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ハーレム100 作者:松宮星

決戦(Ⅲ)

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冒険世界 その1

「冒険世界の伴侶達よ」

 オレの呼びかけに応え、魔法絹布の右から八番目――冒険世界の魔法陣から輝きが生まれる。
 魔法陣から上空に向かい、光が広がる。
 まるで光の柱ができたかのようだ。

 まばゆい光の中から現れたのは……

 魔女ドロテアだった。
 魔女の帽子に、肩の出た超ミニ丈のドレス、黒のストッキングに黒のピンヒールブーツ。
 胸はむっちんぼよよ〜んな爆乳! お尻もどか〜ん! 超セクシーな衣装にふさわしい、ボンキュッボン!
 ぱっちりとしたまつ毛の青い瞳、高い鼻、真っ赤な唇。迫力のある美女だ。

 この世界に出現したドロテアが、せわしなく視線を彷徨わせる。
 ちょっとだけオレに目礼をした。が、気もそぞろ。必死な目でオレの仲間達を見渡し……
 やがて、ドロテアの顔がパッと華やぐ。探し求めていた女性が目に止まったのだ。
「ドゥルガー様!」
 ドロテアは、迷わずイザベルさんのもとへと走った。
 姿が変わっても、魂は同じだからわかる……そんなこと、前にイザベルさんも言ってたっけな。
「お会いしとうございました。拝謁が叶い、夢のようにございます」
 ドロテアが、イザベルさんの前に跪く。

 大昔、イザベルさんは『ドゥルガー』という名前の、アスラ神族の王様だった。
 しかし、デーヴァ神族の戦の女神に負けて、名と力と命を奪われ、オレらの世界で人間となった。過去の記憶は持って転生を繰り返しているものの、神を名乗るほどの力はもうないのだそうだ。
 現在、輪廻世界で『ドゥルガー』を名乗っていらっしゃる神様は、イザベルさんから名前を奪った二代目ドゥルガー様だ。

 ドロテアも、本当の名前は違う。冒険世界へ移住する時に、冒険世界の主神に『真の名前』を代償として捧げたのだそうだ。
「ドゥルガー様は無に帰したなどと申すと雀どもも居りましたが、私は信じておりました。我等が王がデーヴァごときに滅ぼされるはずなどない、と」
 ドロテアが深々と頭を下げる。
「ドゥルガー様、我等に再びアスラの誇りを。散り散りとなったアスラを集め、お束ねください。ドゥルガー様とアスラの為でしたら、命なぞ惜しゅうございませぬ。どうぞ、私めを尖兵としてお使いください。汚きデーヴァより、我等が世界を取り戻しましょうぞ」
 床に頭をこすりつけんばかりに、ドロテアが頭を下げている。

 びっくりした。

 イザベルさんは……らしくない表情をしていた。
 お色気たっぷりで朗らかなイザベルさんが……氷のように凍てついた表情で、かつての部下を見下ろしていたんだ。

 一体どうして?

 二人の元へ駆けつけようとした時だった。
 もの凄く寒くなったのは。

 背に、痛いほどの寒風を感じる。

 振り返ると、そこには……
 激しい雪嵐を身にまとう、全裸の美女がいた。
 髪や肌が雪のように白い。裸体を手で隠そうともせず、気品あふれる姿でたたずみ続けている。雪風が邪魔で、大事なところはちょうど見えないけど!
 雪と氷の女王サンドラだ。

 神によってはそこに存在するだけで、自然に影響を及ぼす者も居る。
 サンドラは、まさにそれ。彼女の周囲は、常に猛吹雪になってしまうのだ。

 びゅーびゅーと雪と風が、周囲に吹き荒れる。

 魔法絹布の側の仲間達が、急いで下がり始める。
 寒さに弱い生意気盗賊は、魔法絹布からかなり離れた後方――『照らすくん』が並ぶ辺りまで既に退避していた。

《もろく儚い人間達を、皆殺しになさるおつもり? せめて魔王の側へ移動なさったらいかが?》
 グラキエス様だ。オレの氷の精霊は、冒険世界のサンドラと七日間も争った間柄。ライバル……みたいな?
《それとも、ご自分さえ良ければ他者がどうなろうがお構いなしなのかしら? さすが、外の精霊。本当、お下品ですこと》
 グラキエス様が、ドォン! とばかりにサンドラの前に立つ。
 対して、サンドラはズン! と胸を強調するかのような堂々とした姿勢。
《移動してあげましょう、精霊界の精霊。弱者に媚びるあなたの為に、慈悲を示してあげます。私は、心の広い女王ですから》
 歩き始めたサンドラとグラキエス様の間に、雪嵐が吹く。さっきよりも、雪風が強くなってるような……
 グラキエス様! 事態を悪化させないでくださいよ!


 サンドラが遠ざかったんで、ちょっと寒いかなあって程度にまで気温は回復した。

 そこへ……
《勇者くーん! 勇者くーん! 勇者くーん!》
 魔法陣から凄い勢いで飛び出たものが、オレにくっつく。
《あああ! 本物ぉ! 感激っ! なまの勇者くんだわぁ!》
 抱きついてきた子が、スリスリとほっぺをオレに押しつける。露出の高い中東風の衣装なんで、やわらかで張りのある胸もぼよんとぶつかってくる。
 黒髪ストレートはジョゼに似てる。けど、ちょっときつめの可愛い顔立ちはサラ似だ。興奮すると鼻の辺りが赤くなるところも、サラそっくり。

「ナディン」
 鼻の頭を赤くした魔神ナディンが、ポロポロと涙を流す。
《会いたかったわぁん……今日の日を、あたしぃ、指折り数えて待ってたのぉ……勇者くんの為にほんのちょっとでも役立てるよう、頑張るわねぇ》
 オレのハートは、キュンと鳴った。
 いじらしくって、かわいくって、いい奴なんだ、ナディンは……。
 本当の姿は、ハゲ・ヒゲ・ムキムキのおっさんだけど。

《お久しぶりです、勇者様。桃桃酒家のユンユンです》
 声のした方に目を向けると……ナディンの足元にちっちゃなもふもふが居た。
 白黒クマちゃんだ。後ろ足で立ってるのに、オレの膝までしかない。目の周り・耳・足・肩から胸だけ黒くて、あとは白い。大熊猫って種類のクマらしい。
「かわいい! かわいい! かわいい!」
 獣使いの人が駆け寄って来て、ユンユンちゃんを抱きしめる。うん……かわいいよな、ユンユンちゃん。
《おねーちゃん、ニーナにも、かして》
 両手を広げた白い幽霊が、周りでぴょんぴょん飛び跳ねてる。

《本日は店外デート、多少でしたらスキンシップもOKです。でも、Aからはいけませんよ。当店は楽しい会話と美味な食事が売りの健全なレストランですから》
 白黒クマちゃんが、オレらに釘をさす。
 抱っこできて肉球に触らせてもらえれば、たぶんみんな満足だよ……

 ユンユンちゃんのおててが、ティーポットに似た銀製品を持っていた。二本の槍が交差した紋章が入ったそれは、ナディンの魔法のランプだ。
 ナディンは、必ず魔法のランプにつながっている。今も、髪の毛の先っぽが注ぎ口みたいな所にくっついている。

「もしかして、ユンユンちゃんがナディンの今のご主人様なんですか?」
 冒険世界の主神に負けたナディンは、罰としてランプに封じられている。
 一万の願いごとを叶えればランプから解放されるものの、一人から聞けるお願いは三つまで。100年以上かけて1000もノルマを終えていないとナディンは嘆いていたんだが……

《はい。魔王戦の後、会員をお二人紹介していただきまして〜 皆さまで当店で豪遊していただく事になっておりますー》
 ニーナに抱っこされた白黒クマちゃんは、ほくほく顔だ。
 ユンユンちゃんは神さま達の憩いの店の店長さんで、ナディンはその店のVIP会員。三つのお願いは、お店の為に使ったようだ。

《あ〜 そう、そう。聞いて、聞いてぇ、勇者くん》
 涙をぬぐい、ナディンがにっこり笑う。
《勇者くんが帰ってからね、あたし、2250の願いごとを叶えたのよぉ。一万まで、あと6720なのぉ》

 へ?

「別れてから、まだ二十日ぐらいだよな?」
 それで2250? 一日に100以上願いを叶えたってこと?

《ぜぇ〜んぶ、おねえさまのおかげぇ》
 魔神が、うふふと嬉しそうに笑う。
《おねえさまが次から次へあたしのご主人様を決めて、事前に三つのお願いもチェックしてくださったのぉ。即行でかなうお願いばかりだったから、あっという間だったわぁ》
「へー」
 ドロテアは、ナディンが早く自由の身になれるよう手を貸すと言ってた。ドロテアのおかげで、順調なのか。さすが武力だけではなく知力にも秀でた、もとアスラ八大将軍。

最高標的(ベスト・ターゲット)は、おやつ前の子供なのぉ〜》
 ん?
《『なに食べたい? お願いを三つ言って』って聞くのぉ。ペロペロキャンディーやケーキやアイスで、あっという間に三つのお願いがおしまいよぉ♪》
………
《あとね、夕飯のお買い物中の主婦も狙い目〜 お肉とかお魚とか野菜で済んじゃうんですものぉ。楽ちんだったわぁ》
……そんな手で、一万の願いごとを終わらせていいの? 主神が怒りそうな……
《ほ〜んと、おねえさまって、賢いわぁ! 頼りがいがあって、格好よくって、素敵っ! おねえさまと一緒に旅ができて、今、あたし幸せよぉ!》

 ナディンがそう言った時だった。
 悲痛な泣き声が聞こえたのは。

《おねえさま……?》

 イザベルさんの前で、ドロテアが泣き伏している。激しく身を震わせて。
 イザベルさんは、冷たい顔でドロテアを見下ろしている。

 しまった! あの二人、妙な雰囲気だったから、側で話を聞こうと思ってたのに!

《おねえさまっ! どうなさったのぉ、大丈夫ぅ?》
 ドロテアのもとへ、ナディンが駆けつける。ランプを持ったユンユンちゃんと、オレも後を追った。

 二人のすぐ側にいた学者が、オレを見て状況を説明してくれた。
「イザベルさんが、ドロテアさんを手ひどく拒絶したのです。自分は、もはや神ではない。過去の幻影に囚われ、自分に夢を押しつけるな。迷惑だ、と」
 オレは泣き伏すドロテアを見つめた。おろおろと背をさするナディンに応えもせず、ただ泣いている……

「だって、その子、夢ばかり見ているんですもの」
 オレに対しては、うふふと色っぽくイザベルさんは微笑みかける。
「アスラはみな弱体化したわ。デーヴァと戦っても、万に一つも勝ち目はない。それなのに、戦うだなんて……馬鹿な子。愚かにもほどがあるわ」
 ピクッと、ナディンが反応する。
「アスラは己の享楽に素直、生命を謳歌する一族よ。滅びを望むアスラなど、もはやアスラではないわ。輪廻世界に回帰する価値などない」

《アスラじゃないだなんて……ひっど〜いっ!》
 ナディンが、キッ! とイザベルさんを睨む。
《おねえさまは、誇り高いアスラよ! いっつもそうおっしゃってるもの! アスラの王様だからっておねえさまを侮辱なさるのなら、許さないわぁ! あたしが、おねえさまに代わって》

「黙れ、ハゲ!」
 うずくまったままドロテアが、鋭い声で叫ぶ。
「口をはさむな! 貴様には関わりのない事だ!」
《おねえさま……》
 ナディンが、しょぼんとうなだれる。

「持てる力の限りを尽くして、魔王と本気で戦ってみなさい。そうすれば、あなたにも現実が見えるはずよ。真実の名を失ったあなたが今どれほどのものなのか……。あなたの望む未来など何処にもないのだ、と身にしみてわかるでしょう」



「疾風のNINJAロビン! お呼びとあらば、即参上デース!」
 シリアスな雰囲気ぶち壊しの声が、背後からした。パパーン! と派手な音も響く。
 振り返ると、刀を背負った真っ赤なタイツ人間が魔法陣の側でポーズをとっていた。いかにも忍者らしいポーズで。

 マスターオブNINJAのロビンだ。
 忍者とは、ファンタスティックな忍術を使い、アメージングな体術を使い、風のように現れ風のように去ってゆく神秘的な存在……
 ロビンも、いちおー忍者っぽい技を使った。飛行機から飛び降りての奇襲、モモンガ変形の術、自爆にみせかけた身代わりの術、煙幕などなど。
 だが、忍道と一緒に武士道も極めてるらしいし、切腹したがったし、忍者っぽくないところが多い。
 セリアに言わせると、『忍者』と『NINJA』は別ものらしいが……

 ロビンはきょろきょろと辺りを見渡し、カネコに目をとめる。
「OH〜! あれが悪の魔王デスねー ほうほう、強そうデス! 我が敵に不足なしデース!」
 全身タイツ姿のロビン。ほんのちょっとだけ見せている目元が、笑みを浮かべる。

「魔王殿には怨みはないデスが……消えていただきマース。ではでは、ジンジョーに勝負デース!」
 そのまま勝負に雪崩れこんでいきそうなロビンを慌てて止めた。冒険世界からまだ三人来てない、魔王との勝負は全員の召喚が終わってからにしてくれ、と。
「承知いたしましたデース。SHINOBIたる者、依頼主の言葉には絶対服従なのデース」
 ロビンに魔王戦に参戦してもらう為に、オレは彼女の所属組織に任務依頼をした。手持ちの宝石全部を、前納報酬で渡したんだ。料金分は、働いてもらわないと。



 魔法陣から、情熱的な太鼓の音が聞こえてきた……
 幻聴と思いたかった。
 だが、太鼓の音はどんどん大きくなっていった。

 どんどん……

 どんどん……

《魔王戦! クライマックス! ファイナル・バトルね! いいわぁ、いいわぁ! ああん、もう、血が騒ぐぅ〜!》
 魔法陣から、極楽鳥のように艶やかな方が現れる。
 黄色い羽根だらけのデカい頭飾り、羽根だらけのデカい背負子(しょいこ)、肩飾りも手飾りも足飾りも羽根。あとは、着てるかどうか微妙な細い紐ビキニだけ。
 ボインボイーンなキュッが切れ切れ! チョコレートぷりりんだ!
 褐色の肌の美人が、張りのある大きな胸とお尻を揺らし踊り狂っている。リズムに合わせ、激しく妖しく腰をシェイク。派手な黄色い羽根も華麗に揺れ、実に色っぽい。

《戦勝の踊り、いくわよぉ!》

 技芸神ソニア。
 歌舞を愛する神様が、嬉しくってたまらないって感じに叫ぶ。

《カモォーン、エビバデー!》

 その言葉を耳にした時には、オレの体は勝手に動いていた。
 ソニア神のように、腰を振りだしてしまったのだ。

 オレだけじゃない。

 みんなだ。

 サラもジョゼもセリアも……
 アウラさんやルーチェさんも……
 ニーナやソワも、光の魔法結界の上のマリーちゃんも、ロボットアーマーの人も……
 シャルロットちゃんやお貴族様も……
 マスターオブNIJAやユンユンちゃんも……
 シリアスな雰囲気だったドロテアやナディンやイザベルさんまでもが……

 み〜んな、腰を振り振り、踊っている。

 歌舞を愛する技芸神の魅了で、踊らされているのだ。

 雪と氷の女王様やグラキエス様まで、腰を振っている! ああああ、お二人とも不機嫌そのものの顔。冷気の放出が派手になってる……

 てか、カネコまで踊ってるし!
 全身真っ黒な毛だらけの魔王が玉座から立ち上がり、不器用に腰を振って踊っている。
 ゴキ、ゴキ、ゴキって腰が鳴る感じ。ドタ、ドタ、ドタと床を踏んでるし。

 おまえ……
 頭はいいけど、運動はからっきしのタイプだった……?
 運動会の前日に、学校なんか火事になっちゃえ〜って念じるような?

 魔王が、気の毒なほど無残な踊りを披露する。体がデカいから目立つんだよな……

《いいわぁ、いいわぁ。最高ー! みんな、素敵よぉ!》
 いやいやいやいや!

「魅了を解いてください! 魔王戦のさなかです!」
「このままじゃ、魅了が解けた途端、ダウンしちゃいます! アタシ達、まだ魔王に攻撃してないんです!」
 カネコと大差のない踊り手の、セリアとサラが叫ぶ。ステップも腰づかいもギクシャクしてて、腰の振りが音楽に合ってない。サラは運動神経はいいのに……音感が悪いんだな、きっと。
 しかし、踊りに夢中な技芸神のお耳には届かない。

 陽気でエキサイティングな音楽で周囲が満たされる。

 目元を隠し、ドロテアが妖艶に踊っている。
 イザベルさんもそうだけど、ソニア神に対抗できるぐらいに上手い。
 腰を振るというより、回す感じ? それでいて姿勢は揺るぎなく、安定している。
 腰だけ別の生き物みたいに、くねくねしてる。所作も優美。輪廻世界の踊りなのかも。

 正直に言えば、眼福ではある。 
 クリームぷるるんこと、アナベラが踊るとぷるんぷるんのぷりんぷりん。
 爆乳な方が踊ると、たっぷんたっぷん。ジョゼもなかなか……
 お姫様みたいなシャルロットちゃんや尼僧姿のマリーちゃんが腰を振るのは、ドキドキものだし……
 キャッキャ楽しそうに笑い、ユンユンちゃんとソワと踊るニーナ。見るだけで、癒される。
 リーズやカトリーヌは、腰振りが上手い。けど、オレ的にはパメラさんやマーイさんの踊りのが好きかも。たどたどしく恥ずかしそうに踊る姿に風情があるし、下手といってもサラよりは遥かに上手いし。
 ロボットアーマーの人とお貴族野郎については、ノーコメント。

 だが、いつまでも踊っているわけにはいかない。

「ナディン」
 オレは、技芸神の友に声をかけた。ナディンはドロテアの側で踊っている。心配して、側につきそっているのだろう。
「これじゃ攻撃できない。ソニア神に踊りをやめてもらう方法はない?」

《技芸神に踊りをやめろだなんて、無理よぉ》
 困惑顔でナディンが言う。
《呼吸するなって言ってるも、同じだものぉ。理屈で踊ってるんじゃないの、魂で踊ってるんですものぉ》
 むぅ。
《でも、大丈夫よー 勇者くん。あたし達、踊ったまま攻撃するからぁ〜》
 へ?
「できるの?」
《もちろん〜》
 できるのか……
 さすが、神様ばっかの世界。
 人間が混じってるけど、人間といってもマスターオブNINJAだし。NINJAなら、どうにかしてくれそう。


 ふと気がつけば……
 さっきまで居なかった女性も、共に踊っていた。

 輝かんばかりに美しい黒い女性が、ワイルドに踊っている。
 ルルさんだと気づいた。
 動物をその身に降ろす、狩りの神様。霊の生前の外見やら力を借りて、変化するのだ。
 ルルさんが、白い歯を見せてニコーッと笑う。ひとなつっこい笑い方だ。
 フワフワの縮れた黒髪、キラキラした丸い目、厚い唇、黒い肌。美人じゃないけど、ファニーフェイス。
 かわいい。
 かわいいんだが……
 背がやけに高い。
 のわりには、手が短くて小さい。
 頭の被り物は、トカゲっぽいけど、口の中が凄い。牙がギザギザで獰猛そう。

 なんの動物を降ろしてるんだ……?

《ティラノ君のご先祖様を憑依させているの》
 答えは、すぐ近くから聞こえた。

 顔が丸く目尻がさがっていて、童顔。あどけない感じの美少女……に見える神様だ。
「ヘレーン様」
 外見こそ子供っぽいけど、ナディンの叔母で、冒険世界の主神の妹だ。
 地下世界に亜空間をつくり、恐竜達と暮らしている女神様だ。
 ブロンドの癖のある長髪。黒い斑点のある毛皮のビキニで、こぼれそうなほど大きな胸とお尻を包んでいる。踊りも外見も、か・な・りセクシー。

《ナディンちゃんのお友達が、魔王戦用に最強の魂を探してるって聞いたから〜 ちょっとお手伝いしたの〜 時空間移動(タイム・スリップ)して、サバンナに大昔にいたティラノ君のご先祖さまに会わせてあげたわけぇ〜》
 ニコニコ笑ってヘレーン様がおっしゃる。
 ルルさんはドンと胸を叩き、ギャオースと聞き取れない声で吠えた。
《『最強の戦士になった、悪い神を倒すのを手伝う、期待に応えてやるぞ』ですって。張りきってるわね、この子》

 ヘレーン様がルルさんの通訳をつとめてから、オレに聞く。
《そーそー 前にあなたが言ってた子達、どうなった? 鬼の子たち、私の世界に移住するって?》
 ヘレーン様は、わくわく顔だ。自慢の恐竜世界を、誰かに見せるのが大好きな神様なのだ。
「ヘレーン様の地下世界の事を伝えたばかりなので、結論が出るのはまだ先です。これから(シュテン)達で移住するかどうか検討するので」
《あら〜 そうなの〜》
 残念そうにヘレーン様が溜息をつく。
《じゃ、見学! 明日にでも見学に来てくれていいわ! 実地調査をしてもらった上で、移住を決めてもらえばいいもの! ご招待します!》
……誰かに自慢の庭を見せたいんだな、ヘレーン様。お客が来なくて、寂しいのかも。


「勇者……様……」
 完全に呼吸が乱れた声がした。
「冒険世界、の、方々に、攻撃を……お願い……して……早く……」
 ゼーゼーと苦しい息の間から、どうにかしゃべってる感じ。

 オレは頷きを返した。

 早いところソニア神に帰還してもらわないと、うちの学者が心臓麻痺で昇天しかねない。死因が腰振りダンスじゃ、死んでも死にきれないだろう。

 普段からちゃんと運動しとけよ、セリア……
+注意+
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