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ハーレム100 作者:松宮星

幻想世界

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大好きだにゃー!  【ミー】(※)

 幻想世界に来て早々、オレは、嵐の海に落っこちて溺れた。

 助かった時には、上半身裸で、身一つになっていた。
 背の荷物も腰の剣も、み〜んな、海の中だ。
 イザベルさんから貰った有難い珊瑚のペンダントも、もうない。

 だが、『勇者の書』は、無事だった。
 ジョゼのおかげだ。

 出発前、オレはジョゼにポーチを預かってもらった。
 そん中に、『勇者の書』を入れてたのをうっかり忘れて。
『勇者のくせに自分の書を持ち歩かぬとは何事だ』と、お師匠様に怒られかねないポカだ。けど、おかげで、無くさずにすんだ。結果オーライだよな!

 無くしてたら、オレ……どうなってたんだろ?

 勇者と『勇者の書』には、魔法的な、深い結びつきがある。
 勇者と関わりのあった異世界への道を、書が裏表紙に浮き上がらせるみたいな……

 一勇者につき書は一冊。
 代わりを貰えるとも思えない。
 無くさないよう、気をつけよう。

 お師匠様が『異次元倉庫』から、オレの着替えを出してくれた。
 シャツとズボンと下着とマントに靴まで。
 残念ながら武器は無かったんで、丸腰になってしまった。
 けど、まあ、『異次元倉庫』にオレの着替えもあって良かった。

『異次元倉庫』は、賢者専用の魔法。
 異次元に自分専用の倉庫空間を作り、そこから荷物の出し入れをするんだ。

 異世界では、移動魔法は駄目、物質転送も駄目、もとの世界との心話は駄目と、お師匠様の便利魔法は制限される。
 でも、『異次元倉庫』はOK。
 もとの世界で予め倉庫に入れといたモノは、幻想世界でも取り出して使えるんだ。
 幻想世界のモノを、『異次元倉庫』に入れてオレ達の世界に持って還る事もできる。
 人間を核とする魔法なんで、預けられる荷物は術師の体重分なわけだけど。お師匠様みたいにスリムだと、損だ。ガタイのいい男のがお得だよ、この魔法。


 日が陰り始めたので、『異次元倉庫』から出した天幕を張って、野営する事となった。
 海辺から続く道は、木がまばらにあるだけの野原で、な〜んもなかったからだ。

 天幕の前で、聖女マリーちゃんが、ポットの中に水を作り、焚き火サイズの火を生み出す。
 全て、魔法で。

 マリーちゃんは、僧侶魔法ばかりか、魔術師の魔法も使えるのだ。

 浜辺でも、溺れて塩だらけになってたオレを、雨雲を呼び出し洗い流してくれた。
『ほんの、たしなみ、程度に、使えるだけ、ですわ〜』
 魔術師の杖なしで、楽々と魔法を使うマリーちゃん。
 サラがひきつった顔で、どの程度の魔術師魔法が使えるのかを尋ねた。
『基本的な、魔法しか、習って、いません〜 でも〜 せっかくなので〜 魔術師学校の、初等部教師免状は、取得して、おきました〜』
 のほほんと答えたマリーちゃん。
 その無垢な笑顔にうちのめされ、サラは砂浜にめりこんでいた。
 初級魔法『ファイア』すら使えないんだもんな……魔術師枠で仲間になってるのに。強く生きろよ、サラ……

 今日の夕飯は、焼き魚と、お師匠様が『異次元倉庫』から出してくれた乾燥パン。
 魚は、クラーケンのクラちゃんがパメラさんに貢いだ鮮魚だ。

 食後も、薪の無い魔法の炎を囲んで、マリーちゃんが淹れてくれたお茶を飲んだ。
 お師匠様が、自身の『勇者の書』を開いて、みんなに見せた。
 幻想世界の地図が載っている頁だ。
「今、我々がいるのは、この辺り。南の浜辺付近だ。北東のドワーフの洞窟を目指す」
 徒歩だと、四日ほどの距離なのだそうだ。
「一流の魔法鍛冶師のドワーフに、ジャンの武器を依頼したいのだ」
 お師匠様が竜騎士時代に使っていたランスも、この世界のドワーフが生み出したもの。魔法岩石巨人(ゴーレム)すら一撃で粉々に砕く、凄まじい破壊力だったらしい。

「頼んですぐに出来るものなんですか?」
 サラの質問に、お師匠様は静かにかぶりを振った。
「私の時は三十日かかった。ドワーフは誇り高い職人だ。満足のゆく物が出来るまで、妥協しない」

「では、勇者様の、武器が、できるまで、この世界に、とどまるの、ですか〜?」と、マリーちゃん。
「そういうわけには、いくまい、幻想世界の他に十の異世界へ行かねばならんのだ」

 お師匠様が、地図の北のはずれを指さす。
「荒野に私の旧知の方がいらっしゃる。ドラゴンの女王アシュリン様だ」
 パメラさんが、びくんときぐるみの体を揺らす。目もきらきらと輝いている。
 オレらの世界じゃ、ドラゴンは太古の記録にのみ記された、絶滅種。『最強』と謳われたその伝説のみが一人歩きしている。『街外れの谷にドラゴン!? 目撃者の狩人が激白!』な〜んて怪しい号外が出るくらいの。
 獣使いパメラさんにとっては、憧れの生き物なんだろう。
「たいへん強大な方で、次元を渡る能力もお持ちだ。アシュリン様にお願いし、完成した勇者の武器を届けていただこうと思う」

 んじゃ、ドワーフの洞窟から荒野を目指す旅になるのか。

「魔王が目覚めるのは九十三日後だ。幻想世界の旅は、十日以内に終わらせたい」
 お師匠様が感情のこもっていない顔で、オレを見つめる。
「目隠しはしなくていい」
 え?
 本当に?
「ジョゼに手を引かれての歩みでは、遅すぎる」
 やったー!
 目隠し、卒業!

「荒野に向かう間に、仲間も増やしたい。幻想世界には強力な魔法生物が多い。巨人も、獣人も、エルフも……微弱な能力者とされる小人ですら、我々の世界の一流の戦士と同程度には戦闘能力がある」
 オレは、あと八十八人の仲間を見つけねばならない。
 異世界で良さげな人を見かけたら、萌えて、仲間とする。
 だが、連れては行かない。
 連れ歩くとしても、その世界にいる間だけ。
 異世界の仲間は、魔王戦の日まで、もとの世界に暮らしていてもらう。
 仲間という契約だけを成立させといて、魔王戦当日、召喚魔法でオレらの世界に来てもらうんだ。

「だが、」
 お師匠様が、はっきりと釘をさす。
「仲間にしたいのは、魔王に大ダメージを与えられる者だ。誰でもいいわけではない。赤ん坊や、幼児には萌えるな」
 う。
「おまえは、外見だけで萌えてしまう」
 う。
「通りでは、うつむけ。誰かと会ったら、目をそらせ。仲間にする意志がかたまるまで、相手をまともに見るな」
「……はい」

「見るからに戦闘力が無さそうな者を、見てはいけない。軽はずみな萌えは、危険だ。おまえはおまえの首を絞める」
 お師匠様……
 心配してくれてる……?

 お師匠様は、オレを強制的に自爆させる事ができる。
『この世界の礎となってくれ、勇者よ!』って言って、オレをチュドーンさせられる。
 オレが自爆すりゃ、4999万9999の大ダメージだ。
 けど、そんな方法で死なせたくない、魔王戦後も生き延びてもらいたい……
 そう思ってるからこそ、強い仲間を探せって言ってるんだ……

 お師匠様への言葉を探した。
 自爆の事は、仲間には内緒にしてる。
 今、不用意な事は言えない。
 けど、お師匠様の気持ちに応えたかったんだ。
 いい言葉はないものかと考え、これなら! と、心に浮かびかけた。

 だが、口にできなかった。
 口を開く前に、オレは押し倒されていた。

「え?」

 オレは、地面に仰向けにひっくりかえされていた。
 誰かがオレの上にのっかっている。
 子供みたいに軽いが、子供よりは大きい。

 炎を飛び越え、オレへとダイブして来たその人は……
 獣人だった。
 頭のてっぺんに二つの耳が、ひょこひょこと動いている。
 先っぽが、ちょんととんがったそれは間違いなく……
 男の夢のアレ……

 ネコ耳!

 ネコ娘ちゃんが、にょ〜んって感じに体を倒してくる。
 フンフンフンと荒く鼻を動かしながら。
 おかっぱのやわらかそうな金髪、大きな瞳には縦長の金の虹彩、上唇はネコっぽく波打っていたりする。

 か、かわいい……

 あ、いやいや、まともに見ちゃだめだ!
 目をそらさなくっちゃ!
 目を……
 あぁ……
 だけど……
 かわいいなあ……

「だ〜いすきぃ、にゃ〜!」

 ネコ娘ちゃんが、オレに抱きついてくる!

 んでもって、長く赤い舌で……
 オレの左頬を、ペロペロと舐め始めたのだ。

 あン……

 そ、そこ……

 いぃ……


 オレのハートは、キュンキュンキュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと八十七〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 カッカする……
 心臓バクバク。
 頭、モーロー

 金切り声をあげてるの、誰だろ……?
 サラ……かな?

 あぁぁ、ネコ娘ちゃん、ひきはがされちゃった。
 ジョゼに……かな?

 パメラさんが、ネコ娘ちゃんと何か話している。
 普通にしゃべってるっぽい……

 何か、左頬が熱いや。
 ネコの舌って、ザラザラしてるもんな……

 オレ、ネコ娘ちゃんに舐められちゃったんだ。
 ぞくぞくしちゃった……

「勇者さま〜 大丈夫ですか〜? お気を、たしかに〜」
 マリーちゃん……かな?
 だーいじょーぶですよ〜 オレは、いつでも、元気で〜す……

「駄目、みたい、です〜 サラさん、勇者さまに、ガツンと、お願いします〜」
 サラ……?
 ガツン……?

 オレはサラの杖で、ガツンと殴られ、ようやく正気に戻った。


「幻想世界のネコ族の唾液には、軽い媚薬効果がある。舐める事で獲物を骨抜きにし、無抵抗にしてから食す為だ」
 お師匠様が、淡々と解説をしてくれる。

 オレ、又、喰われそうになってたの……?

 ジョゼに羽交い絞めにされているネコ娘が、ぶるんぶるんと大きく頭を横に振る。食べる気はなかったんだ、と。
「これは、事故だにゃー」
 ネコ娘は、素肌の上に、ダボダボの胸当てつきズボンを着ていた。
 裸エプロンならぬ、裸オーバーオールってヤツだ。むかし読んだ『勇者の書』で、その魅力を力説してたのがあったよな…… 横から見えるふくらみが最高なんだって。
 残念ながら、この子の胸はぺったんこだ。横から見ても、楽しくも何ともない。

「ミーは、おにーさんに、誘惑されたんだにゃー ぜーんぶ、おにーさんのせいだにゃー」
 オレに誘惑された?
 ネコ娘が、何とも言えない色っぽい目で、オレを見る。
 又、胸がどっきんとした。
「おにーさん、いー匂いを、プンプンさせてるにゃー おいしそ、すぎだ、にゃー」

 あ、そ。
 そーいう落ち……

「焼き魚、食ったからか」
 と、オレが溜息をつくと、ネコ娘は派手に大きくかぶりを振った。
「焼き魚はおいしいにゃ! 脂ののった魚が、じゅじゅっと焦げた匂いは、絶品だにゃ! でも、ミーは、オタマジャクシと、大トロのマグロを間違えたりしないにゃ!」
 えっと……?
「おにーさんからは、すっごくいー匂いがするんだにゃー オタマジャクシも、焼き魚も、マグロも、目じゃないにゃー 」
 ネコ娘が、うっとりとした顔でオレを見つめる。

「これは世界三大珍味のひとつ、人魚の香りだにゃー ヨダレがあふれるにゃ、おにーさん……食べてしまいたいにゃー……」

 人魚、喰うのかよ、おまえ……
 この世界、喰うか喰われるかだな……





 オレに惚れた! っと、ネコ娘は、やたらとオレにベタベタする。穴あきズボンから出てる細く長いシッポも、パタパタさせている。
 この子のオレへの愛は、人魚の残り香がある間だろうけど。

「おにーさん、ネコ族の集落の近くは通らない方がいいにゃー みーんな、ミーみたいに、おにーさんに、メロメロになっちゃうにゃー おにーさん、食べられちゃうにゃー」
 何十人ものネコ族に群らがられ、ペロペロ舐めまくられて、んでもってガブリ・バキバキ・モグモグされるなんて……
 絶対、嫌だ。
 ペロペロまでならなー メス猫限定なら、まあ……嫌とは言わないけどー

「ミーが案内したげるにゃー」
 ネコ娘がオレの腕をとり、にゃんにゃん笑う。
「他のネコに、おにーさん、あげないにゃー ネコのいない道を、教えてあげるにゃー」

 騒動は避けた方がいいってんで、お師匠様はネコ娘に道案内を頼んだ。
 けど、ネコ娘にオレらの世界の『賢者』の権威は通じない。お師匠様を、ジロジロと見て、
「おねーさん、匂い、薄いにゃー マズそうだにゃー」
 とか言いやがった。好き嫌いは、うまそーか、まずそーで決めているようだ。

「ミーちゃん……あたし達をドワーフの洞窟まで案内してくれる……?」
 と、パメラさん。パメラさんは人間とは会話できないが、獣人はOKのようだ。普通にしゃべってる。
「おねーさん、キレイだにゃー……おねーさんの頼みなら、ミーは何でも聞いてあげるにゃ……」
 ネコ娘は、嬉しそうに、にゃんにゃん笑っている。
 パメラさんの『どんな獣にも、一目で好かれる』能力が発動しているようだ。
「『マスター』って呼んでいいかにゃ? ミーが守ってあげる。おねーさん、ミーの特別になって……」
 何かイケナイ告白のようだ……

 そんなわけで、ミーが新たに仲間に加わった。
 しかし、何故か、ジョゼとサラは超不機嫌だ。ジョゼは泣きそうな顔で、サラは鬼のような顔で、オレを睨むんだ。
 マリーちゃんだけは、いつも通りほわほわしてるけど……


 魔王が目覚めるのは、九十三日後……
 何か、この先、波乱の予感。


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№013)

名前 ミー
所属世界   幻想世界
種族     ワーキャット
職業     海の警備員(本人談)
       浜辺をうろついて、浅瀬でとった魚や
       貝を、ナマで食べるのが仕事……
       警備してないよ、それ!
特徴     ネコ耳(男の夢)! 
       シッポもあるよ!
       ちょっぴり、わがまま。
       食欲に素直。
       パメラさんを慕っている。
       オレにメロメロだけど、扱いは餌。
戦闘方法   爪かな?
年齢     口調からすると、子供っぽい。
容姿     金髪おかっぱ、縦長の虹彩の金の目。
       裸オーバーオール。     
       しなやかな体。胸は、ぺったんこ。
口癖    『にゃ?』『にゃ』『にゃー!』
好きなもの  お魚。人魚の肉が大好物。
嫌いなもの  匂いが薄い人。
勇者に一言 『おにーさん……食べてしまいたいにゃー』
挿絵(By みてみん)
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