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ハーレム100 作者:松宮星

決戦(Ⅱ)

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ジパング界 その1

《汝の愛が、魔王を滅ぼすであろう。愛しき伴侶を百人、十二の世界を巡り集めよ。各々が振るえる剣は一度。異なる生き方の者のみを求めるべし》
 オレが女神様から与えられた託宣は、これ。

 英雄世界の霊能者カンザキ ヤチヨさんは言った。
『私の助言を忘れないでくださいましね。ご自分の託宣も、お心によくお刻みになって』と。
 ヤチヨさんの助言通り、本命を決めず、誰も振らすにきたわけだが……

 オレの託宣には、やっぱり裏があるんだろうか?
『神からの託宣には、表面の言葉以外に二重三重の別の意味がこめられている場合がある』って、前にセリアが言ってた。
 百人目が増やせないのも裏の託宣を叶えらないせいだとも、考えてるっぽい。
 なのに、裏の託宣について、まったく教えてくれないのだ。
 うんちくや自分の推論をベラベラ語るのが大好きな、あのセリアが、だ。

 すげぇ気になる……

「勇者様、ジパング界の方々を召喚ください」
 学者様がオレを促す。

 気にはなるが、頭を切り替えるべき。
 学者様はこうと決めたら梃子でも動かない。聞きだすのは無理。
 頑張って頭をひねっても、オレじゃ謎ときは不可能。修辞法とか、さっぱりわからん。

 考えてもわかんない時は、考えない。フィーリングで理解する。心の赴くままに行動する。それがオレには合っている。


「ジパング界の伴侶達よ」

 オレの呼びかけに応え、魔法絹布の右から四番目――ジパング界の魔法陣から輝きが生まれる。
 魔法陣から上空に向かい、光が広がる。
 まるで光の柱ができたかのようだ。

 まばゆい光の柱の中から、何かがポーンと飛び跳ねてくる。
 オレの身長よりも高くジャンプし、重力を感じさせない動きでオレのもとへと舞い降りて来る。騎士の甲冑並に重たげな赤鎧をまとってるってのに。

 どよっとざわめきが、起きる。

「勇者様……」
 赤侍が、オレにひしっと抱きついてくる。
「お会いしとうございました」
 ぶつかってきたのは、赤の大鎧。
 顔が、アップで迫る。
 うっとりと赤く染まった頬、オレだけを見つめる切れ長の瞳は熱く潤んでいる。ほんのりと開いた唇には、薄く紅がひかれていた。武人として生きる彼女の、それが精一杯のお洒落なのかも……

 オレのハートがキュンキュンと鳴った……

「魔王戦必勝を神仏に祈願し、精進潔斎をして参りました。今日この日を勇者様と共に迎えられ、嬉しゅうございます」
 侍大将ヨリミツが艶めいた笑みを浮かべ、どんどんアップで迫ってくる。
 ちかっ!
 顔、近いよ、ヨリミツ……
 息が顔にかかる……
 こ、こそばゆい……
 てか、唇が……あともうちょいで……
 くっつく……

「お待ちください、精進潔斎を無になさるおつもりですか。ヨリミツ様、色の道は勇者様が本懐を遂げられた後になさいませ」
 魔法絹布の側から、咳払いが聞こえた。
 しなやかな黒髪、白い小袖に赤い袴。少女らしい、愛らしい顔。
 カガミ マサタカさんだ。三十九代目勇者の子孫で、先祖の名前を継ぐ、凄腕の巫女さんだ。二十体もの精霊を支配する、精霊支配者でもある。

「我が夫のご尊顔を拝しただけのこと」
 ヨリミツが武人らしい凛々しい顔となり、オレから少しだけ離れる。
「勇者様が女色断ちの願掛けをなさっておられる事とて、承知しておる。この私が、勇者様の邪魔などいたすか」
 巫女さんが目を細める。『嘘ばっかり。やる気まんまんだったくせに』と言いたそうに。
「……さようにございますね。ですぎたことを申しあげ、失礼いたしました」
「いい。許す」
 ヨリミツの方が身分が上。二人は主従の関係だ。
 しかし、いとこでもある。表面上ヨリミツをたててるが、巫女さんは言いたい事はけっこうズケズケと言っていた。


 マサタカさんがオレらの方に歩み寄ると、魔法陣から刀袋を持った人が現れた。
 額にハチマキ、赤×黒の裾丈が非常に短い上衣、帯のところに小刀、前腕と脛に布を巻いている……
 ヨリミツ達の配下、女忍者カエデ。
 太ももが露わなセクシー系忍者なのだが、顔だちはおとなしい。さがり眉で、黒目が大きく、口はこぶり。気弱そうにすら見える。
 カエデは両手で大事そうに、刀袋におさめられた刀を持っていた。
 いかにも預かりものって感じ。

『オニキリ』か?
 ミナモト家に伝わる兄弟剣の一本。
 意志の力で切れ味がどんどん鋭くなる、神聖武器だ。オレが鬼を斬ったんで『オニキリ』に改名になった。もとの名前は……忘れた。

 ヨリミツは腰に太刀を()いている。『オニキリ』の兄だか弟だかの太刀で戦う気のようだ。
『オニキリ』に宿る刀の精がオレの伴侶なんだが、刀は刀。自分じゃ動けない。
 誰かに振るってもらわなきゃ攻撃不可能なんだが……カエデが使うのか? 持ち手を選ぶ神聖武器を、女忍者が使えるの?
 つーか、伴侶二人でいっぺんに攻撃しておっけ〜なのか? 合体技扱い? 一回の攻撃で二人とも行動終了になっちゃうのも、もったいない。今、約1000万の借金だし!

 カエデはオレに深々と頭を下げてから、ヨリミツよりもマサタカさんよりも更に後方に控える。身分がもっとも低いからだろう。


 つづいて魔法陣から現れた人物を見て、驚きのあまり目が点になった。
 女性にしては、かなりの大柄。体も腕も脚もぶっとい。わずかばかりの布を胸と腰につけているだけで、ほぼ裸。筋骨隆々たる肉体美をさらしている。
 背中にくくりつけているのは、すりこぎ状の鉄の棒だ。女性の身長よりもデカく、表面に鉄鋲が打ち付けられてる。アレで殴られたら、叩き潰されて外身も中身もぐちゃぐちゃだ。
 女性がオレを見て、にやっと笑った。
「よぉ。元気か、坊主とサラ」
……正体を隠す気ねーのか、こいつ?
 髪が赤くなくて、黒いけど! 顔も鬼の巌の前で対峙した時とは違って、素顔だけど! ごっつい系の美女だけど!
 愛武器を背負ってちゃバレバレだろ? ンな鉄棍棒、シュテン以外の奴が持ってるわけない! 神鉄製の特殊武器なんだろ、それ!
 おまえはオレに殺された事になってるのに! マズイだろ!
 その上、なにを抱えてるんだよ!
 オレの視線に気づいたシュテンが、カカカと笑う。
「こりゃ、俺の荷物だよ。手荷物なら、魔法陣を通して運べるって聞いたからよぉ」

 手荷物がひらりと降り、シュテンの斜め後ろに控える。
「お久しゅうございます、異世界の勇者様」
 楚々とした仕草、化粧で彩られた顔、流れるような黒髪、身にまとっているのはジパング女性の外出着だ。長い着物を腰のところで折り畳んで、スカート状の袴を履いている。
「この戦に、微力ながら加勢いたしますわ。私でしたら『オニキリ』に振るう事を許されるだけの、剣の技量がございますもの」
 イバラキじゃないか! シュテンの部下の!
『オニキリ』はこいつが使うのか。
 口元に手をそえて、美女……としか見えぬオカマがホホホ笑う。ハスキーな声も口調も女性そのものだ。
「もちろん、私ごときでは、ヨリミツ様や勇者様の実力には遠く及びませんけれども……。他に誰もおらぬという事で、我が主人たっての望みゆえ、参りました。お目汚しをお許しくださいませ」
『我が主人たっての望み』ってところを強調しやがった。物腰はやわらかいが、目は正直に感情を伝えていた。
『貴様らの為に指一本動かしたくなぞないが、シュテン様の為に来てやったのだ。シュテン様に感謝しろ』と。
 けど、おまえ、女装姿をヨリミツに見せてただろーが。正体バレバレだろ?

 オレはヨリミツへと視線を走らせた。
 侍大将のヨリミツは、都を騒がす鬼どもに怒っていた。
 ジパング界の王……天子さまって言ったっけか? の詔勅を受けてヨリミツは、妖鬼討伐を果たすべくオオエ山に乗り込んだ。シュテン討伐を果たせたと思いこまされた後、非常に誇らしそうだったんだが……

『シュテンにイバラギ! 貴様等、生きておったのか! 今、ここで成敗してくれる!』
 とか何とか叫んで斬りかかりそう。ヨリミツは、カッとなるとすぐに太刀を抜くから。

 だが、しかし……
 けろっとした顔をしている。
 男前な侍大将らしい姿で、オレ達のやりとりを見守っている。
 でもって、鬼の動向を探ってた諜報員の方はシュテン達をガン無視。カエデは頬を染め、美しい主人ヨリミツだけを見つめている。他は眼中にない感じ。

「ヨッちゃ……ヨリミツ様は、御母堂ハルナ様のご紹介でシュテ()様とイバラ()様と既にお顔を合わせていらっしゃるのです」
 巫女さんが、にっこり笑う。
『シュテ子』、『イバラ子』って……偽名のつもりかよ。
「ハルナ様のご友人で、シュテ子様は勇者様の伴侶のお一人だと、ちゃんと心得ていらっしゃいます」

 お母さんから紹介されたから、別人だって信じたの?
 どー見ても、鬼の大将と副将なのに?

「初めてお会いした時には、正直、驚きました」
 ヨリミツがオレに言う。
 だよな。

「いや、違う。感心いたしました、が正しい。シュテ子殿は、おなごらしからぬ風貌の方。そのような方をも伴侶の一人にお選びになられるとは……ほんに勇者様は度量がお広い。人の上に立つ者は、そうでなくてはいけませぬ」
 へ?
 美男子にしか見えない侍大将が頬を染め、うっとりとした顔でオレを見つめる。
「勇者様の女はすべて、妻たる私めが面倒をみております。魔王討伐後の我等の世界への凱旋を、妻妾ともにお待ち申し上げております」

 ちょっ! まっ!

 オレはそんな約束はしていない!

 周囲からの視線が痛い。
 鼻の頭を真っ赤にしたサラが、ものすごい顔でオレを睨んでいる。目をうるませたジョゼは、責めるようにオレを見ている。マリーちゃんやイザベルさんやアナベラはにこやかだけど、後のみんなも……

 オレは魔王戦で生き延びられたら、賢者になる!
 そう決めてる!
 よその世界へは転移しない!

 魔王戦の後にジパング界に行ってヨリミツを妻にするとか、ありえない。
 けど、オレは振ってもいけないんだ……振ったら、チュド〜ンだから。
 ここは何って返事をすべきか?

「………」

 頭をひねった。が、いい考えが浮かぶはずもない。
 とりあえず、思うままを口にしてみる。

「すまない。ヨリミツの世界へは行けない。魔王戦の後、オレは賢者になって、次代の勇者を導きたいんだ。賢者になるのは義務じゃない。ならない勇者もいる。けど、そうすべきだとオレは考えてる。長年勇者を育ててきたお師匠様を、勇退させたいんだ。賢者の重圧から離れ、女性として幸せになってもらいたい。だから……無理なんだ」

 こんなんじゃ納得してもらえないよなと思ったんだが、ヨリミツはわかりましたと頷いた。
「ご恩返しを望むのは人の道、お役目を第一に思うのは男子の道。お気持ちはようわかります。後顧の憂いなく、お役目にお励みください」
 でもって、何年何十年かかろうとも待つ、とヨリミツは言う。
 待たなくていいって言ったんだが……
「勇者様が二度と我が前に現れぬのでしたら、それが神仏の定めた私の運命。生涯独身のまま逝く事となっても、構いませぬ」
 妙に達観した顔で、侍大将が言う。
「家宝の刀に認められた男子を我が夫とする、と神仏に誓ったのです。勇者様の他に、夫にふさわしき方はおりませぬゆえ」

 女装している奴を見た。
 シュテン命! の白髪鬼はあさっての方角を見ている。
 そこに居るぞ、ミナモト家の家宝を使える男が! 夫にされたくないから女装してきたんだな、イバラギ!

 なので、譲歩したフォローだけしといた。
 家宝の刀を振るえる男性に出逢えたら、遠慮しないで結ばれてくれと。オレのジパング界再訪問前にその者と出逢うんなら、それこそ神仏の導き、神仏の選んだ運命の相手に違いないだろうと。

 女装男が横目でジロリとオレを睨んだ。が、知ったこっちゃない。無視した。


 魔法陣から、年配の女性が現れる。白いものが混じった髪、柔和な笑みをたたえた顔、上品な物腰。
 ヨリミツのお母さんのハルナさん。マサタカさんにとっては叔母だ。
 凛々しい系のヨリミツとは、あまり似ていない。マサタカさんのお母さんなのだと言われた方が納得がいく顔だちだ。

「お久しゅうございます、勇者様」
 綺麗な所作でハルナさんはまずオレに挨拶をし、それから娘へと顔を向けた。
「ヨリミツ。勇者様の伴侶のみなさまへのご挨拶はすんだのですか?」
「いいえ。母上がいらっしゃってからと思っておりましたので」
「なれば、もうよいでしょう。はようなさい。妾を束ねるのも、家刀自の役目。妻の不出来は、夫の恥となりますよ」
 ヨリミツが一層きりりとした顔になり、この世界のオレの仲間を見渡し、歩き出す。マサタカさんとカエデがお供について行く。
 ヨリミツは、最初の挨拶相手をセリアと決めたようだ。偉そうだからか? 身なりの問題か? 年長者っぽいからか?

「勇者様にお願いがございます」
 ハルナさんがおっとりと微笑む。
「私とシュテンとイバラギが攻撃する間、ヨリミツの気をそらしてください」
 品のいいご婦人の姿が、一瞬で変わる。
 黒々とした髪、穏やかな笑みを浮かべた顔、なめらかな肌……
 十五、六の乙女にしか見えない外見になったのだ。
「大きな力を振るうにはふさわしき姿がございます。私やイバラギは真の姿に、シュテンは戦闘の為の姿にならねばならないのです」
 鬼の姿になんなきゃ、全力で戦えないってことか。
「真面目で頭の固いあの子に、鬼の真実を知らせるわけにはまいりませぬ。これからもミナモトの頭領としてつつがなく侍大将の役目を果たしてもらう為にも、シュテン達の生存も私のこの姿も決して知られてはいけないのです」

 ハルナさんがオレの手をとる。
「ね、お願い。ヨリミツの気をそらして」
 顔をうつむき加減にし、上目づかいに乙女がオレを見る。
 誘うように微笑みながら。

「ね?」
 あどけなく見える仕草なのに、その瞳は大人の女性のものだった。ぞくぞくするほど色っぽく、媚を含んでいた……

「わ、わかりました……ハルナさんのおっしゃる通りにします」
「ありがとう、勇者様。……ところで」
 ハルナさんが小首を傾げる。

「賢者様はどちらでしょう? 鬼達の移住のことでお話を伺いたいんのですが」

 ズキンと胸が痛んだ。

 ここにいるのが当然の人が、今は居ないんだ。
 どうして居ないのか聞かれて、当たり前だ。

 ユナ先輩にも、どこに居るの? って聞かれた。石化したって伝えて、その事情も説明した。
 だけど、居ないんだって改めて意識すると……辛い。
 情けないほどに、オレは心を乱してしまう。


「石化……」
 ハルナさんが、いたわるようにオレを見る。

 オレは視線をそらした。
「けど、必要なことはオレが神様から聞いておきました。大丈夫です」

 鬼の護り手のハルナさんは、シュテンたち鬼の未来を案じていた。
 ジパング界の鬼は、精霊を先祖に持つ人間。特に精霊の特徴が濃いものが『鬼』として迫害されていた。
『異世界からの召喚及び転移の法が、一族に伝わっております。鬼達がこの世界でいよいよたちゆかなくなりましたら異世界に転移させたいのですが、勇者様の世界の神様は異世界人を受け入れてくださいましょうか?』ってオレやお師匠様に聞いたのだ。
「異世界からの移住はおっけ〜だそうです。ただしハルナさんの世界の神様が駄目って言ったら受け入れられないし、代表一人或いは全員をテストするとも言ってました。どんなテストかはわかりませんが、けっこう危険なものだと思います」

「さようにございますか。シュテン達が勇者様の世界で暮らすには、神の試練を乗り越えねばならないのですね」
「それから、冒険世界って所にオレは行きまして……」
 ハルナさんに、ヘレーン様の地下世界のことを伝えた。
 ヘレーン様は大昔の地表を、地下に魔法で再現した。恐竜達が生きていた時代とそっくりな空間をつくり、友達の恐竜達と暮らしている。
 そこには、ヘレーン様と過去の生き物達が居るだけだ。恐竜のエサになっちゃうだけなんで、人間は住ませていない。
《私のお庭を大事にしてくれて、恐竜たちと共存できる……そんな戦士達なら住ませてあげてもいいけど〜》とヘレーン様は言っていた。

「他の人間がいない世界……」
 ハルナさんは、心を動かされようだ。
 冒険世界への転移に使った魔法陣の図や呪文を書いたメモを、ハルナさんに渡した。
「冒険世界の主神の許可をとらなきゃいけないけど、移住はたぶん大丈夫、大歓迎だとヘレーン様はおっしゃってました」
 お庭自慢ができる人間がいっぱい居た方が、あの女神様は嬉しいだろうし。
「ただし、移住には代償が必要になると思います。転移神のドロテアは、主神に名前を捧げていました」

「試練か代償か、か」
 側で聞いていたシュテンが、ケッ! と吐き捨て、黒く変化させている髪の毛をぐしゃっと掻き乱した。
「面倒くせぇ。俺ぁ、好きなことやって生きていけりゃいい。最後は首を刎ねられようがノタレ死のうが、構わねえんだ」
「そなた一人の問題ではありません。鬼の頭領として、一族の未来をみすえなさい」
 ハルナさんに叱られ、シュテンがへーへーと生返事を返す。
 昔シュテンはハルナさんの配下に居たが、自由を求めて独立した。
 ハルナさんは影ながら鬼の行く末を見守っていた。しかし、鬼の仲間を増やしていったシュテンはこの国の王に睨まれ、ヨリミツに討伐されかけたわけだし。心配で、放っておけないのだろう。

 乙女のような外見だったハルナさんが、あっという間に四十代の女性の姿となる。
 ヨリミツが戻って来たのだ。
「この世界のおなごどもを見極めて参りました。武人として気になる者も居りましたが、」
 ヨリミツがチラリと見たのは、ビキニ戦士アナベラと、白龍を体にまとわせているパメラさん、それとジョゼ。
「人品に難がございました。勇者様は武勇の士。侍の中の侍。やはり、ミナモトの長たるこの私が一番正妻にふさわしい」
 言い切るし。
 目の端に、むちゃくちゃ怒っているリーズが映る……
 ヨリミツは、身分の低い者を見下す、基本的に偉そう。リーズとはめちゃくちゃ相性が悪そうだ……

「戦況は伺って来ましたか?」
「はい。あまり芳しくないとのこと。勇者様の宿敵の『ひっとぽいんと』は未だに七千三百七十五万六千九百八十一も残っており、一千万近く予定より削れておらぬのだとか」
 なれど、とヨリミツがフッと笑う。
「暗い顔をしておりましたゆえ、叱ってやりました。案ずるなど、あまりに愚か。勇者様の勝利は決まっておるのだ、と」
 ヨリミツがオレへと微笑みかける。
「魔王戦必勝を願い、我等二人で精進潔斎してまいったのです。神仏の加護の下の戦、負けるはずがございませぬ。いかに苦境にあろうとも、最後には必ずや勇者様は本懐を遂げられるのです」

 ヨリミツの目を見れば、心からそう信じ切ってるんだってわかる。
 だが、その言葉には、何の根拠も無い。オレを買い被りすぎて、ヨリミツは目が曇ってるんだ。

 どんな状況も、絶対好転する。『チュド〜ン無しで、必ず勝てる!』ってオレだって心から信じたいが……
+注意+
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