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ハーレム100 作者:松宮星

魔王戦まで

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パメラとカトリーヌ

「勇者さま、おかえりなさい。無事でよかった」

 赤みの少ないブロンド、赤ん坊か動物みたいに澄んだグレーの瞳、神の采配を感じさせる美貌、白ビキニに隠された完璧なプロポーション……
 ドラちゃんを体に絡みつかせて立っている女性は、パメラさんだ。
 間違いない。

 けれども……
 淀みのない挨拶をしたその女性は……
 自信にあふれた微笑をたたえていて……

 輝かんばかりに美しかった……


 オレのハートは、キュンキュンキュンキュンと、鳴った……
 鳴り響いた……


 今のオレは、ドラゴン帽子を被ってない。ケモ耳もつけてない。きぐるみも着ていない。
 なのに!
 パメラさんが微笑みかけてくれている!

 人間と交わるのが苦手で、オレ達におどおどしてばかりいたパメラさんが……
 まるで咲き誇る大輪の薔薇のように、艶やかに自信たっぷりに魅力的に微笑んでいる。

 綺麗だ……

 胸を張ったその姿が素敵……

 アナベラと同じくらい、ぷるんぷるんしている……


 セリアの部屋で待っていたパメラさんは、まるで別人だ。
 何というか……颯爽としている。

《おにーちゃんをつれてきたよー おねーちゃん、ドラちゃん》
 白い幽霊のニーナがニコニコ笑いながら、パメラさんに駆け寄る。
 パメラさんが、ニーナへと微笑む。
 慈母のような笑み。
 オレの胸は、キュンキュンしどうしだ。

「準備が整うまで、お食事をどうぞ」
 誘われるままにオレ達は、軽食が用意された長テーブルの席へと腰かけた。
「まだちょっと時間がかかるの」

「やったー んじゃ、いただきまーす」
 アナベラが、パンやらハムやらチーズをパクつき始める。護衛の仕事を始める前に、腹ごなしをすませておく気のようだ。

 オレらが食事している横で、ニーナがポチ2号に防御シールドを張らせる。
 ポチ2号は護衛型バイオロイド、ゼリーみたいな軟体生物だ。
 所有者であるニーナの希望に応じて、形状を変化させる。普段は小さな培養カプセルに入っているが、家なみにデカくもなれる。
 んでもって、ほとんどの攻撃を吸収してしまう。プッツンしちまった時にポチに捕まったんだが、水の中にいるみたいに動きはスローモーになった。ポチにからみとられたら、攻撃なんかできない。

 半透明で緑色のポチが、薄くなって部屋全体を覆う。
「入って来る女の人と勇者さまの間を隔てる壁をつくって。天井と床を繋ぐの。女の人が悪い人かもしれないから。女の人が勇者さまの命を狙ったら、すぐに捕まえるようにポチちゃんに頼んで。でも、どんな時も、勇者さまの周りのボディは動かさせちゃダメよ。勇者さまは何があっても守るの」
《わかった》
 パメラさんがニーナにテキパキと指示を出す。セリアのように的確に。

 胸がホロリとした。

 対人恐怖症で、動物としかまともに話せなかったパメラさんが……
 変われば変わるものだ……

 ドラちゃんのおかげだ。
 ドラゴンはモンスターの頂点に立つ存在。獣使いのパメラさんには、憧れの生き物だった。威厳あふれる獣使いになりたくて、ドラゴンのきぐるみを着てしまうほどに。
 ドラゴンを相棒にできたことが、自信につながったのだろう。
『最強の生き物が側に居てくれるのだ、もう何も恐れまい』、きっとそう思ったんだろうな。

 パメラさんの素敵な体に絡みついている白龍。ちょっと見では大蛇だが、手足があるし角や毛や髭がある。蛇じゃない、水龍だ。
 ドラちゃんは、パメラさんの左肩で鎌首をもたげるように頭をあげている。
 獣使いと相棒は何度も視線を交わし合っている。パメラさんもドラちゃんも、実に幸福そうだ。

 扉がノックされた。

「パメラ。準備はいいかしら?」
 カトリーヌの声。

「ちょっと待って」
 パメラさんに頼まれ、ニーナがポチ2号を透明化する。ぶよぶよと蠢くバイオロイドは天井や床に溶け込んでしまった。

 アナベラが最後のチーズを口に放り込み、席を立つ。いざとなったらすぐに背の両手剣を抜けるよう、オレの後ろで護衛の体勢に入る。

 パメラさんもオレの左後ろに立った。

 思わず振り返って見てしまった。

 ぷるんぷるんのぷりんぷりんのビキニ戦士。
 ドラちゃんと白ビキニのみの獣使い。

 ほぼ! 裸! の超美人二人を背に食事をし、入室して来る美女達と対面とか……
 ハーレム王な気分!

《あたしもおにーちゃんと食べたーい》
 アナベラがどいた席に、ニーナがちょこんと座る。
 ニーナが好きそうな焼き菓子を皿に載せてやる。
「ケーキ食べるだろ?」
《うん。そっちのチョコレートとマドレーヌとキッシュも。おにーちゃんも、いっしょの食べよ》
 ニーナがにっこりと笑う。幽霊のニーナは飲食の必要がないし、本当は食事をできない。食事の真似ごとをするだけなのだ。
 だが、ニーナは誰かと食事をするのが好きだ。英雄世界で切れ目の入ったピザを分け合って食べた時など、上機嫌だった。
 ニーナが側に来たから、ハーレムがますます豪華に。

「入るわよ」
 扉が開き、絶対領域持ちの狩人が入室して来る。
 ここ最近、ずっとつけていたキツネ耳と尻尾は外していた。パメラさんが人間とも話せるようになったから、必要なくなったわけだ。
 小さな羽根付き帽子を被り、薄緑色のチュニックを着て、栗色の皮靴とニーハイのストッキングを履いている。
 室内の為だろう、今日は黄金弓は装備していない。腰に皮はぎ用のナイフを差しているだけだ。

 カトリーヌが自信たっぷりに、ニッと笑う。
「セリアさんの再従弟(またいとこ)と協力して集めた、()りすぐりの美女十九人。『美しく、魔王戦争で戦う事が可能』なかわいこちゃん達よ。どの子もうっとりものよ」
 おぅ!
「まずは一番強い子を入室させるわね」
 おっけぇ〜!

「一人目! 南方の蛮族戦士アマソナス! 誇り高い、弓と槍の名手!」
 カトリーヌに続いて、黒髪、褐色の肌の女性が入って来る。
 セクシーかつワイルドな美貌。それでいて、右手に持った槍がよく似合う、いかにも戦士って風格に満ちている。
 その体を覆うのは、腿までの薄布! 片肌ぬぎのように右肩は露わで、左肩から腰へとつながる斜めのラインが、彼女の大胆な胸をかろうじて隠していて……その豊かな胸は大事なところこそ見えないが、ほぼ……

 オレのハートは、キュンキュンと、鳴った……

 鳴ったけど……
 鳴っただけだった。


「二人目いくわよ! 魔法戦士ナディーヌ! 剣士として戦え、魔法使いとして皆も守れちゃう、万能な美少女戦士よ!」
 愛らしいふわふわの髪、大きな瞳、ふっくらとした頬。
 ひたすら可愛い女の子が超ミニスカみたいな鎧を着ている。そこから黒ビキニの下着を覗かせ、二刀流で細剣を持ってたりなんかして……

 オレのハートは、キュンキュンと、鳴った……

 鳴ったものの……
 鳴っただけだった。


「気を取り直して、三人目! 女海賊メアリー! 野郎どもを従える海の女王よ!」
 黒のキャプテンハット、右眼には黒の眼帯、胸元が大きく開いた赤のジャケット、黒のホットパンツ、膝までの黒のブーツは鋲つきだ。
 真っ赤な唇も美しく、妖艶でセクシー。腰を飾る細剣と鞭も鋭くて……

 オレのハートは、キュンキュンと、鳴った……

 けれども、またもや、鳴っただけだった。


 カトリーヌがオレをみすえる。
「つづいて四人目! 今度こそ、あなたもダウンよ! 東の呪術師ナエル! 禁欲の呪術師衣装を、今日はちょっと大胆にアレンジ!」
 ベール姿の女性に、オレのハートは……


 次第に、刃のように鋭いカトリーヌの美貌に焦りが浮かぶ。
 オレも、やきもきしている。

 カトリーヌお薦めの美女達はみんな魅惑的で、そのほとんどにオレはキュンキュンした。
 だが、しかし……
 仲間枠に入らないのだ。
 蛮族戦士、魔法戦士、女海賊、呪術師、用心棒、運び屋、山賊、占星術師……
 ジョブ被りとは思えないのに、仲間にできない。
 冒険世界でもそうだった。ジョブの分類は、あくまで神基準。人間的には『?』な基準で、神様はジョブ被りの判定をする。
 ビキニ戦士とクマ戦士はオッケーだったのに、バイキングは駄目だとか……正直よくわかんない。

 あと一人だってのに……
 何がなんでも後一人増やさなきゃ、託宣がかなえられないのに……



「次で最後! 十九人目よ! 魔術師学校教師マルティーヌ! 雷魔法が得意な美人教師! 顎のラインがちょ〜格好いいの。真面目でおかたいのに、あなた好みのボンキュッボン! ちょっぴりイケナイ先生よ!」
 銀の杖を持ったお姉さまが、うつむき加減に入室して来る。恥ずかしそうに魔術師の帽子で顔を隠して。
 むちむちの体を覆うのは、銀のワイヤーのような下着と魔力のこもったアクセサリー。豪奢な首飾りやら腕輪やらボディピアスやらが、美しい肢体をより輝かせていて……
 こ、この格好で教壇に立っているわけじゃないですよね……
 エッチすぎ……

 当然のごとく、オレのハートはキュンキュンと鳴った。

 けど……
「駄目だ、仲間にできない……」

 カトリーヌとオレが、がっくりと頭を垂れる。
 胸元を隠しながら、魔術師学校の先生はそそくさと部屋を出て行った。

《おにーちゃん、元気をだして。いいこ、いいこ》
 ニーナが頭を撫で撫でしてくれる。

「全滅かよ。ったく、しょうがねえなあ。狩人のねーちゃんのコーディネートが悪趣味すぎるからじゃねーの?」
 廊下から顔を覗かせ、リーズが溜息をつく。
 カトリーヌは、キッ! と女盗賊を睨んだ。

「勇者様は萌え萌えだったわよ! 大胆かつ色っぽくそれぞれの子を美しく装わせたことに問題はないわ!」
「んじゃ、ジョブ被りか」
 リーズが無造作に頭を掻く。
「次のグループを連れてくるぜ。弱っちいけど、顔やスタイルがいい奴等」
「そうね」
 カトリーヌが拳を握りしめる。
「私のお友だちから連れて来て! 粒よりのかわいこちゃん達なんだから! 未亡人の男爵夫人シメーヌ様、宝石商のクラリス、ケーキ屋のモニク、武器屋の看板娘ヴェロニク、花屋のユニス、踊り子のジゼル、それから……」


 カトリーヌのお友だちから、諜報員が見つけて来た美人達、オランジュ邸の使用人達と次々と面接室にやって来る。
 もの凄い美人から、まあまあ可愛い子、それなりの子まで。
 ぽっちゃりもいれば、痩せた子もいる。
 キュンキュンしたりしなかったり。
 百人以上と会った。
 けれども……

「なんで駄目なのよ〜!」
 カトリーヌがへたりと床にすわりこみ、オレは長机につっぷした。ニーナどころか、アナベラもパメラさんもオレの頭を撫でてくれる。

 託宣をかなえる為には、どうあっても後一人を仲間にしないといけない。
 魔王が寝てる百日の間に、勇者は『勇者の使命』を果たす。
 神様から魔王を倒す方法を教わり、準備しておくのだ。
 神様の託宣通りに戦わないと、魔王は倒せない……と、女神様には言われている。

 せっかく九十九人集めたのに!
 このまんまじゃ、この世界は『カネコ アキノリ』のものになってしまう!
 託宣をかなえる為だけに、誰でもいいから仲間を増やさなきゃ!

 そう思いながらも、裏英雄世界で渡されたメモが気になってしょうがない。

『女神を信用するな。退路は確保しておくように』
 風来戦士マサタ=カーンさんから渡されたメモは、もう無い。読んだ瞬間に消えてしまったのだ。あの短い文を伝えるのすら、危険だと言うかのように。

 あのメモの意味は、まだはかりかねている。
 だが、『女神を信用するな』(イコール)『女神の託宣を信じるな』ならば……

《汝の愛が、魔王を滅ぼすであろう。愛しき伴侶を百人、十二の世界を巡り集めよ。各々が振るえる剣は一度。異なる生き方の者のみを求めるべし》

 百人も仲間がいなくても勝てるのかもしれない。
 十二の世界に行かなくても良かったのかも?
 ジョブ被りをしていようが構わず百人以上を戦闘員にしてもいいのかも?
 先制攻撃の法が有効な間に、千人でも万人でも攻撃すりゃあ魔王の1億のHPは削れるだろう。

 いや、そもそも……
 魔王を倒せと言ったのも、カネコが魔王になった理由を教えてくれたのも、女神様で……

《彼女いない歴(イコール)年齢な奴なの〜 一方的にリアカノ認定してた子からガチ無理されて、魔王パワーに目覚めちゃったのねぇ 男を皆殺しにして、奴隷ハーレムをつくりたいみたい〜》

 心の中がざわめく。

 歴代勇者は、託宣を叶え、命がけでこの世界を守ってきたが……
 それは、本当に……
 正しかったのだろうか?


「勇者様!」
 ぷるるるんと空気が振動した。女狩人が、ポチ2号の張った透明な壁を透過したのだ。
「落ち込んでる暇はないわ! 街へ行きましょう!」
 カトリーヌがバン! とテーブルを叩く。
「出逢いを求めるのなら、移動しまくるのが一番! 大通りには幼女から美老女まで、ありとあらゆる女性が居るわ!」
 ネコのように気まぐれで気まま。そんな印象だったカトリーヌが熱くなっている。
「裏通りにも行きましょう! 花街には美人がいっぱいよ! リーズに裏世界の美女も紹介してもらいましょ! この世の半分は女なんですもの! 絶対、仲間にできる女性はいるわ!」

 その必死な顔に、キュンキュンした。
 多分、カトリーヌはまだ……ニノンをひきあわせた事に責任を感じているんだろう。
 自分のせいで、お師匠様が石化し、オレの仲間探しが難航しているのだと……そう思いこんでいるんだろう。

「絶対、魔王に勝つのよ! 私、奴隷ハーレムなんて御免よ! パメラや私のかわいこちゃん達が魔王のものにされるのも嫌!」
 もっともらしい理由を叫ぶカトリーヌ。
 思わず笑みが漏れた。

 魔王戦の後、真実を語ると女神様は約束した。
 その時までオレは、歩みを止めるべきじゃない。
 オレを信じてついてきてくれている仲間の為にも。

「わかった、カトリーヌ。街へ行こう」
「護衛するよー」と、アナベラ。
「あたしも」と、パメラ。
「学者のおねえちゃんに、馬車を手配してもらおうぜ」と、リーズ。
「ポチちゃんに馬車をつつんでもらえば、安心だよね」と、ニーナ。

「ナンパで一番大切なのはあきらめない事! 九百九十九人が駄目でも、千人目は微笑んでくれるかもしれない! そう信じて頑張りましょう!」


 カトリーヌとリーズが部屋を出てすぐ、入れ替わりのように闇のソワが現れた。その背後に八色の輝きを伴って。
《あれ? ソワちゃんとトネールおにーちゃんたち……どうしたの?》
 ニーナがきょとんとして尋ねる。
 ソワの背後に居るのは、イザベルさんの精霊達のようだ。イザベルさんは、オレ同様、八体の精霊をしもべにしている。
《よ。ニーナ、元気?》
《わずかな時間ですが、ご主人さまより暇をいただいてきました》
《僕たち、もうすぐ大事な仕事につくんだ。始めちゃったら、もうニーナちゃんとは話せない》
《ね、時間がくるまで遊ばない?》
《醜きスライムもどきしか汝の側に居らなんだのだ》
《我等が裏英雄世界へ赴いている間、寂しかったであろう?》
《本日は特別じゃ。赤子の役でも喜んでやるとラルムも言っておるぞ》
《言ってません! ですが……ニーナが望むのでしたら、私も善処しましょう》
 誰が誰やら。
 けど、ニーナがイザベルさんの精霊達と親しくなったのは知っている。一人ぼっちで遊んでいたニーナのもとへ、イザベルさんが精霊達を交替で通わせていたから。

《遊ぼ、ニーナちゃん》
 ソワも誘う。

《でも、あたし、護衛しないと……》
 戸惑う白い幽霊に、
「ポチちゃんを貸して」
 白龍をまとった獣使いが優しく微笑みかける。
「あたしの命令に従うよう、ポチちゃんに頼んでおいて。勇者さまの護衛は、あたしたちだけで充分だから」
《……いいの?》
 小首をかしげるニーナに、パメラさんが頷きを返す。
「大事なおともだちとの一時を楽しんできて。勇者さまも、ニーナちゃんが遊ぶことを望んでいるわ」
 ニーナが、パメラさんとオレを順に見る。
 オレも頷くと、ニーナは満面の笑顔となった。

《ありがとー ドラちゃん、おねーちゃん、おにーちゃん》
 パメラさんにポチ2号の培養カプセルを渡し、ニーナは精霊達と合流する。
 その姿を見守るパメラさんは、優しい笑みをたたえていた。
 思いやりに満ちたその姿に、オレのハートはキュンキュンした。
 パメラさん、すっかり立派になったなあ。
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