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ハーレム100 作者:松宮星

決戦(Ⅱ)

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エスエフ界 その2

 エスエフ界の伴侶達の一番手は、バイオロイド科学者のタチアナさんだった。

 アタッカー位置の最前まで移動したタチアナさんが、無言のまま魔王を見上げる。

 彼女の緑色のスーツが爆発! したかに見えた。
 表面を覆っていた深緑のものが、フィットスーツから離れたのだ。濃緑の霧のようなそれは、ザザザッ! と宙を飛び、魔王へと付着する。

 0ダメージと、勇者眼が捉える。攻撃したようではあるが……タチアナさんのポチが魔王にくっついただけにしか見えない。

 タチアナさんは、魔王に背を向け、コツコツと靴音を響かせ遠ざかる。
 向かった先は、英雄世界のコズエさんが設置してった『MY ステージ君』だ。
 ステージの端に座る女王様の横を通り過ぎ、マイクを拾い、タチアナさんはステージ中央へ。
 スポットライトに照らされた生物学者が、魔王へと軽く会釈をする。
「P201211C、分裂増殖型ゲル状バイオロイド。通称『ポチ』。現在私のポチは、外部刺激に対し一挙に増殖、宿主の内部へ浸食するよう微調整を加えてあります。アタッカーが攻撃するごとにポチが魔王を摂食する、とご理解ください」
 タチアナさんが、難しい専門用語を使って攻撃の説明をする。
「又、今回は微弱なテレパシー能力を強化する為、ESP増幅器を電脳部に追加しました。魔王浸食の間に、魔王からの情報収集及びポチ2号からの情報供出を同時に進行させます」
 説明が続くが……正直、何を言ってるんだか、わからない。
「かように、ポチは護衛型バイオロイドの範疇に留まりません。攻撃、諜報、多岐に渡る活躍が可能であります。むろん、既存のゲル状バイオロイド・シリーズ同様、宇宙・深海・酸の海・マグマ等の局地での護衛が可能である点は顕著な特性で、外部刺激を完全遮断し……」
 専門分野に関しては雄弁になる方が、MYマイクを持ってしまったのだ。口を閉ざすはずがない。

 お師匠様との座学の授業を思い出す……
 難しい単語の羅列を延々と聞いてると、眠くなってくる。
 タチアナさんの声、抑揚がないし。言霊効果のあるステージから流れてくる声がこれじゃ……ずっと聞かされるカネコも苦痛だろう。ダメージにはならないが、ある意味攻撃かも。


「私の番!」
 自称正義の味方が、ガッツポーズをとる。
 キャロラインは、お人形みたいにチャーミングな美少女だ。
 身にまとっているのはパワードスーツらしいが、見た目は白と赤の縞模様のビキニだ。
 ぷるんぷるんの胸とお尻が、ビキニからこぼれそう。あふれんばかりの健康的なお色気にあふれている。
「宇宙人様! 『正義の国』のキャロラインの勇姿をどうぞご覧ください!」
 キャロラインが愛想よくオレらに手を振り、投げキスをする。
 この子の所属組織がユーリアさん達を悪人と決めつけてたのも、宇宙人を捕まえて実験・迫害をしていると勘違いをしてたからだ。宇宙人が好きなのだ。
「今日の働き次第でシャフィロス星調査団メンバー入りも検討するって、ねーさんがあの女にもちかけたんだよ」
 エスパーのラリサさんは、ニヤニヤ笑っていた。
「そーとー張りきってるから、期待していいかもよ?」

 キャロラインが、魔王に向かって走る。
 速い。
 パワードスーツで脚力が高まっているからか。

「くらえ! 正義の味方パ〜ンチ!」

 右腕を引き、力をためて、前へと突き出した瞬間だった。

 こけっ! と、キャロラインは転んだ。
 足がもつれたのだ。

 勢いののった拳は、カネコの手前の床へ。
 グシャッ!と、音が響き、真っ黒な床が陥没。
 砕けた床の切片が周囲に飛び、カネコの足に突き刺さる。

 472ダメージ。ポチの浸食で追加効果10万。

「………」

 周囲はシーンと静まり返った。

 ショックのあまり、キャロラインは床に突っ伏したまま固まっている。

 オレも固まりたい気分だ……


「調査団入りの話は無しね……」と溜息をつくユーリアさんに、「わざとじゃないんです!」と必死にキャロラインがとりすがる。

 そんな中、ぴっぽっぽっぽぽぉ〜と妙な音を立て円盤が浮上する。
 クッションサイズの、丸っこい機械だ。ライトがいっぱいついていて、やけに明るく点滅している。サイボーグのジリヤさんが右手に持ってたヤツだ。
「№C121118K通称『チコ』専用UFO型戦闘機、通称『子リスのおうち』よ」
『正義の国』の人にくっつかれているユーリアさんが、円盤を見上げる。
「自爆以外攻撃手段のないチコの為に、ダンとバリーが開発した攻撃機体よ」
 やせっぽち&ふとっちょのバイオロイド・チームの二人か。
「チコはバイオロイド。電脳のバックアップをとっておけば、同じ記憶の個体を幾らでも複製できるのに……あなた、チコに『死んでもらいたくない』とか言うんですもの」
 ユーリアさんがクスッと笑う。
「機械の死……実に新鮮な発想だったわ」

『子リスのおうち』が、ヒマワリ型爆弾を発射する。
 30万1586ダメージ。追加効果10万。
 意外とダメージが出た! やるじゃん、ダン&バリー!

『子リスのおうち』から降りたチコを、ニーナが抱っこする。
 黒目がちな、大きなつぶらな瞳。ピクピク動く耳や鼻。身長くらいある、ふわふわのもふもふのラブリーな尻尾。
 チコは、どこをどう見ても、愛らしいリスだ。
 自爆しないで良かった……
 オレは魔王戦で、誰にも死んでもらいたくない。オレも死にたくないし、仲間達を誰一人失いたくない。


「いっけぇ、ビクトリー! 勝利を我等に!」 
 熱血なかけ声をあげ、バルバラさんが手に持っていた機械側面のボタンをポチンと押す。
 ウィィンと機械音をたてて、四角い箱が開き……
 ズゥンズゥンって腹に響く太鼓音に続き、チャチャチャララララン! てな勇ましい音楽が大音量で流れ、三体のメカが飛び出す。
 赤、青、黄の三体の飛行メカ。一体辺りの大きさは、書簡箱ぐらいだ。

 疾風のように宙を飛びまわった三体のメカが、空中で合体を始める。

 赤の機体の下方から青の機体が合体し、くっつくタイミングでガシャーン! と重々しい機械音。
 バリバリバリ! と雷のエフェクトを発しながら、黄色の機体が中央で分離。
 分離した二体が、青の機体の下方からくっつく。当然のように、ガキーン! といかにもな機械音。

 三体合体。そして、変形だ。

 一番上の赤の機体の両翼がガショーン! と折れ曲がり、下方に向かって伸びてゆく。
 赤の機体の中央からニョキッ! と額にV字の頭部が飛びだし、伸びた翼の先からジャキーン! と指が生える。

 赤が頭部と胸部と両腕、青が胴体、黄色が両脚に変形。
 三体合体で、人型ロボ登場だ。

『五十分の一 バビロンの守護戦士ビクトリー! 見ッ参ッ!』
 バルバラさんの声でミニロボがしゃべり、ズシンズシンと効果音を響かせ両手でVの字を象った決めポーズをとる。

「決まった!」
 赤いフィットスーツの女の人が、よっしゃっ! って感じにポーズをとる。
 ユーリアさんとルネさんが拍手を送る。

 実物はビル並にデカかったけど、五十分の一ビクトリーはニーナのピンクのクマさんと大差ない大きさだ。

「バルバラさんが操作してるんですか?」と、オレ。
「いいえ! 私は標的を指定してビクトリーを起動しただけ! 今、ビクトリーは熱い魂で自ら侵略者(マオウ)と戦ってるのよ! ビクトリー、ファイトッ!」
「おおお! という事は、合体変形全自動ロボですね! 素晴らしいです!」
 ルネさんはやけに興奮している。

『必殺、Vの字斬りッ!』
 ビクトリーが、額のVの字をカッターにしてカネコへと投げる。
 カネコの顔にぶつかって、Vの字が爆発。
 88万5796ダメージ。追加効果10万。

 さすが、エスエフ界の玩具。オモチャなのに強い。
「でも、Vの字に斬ってませんよね」
 Vの字をぶつけてるだけだ。
 オレの正しいつっこみに、バルバラさんが笑顔で答える。
「技名はノリとその場の勢いで決定! 格好良ければ、オール、オッケーッ!」
 そうなのか。


 それから、射撃武器の攻撃が続いた。

 イヴに砲筒を支えてもらいながらユーリアさんは、超重力砲を撃った。
 響いたのは、キィィィーンって耳障りな音だけ。
 派手なエフェクトもなし。
 けど、カネコの腹にデカイ穴が開く。例によって、一瞬で治ったが。
 118万3267ダメージ。追加10万。
 熱衝撃で組織を粉砕する機械なのだとかなんだとか。

 つづいて、サイボーグのジリヤさんが、肩に担いでいた大きな円筒状の武器を発射する。
 ビームバズーカだ。
 先端から凄まじい勢いで発射された光線が、カネコの上半身を玉座ごと飲みこみ、更に直進して壁までも溶かした。
 134万1295。追加10万。

 次は、イヴの番だった。
 アンドロイドは、右手の巨大な銃を構え、微動だにしない姿勢で撃ち始める。
 1000発連射の重機関砲だ。
 連射武器なので、一発あたりのダメージは1500と小さい。けれども一度引き金を引いただけで、弾は連続して1000回発射される。
 全弾命中すれば、150万ダメージになるのだ。


「まだ武器が決まらないの?」
 イヴの攻撃中、エスパーのラリサさんが妹のナターリヤさんを背後から覗きこむ。
 シャルルからルネさんの発明品の説明を聞いていた超常現象研究家は、首をかしげて姉を見つめた。
「どれもこれも、しっくりきませんの。特にシャフィールの武器探しが難しいのです。シャフィールは、シャフィロス星で唯一自我を持つ、シャフィロスの頭脳。戦闘は労働者階級の担当なので、他者と自ら敵対した経験がございませんの」
「スイッチを押したら勝手に攻撃みたいな武器がいいんですか?」と、オレ。
「そうですわね」

「ビクトリーを借りては?」と、オレは提案したんだが、
「無理ッ! セキュリティ機能があるもの! ビクトリーを動かせるのは、マスター登録をした選ばれた人間だけよ!」とか、メカニックの方がおっしゃる。
 今日ぐらい全員が使用できるよう設定してくれればいいのに……

「困った時には、これです!」
 ババーンとばかりに、ロボットアーマーの人がコンテナから発明品を取り出す。棍棒サイズの銃だ。
「『なんでも ぶっぱなす君』。蓄霊器『霊力ためる君』を改良して銃にしてみました! 蓄霊するだけだった『霊力ためる君』とは異なり、魔力・霊力・妖力・ESP、何でもかんでも目に見えない不思議な力を吸い込みまして、かたっぱしからエネルギー弾に変換して吐き出す機械なのです!」
 引き金にふれるだけで、その人の持つ不思議エネルギーを吸いこんで銃口から発射。
 引き金から手を離さない限り、エネルギー弾を発射し続けるのだそうだ。
「シャフィロス星女王様は、超能力機械文明の一番偉い方! この銃を使いこなすのにふさわしいお方です! こんな事もあろうかと私が密かに開発しておいた銃を、是非、ご使用ください!」

「しかし、ルネさん、」
 お貴族様が、眉をしかめる。
「『なんでも ぶっぱなす君』は魔王戦数分前に試作品が完成したばかりです。一度も使用実験をしていませんし、照準調整などまったく」
「大丈夫です! 超能力者が使用するんです! 狙わなくても、不思議な力で、ぜったいに当たります!」
 又、まったく根拠のない事を言って……

「女王様は超能力者なんでしょ? 超能力で攻撃してもらえばいいんじゃ?」
 オレの質問に、ナターリヤさんがかぶりをふる。
「無理ですわ。攻撃系の力はございませんもの。シャフィールは、テレパシーと未来予知に秀でた方です。他にご使用になれるのは、念写や透視、サイコメトリー、幻術、異空間創造ですの」
 むぅ。

「知覚能力系のエスパーでも、大丈夫! 不思議エネルギーがあれば、エネルギー弾に変換可能です!」
 ルネさんが発明品を、強引にラリサさんに手渡す。
 途端、銃口に赤い光が灯った。
「銃口に注目ください! 使用可能な方が持つと、光ります! まずは持ってみてください! この銃が使えるか、わかりますから!」

「へー 女王様に試してもらったら?」
 エスパーのラリサさんが、妹のナターリヤさんに『なんでも ぶっぱなす君』を手渡した。

 その瞬間!

『なんでも ぶっぱなす君』の銃口から赤い閃光が広がった。
 目に痛いレベル。
 ラリサさんが持った時の、何十倍の明るさだ。
「おおおお! これは凄いですね! 不思議エネルギーの量で、灯りの強さは決まります。ナターリヤさんは、ラリサさんの何十倍も不思議エネルギーをお持ちのようです!」

 え?

 ラリサさんは、超能力部隊の隊長でしょ? ナターリヤさんのが強いの?

『なんでも ぶっぱなす君』を手にしたナターリヤさんは、戸惑いの表情だ。

 そんな妹を、ラリサさんは探るように見つめた。
「ナターリヤ……おまえ、あいかわらずまったくESP検査にひっかからないけど、シャフィールに超能力を目覚めさせてもらったって言ったよな? それって、おまえの妄想じゃなくて、本当に……」

「おねえさま!」
 ナターリヤさんが、遠方を指さす。
「イヴの攻撃が終了しましたわ! 次はおねえさまの番! 移動なさって!」
「けど、おまえ」
「その話は還ってから! 今は、ユーシャ型宇宙人の防衛戦のさなか! 戦闘に集中なさって!」

「……わかった。後でな」

 駆け行くラリサさんが、右手と左手を向かい合わせ、手の間から光を生み出す。
 ESPエネルギーを武器化したのだ。
 ぐんぐんと伸びたそれは、まるで、まばゆい光の槍だ。
 バチバチと稲妻を放つESPを、ラリサさんは頭の上に高々とかかげ、それから魔王へと投げつけた。

 槍とも矢ともつかぬまぶしい光が、魔王を貫く。

 107万9631ダメージ、追加効果10万。
 さすが、エスパー。武器無しで100万越え。

 しかし……
 このラリサさんより、ナターリヤさんは強い……のか?

 オレやシャルル、周囲で会話を聞いていた者がナターリヤさんに注目する。
 銀の髪の少女は、ちょっぴり口元の辺りをひきつらせていた。
「この発明品、お借りしますわね! シャフィールにご使用いただけるかどうか、先に私が試してみますわ!」
 そう言って、アタッカー位置まで走る。

 ナターリヤさんが、『なんでも ぶっぱなす君』を両手で支え持ち、銃口を魔王に向ける。
 引き金が、ゆっくりと動く。
 銃口に光がふくらんでゆき……

 ボン! と音をたててはじけた。
 銃の破片が飛び散る。
 発明品を手にしていたナターリヤさんの体が、後方へと吹っ飛ばされた。

 爆発したか!
 ルネさんの発明品だもんな!

「ナターリヤ!」
「ナターリヤさん!」

 皆で、急いで駆け寄った。
 幸いなことに、ナターリヤさんに外傷はなかった。
 爆発したのは『なんでも ぶっぱなす君』だけ。使用者には怪我も火傷も無かった。
 とはいえ、手に持っていた武器が爆発したのだ、体の中が傷ついたかもしれないし、心的外傷が残るかも。
「すみません! すみません!」
 ルネさんは、平謝りだった。
「私の方こそ、すみません……素晴らしい発明品を、うまく使いこなせず……爆発させてしまって」
 ナターリヤさんは、静かに微笑んでいた。まったく怒っていない。心の広い女性だ。

 攻撃が敵に当たらなかったので、0ダメージ、ポチの追加効果も発動しなかった。
 借金プラスだ。
 ユーリアさん達は100万オーバーの攻撃をしてくれた。が、キャロラインもチコも100万に届いていない。
 計算してないけど、たぶん借金増加中。
 だけど、いい。
 ナターリヤさんは、無事だったんだ。
 何よりだ。
 オレがチュド〜ンして死ぬ事になっても、みんなさえ無事なら……

「う」
 ナターリヤさんが口元に手をあてる。
 ふと、目が合った。
 ラリサさんに支えられて上目づかいにオレを見ていたナターリヤさんが、サッと視線を外す。

《ごめんなさい……》
 心の中に、声じゃない声が聞こえた。
 誰の声だか、わからなかったが。
 サブレに聞いても、私には聞こえませんでしたとか言うし。
 むぅ? 気のせい?


「最大の攻撃を……あなたが、そう望むのなら応えましょう……」
 背筋がぞくぞくっとした。セクシーな声がしたんだ……
 白銀のロングヘアーに、ミッドナイトブルーのドレス。麗しの女王様がたたずんでいらっしゃる。オレから、さほど遠くない位置に。

 ドクンドクンドクン! と心臓が暴れる。

 そうか……
 ナターリヤさんの所に駆けつけたから、女王様に近づいちゃったのか……

 左は金、右は紫のオッドアイが、オレ達を見渡す。
 どこか寂しげなお顔で……

「ご父祖様は……やはりお姿を見せてくださらないのですね。もっとも、今は主人を持つ御身。お会いできたところで……」
 つらそうにジョゼを見つめ、それから物憂げにサラやオレの精霊達を見つめる。
「素敵な方達ばかりですのに……残念ですわ。あなた方の魂は、主人と共にある。私のものにはなれない」
 オレの方を見つめ、女王様が右手を差し出す。

「あなたにします。私の兵となり、私の為に戦いなさい。我が敵に最大の攻撃を」
 魅惑的な姿。魂を縛る声……
 女王様の一挙一動に、オレは見惚れた……


 鞘から抜いた魔法剣を垂直に立て、剣のツバに口をそっとあてる。
 剣を捧げる相手に敬意を示しての、口づけ。
 女王様への接吻だ……

「勝利をあなたに……」

 魔法剣で、魔王を斬る。

 針とも毛ともつかぬ黒い森のような巨大な魔王が、魔法剣の輝きの前にあえなく斬り伏せられる。
 瞬時に復活してしまうのだが。

 126万7654ダメージ。追加効果10万。

「申し訳ございません。卑小な攻撃で」
 攻撃を終えた後、女王様の前に跪き深々と頭を垂れる。
「一昨日の戦いからまだ回復しきっておらず……。ご期待にそえず、恥ずかしい限りです」

「良いのです。持てる力で最大の攻撃をなしてくれたのでしょう? 良くやってくれました。それでこそ、私の兵です」
 女王様が、お美しい手で跪いている者を優しく撫でる。
 慈悲深い笑みを浮かべられて。

 ああああ……
 いいなあ……
 シャルル……

 オレも女王様の兵になりたい……





「婚約者の前で、淫魔のしもべになり、今度は異星の女王様に剣を捧げてしまうなんて。本当、困ったお兄様。これでは、大事な方に愛想をつかされてしまいそう」
 口元に手をそえてシャルロットちゃんが、コロコロと笑う。
 話しかけられているジョゼは、複雑な顔だ。婚約破棄はまだ内緒だから。


「マスター」
 女王様にみとれていたオレの前に、エメラルドグリーンのアンドロイドが現れる。
「帰還前ニ、ご報告しまス。スーパー・マスターのご指示デ、イヴはマスターのお子様方ノ、教育・護衛担当となりましタ」
「へ?」
「マスターが再びいらっしゃる日まデ、イヴがお子様方ヲ、お育ていたしまス。ご安心くださイ」

 オレは、イヴのスーパー・マスターを見つめた。
 イヴは精巧な機械。エスエフ界でなければ生きていけない。オレと一緒に暮らすなど不可能なのだ。
 帰らぬオレをエスエフ界で待たせ続けるなんて、かわいそうだ。魔王戦の後、オレの記憶を消して初期化してくれってユーリアさんに頼んでいたんだが……
「初期化したくなかったのよ。でも、ちゃんと主人喪失(マスター・ロス)状態にならないよう配慮したわ。タチアナの所に、あなたと妹さんの遺伝子作品があるの。あなた達のクローンやキメラよ」
「それが、オレの子供……?」
 ユーリアさんが肩をすくめる。
「あなた流に言えば、そうなるでしょ? 子供達は、書類上は新型バイオロイドの『実験体』。でも、バビロンにいる限り、『人間』として扱います。副所長の私が約束します」

「バビロンの外は、偏見や差別の嵐だけど」
 ラリサさんがニヤリと笑う。
「バビロンで実験体で居るのは、悪くないよ。実験体のオレが保証する」
「サイボーグもエスパーもバイオロイドもバビロンでは仲間……家族なのだ」
 バイオロイドのリスを肩にのせて、サイボーグも微笑んでいる。

「マスターの遺伝子ヲ持つお子様方ハ、マスター同然ト、スーパー・マスターからインプットされましタ。第一期バイオロイド十五名ヲ、お育ていたしまス」
 十五名……そんなに居るのか、オレの子供。
「マスターが母星デ働かれている間、イヴはマスターのお子様方と共にしっかり留守番いたしまス。マスター、がんばっテ!」
 けなげなイヴに、胸がうたれる。
 オレはイヴを抱きしめた。背中の探査機、両手に巨大銃と重たそうな姿だが、構うものか。ひんやりとしたボディ。硬い金属の体が愛しかった。


 
「エスエフ界の伴侶たちよ、感謝する」

 魔法絹布の右から七番目――エスエフ界の魔法陣から輝きが生まれる。
 魔法陣から上向きに、渦巻く光があがる。

 ユーリアさん姉妹、イヴ、チコ、麗しの女王様……まばゆい輝きの中に、みなが吸い込まれゆく。


「エスエフ界10人の伴侶の総合ダメージは836万1501、魔王へのダメージの累計は、6021万9119となりました」
 セリアが、備忘録に現状を記す。

「行動を終えた仲間は63人。6021万9119から6300万を引いて……借金は278万とんで881。借金、増えちゃったわね」
 メモ帳に筆算をしたサラが、溜息をつく。


 シャルルの野郎は、シャルロットちゃんにからかわれまくっている。
 それはいいとして……

「お兄さまと私の子が……十五人……」
 ジョゼが頬を染め、うつむいている。
 それも、まあ、いいとして……

「十五人か〜 勇者さま、がんばったんだねー」
「信じらんねーよな、甲斐性なさそうなのに」
「しょせん、男なんてみんなケダモノなのよ」
「三十日で子供が産まれるの?……異世界ってすごい」
「勇者さまと、ジョゼさんに、お子さまですか〜 おめでたい、です〜」
「うふふ」

 何て説明すれば、わかってもらえるのか……


 魔王の残りHPは、3978万0881だ。
+注意+
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