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ハーレム100 作者:松宮星

決戦(Ⅱ)

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天界

 天界の神族・天使族・神獣族には、実体がない。霊的な存在だから、血肉が無いのだとか。

 天界に行った人間は、神様達を見る事はできる。
 だが、それは真実の姿ではない。神様達を勝手に想像して、見たつもりになっているだけらしい。

 オレは、天界の門番の天使ちゃんを伴侶にした。

 天使ちゃんは、オレの目にはボンキュッボンの美少女に見えたが、サラには美男子、ジョゼには赤子、セリアには髭男に見えてたのだそうだ。

 しかも、天使ちゃんの名前が『ガブルエル』だと知った途端、天使ちゃんの姿はオレの想像のままに変化した。
 犬耳とエルフ耳を持った、超豪華仕様の天使に……。『ガブッとするエル』→ わんこなエルフ→ 犬耳+エルフ耳な発想で。
 オレが変な想像をしたせいで、しゃべり方までちょ〜軽くなってしまい……本当に天使? と思える()にガブルエルちゃんはなってしまった。


 他に仲間にしたのは、輪廻世界から天界に遊びに来ていたドゥルガー様とその騎乗獣ドゥンだ。
 イザベルさんが輪廻世界に伝わる絵姿を見せてくれたので、ドゥルガー様は真実に近い姿を再現できたと思う。 
 だが、しかし、ドゥンの方は明らかに間違った想像をした。オレらの世界に白虎なんて居ないから、勝手に想像するしかなかったし……キュンキュンする為に、わざとヤバイ想像をしたんで……。いや、まあ、オレの目にそう見えるってだけだから、問題はない。たぶん、おそらく、きっと……。


 わけあって、天界で仲間に出来たのはその三名のみ。
 全員、ものすご〜く強い、と思う。

 ドゥルガー様なんか、戦の女神だし!
 わずかでも本気を出せば、魔王どころか、国ごと、最悪の場合は世界ごと滅ぼしかねないほどお強いのだとか。
 だから、本人は行かない、分身を送る、とおっしゃっていた。
 召喚されて来るのは、パワー・ダウン版のドゥルガー様だ。

 でも、分身でも、戦の女神! それなりには強いだろう! 期待していいはず!





「天界の伴侶達よ」

 オレの呼びかけに応え、魔法絹布の右から五番目――天界の魔法陣から輝きが生まれる。
 魔法陣から上空に向かい、光が広がる。
 まるで光の柱ができたかのようだ。

 まばゆい光の中から現れたのは……
 頭上に光輪、背に白い翼、さらさらの黄金の髪、透き通るように白い肌。清らかな美貌の天使様だった。天界の門番らしく、腰に剣を佩いている。
 だが、手足が細くってかよわげなのに、ボンキュッボンな挑発的な体型で……
 んでもって、耳の先はエルフみたいにピンと尖ってて、頭の上にかわいらしい犬耳があったりして。
 ガブルエルちゃんがにっこりと笑みを浮かべて、オレに手を振る。

《ども、どぉも〜 ガブちゃんで〜す。おひさしぶりで〜す、キャハッ♪》

……あいかわらず威厳の欠片もない。オレのせいだけど……

 パサパサと翼を羽ばかせ、ガブルエルちゃんが魔王への方へと飛んでゆく。
 見守る仲間達は目を丸くしている。みんなの目には、ガブルエルちゃんはどういう風に映っているんだろう?

《こちらが、魔王ですね〜》
 ガブルエルちゃんは、毛むくじゃらの魔王を楽しそうに宙から見つめている。
《うきうきわくわくわくです〜 あぁん、はやくやりたいです〜 キャハッ♪》


 つづいて、魔法陣からドゥンに騎乗したドゥルガー様が現れる。
《デーヴァ神族、ドゥルガー。求めに応じ、参上。我が怒りを避けたくば、偉大なる女神の前にひれ伏すが良い》
 召喚の際の常套台詞っぽい事を、戦の女神様がおっしゃる。

 オレは急ぎ、鼻の下を押さえた。

 分身でも、ドゥルガー様のお姿は天界にいらっしゃった時と変わりが無い。
 黒髪の優美な美女だ。腕が十本もあるけど、戦の女神なのだ、ちょっと奇抜な姿でもおっけぇ〜だと思う。腰のくびれはもの足りないものの、胸もお尻もバイーンな感じで、ナイスバディ。南国風薄絹姿も、魅力的。

 けれども、騎乗獣の方がヤバい!

 大柄なドゥルガー様を背に乗せているわりに、ドゥンは小柄だ。
 主人の重さを支えるには、何ともたよりない。だが、重みに耐えるその顔には、主人に仕える悦びの表情すら浮かんでいる。
 ドゥンの体は人間そっくり。歩く度にたっぷんたっぷんと胸が揺れ、お尻から垂れる長い尻尾がエロティックに動く。
 身にまとっているのは、紐ビキニによく似た局部だけを隠すビキニ。
 ドゥルガー様をお運びする為に四つん這いになっているのは……パメラさんのそっくりさんなのだ。白い虎のイメージから、髪の毛が真っ白で、肌も白すぎるけど。
 ドゥルガー様の騎乗白虎が『がお〜』と吼える。あああああ、パメラさんそっくりだから、鳴き声まで一緒!

 ヤバいぐらいに扇情的……

 鼻血、出そう……

「えっち!」
 久しぶりにすごい一撃がとんできた。

「この、スケベ!」
 床に倒れたオレを、尚もサラが杖で叩きまくる。ヒーロースプレーのかかった防御力の高い右手で体を庇い、杖の痛みを何とか殺す。

「あれ、あんたの妄想でしょ!」
 妄想……?

 何かが宙を飛んで来て、オレの首から下に絡みつく。そんなキツイ圧迫じゃないが、さすがに首は……ちょっと苦しい……
 締めつけてるものは、ぶっとい大蛇に似てる。白い鱗に覆われた体……。ドラちゃんに、ギュムギュムされてるのか。

「どうしてなの……?」
 まず目にはいったのは、白い足。それからしなやかな脚、スパンコールの白ビキニだった。パメラさんだ。
 はっとするほど美しい顔が、オレを覗きこむ。赤みの少ないブロンド。ドゥンは髪が真っ白だから、そこは似てない。
 澄みきったグレーの瞳。眉も鼻も唇も頬も完璧で、神像のように美しい。人間の理想美のような顔だ。
「どうして、あの仔……あたしにそっくりなの?」

 へ?

「そっくりって……ドゥンのことですか?」

「どっから、どー見てもパメラでしょ、あれは!」
 床に倒れたオレを、怒り心頭! ってな顔の女狩人も覗きこむ。
「あれ、あなたの仕業なの? だったら、私にも考えがあるんだけど……」
 ボキボキッと指を鳴らすカトリーヌ。すげぇ、こわい……
 眉を微かにひそめているものの、パメラさんは怒ってはいない。どっちかというと、戸惑ってる感じ。

「異世界に召喚された者は、召喚主とその世界の決まりごとによって再構築されて現れる。アシュリン様は、そうおっしゃっておられました」
 メガネの学者様が歩み寄って来る。
「召喚主は勇者様ですので、天界の方々はおそらく勇者様基準で具現化なさったのでしょう。天界で勇者様が想像なさった通りのお姿で、この世界に現れたのです」

 え――っ!

 んじゃ、みんなの目にも、ドゥンは四つん這いのパメラさんなわけ?

 ドラちゃんがギューッとオレを締める。
 サラとカトリーヌがものすごく怖い顔になって、拳を……

「お待ちください、みなさん」
 セリアが、サラ達をおさえる。
「お怒りはごもっともですが、勇者様があのような破廉恥な想像をしてしまったのには理由があるのです。その場にいた私は、一部始終を見ています。勇者様だけのせいではありません」
 セリアがビシッ! と仲間の一人を指さす。
「あの女です! あの女が、神獣の顔やスタイルがいかがわしくなるよう、勇者様を誘導して想像させたのです! 耳元で悪魔の囁きをして!」

「あら、いやだ、悪魔だなんて。もともとは、セリアさんが誘導なさってたくせに」
 指さされたイザベルさんは、楽しそうにうふふと笑った。
「私もセリアさんも、勇者さまの伴侶探しに協力しただけです。勇者さまが獣相手では萌えられないとおっしゃるから、擬人化という事で、心ときめく女性の姿を思い描いていただいたんですわ」

「だとしても、あのスタイルは無いでしょ? あれじゃ、喜んで服従してる女奴隷よ! パメラがおかしな子に見えちゃうわ! 名誉棄損レベルよ!」
 カトリーヌが吠える。
「わかった。想像し直す。擬人化をやめて、獣の姿で想像するよ。大型猫かなんかで……それでいいだろ?」
 どうにか体を起こせて、床に座れた。ドラちゃんの締めつけが少し弱くなったんで。まだグルグル巻にされたまんまだが。

 セリアが溜息をつく。
「おそらく手遅れです、勇者様。召喚はもうなされたのです。ここは天界ではありませんので、想像のままに相手の姿を変えるなどできません。召喚時のお姿から変更不可でしょう」

 え〜っ!

 いや、でも、一応、想像してみよう……
 頑張るだけ頑張って、それで駄目なら諦める……

 ドゥンは白いネコ、白いネコ、白いネコ……

 あああ……全然、変わらない……
 変身の兆しすらない……


 殺気だった雰囲気はだいぶ和らいだものの、まだみんなの視線が痛い。
 イザベルさんとマリーちゃんとアナベラは、いつも通りにこやかだが。鼻の下をハンカチで隠してるスケベ貴族も、オレを責めていない。けど、他の人は……
 マルティーヌ先生なんてオレの視線を露骨に避けて、カトリーヌの背中に隠れてるし。
 ジョゼは目に涙を浮かべて、悲しそうにオレを見てる……


《あいかわらず、勇者としての風格が無い男だ》
 騎乗獣の上から戦の女神様が、オレに声をかける。ドラちゃんに拘束されたまんまだが、わざわざいらしてくだすった女神様にご挨拶をした。
《召喚されたから来たまでのこと。なすべきことをなし、すぐにも還る。しかし、》
 ドゥルガー様がよそへ視線を動かして、オレに尋ねた。
《困った事になってはおらぬか、勇者よ?》

「いろいろ困ってます。予定より魔王への与ダメが足りてません。借金約1000万なんです。それから首がちょっと苦しい。あと、ドゥンの事ですが、オレ、ああいう趣味があるわけじゃなくって」

《そのような事はどうでもいい》

 え――っ!
 どうでもよくはないですよ!

《この世界で、アスラは大人しくしておるのか? アレは、人にしては大きな力を手に入れた。禍の種ともなろう》
 ドゥルガー様は、イザベルさんを見ていた。

 大昔、イザベルさんは輪廻世界の神様だった。デーヴァ神族と敵対する、アスラ神族の王様だったのだとか。
 アスラの方が圧倒的に強くって、デーヴァは滅ぼされかけた。慌てたデーヴァの神様たちは、自分たちの優れたところを抽出しあって戦の女神を生み出した。
 その戦の女神が大暴れ。イザベルさんを倒して形勢逆転。イザベルさんから名前も能力も奪って、輪廻世界から追放した。

『ドゥルガー』は、もともとはイザベルさんの名前。
 今、ドゥルガーを名乗っている戦の女神様は、二代目『ドゥルガー』様なのだ。

 現ドゥルガー様は、イザベルさんを邪悪と決めつけている。
 だが、オレらの世界に転移し、きゃぴりん女神の庇護下に入ったイザベルさんは、もう神様じゃない。人間だ。
 一子相伝で記憶を受け継いで転生を繰り返してはいたが、それ以外に能力はない。占いの技にしても、長い間生きているうちに知識の積み重ねで得たものだそうだし。

 なのに、ドゥルガー様はイザベルさんを危険と決めつけた。天界でも《その女は貴様を助ける振りをして、己の力を蓄えていただけだ。貴様は寄生されているのだ。その醜い女の餌食とされておるのにも気づかずにな》とまで言っていた。

 そう言われた時には、ムカッとした。
 オレの伴侶にならなきゃ、イザベルさんが精霊支配者になる事はなく、天界でドゥルガー様と再会もできなかった。もしかしたら、本当にオレは利用されたのかもしれない。
 だけど、イザベルさんが助けてくれなきゃ、オレは幻想世界で死んでたし、精霊達を仲間にできなかった。
 ついでに助けてもらったんでもいい。イザベルさんへの感謝の気持ちには変わりはない。

「イザベルさんは、天界の後も、ずっとオレを助けてくれています」
 裏冒険世界へ行けたのも、冒険世界でドロテアがオレの伴侶になったのも、イザベルさんのおかげ。裏英雄世界でも、いろいろ占ってくれた。
 それに、今も……自分の精霊と占いの力を捧げて魔王を弱体化してくれている。

「いくら感謝しても足りない。イザベルさんはいい人です。仲間になってもらえて、オレは幸運(ラッキー)でした」

《そうか》
 ドゥルガー様は、目を細められる。
《ならば、貴様と話すことはない。召喚の求めに応じて力を振るい、私は還る》


《ドゥルガー様、お話は、おわりですね〜? そろそろプチッといっちゃっても、よろしいでしょうか〜?》
 天使ちゃんの問いに、戦の女神様が鷹揚に頷く。
《うむ。存分に働くがいい》

《やったぁ〜♪ んじゃ、やっちゃいますよぉ〜 キャハッ♪》
 魔王の側の宙の天使ちゃんが、腰の剣を抜く。
 天使の剣だからか、勇者の剣に負けず劣らずキンキラ。白色に輝いている。
《せぇ〜のぉ》
 ガブルエルちゃんが剣を振りあげ、上段の構えとなった時だった。剣が変化したのは。
 剣がどんどん巨大化していき、あっという間に、ガブルエルちゃんの倍以上のデカさにふくれあがる。
 剣の発するまばゆい光が、オレ達を照らす。
 自分よりデカいものを持ってるのに、ガブルエルちゃんに揺るぎはない。翼で羽ばたき、宙に浮かんでいる。
《はぁ〜い、プッチン♪》

 巨大な光の剣が魔王の頭上から振り下ろされ、魔王を両断する。

 120万ダメージ。

 カネコが真っ二つとなる。
 一瞬で、もとの姿に戻ったけど。

《あららら。思ったより、プッチンできませんでしたね〜》
 もとの大きさに戻った剣を鞘に戻し、ガブルエルちゃんはぷ〜っと頬を膨らませた。
《光の剣のダメが伸びないなんて、ダメダメですぅ〜 見かけほど邪悪じゃありませんねぇ〜 あの魔王〜》

 え?

 ダメージ値が見えてるのか?

 いや、それよりも! 見かけほど邪悪じゃない、だって?

「ガブルエルちゃん! そこんとこ詳しく!」

 ドラちゃんに捕まってるんで、思うように動けない。叫んだんだが、天使ちゃんはパタパタと羽ばたいたまんまだ。答えてくれないし、近くに来てもくれない。


「がぉ〜」
 かわいらしい咆哮が響いた。

 ドゥルガー様を乗せたまま、ドゥンが走り出す。
 見た目は四つん這いのパメラさんなのに、すげぇ速い。

 一直線に魔王を目指すドゥンの動きを、オレに同化している土の精霊がはっきりと見せてくれる。
 凄い速度で走ってるから……
 ぶるんぶるんの、たっぷん、たっぷん!
 重力がかかると、大きな胸ってあんな風に揺れるのかッ! 尻尾つきのお尻も、ぷるんぷるん!

 見とれてる間に、ドゥンは魔王へと飛びかかる。
 パメラさんのそっくりさんが、お口をあける。大きなものを受け入れるかのように。そして、魔王の下腹部にかぷっと噛みつき……バキンと魔王の体の一部を噛み砕いた。

 80万ダメージ。

 うわぁ……

 背筋がゾゾ〜ッとした。

 一瞬で魔王の怪我は治ったけど、できれば……正視したくない攻撃だった。


 ドゥルガー様の手に、武器が現れる。
 剣やら槍やら弓やら……それぞれの手が違う武器を持っている。あの武器が、デーヴァの神々から譲られた力の一部なのか?

 ドゥルガー様の十本の手が伸びる。
 ありとあらゆる角度から、手が獲物へと迫る。カネコは玉座から動けない。だが、動けたとしても駄目だ。逃げられない。避けられる方向がない。

 ドゥルガー様の十本の手の武器が、魔王の全身を貫く。
 魔王の体が、ズタズタに引き裂かれる……

 勇者(アイ)で捉えたダメージ値は……

「600万……?」
 オレのつぶやきを聞き、セリアが鋭く聞く。
「600万ダメージなのですか?」
「ああ、600万だ」

 周囲から歓声があがる。

 すげぇ! さすが戦の女神!
 アシュリン様ですら、300万までしか出せなかったのに!


 しかし、オレ達の喜びは、そのすぐ後に半減してしまった。
 超不機嫌って顔で戻って来たドゥルガー様が、吐き捨てるようにおっしゃったからだ。
《おのれ、   め。種族ごとに、攻撃上限値をもうけておるな……。この私の攻撃が、600万などありえん。少なくとも1000万は出たはず》

 またしても……。

 きゃぴりん女神が変な制限をかけてなかったら、今ので借金はチャラになってたのか……
 あぁ、違うか……借金は消えるけど、ドゥルガー様担当分の100万が欲しいから、マイナス100万か……でも、そこまで減ったはずだったのに。

 いや! 違う!
 制限がなきゃ、アシュリン様も精霊達ももっとダメージを出せてたんだ。本来なら借金どころか、貯金状態なのに!

 あのクソ女神……オレをチュド〜ンさせたいのか……?





 還す前に、ガブルエルちゃんに聞いてみた。思ったよりカネコが邪悪ではない、ってどういう事かと。
《光の剣は〜 邪悪をプチンしますが〜 清らかなものには癒しの剣なのです〜 まっくろくろな邪悪を斬ってるはずが、癒しの力が働いて、たいしたダメが出なかったというわけなのです〜》
「それって、カネコに人の心が残ってるってことですか?」
 英雄世界のシオリさん達が、まごころをこめて人間『カネコ アキノリ』に呼びかけたからか?
 わんこ耳でエルフ耳な天使が、肩をすくめる。
《まー、そ〜かもですねぇ〜》
 知るか、そんな事! って言いたそう。魔王をプチンとぶっ潰せなかったんで、ガブルエルちゃんはたいへん不満そうだ。


「天界の伴侶たちよ、感謝する」

 魔法絹布の右から五番目――天界の魔法陣から輝きが生まれる。
 魔法陣から上向きに、渦巻く光があがる。

 まばゆい輝きの中に、みなが吸い込まれゆく。
 お気楽天使も、『がぉ〜』してるパメラさんのそっくりさんも、イザベルさんの挨拶を完全(ガン)無視している戦の女神も、光に消える。


「天界3人の伴侶の総合ダメージは800万、魔王へのダメージの累計は、4002万8422となりました」
 セリアが、備忘録に現状を記す。

「行動を終えた仲間は45人。4002万8422から4500万を引いて……借金は497万1578。だいぶ減ったわね」
 メモ帳に筆算をしたサラが、フーッと息を吐く。

 次の世界は、魔界。
 攻撃力だけを見れば、魔族は神族を凌駕する。
 次の世界も期待していいはず。伴侶の中には、スライムやゾンビもいるけど。スカも居るが、魔界の王と魔界貴族の登場だ。絶対、大ダメージが出る! そう信じる!

 それはそうと……
「あの、すみません。ドラちゃん、とってくれませんか?」
 オレは獣使いにお願いをしてみた。オレはまだドラちゃんに絡みつかれている。
 ドラちゃんが体から離れてるんで、パメラさんの白ビキニ姿がよく見える。ドラゴンのきぐるみを着てる時には知らなかったけど、ボンキュッボンぶりはアナベラといい勝負。

「ひとつだけ教えて……」
 神像のように完璧な美貌で、パメラさんがオレを見つめる。
「なんで、あの仔、あたしにそっくりだったの?」

「なぜって、そりゃあ……」
 イザベルさんがパメラさんの顔で想像してって言ったから……
 ぷるるんな肉体美って事でアナベラの肉体を、綺麗な顔って事でパメラさんを指定したんだろう。
「パメラさんが一番綺麗だから」
「え?」
「萌えられるように、パメラさんの顔を思い浮かべました」

「………」
 パメラさんは無言で、オレを静かに見下ろす。

 サラは唇をとがらせ、オレの側からプイっと離れて行った。

「ま、パメラが美しいのは当然だけど」
 フンと荒い息を吐いて、カトリーヌも立ち去る。

 パメラさんの頬が、微かに朱に染まる。
「おいで……ドラちゃん」
 オレの体に絡みついていた白龍が、獣使いの体へと戻る。ようやく呼吸が楽になった。

「うふふ。ほ〜んとステキだわ、勇者さま。どうしてあなたの星は、悪い方へ悪い方へと転がりたがるのかしら」
 イザベルさんがオレの側までやってきて、そっと耳打ちをしてくれる。
「女心がわかっていらっしゃいませんのね。あの言い方では、パメラさんはとてもとても綺麗で、他の方はそうでもないと言っているようにも聞こえますわ」
 え?
「すべての伴侶に平等に、に反しましてよ」

 そうだった! 自分こそ一番! って思いたがるのが女心! 前にガブルエルちゃんも言ってた!

 慌てて、オレは叫んだ。
「確かに、オレはどっちかというと綺麗系が好きだ! でも、可愛い子も好き! 幼く見える顔立ちでもオーケー! こだわり無し! その子に似合ってれば、奇抜な格好でも構わない! 見た目+中身! プラスアルファーなんだ! その子独特の世界ができてるからこそ、萌えるわけで! その証拠に、巨乳が好きだけど、ちっちゃくても萌える! サラみたいな貧乳が巨乳に囲まれてやるせなさそうに恥じらう姿なんか、ちょー好き。想像するだけで、オレはキュンキュン……」

 オレは、床にうつぶせにつっぷした。
 後ろからサラにぶん殴られたのだ……


 女の人って……

 めんどくさ……


 魔王の残りHPは、5997万1578だ。
+注意+
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