えない。オレはふらふらと歩き独り言を言っているように、周りからは見えるのだ。
 アネコ様に連れていかれるまま、アタッカー位置の最前の方まで移動した。
 周囲には、仲間は居ない。
 前方に、玉座に座る魔王が見える。
 魔王に甘えるようにしなだれかかり、魔王に不幸をもたらしているオトメさんもよく見える。
 オトメさんがオレを横目で見て、嘲るように笑う。『あんたより魔王のがいい男よ、だから、あたしはこの男に憑いているの』とでも言うかのように……


 アタッカー位置までやって来たカグラは、優美な笑みを浮かべて、オレらに挨拶をした。
 そして、変化した。
 美しい姿を捨て、大岩のように大きな黒い蜘蛛となり、魔王へと突進してゆく。

 74万3093ダメージ。それに、アネコ様の支援効果で20万がプラスされる。
 更に……
 今度は何処からともなく滝のような水がドバーッと降ってきて、魔王をびしょ濡れにした。不思議なことに、カグラやオトメさんは濡れなかったが。
 オトメさんの追加効果で、魔王に20万ダメージが付加。

 誰かが何かをすると、アネコ様の福をもたらす力がオレの伴侶を支援し、オトメさんの禍をもたらす力が魔王に追加ダメージを与えるのか……
 カグラの攻撃+支援+追加効果で、114万3093ダメージだ。

「オレは……どうやって、オトメさんに報いればいいんでしょうか?」

《なにも いらんだろう》
 あっさりと、アネコ様がおっしゃる。
《あれの ほしかったものは すでに おまえは あたえている。 おまえを しなせたく ないから あれは かみの ことわりを やぶったのだ おまえは かてばいい。 それだけだ》

「そんなことをしてもらう価値……オレには無いのに……」
 誰にも言わずにいようと思っていた言葉が、喉まで出かかる。
 オレは汚い……
 嫌な奴だ……
 最低の勇者なのだ……


 三つの尻尾を魔王に向け、サンビィが魔王をペシペシペシ! と叩く。

 30万ダメージ。支援効果でおまけに20万。
 尻尾一本につき10万ダメージなのか? なら、九尾だったら90万だ。
 更に……
 今度は何処からともなく小麦粉がドサーッと降ってきて、魔王を粉まみれにした。粉の煙が舞い上がる。不思議なことにオトメさんは、まったく粉を被っていないが。
 追加効果20万ダメージ。

 ちっちゃな子狐なのに、頑張ってくれた。
 一生懸命戦ってくれたのだ。サンビィは、とても愛らしい。

 なのに……
 オレはがっかりしている。
 せめて100万を出してくれればいいのに、と思っている。
 それどころか……なんで、こんな弱い子を仲間にしちゃったんだろうと後悔すら……。

 最低だ。

 カネコとの戦いは、オレ達の世界の存亡をかける戦い。
 他の世界の仲間は、何も関係ない。この世界が滅びようが残ろうが、彼女等にはどうでもいい事。
 それなのに、わざわざ来てくれ、魔王と戦ってくれた。
 感謝こそすれ、責めるのはおかど違いだ。

 わかっている……
 わかっているのに……

 オレの心は、どんどんドス黒くなってゆく。
 微ダメしか出せなかった子、攻撃を外した子、ろくでもない武器ばかり出す発明家……いろんな子にひどい感情を抱き続け……
 魔王のHPは幾つだ、借金はあとどれぐらいだ、そんな事ばかりを考えている。
 てか、きゃぴりん女神には殺意すら感じてる……

 あたたかな手を感じた。
 アネコ様が、オレの右手を強く握っている……

《おれは いくさとは えんの ない かみ だ。 いくさのばでは おれの ちからは あまり つよく はたらかん》
 小さなアネコ様が、オレを見上げる。
《おまえが あやうい ときに やくに たてん。 すまないと おもっている》

 え?

「危うい……?」
《かくすな。 おまえ いま まずいことに なっているのだろう?》
 アネコ様が、クスリと笑う。
《かおに かいて ある》

 う。 

《まおうに まけそう なのか?》
「負けはしません。でも、」
 オレは声をひそめた。
「オレは……死ななきゃいけないかもしれません」

《そうか。 だが しかたがないな。 おまえは ゆうしゃ だ》
 アネコ様のお顔には、驚きも同情もない。
《のぞんで まおうと たたかう みちを えらんだのだ。 いくさとなれば しぬ ことも ある。 さけて とおれぬ ことだ》
「……はい」
《おまえが きょう しぬのなら それが おまえの さだめ だったのだ》
 カラッとした口調で、子供の神様がおっしゃる。
《くいは ある か?》

「……いっぱいあります」
 神霊に嘘を言ってはいけない。水界で身をもって学んでいるので、オレは正直に答えた。
「死にたくない……死ぬのが怖い……お師匠様にもう一度会いたい……だけど、それよりも……怖いことがあって……」
《なんだ?》
「みっともなく、取り乱しそうで……」
 オレはアネコ様の小さな手を握りしめた。
「泣きわめいて、みんなを罵倒して、責めてしまうかも。お前達のせいで、オレは死ななきゃいけないんだって……」
 言ってしまった……言わずにおこうと秘めていたのに……
「みんなに感謝してるのに……みんなを大事に思っているのに……オレの心にどんどん暗い思いが広がっているんです……」

「このままだと、いろんなことを怨んだまま死にそうです。仲間にすらも、怒りを感じたまま……。とても不安です」

《それは ないな》
 アネコ様が、きっぱりとおっしゃる。
《おまえは わらって ゆくだろう》
「なんでです?」
 アネコ様が、かわいらしく笑う。
《ばか だからだ》

 む?


 大入道のシヅが、魔王を殴る。
 13万2653ダメージ。アネコ様の支援効果で20万ダメージ。
 更に……
 今度は何処からともなく、ミミズやら油虫やらサラの大嫌いなアレとかがドサーッと降ってきて、魔王を襲う。魔王は蟲まみれだ。
 後方から悲鳴。きっとサラだ……この攻撃は、さすがに嫌すぎる……
 オトメさんの追加効果は20万ダメージ。


《たぬきが よわくて がっかりしたろう?》
 ギクッとした。
 そんな風に思ってしまう自分が恥ずかしいのに、そう思ってしまう。
「正直に言えば……そうです。でも、だからって責める気はありません。シヅは精一杯戦ってくれたんだし」
《うん》
「感謝してるんです……本当に……。なのに、がっかりするなんて……オレ、最低ですよね」

《このせかいの みらいと おまえの いのち が かかっているのだろう? ならば あせっても おかしくはない》
 アネコ様は、いい天気だなあと挨拶をするかのように、なにげない口調でおっしゃる。
《よいことがあれば わるいこともある。 うつくしいものがあれば みにくいものもある。おまえの こころのなかの みにくい きもちも おまえのものだ。 みとめて やれ》
「え?」
《そして こころの おもむくままに いきろ。 おまえは ゆうしゃ だ。 けして みちは あやまらん。 くらい みちに まよいこんでも かならず ひかりの もとへ ゆけるだろう。 おまえは おれや おとめや かぐらや、おさきのむすめを すくった。 うちに ひかりを もっている。 ただしい みちを ゆける》

 内に光……?

 むむ?

 アレか……?
『マッハな方』の十二の世界のような?
 オレの内にも、そんなものが?

「オレの内なる光の霊魂が、マッハの奇跡ってやつですか?」
 アネコ様が、目を細められる。
《なにを いって おるのか わからん》
 ありゃ。

《もういい。 おまえは あたまを つかうな。 どうせ ろくな ことを かんがえん》
「はあ」
《おこりたい ときには おこれ。 なきたい ときには なけ。 そして おまえが ありたいと おもう すがたの ゆうしゃで ありつづければいい。 いつわらずに いきれば おまえは ゆうしゃで いられる》
 アネコ様が、ニッと笑う。
《おれを しんじろ》
「……わかりました」
 オレは嫌な奴のままじゃ、死なない。いっぱい間違っても最後には正しい道に戻れる……アネコ様がそうおっしゃっているんだ、信じよう。


 瓢箪酒を飲みながら、酔っ払い天狗が魔王のそばへと羽ばたいてゆく。
 自分の身長よりも大きな団扇を振りあげ、振り下ろし、風を起こす。

 おぉぉ!

 144万7963ダメージ! 支援効果でさらに20万! 
 天狗、強い!

 んでもってオトメさんの追加効果は……何処からともなく、マグマの河が降ってくるというもの。
 すご!
 地獄の釜が逆さまに開いて、中身が一気に落ちてきたってところか?
 魔王の体が、ドロドロに溶けた灼熱の溶岩に包まれる。抱きついているオトメさんは無事だが。
 凄まじい攻撃だ。
 てか、オトメさんがカネコを身代わりにしなきゃ、この攻撃、オレがくらってたわけで……間違いなく死んでたぞ……
 それでも、ダメージ値は20万。
 金ダライや小麦粉と、マグマ攻撃が同ダメージって変じゃない? 納得いかん……


《じゃん》
 アネコ様が、ぎゅっとオレの手を握る。
《てまりには おれの こころが つまっている》
 アネコ様の視線は、オレの左腕の赤い布に向けられていた。大事な手毬を布に変化させたものだ。
《おまえの さだめが きょう おわるのだとしても さびしい おもいは させん。 さいごまで おれは おまえと ともに ある》

「ありがとうございます……」

 アネコ様が、にっこりと微笑む。
《おれだけではないぞ》
 アネコ様の視線が動く。オレの装身具……精霊達との契約の証、サークレット、そして最後に腰の剣へと目をとめられる。
《たくさんの おもいが おまえを ささえている。 みな ゆうしゃの おまえが すきなのだ》

 勇者の剣のまばゆい宝石たち、そして柄頭のドラゴンを見つめた。ドラゴンは、ファントムクリスタルをくわえている……
 十二の世界の伴侶達。
 お師匠様……

 みんなが最後まで一緒に居てくれるのか……


 まばゆい光を放ち、白龍が宙を飛ぶ。
 獣とも鳥ともつかぬ声で啼きながら。
 その声が雷雲を呼び、風を起こす。嵐が生まれる。
 白龍の全身から波が生まれ、凄まじい風がまとわりつく。
 竜巻となった白龍が、美しい弧を描き飛翔する。
 きらめく白光が、玉座の間に広がってゆき、そして……

 激しい雷雨が、魔王を襲ったのだった……

 300万ダメージ。
 おおおお、さすが龍! アシュリン様と同ダメージ!

 アネコ様の支援効果で、更に20万。
 オトメさんのもたらした禍は、何処からともなく巨大氷柱(つらら)が降って来て魔王の全身を貫くってものだった。
 この攻撃も、かなりエグイ。だけど、追加効果はやっぱり一緒。20万ダメージだった。





《がんばれよ》
 アネコ様はオレに手を振ると、魔法陣の方へスタスタと歩いて行った。

 カグラがオレにお辞儀をし、カグラから遠く離れた所にいる三つ目の大入道も深々と頭を下げる。
 サンビィはパメラさんとの別れを惜しみ、ドラちゃんは産みの母親と仲睦まじく絡まり合っている。
 オトメさんは、尚もカネコの側にいる。オレやオレの仲間に近寄って、不幸をもたらさないようにしているのだろう。

 みなが、愛しく見える……

 オレは心のままに動いた。

「アネコ様!」
 子供の姿の神様のもとへ駆け寄った。
「お願いがあります。オレ、もうフラフラしたくないんです。だから、」
 頭を下げた。
「オレのこと、馬鹿だって叱ってください!」

 周囲がシーンとする。

 ンな言い方したら、また変な誤解をうけるかも。
 わかっている!
 わかっているが……
「アネコ様の一言があれば、オレ、最後まで頑張れる気がします! お願いします! オレを馬鹿とののしってください!」
 気弱になっている心に、支えが欲しいのだ。

 溜息が聞こえた。
《おまえ……ばか だな》
「はい!」
《ほんものの ばか だ》
「そうです!」

《なにも かんがえるな。 ばかは ばかなりに こころの おもむくままに いきろ》

「はい! そうします! ありがとうございました!」
 アネコ様に、最上級の礼をした。

 やれやれって感じに、周囲が呆れている。また馬鹿なこと言ってるよって感じに、リーズが冷たい目で見る。
 けど、いい。欲しかったお言葉はもらえた。
 オレは、まだ頑張れる!



「裏ジパング界の伴侶たちよ、感謝する」

 魔法絹布の左端から二番目――裏ジパング界の魔法陣から輝きが生まれる。
 魔法陣から上向きに、渦巻く光があがる。


 アネコ様、カグラにシヅ、かわいらしい子狐、天狗と水龍が、まばゆい輝きの中に吸い込まれてゆく。
 魔王にくっついていたオトメさんも、ひきはがされた。オトメさんは、笑っていた。オレを嘲るようにフフンと笑い、バッチンとウィンクをして光へと消えていった。


「裏ジパング界7人の伴侶の総合ダメージは802万3709、魔王へのダメージの累計は、7832万8552となりました」
 セリアが、備忘録に現状を記す。

「行動を終えた仲間は85人。7832万8552から8500万を引いて……借金は667万1448。100万ぐらい減ったけど……」
 メモ帳に筆算をしたサラが、溜息をつく。

 借金は667万。

 次が、最後の召喚世界。
 裏英雄世界だ。

 正義の味方だらけの世界。
 しかし、巫女のユリカさんは体調不良。小学生とゲームマスターに大ダメージを期待するとか無理だろうし……
 借金が更に増えそうな予感がする……

 オレは最後まで、やきもきするだろう。
 微ダメしか出せなかった伴侶には、あ〜あと、失礼な気持ちを抱いてしまうに違いない。
 死にたくないから、最後までうろたえるはず。

 だけど、伴侶達を愛しく思う気持ちは決して失わない。

 左腕の赤い布を見つめ、腰の剣へと視線を動かした。

 最期の時、オレは勇者でありたい……


 魔王の残りHPは、2167万1448だ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ