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ハーレム100 作者:松宮星

魔王戦まで

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シャルロットと精霊達

「ジャン! ジョゼ! イザベルさん、マリーさん、シャルルさん、アナベラさん、おかえりなさい!」
「勇者様、みなさん!」
《おにーちゃん、おねーちゃん、おかえりー》
「ジャン様、お兄様、ジョゼフィーヌ様。無事にお帰りになられて、何よりですわ」

 実体化したオレに、白い幽霊ニーナが抱きついて来る。

 魔法陣を通って、オレに続き、共に裏英雄世界へ行っていた仲間達が実体化する。
 ここはオランジュ伯爵家に用意してもらったオレの部屋……
 サラにセリアにニーナ、それにシャルロットちゃんが居る。
 みんなで明日の打ち合わせでもしていたのか?
 ピンクのクマのぬいぐるみを抱っこしているニーナは、一人遊びをしていたのかも。床の上にクマさん一家が座っている。
 体調不良で倒れていたサラも、元気になったようだ。普通の顔色だし、しゃきっとしている。枯渇した魔力も回復したっぽい。

 四人を見渡し、ドキン! となって目が止まった。

 シャルロットちゃんが、可愛いのだ!

 いや、いつも可愛いんだけど!
 見るからに貴族のお姫様って感じの、ゴージャスな金の縦ロールの髪型、肌は雪のように白く、レースやリボンをふんだんに使ったドレスはお人形みたいにかわいらしい。
 だけど! 胸元が大きく開いていてセクシーだ! 普段は見えない豊かなふくらみがちょびっと見えている……
 今日は、いつもとちょっと違う。お化粧もドレスも気品ある装い。あどけなさを漂わせながら、それでいて大人っぽさもあって……

 オレの萌えツボは、キュンキュン! と、鳴った!

 か、かわいい……

「早速で申し訳ありませんが、勇者様」
 アカデミックドレスに角帽にメガネ。きりりとした顔のセリアが、横から声をかけてくる。
「百人の強い仲間は得られましたでしょうか?」
「いや、九十九人目までだ」

《汝の愛が、魔王を滅ぼすであろう。愛しき伴侶を百人、十二の世界を巡り集めよ。各々が振るえる剣は一度。異なる生き方の者のみを求めるべし》

 十二の世界で仲間を加えてきた。
 あと一人を見つければ、託宣は叶う。

 その一人さえ仲間にできれば、オレは魔王に勝てる。

 チュド〜ン無しで勝てるかどうかは、伴侶達次第だ。
 勇者の剣は、オレの攻撃によって追加ダメージが変化し、最低でも100万ダメージがつく。
 百人の伴侶達が9900万ダメージまで出してくれれば、普通に剣で斬りかかって魔王に勝てるのだ。

 伴侶の中には、戦の女神や魔界の王のようなもの凄く強い女性も居る。
 しかし、四分の一は、幼稚園児、スライム、ゾンビ、リス型バイオロイド等々、与ダメがまったく期待できない子達だ。
 裏英雄世界でも、小学生やらゲームマスターを仲間にしちゃったし、『マッハな方』の憑依体になるであろう巫女のユリカさんは体調不良だ。おそらくまともに戦えない。

 明るい未来が待っているとは言い難い状況だが……
 明日の事はとりあえずおいといて!
 まずは、最後の一人!
 あと一人を仲間にする事に集中せねば!


「勇者様」
 シャルロットちゃんが微笑む。
 貴族令嬢にふさわしい気品、大人の女性のような落ち着きと色気、少女らしい愛らしさ……全てを備えた魅力的な微笑みだ……

 オレの萌えツボは、キュンキュンキュンキュン! と、鳴った!
 鳴り響いた!

 可愛いなあ……

 オレも微笑みを返した。


「……今、萌えたわよね、あんた?」
 横から視線を感じた。
 不機嫌そうなサラ。
 セリアもオレをジーッと見ている。
 いや、違う。みんなだ。ジョゼも、マリーちゃんも、イザベルさんも、アナベラも、ニーナも、シャルルまで、オレに注目している。

「萌えたけど……?」

 セリアが眉をしかめながら、尋ねる。
「百人目にできましたか?」

 あ。

 そうか。

 それで、みんなオレに注目していたのか。

「いいや」
 かぶりを振って答えた。
 シャルロットちゃんが悲しそうに瞳を伏せ、セリアが唇を噛みしめる。周囲も、がっかりムード。

「ジョブ被りか……」
 シャルルが溜息をつき、もったいぶった仕草で髪を掻き上げる。
「我が妹シャルロットならば、魔術の才にあふれている。魔王に100万以上のダメージを期待できるのだが」

 なるほど。
『一人、ず抜けて能力が高い者が居る。しかし、ジョブ被りでね』と、前にシャルルが言っていたのはシャルロットちゃんの事だったのか。
 シャルロットちゃんは、魔術師協会長によれば『百年に一人現れるか現れないかの逸材』の天才魔術師だ。
 本当は、サラではなくシャルロットちゃんを仲間にするはずだった。
 けれども、先にサラに萌えちゃったせいで、同じ魔術師学校の生徒のシャルロットちゃんを伴侶にできなかったのだ。

「残念ですわ。魔術師学校の卒業認定をいただき、教授の助手、魔術師協会教会長秘書、家庭教師などを勤めてみましたのに」
 ジョブ変更をしてみたのか。
「神のジョブ選別基準は、我々とは異なります。勇者様が仲間としてきた女性達と未だにシャルロットはジョブ被りなのでしょう。非常に残念ですが仲間にできない以上、仕方がありません」
 凛々しい顔でセリアが言う。
「勇者様、別室に仲間候補の女性達が控えております。戦闘力の高い女性から順にご案内しますので、面接用の部屋にご移動いただけますか?」
「わかった」
 けど……
「面接用の部屋って?」

「私の部屋です」
 簡潔にセリアが答える。
「勇者様のお部屋には、魔法絹布がございます」
 セリアの視線が部屋の隅へと向く。つられてオレもそちらを見た。
 部屋の端っこの床に広げられた反物。一直線に伸びた白い道。綺麗な光沢の布には、十一の魔法陣が刻まれている。
 向って一番左端に、先ほどまでオレ達が行っていた裏英雄世界と繋がる魔法陣がある。転移と帰還に使った『勇者の書 7――ヤマダ ホーリーナイト』は魔法陣の上だ。
「明日、あの魔法絹布を魔王城に持ち込み、世界ごとに仲間を召喚してゆきます。あの魔法絹布は、異世界の仲間と勇者様を結ぶ大切な絆。勇者様同様、私達が守らねばならないものです」
「守る?」
 セリアが頷く。
「仲間候補の身上調査は完了しております。魔王の信者も反王国主義者も凶悪犯も居りません。しかし、第三者を不用意に勇者様や魔法絹布に近づけるのは危険です」

 セリアが呼び鈴で従僕を呼び出し、指示を与える。シャルロットちゃんも従僕に何やら命じているよう。

「……ニノンの二の舞は避けたいってことよ」
 サラが代わって説明してくれる。
「仲間候補達には、あんた好みのエッチな格好をしてもらう予定」
 む?
 エッチな格好?
 て……
 水着?
 下着?
 それとも、芸術的な何か?

「でも、接触はなし。どんなに好みの子がいても近づいちゃ駄目よ。離れて会って」
 いや、あの……そんな。どんな素晴らしい格好でも、いきなり触るような事は……しない! とは言い切れないけど、男として……
 オレの内心を見抜いたのか、サラがジロリと睨む。
「暗殺防止の為に、距離を開くのよ。仲間候補達にはつきそいって形でリーズやカトリーヌさんが一緒にいるわ。つまり、監視役よ」
 ほうほう。
「あんたの護衛には、パメラさんがつくわ」
「パメラさんが護衛?」
 人間が苦手で超内気な獣使いが、オレの護衛?
 できるの?
「ニーナちゃんのポチ2号にも護衛してもらう予定」

「護衛なら、あたしもしよっか?」
 ビキニ戦士が明るく尋ねる。
 従僕への指示を終えたセリアが、その問いに答える。
「是非、お願いします。超一流の戦士のアナベラさんが勇者様と行動を共にしてくださるのなら、心強いです」
「はーい。まかせて!」
 アナベラが胸をドーンと叩く。二つの胸のふくらみが、ぷるんぷるんと目に嬉しく揺れる。

「他の方はこの部屋に残っていただけますか? 裏英雄世界でのお話を伺いたいですし、明日の作戦の事でもご相談がございます」
 ジョゼ、マリーちゃん、イザベルさん、シャルルが応じる。
 ジョゼがほわっと微笑み、オレを見つめる。『頑張ってくださいね、お兄さま……』と小さな声で応援しながら。

「勇者様、八大精霊を全て呼び出していただけますか? 彼女達とも直接話がしたいのです」
 炎、水、風、土、氷、雷、光、闇。全精霊を呼び出し、セリアに協力するよう頼む。

《あの……ご主人様。学者さんのご用事が終わったら護衛の任に戻ってもよろしいでしょうか?》
 と、水のマーイさん。額に水色の宝石をはめこんだ黒の仮面をしている。
《私はご主人様の護衛です。ずっとお側に居たのです……》

「セリアさんの用事が終わったら好きにしていいよ。みんなも、だ。やりたい事をやっててくれ」
 主人を失った精霊は、精霊界のそれぞれの故郷に強制送還される。
 異世界に居られるのも異世界の人間と触れ合えるのも、明日までかもしれない。
 心残りがないよう、好きに過ごしてもらいたい。

「ソワはニーナと遊びたいだろ?」
《あ? うん。ありがとう。遊びたい。でも……》
 髪も体も服まで闇色。闇のソワが、オレとオレに抱きついているニーナをチラチラと見る。
《ジャンとも……後で話せるよね?》
「ああ。オレの方の用事が全部終わったら、オレもニーナと遊びたいし。そん時でも後でもいいや、話そう」
 ソワがニッコリと微笑む。
《ありがと、ジャン。大好き》

「エクレールもルネさんの所に行っていいよ」
 ルネさんはどうしてる? とセリアに聞くと、「魔王戦武器開発中です」との予想通りの答えが返った。ギリギリまで頑張るんだろうなあ……それで仕上がるといいけど。
「ルネさん用の裏英雄世界のお土産があるんだろ? 届けがてら、開発の手伝いをしてきていいぞ」
《あ〜 うん。したい。したいけど……》
 む?
 言い淀むとは、エクレールらしくない。紫水晶のようなツンツンと尖った頭をかしげ、エクレールがオレをジーッと見る。
《ね、ね、ね。あたしも後で話がしたいなー いい?》
「いいよ。ルネさんの手伝いが終わったら戻ってくればいいし……」
 言いかけて、気がついた。手伝いが終わるはずがない、と。
「もしかしたら、こっちから呼び出すかもしれない」
《いいよー 呼んで呼んで。待ってる》
 紫の瞳をキラキラと輝かせ、エクレールが可愛く笑う。

《用事の後フラフラしていいなら、おにーさんと一緒にいたいかな》
《明日、無様な振る舞いなどしないよう、躾けてさしあげてもよろしくってよ》
《せっかくですので、私も行動を共にしたいです、勇者ジャン》
 精霊達がオレを囲む。
 ちょっとモテモテ気分。
 ていうか、みんな別れを惜しんでるんだろう。
 究極魔法のことは秘密にしている。が、人間の心が読める精霊には隠しようがない。オレが明日チュド〜ンするかもしれないと、精霊達は知っている。

……最期の時間を共に過ごしたいと望んでもらえて、嬉しい。精霊達に『早く死んじゃえ。さっさと契約無効になれ』と嫌われてたら寂しいもんな。
 と、思ったら後頭部を軽くこずかれた。炎のティーナだ。炎そのもののような長い髪、白い陶器のような体は全裸だが発光しておりはっきりとは見えない。
《アナムと一緒にいたいから、契約を結んだけど……それだけじゃない。ご主人様(マスター)がヤな奴だったら、契約を反故(ほご)にして炎界に帰ってた》
 ティーナが、もう一度オレをこずく。
《楽しかったわ。これからも、ずーっとご主人様(マスター)で居てくれても構わないんだから……》
 ちょっぴりキュンとした。
 オレ、あんまいい主人じゃなかったけど、みんなと居られて楽しかった。みんなには、深く感謝している。

《でしたら、感謝を形に! 明日の活力を私にください……後で、あああ、後で、構いませんから……踏みにじって、ののしって、冷たい視線を、ぜひ……》
 はあはあと熱くあえぐサブレ。全然嬉しくないモテ方だが……しもべの希望を叶えるのは主人の役目、後で望みを叶えてやるよ。


「勇者様とアナベラさんは面接会場で、他の方はこの部屋で昼食がとてるよう手配いたしましたわ。サラさんとマリー様にはポワエルデュー侯爵家秘伝の食事をお出しいたしますわね」
 シャルロットちゃんが、口元に手をあてて上品に笑う。
「魔力回復及び魔力増強用の食事ですわ。マリー様には宗教上の戒律に触れない料理のみお出ししますわ」
「お心づかい、ありがとう、ございます〜」
 マリーちゃんが、おっとりとお礼を言う。
 裏英雄世界じゃ、マリーちゃんはかなり魔法を使っていた。全然疲れていなさそうだが、それは『マッハな方』からポワエルデュー侯爵家の護符を手渡されたからだ。HP&MP自動回復の護符は手放せば、疲労がどっとくるらしい。護符を持ってる間も、可能な限り回復はしておいた方がいい。

「一応、お兄様にも秘伝のお食事をご用意いたしました。あちらでご無理をなさったようですので」
 シャルロットちゃんが兄に対し、悪戯っぽく笑う。
「魔力がほとんどありませんわね? 憧れの勇者様の為に異世界で熱血なさいましたの?」
「勇者の護衛は、臣民としての義務。なすべき事をなしてきただけだ」
 お貴族様が髪を撫でながら言う。セリアの影響で勇者おたく2号となった事をどうあっても認めたくないんだな、こいつ。
「あの食事は、明日の分までマリー様とサラさんの分は準備できるのか?」
「ええ。今日の昼食と夕食、明日の朝食と昼食分まで、三人分ございますわ。お兄様もどうぞお召し上がりになって」
「わかった。今は有事。魔王戦に臨むジャン君やみなさんを護衛する為にも、私も戦える体であるべきだな」


 従僕が部屋にやって来て、セリアに何ごとかを告げる。
「面会の準備が整ったようです。勇者様、アナベラさん、私の部屋へ移動ください」
 セリアが真っ直ぐにオレを見る。
「もうすぐ託宣は叶います。良き出逢いがある事を望みます」

《おにーちゃん、こっちだよ。ニーナについて来てー》
 セリアの部屋まで案内すると、白い幽霊がはりきる。

 オレとアナベラは、ニーナについて扉へと向かった。

 話し合いの為、サラも部屋に残るようだ。
 サラと目が合ったんで、笑いかけた。
 サラがグッと拳を握ってみせた。最後まで頑張れってことだろう。
 オレもサラに対し、握った拳を見せた。わかった! って伝えたくて。
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