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ハーレム100 作者:松宮星

決戦(Ⅲ)

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冒険世界 その2

 ソニア技芸神の魅了にかかり、玉座の間の全員が腰を振って踊っている。
 オレらも、魔王も。

 その上、魔王の側は猛吹雪だ。
 雪と氷の女王サンドラが、側にいるんで。

 だが、サンドラの雪や風は今のところノーダメージだ。
 サンドラは存在するだけで周囲を雪嵐にしてしまう。魔王に対し敵意をもって猛吹雪を起こしてるわけじゃないから、攻撃ダメージにカウントされないのだろう。
 ダメージにはならなくても、寒いだろーな。
 それとも、魔王化したカネコの体は暑さ寒さを感じない? ビュービュー雪風が舞ってても平気なのかも?


 妖艶に腰を動かしながら、ドロテアがカネコに近づく。
 たっぷんたっぷんの爆乳で、お尻はむっちむち。
 色っぽい魔女は、歌を歌っていた。
 オレには聞き取れない歌詞だ。響きは、イザベルさんの呪いの歌とよく似ている。
 ドロテアが両手を交差した……時だった。
 魔女の帽子も、肩の出た超ミニ丈のドレスも、黒のストッキングも、黒のピンヒールブーツまでもが、パッと消え失せたのは。

 全裸!

 オレが身を乗り出した時には、ドロテアは、もうドロテアではなかった。

 巨大だ。

 ラミアに似ている。
 下半身は、まさに蛇。
 顔は人間の時と一緒。上半身も人間に似てる。両腕があるし、豊満な胸もそのまま。でも、首の下まで鱗で覆われてて、髪の毛が蛇なのだ。首の部分がやけに大きく広がっている蛇が五匹、頭の上で直立している。

 ドロテアは蛇神だったのか……?

 ドロテアの鱗で覆われた手が、魔王を指さす。

 暗雲をカネコの頭上に覆わせ、突風と槍のような雨で容赦なく襲わせる。
 暴風雨を司るようだ。

 けれども……

 ダメージは……

 くねくねと体を踊らせながら、蛇神のドロテアがその場に崩れてゆく。泣き伏すように。

 オレは、ダメージ値を口にしたくなかった。
 ドロテアは、間違いなく渾身の一撃を放ったはずだ。アスラ王に翻意を促す為、そして勇者のオレの為に。
 しかし、全力の攻撃は……
 神としてはあまりにも弱かった。

 真の名を失ったが為に。


《勇者くん。ごめんなさい……あたしぃ、みっともない姿になるわぁ》
 鼻の頭を真っ赤にした魔神は、目に涙をためてドロテアを見つめていた。
《勇者くんとおねえさまのために、本気になるぅ。全力で魔王をぶっ倒すわっ!》

「ありがとう、ナディン」
 オレはサラ似の魔神に微笑みかけた。
「どんな姿でも、ナディンはナディンだ。何にでも一生懸命で、けなげで、優しい……オレの大事な伴侶だよ」

 ナディンが目を大きく開く。びっくりしたようにオレを見つめ、それから本当に嬉しそうに笑った。頬に涙を伝わらせながら。
《ありがと、勇者くん……大好きよぉ》

 ユンユンちゃんに運ばれて、アタッカー位置まで移動したナディンが変化する。
 きっと、ゾゾより巨大。
 筋肉ムキムキの逞しい体。
 頭はテカテカだけど、腕とか胸とかにびっちり毛が生えてて、ひたすら濃い。
 ぶっとい眉、ぎょろりとした眼、鷹のような鼻、ぶ厚い唇、口ヒゲ、顎ヒゲ。

 濃ゆいおっさんが、腰ふりダンスをしている……

 でっ、でも! 平気! ナディンはナディンだから!

《おねえさま、いっつもありがとう! ドジでバカでノロマなあたしを助けてくださって! 心から感謝してるわっ!》
 おっさん声になっても、口調は変わらない。ナディンは必死にドロテアへと叫んだ。
《今日は、ほんのちょっとだけご恩返しをさせてっ! あたし、おねーさまの剣になるっ! おねーさまの代わりに、敵を叩き潰すわっ! あたしの出すダメージは、おねえさまのダメよっ!》

 右腕を引き、腰と肩を大きく回転させるようにして体重をのせて、魔神が重たいパンチを繰り出した。

 ズシャッ! と、カネコが粉々に砕け散る。いつも通り、次の瞬間には復活しているが。

 ダメージは……

「300万……」
 アシュリン様と同ダメージ。
 ただ殴っただけなのに!
 さすが、冒険世界の主神の息子!

 てか……

《いやぁん。なぁによ、このショボいダメージぃ! 手が滑っちゃったのねぇ。あぁぁん、ごめんなさい、勇者くん、おねえさま……大事な場面で失敗だなんてぇ……ほぉ〜んと、あたしってば、ドジ……》
 多分、きゃぴりん女神に攻撃上限をかけられたんだ。
 オレはアシュリン様から聞いたことを伝えた。
『召喚されたものは、召喚主とその世界の決まりごとによって再構築されて現れる。世界基準を乱す強大なものは、弱体化される』のだと。
「この世界のせいで、ダメージが小さくなったんだよ。ナディンは魔王に300万以上の攻撃をしたんだ。むちゃくちゃ強かった。ありがとう、ナディン」

「魔王に300万以上のダメージを出した……? 貴様が……?」
 蛇身のままのドロテアが、ハゲ・ヒゲ・ムキムキの魔神を見つめる。
《あたしぃ、昔からぁ、馬鹿力でぇ〜 腕力だけは、パパよりもあるからぁ》
 もじもじと、魔神が身をくねらせ踊る。
「貴様、主神よりも強いのか?」
《ううん、腕力だけよぉ。パパは魔法とか〜 特殊技能とか〜 山のように持ってるからぁ、あたしじゃ、逆立ちしてもかなわないものぉ》
「だが、腕力だけは主神よりもあるのだな?」
《そうよぉ、おねえさまぁ》

 ドロテアが、黒衣の魔女姿に戻る。もう泣いてないし、涙の痕も無い。
 ナディンも、サラ似の美女に変身した。
 二人は腰振りダンスをしながら、向かい合った。
「決めたぞ。貴様を永遠に私の剣にしてやる」
《え〜っ? 永遠? 本当にぃ?》
「嫌か?」
《とんでもないっ! 逆よ、逆ぅ! ず〜っと一緒だなんて、夢みたいっ! ありがとう、おねえさまっ! おねえさまの為に、あたし、がんばるっ!》
「先走るな、ハゲ。剣にしてはやるが、まずは貴様の呪縛を解くのが先だ」
 ドロテアが、フンと鼻で笑う。
「私に任せるがいい。残り6720など、あっという間に終わる」
《ああああ、やっぱり、おねえさまステキっ! 格好いいっ! 惚れちゃいそう! あたしが男なら、絶対、ほっとかないわぁ!》
 だから、キミ、男でしょうが……


《いっきまーす》
 ボワンと、白い煙があがった。
 煙の中から、ふよふよと羽衣をまとった、二つおだんごの黒髪美少女が現れる。
 ドレスは真っ赤で、かわいい大熊猫模様。スリットがものすごく深いんで、腰振りダンスがセクシー。黒いガーターストッキングをはいた美脚も、腰の方までチラチラ見えちゃってる。
《桃桃酒家は、コンパニオンとの会話と美味なお酒と食事が売りでございます》
 ユンユンちゃんが右手をあげる。
 手の上にカードが……いや、名刺が現れる。オレが前にもらった奴だ。裏に、ユンユンちゃんのラブリーな足形がくっついてるヤツ。
《浮世の憂さを忘れて楽しい一時をお過ごしいただけるよう、スタッフ一同、ご来店をお待ちしております》
 ユンユンちゃんの掌から名刺は消え……
 大岩のように巨大化した『桃桃酒家 店長 大熊猫(パンダ)ユンユン』の名刺が、カネコの頭に突き刺さる。

 88万8888ダメージ。

 意外とダメが出たぞ、名刺攻撃。


 つづいて、マスターオブNINJAの攻撃。
 オレのわりと近くに居たロビンがフッと姿を消し、次の瞬間には別の場所に現れていた。素早い体術で移動したんだ。
 パーンと紙吹雪を舞いあがらせてロビンが降り立ったのは、『MYステージ君』の舞台の上。
 嬉々としてマイクを持った、真っ赤なタイツ姿の忍者。スポットライトに照らされた忍者が、魔王へと拳を見せる。
「HEY、そこのチキン! ×××××魔王! 今日がおまえの最期デース! 正義のNINJAが、成敗してあげマース! ××××!」
 踊りながら、ロビンが魔王へと中指をたてる。

 あ。

 と、思った。が、時は既に遅かった……

 取り出した武器でたっぷりデモンストレーションをしてから、『あちょー』とか『ほわーっ』とか叫んで、ロビンは魔王を武器でぶっ叩いた。
 使用武器はヌンチャク。
 なんで、NINJAの武器がヌンチャク? と、つっこむ気力すらわかん。
 ヌンチャク攻撃は0ダメージだった……

 オレは、がっくりとうなだれた。本当は床に崩れ落ちたいんだが、技芸神の魅了で踊らされているんで、どんなに落ち込んでいても腰を振っていなくてはいけない。

 宝石を渡して、参戦を依頼したのに……せめて料金分の働きはしてくれよ、ロビン。

「OH〜 禁止事項があるのなら、先に言ってくだサーイ。ステージがあれば、ショーをする。それがSHINOBIのサダメなのデス」
 ロビンは、『MYステージ君』の上でカネコに挑発をした。
 他の場所ならともかく……『MYステージ君』の舞台でマイクを持ってしゃべると、言霊攻撃になる。
 つまり……挑発でロビンの攻撃は終了。以降のヌンチャク攻撃は、ノー・ダメージとなってしまったのだ。

 ロビンのダメージは、たったの1000だった……

「ちなみに、当日キャンセルはできまセーン。報酬はお返しできまセン。あしからずデース」


 恐竜の咆哮が響く。
 太古の生き物の霊を宿したルルさんが、魔王へと突進し、槍で深々と突き刺す。
 101万4867ダメージ。
 まともなダメ、出た〜!
 振りかえったルルさんが、ニコーッと笑う。天真爛漫な子どものようなかわいらしい笑みだ。


 雪と氷の女王が魔王を凍らせ、砕く。
 グラキエス様と同じ攻撃だ。
 けれども、ダメージ値は比べようもない。
 というか……サンドラのダメージ値はドロテアとまったく一緒だ。
 二人とも転移神だ。冒険世界に住ませてもらう代償に、主神に力の一部を捧げている。そのせいで、攻撃最大値も固定化されているのかも。
 不機嫌そうなサンドラに、グラキエス様がお声をかけていらっしゃる。慰めているのかもしれない。
 グラキエス様のが圧倒的に強いのに、冒険世界での二人の勝負は引き分けだった。
 同族を完膚なきまでに叩きのめすなんて、下品だと思われ、あえて引き分けに持ち込んだのかも。高ビーだけど、グラキエス様はお優しいから。


《最後は私〜 私が攻撃を終えたら、すぐに送還を発動させて》
 ニコニコと笑いながら、ナディンの叔母さんがおっしゃる。
《『女神の愛』って技を使うから〜 私の光を浴びると、生きとし生けるものは活性化して〜 魔王はダメージをくらうの〜》
 ほう。
 ヘレーン様が、セリアを見る。運動が苦手な学者様は、激しいダンスのせいで息も絶え絶え。今にも倒れそうだ。
《人間には、負傷治癒、状態異常回復、疲労回復、MP回復効果があるの〜 疲れ切った体も、もとどおりよ〜》
 おおおお!
 それは凄い!
「ありがとうございます、ヘレーン様!」
 いいのよ〜って感じに、恐竜女神様が軽く手を振る。ナディンに似て、気さくな方だ。

「待ってください、まだ技芸神様が攻撃してません」
 幼馴染が鋭く叫ぶ。
 そういや、そうか。
 鼻の頭を赤くしたサラへと視線を向け、ヘレーン様が首を傾げる。
《ソニアちゃん? 戦勝の踊りで攻撃したでしょ?》

 え?

 嘘?

 オレは、カネコを見た。
 玉座から立ち上がり、魔王は灼熱の国のダンスを踊っている。ギクシャクと不器用に腰を使って……

 お世辞にも上手いとは言えない。
 その上、デカいから目立つ……

 カネコってプライドが高かったんだよな……

 踊らされるなんて、屈辱! ……って感じたんなら、確かに敵対行為かも……

 だけど、ダメージはどんぐらい出たんだ?
 いつダメが出たのかも気づかなかった……
 相当、小さそう……

《がっかりしな〜い。技芸神の力でみんなで戦勝の踊りをしてるのよぉ〜 効果は抜群〜 絶対、この戦い、勝てるわ〜》
 でも……カネコも一緒になって踊ってますよ……?
 戦勝効果、魔王にもつくんじゃ?


《みんな、私の光が届く所に来て〜 回復したげる》
 アタッカーと控えメンバーの間には、ポチ2号の障壁がある。
 ポチにその障壁を取り払うように変形を願うのは、無理。ニーナの敵対行為を終了しているんで。
 なので、全員で踊りながらアタッカー位置まで移動となった。
 学者様は、またいとこがお姫様抱っこした。二人とも腰を振りながらなので、ムードもへったくれもないが。普段のセリアなら、シャルルにンな真似は絶対にさせないだろう。しかし、バテてる為か、抵抗すらしなかったようだ。
 光の結界布の上のマリーちゃんは、アウラさんが魔法で運んだ。


「良かったですね〜 ドロテアさんが、お元気になられて〜」
 ほんわか聖女様に声をかけられ、サラ似の魔神が満面の笑顔で振りかえる。
《そうなのよぉ〜 よかったわぁ〜 おねえさまに涙は似合わないものぉ〜》
「本当に、ドロテアさんが、大好き、なのですね〜」
 ナディンは鼻の頭をポッと赤く染め、大きく頷いた。
《おねえさまは、素敵な方ですものぉ。永遠にお側にいられるだなんて……夢みたいぃ》
「ありのままの、ナディンさんを、受け入れて、くださる方と、出逢えて、良かったです〜 ドロテアさんと、どうぞ、お幸せに〜」
《やっだぁ、もぉ、聖女ちゃんたらぁ〜 それじゃ、結婚の祝福よぉ〜 あたしもおねえさまも、女なのにぃ〜》


 ナディンとマリーちゃんがそんな会話をしている一方で、ドロテアはイザベルさんに話しかけていた。
 二か所の会話が同時に聞こえる。サブレが、両グループの会話に興味津々で聞き耳を立てているようだ。

「ドゥルガー様、お騒がせして申し訳ございませんでした。卑小なる我が身を自覚いたしました。今、戦を起こしたところで、いたずらに同族の命を奪うだけ。今は輪廻世界へのアスラの進軍など望みませぬ」
 なれど、とドロテアが拳を握りしめる。
「未来はわかりませぬ。同朋が弱体化したのであれば、強き同朋を産み増やせばよいこと! 異世界神の血をとりこみ、アスラの無敵軍勢を必ずやご用意いたします!」
 ドロテアが、イザベルさんに頭を下げる。
「その時こそ、お迎えにあがります。その化身がご存命の間には、おそらくは間に合わぬでありましょうが……いずれ必ず御前に参上いたします。私の王はドゥルガー様しか居りませぬゆえ」
「まったく、もう……。困った子ね」
「どうか、どうか……お許しください」
 イザベルさんが、うふふと笑う。
「好きになさい。未来のことは、未来の私と話してその時に決めればいいわ」
「おぉ!」
「冒険世界で新たな生き甲斐を見つけ、あなたがアスラらしく生きられるのなら……それが一番だもの」

「旦那様」
 ドロテアが、今度はオレに対して頭を下げる。
「ドゥルガー様の現在の化身のこと、どうぞよろしくお頼みいたします。人間(ヒト)として幸せな生涯を送れるよう、お力添えを」

「約束はできないけど、」
 オレ、チュド〜ンしちゃうかもしれないから。
「やれるだけのことはやるよ。イザベルさんは、オレの大切な伴侶の一人だから」

 ちょっと気になったんで、声を潜めて聞いてみた。
「異世界神の血をとりこむって言ってたけど……まさか、ナディンと?」
「あれも、夫の一人といたします」
 夫の一人……
「無理だろ? 体はともかく、心は乙女なんだし」
「アスラには性の秘儀がございます」
 お色気たっぷりの魔女が、妖しく笑う。
「その気がないものをその気にさせる技など星の数……。それに、アレが自分は乙女だと言い張るのでしたらレスボスの関係となれば良いだけの事。一度、やってしまえばこっちのもの。アレの腕力を受け継ぐ子供を、山のように産んでみせます」
……迫力のある微笑み。
……何というか……背筋がゾッとした。

 ナディン……
 えっと……その……
 がんばれよ……


 ヘレーン様の体から、まばゆい光が広がる。
 眩しいけれども、全てを包み込むように光はやんわりと広がってゆく。
 技芸神の魅了で踊らされた体が、たちまち癒される。呼吸が楽になり、慣れない動きをしすぎて悲鳴をあげていた筋肉も痛みを忘れる。
 すごい回復魔法だ。かかりは早いし、あっという間に完全回復だ。

 まさに、女神の愛。
 ヘレーン様の愛は、人には生命と活力を与える。が、邪悪にはダメージとなる。
 まばゆい光が、魔王カネコを包む。
 その歪んだ体は浄化されていった……





「冒険世界の伴侶たちよ、感謝する」

 ヘレーン様の光が消えると同時に、帰還の言葉を口にした。
 せっかく回復したのに、トロトロしてたら技芸神の踊りでまた疲労困憊になっちまう。
 冒険世界のみなさまには、早く還ってもらわねば!

 魔法絹布の右から八番目――冒険世界の魔法陣から輝きが生まれる。
 魔法陣から上向きに、渦巻く光があがる。

 ドロテアとナディン、踊り狂ってる技芸神、吹雪を連れている女王様、役立たずのNINJA、大熊猫と恐竜化してる人、地下世界の女神が、まばゆい輝きの中に吸い込まれゆく。


 ヘレーン様の光で消え去っていたカネコが、玉座に復活している。
 技芸神がもとの世界に還ったんで、こいつも踊り地獄から解放されたようだ。


「冒険世界8人の伴侶の総合ダメージは772万8977、魔王へのダメージの累計は、6794万8096となりました」
 セリアがメガネを外す。汗で曇ったレンズが気になるのか、神経質そうにメガネをハンカチで拭く。
 メガネがないと、ツンツン度がちょっと下がる。隙ができるというか、ちょっとだけ可愛く見える。
「何か?」と、聞かれたんで、
「踊り死にしないで良かったなあと思って。本ばっか読んでないで、普段からちゃんと体を動かしなよ」って答えといた。
 セリアは、ムッと眉をしかめ、
「ご忠告いたみいります。ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」
 ツーンとそっぽを向いてしまった。メガネをまだかけてないのに。

「行動を終えた仲間は71人。6794万8096から7100万を引いて……借金は305万1904。借金、微妙に増えちゃったわね」
 メモ帳に筆算をしたサラが、溜息をつく。
「次は、裏冒険世界だっていうのに……」

 う。

 冒険世界の伴侶は……
 お姫様に王妃様に侍女。明らかな非戦闘員が三人。
 更に、六つの幼女が一名居たりする。

「………」

 いや、でも、きっと大丈夫!
 どうにかなる!
 前向きにそう信じる!


 魔王の残りHPは、3205万1904だ。
+注意+
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