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ハーレム100 作者:松宮星

裏 英雄世界

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悪よ 美しくあれ  【アベンジャーのりこ】(※)

 気づいた時には、ボス部屋の扉の前に戻っていた。

「やあ、ジャン君。ボス部屋からの無事な帰還、まずはおめでとうと言わせてもらうよ」
「ほう。怪我一つしておらんのか。きさまにしては、あっぱれだな」
「良かった、ジャン君、無事で」

 野郎三人が、オレの帰還を喜んでくれる。まあ、『マッハな方』は外見は巫女さんだから、中身さえ気にしなきゃかわいいんだが。
 どんな敵と戦ったのかと聞かれたから、美人のゲームマスターさんと話をしただけだと答えた。ついでに萌えちゃったとも。
 シャルルは『君らしい』とハハハと笑い、『マッハな方』は『脳天気な男だ』とチッと舌打ちをし、マサタ=カーンさんはゲームプログラムを魔王戦にどうやって呼び出すんだ? と首をひねっていた。

『マッハな方』は悪霊と、シャルルは悪魔型の魔王と戦ってたそうだ。
 激しい戦いだったのか、シャルルのMPはほぼ(から)になっていた。

《PT全員が揃いましたので、三分後に退去していただきます》
 何処からともなくゲームマスターの声がする。

《ログイン時の場所に帰還(リバース)となります。退去準備をお願いします》

 オレがゲームマスターさんから聞いたような事は、みなも知っていた。それぞれに事情説明があったらしい。
「このゲームも、不正に複製された未来のソフト。内部をイジってないから、ゲームマスターは、正規の手順通りに不正アクセス者を退出させてくれるわけだ」

 助かったよ……と、マサタ=カーンさんが息を吐く。
「残りHP1を削れない僕は、一騎討ちじゃ誰にも勝てない。あのままじゃ、サリーそっくりの堕天使と永遠に戦い続けるはめになっていた」
 堕天使姿のボスと戦ってたのか。

「死神サリーに、『とどめを刺せない』呪いをかけられたんでしたよね?」
 オレの伴侶にサリーが居ると言うと、カーンさんはすごく嫌そうな顔をした。
「あのイカレ堕天使を伴侶にしたの? へー……。まあ、人の趣味はそれぞれだから、別にいいけど……。昔、サリーと戦って……人形にされかけたことがあってね」
 おや。
「だが、絶対に人形にはなりたくなかった! あいつ、男にも天使コスプレをさせるんだ! スケスケのミニドレスを着ろとか、冗談じゃない!」
 頭に輪っかの飾り、背中に羽飾りつきの白レースのミニドレス。女の子の天使姿はキュンキュンものだけど、男の天使は……
「どうにか逃げて、囚われの人形達を解放したんだが……そのせいであいつ拗ねやがった。魔眼で妙な呪いをかけて、あいつの世界から僕を追放したんだ」
 ん?
 サリーの世界?
 裏冒険世界に行った事あるのか、この人。
 そいや、十二の異世界に行ったんだっけ。

《残り一分》
 オレは、ユリカさんに顔を向けた。
 電脳世界では、『マッハな方』はほとんど眠っていた。出る前に、話すことは話しときたい。
 だが、「あの……」と声をかけたら、
「何も話さんぞ」
 スパーン! と会話は打ち切られてしまった。
「自ずと自明のことだけ教えてやろう。俺は神の使徒だ。神に代わり、清き者を邪悪より守護する。聖なる道を歩めば、俺の内なる霊魂と必ずや交わるであろう」
 それって……
 どういう意味……?

《カウントを開始します。三十、二十九……》
 シャルルがむにゃむにゃと何かをつぶやき、オレに魔法をかける。MPは完全に無くなった。
「何をしたんだ?」
 お貴族様がフッと笑う。
「無事に帰還する為のおまじないさ」
 む?

《三、二、一、〇。帰還モードに入ります。ご利用ありがとうございました。またのログインをお待ちしております》


 前方から眩しい光が迫る。
 光に飲みこまれ、数字だらけになった。1と0の数字の配列が、これでもかってぐらいにオレの中を突き抜け、オレの体を揺さぶり……
 自分の体が吹き飛んだような気がして……





 未だ暗い空、天に架かる月。白々と明け始めた空から広がる光……

 オレが最初に目にしたのはそれで……
 次にヒューッと風を感じた。

 落ちている!
 ものすごい勢いでオレは落っこっている!

 電脳世界にとりこまれる前、オレは宙に浮かんでいたんだ! アウラさんの結界に包まれて! 目を塞いでいたんで、どんぐらいの高さに居たんだか知らなかったが、相当高い所に居たようだ!

(ウインド)装着!」
 オレともども宙に放りだされたおっさんが、精霊を呼び寄せ体にまとう。

 地面に激突して死ぬ!
 そう思った瞬間!
 ボン! と煙があがり、ボヨ〜ン!と柔らかな衝撃が訪れた。

 ボヨン、ボヨン、ボヨンとオレの体が跳ねる。

「風来戦士マサタ=カーン! (ウインド)(バージョン)!」
 自分の精霊を強化服にして格好つける正義の味方。
 その横で、オレは柔らかな巨大クッションの上で跳ねていた。落下直前に魔法で生み出されたそれは、ピンクでレースがビラビラで……
 周囲には、電脳世界に共に取り込まれていたであろう若者達が居る。
 そして……宙には、アウラさん、マーイさん、ソワ、サブレが……。電脳世界へ行く前に呼び出していた四体が、オレの恐怖心に反応して瞬時に駆けつけてくれたようだ……
 四体の視線も感じる。

 は、はずかしい……

 ようやく動きが止まる。人の高さほどもあるそれの上から、オレは下に居る野郎を睨みつけた。デカい魔法のクッションを生み出した術師だ。
「君に『花妖精の(しとね)』を使うのは不本意だったんだがね、」
 お貴族様が気障ったらしい仕草で、ふぁさ〜っと髪を揺らす。
「勇者の危機を救うのは臣民の義務……当然のことをしたまでだ。礼には及ばないよ、ジャン君」

 言わねーよ、バーカ!
 助けてくれたのは、ありがたいけど!
 巨大な薔薇型……きらきらピンクのレースのクッションに野郎を落とすとか……どんな罰ゲーム? 
 周囲の目が痛い! 全然、感謝の気持ちがわかん!
 やっぱ、おまえ、馬鹿だろ!

《ジャン……》
 闇のソワがギュッとしがみついてくる。
《ご主人様……》
《ご無事で何よりです……》
 マーイさんとサブレもオレによりそう。
 ちょっと待って。
 今、この恥ずかしいクッションから下りるから。

《おにーさんは約十五時間、別世界に飛ばされてたの。魔王戦は明後日よ》
 風のアウラさんの説明にホッとする。あっちじゃ十日以上経ってたが、リアルじゃ十五時間だったんだ、良かった……
《でね、いま向こうで戦闘中。けっこーヤバいの。ルーチェ達も呼びだして、おにーさん》

 戦闘?

 そう聞いてようやく気がついた。

 変な匂いがする。肉が腐ったかのような……
 ビルの彼方から爆発音も聞こえる……

 正義の味方のおっさんが姿を消す。自分の精霊を使って、移動魔法したっぽい。

 土のサブレが、オレに炎のボウタイチョーカーを渡してくれる。荷物入れに入れていた、ティーナとの契約の証だ。
「ティーナ、グラキエス様、エクレール、ルーチェさん」
 炎、氷、雷、光の精霊を呼び出す。ルーチェさんは戦隊ヒロイン風七色ファッションだ。

《NEOワルイーゾの怨霊人造人間が暴れてるの。ちょー強敵。近くまで移動するわ》
 む? 怨霊人造人間? 怨霊で人造人間なのか? どんな敵だ?

 シャルルも拾ってもらい、嫌な思い出の地から立ち去った。
 つーか、消してくれ、あのバラ型巨大クッション……



「おかえりなさ〜い、勇者さま、シャルルさま。お元気?」
 オレの視界に飛び込んできたのは、超色っぽい笑顔とバイーン! な爆乳。イザベルさんが風の精霊に張らせてる結界の中に渡ったようだ。
「おかえり、なさい〜 ご無事で、なにより、です〜」
 マリーちゃんが、ほんわか微笑む。
 二人とも綺麗だ……PTメンバーは、やっぱ女の人がいい。

 結界の外は、朝焼けの街。
 さほど遠くない所に……朝日を浴びた、大きなものが居た。
 周囲のビルに負けない大きさ。
 子供が黒い泥をこねて作ったかのように、いびつだ。首が曲がったままの頭、目も鼻も口もない顔。長すぎる手、短すぎる足。
 そこから瘴気が煙のように漏れ……
 のたのたと動くそれの足元に……仲間達が居た。

 全身を紫に輝かせ、拳や蹴りで戦うジョゼ。雷の精霊の力をこめて放った攻撃が、巨人にボコッと穴を開ける。だが、穴はすぐに塞がる。殴っても殴っても、もとの姿に戻ってしまう。
 両手剣を振るうアナベラ。イザベルさんが炎の精霊を支援(サポート)に付けたらしく、アナベラの攻撃には炎が付加されていた。
 おなか丸出しのセクシーな強化服でミドリさんも、緑の羽根で戦っている。戦いながら、左腕の通信機で誰かと話している。
 全身ゴールドタイツの人も居る。超能力じゃなく、銃を使っている。撃つと雷みたいな光が発射される。

 カーンさんも参戦している。精霊達を敵に向かわせ、爆炎魔法で400万ダメとか信じられない数値を出している。

 他の仲間も、100万とか200万とか景気のいいダメージを出している。

 しかし、巨人は沈まない。
 欠けた体はすぐに再生してしまう。
 3789万、4215万、4197万、3841万、4182万……
 バカみたいに多いHPが、増減している。

 削っても削っても、すげぇ勢いで回復してしまうんだ。

 巨人が長すぎる両手を振りまわす。まるでだだっこのような動きだが、デカい拳は地面にめりこみ、ビルを粘土のように破壊する。
 砕けるガラス。落下する巨大な破片。
「ソル」
 イザベルさんの土の精霊が広範囲に結界を張り、仲間達を瓦礫から守る。

「サブレはオレに同化! 残りの精霊は参戦! アウラさんの指示に従ってくれ!」
 精霊達が人の形を捨てて敵へと向かう。
「絶対、四散するなよ! それだけ気をつけてくれ!」
 精霊達が戦闘に加わっても、敵のHPは3300万より減らない……

「何なんですか、あいつは?」
 オレの問いに、イザベルさんが答える。
「NEOワルイーゾの人造人間。未来教会から買った技術で造り出された実験用人造人間の二体目、ミライ2号よ」
 ミドリさんの敵が、ゴールドさんの敵から技術を買った?
「正義の味方が共闘する世界ですもの。悪人同士も手を結んだり、技術交流するのよ」
 うへぇ。

「ミライ1号は、人間をデータ化し仮想現実の中に転送する人造人間だったわ」
 なに?
 イザベルさんが、うふふと笑う。
「そ。勇者さま達が別世界に飛ばされたのは、そいつのせい。ミライ1号は完成はしたものの暴走し、NEOワルイーゾの基地から脱走。この街で、転送ビームを撃ちまくってたのよ」
 なんですと!
「ミライ1号は仮想現実に人を送れはするけど、回収する能力はなかったの。倒しても勇者さま達は還らず……それで、ジャスティス戦隊の方達とミライ1号を開発した研究所に乗り込んだのよ。でも、そこで」
 イザベルさんが巨人を見上げる。
「暴走したミライ2号と出くわしちゃったってわけ」

 いびつな泥人形のように見えるミライ2号。
 だが、あの体は泥ではなく、怨霊の集合体なのだとイザベルさんは言った。
「NEOワルイーゾの科学者を捕まえて聞いたわ。ミライ2号の心臓に、核となる未来の機械があるの。現在過去未来から時空を越えて、怨霊を呼び寄せる装置なんですって」
 人造人間は、怨霊を吸収して自分の体にする。しかも、かなりの広範囲から怨霊を吸引し、周囲から怨霊が尽きたら別の時代から呼び寄せるという……

「祓っても、祓っても、駄目、なんです〜 全部を、祓いきる前に、新たな、怨霊が、くっついて、しまって〜」
 マリーちゃんは、しょぼんとしている。
「聖女さまには、今、休憩していただいているの。魔力が枯渇しちゃったら、いざという時には戦えないもの」と、イザベルさん。

「つまり、心臓部の怨霊召喚機械を壊さなきゃ、あのデカブツは倒せないんですね?」
 イザベルさんが頷く。
「ええ。でも、心臓を狙う為には、あの泥みたいな体を一端全部消さなくてはいけないの」
 魔力を帯びた攻撃なら敵の体を破壊できる。しかし、胸を重点的に狙っても、他部位の泥が移動して胸を庇うので心臓部のメカを攻撃できないのだそうだ。
「ギリギリまでHPを削ったら、聖女様に大技をうっていただいて、雷の精霊レイに機械を破壊してもらう……そういう作戦なの」

「了解です」
 オレは勇者の剣を抜いた。オレの剣は光の剣。非力なオレでも、多少は加勢となるはずだ。

 ミライ2号に向かって走り始めたオレ。
 その横に、お貴族様が並び走る。風になびく巻き毛までキザだ。
「やる気か?」と、聞くと、
「貴族たる者、敵に背は見せぬものだよ」との答え。
「ご自慢のMPは枯渇したよな。大丈夫なのか?」
「愚問だね、ジャン君。この私が剣で戦えないとでも? ポワエルデュー侯爵家の剣は、魔法剣だ。魔をも斬り裂くよ」
 なら、働けよ、お貴族様。んでもって……死ぬなよ。

「お兄さま!」
「勇者さまー」
「勇者クン」
 戦っていたみんながオレに気づき、声をかけてくれる。

 みんなの声を受けながら、オレは腰のキンキラ剣を抜いてミライ2号に斬りかかった。

 172万9543ダメージ+追加効果196万!

 おおお! すげぇダメ!

 シャルルの攻撃。
 む?
 243万8921……

……オレが強いんじゃないな。
……ミライ2号の防御力がむちゃくちゃ低いんだ。

 ダメージは景気いいが、HP回復も景気いい。
 オレとシャルルが参戦しても、敵のHPは3000万前後。

 浄化魔法が得意なマリーちゃんでも、3000万は無理だろ。

 オレはカーンさんからもらったアイテム……ヒーロー・スプレーを右手に使用した。
 ペン先から強化スーツの素が噴射される。筋力・防御力・命中力・敏捷性が高まり、正義に燃える心が攻撃力に変換されるスーツ……の一部を装着した。
 オレの右手が炎に包まれる。
 正義に燃える心のエフェクトだ。

 勇者の剣を、ミライ2号へと振り下ろした。

 勇者眼がダメージ値を捉える。

 きたーーーーッ! 208万9965ダメージ! 200万超え!
 そして、追加効果……

 うひょ!

 392万!

 今、仲間は九十八人。
 オレが100万以上のダメを出せば、98人×2で追加効果196万!
 そして! オレが200万以上だと、98人×4で追加効果392万! って事だよな、これは!
 追加効果の伸びは倍々だったんだ!

『カネコ アキノリ』のが防御力が高いだろうから、魔王戦で200万超えできるとも思えないけど!

 でも、少なくとも……
 これで、ミライ2号の削りにちょっと協力できる。

 オレは勇者の剣で斬りまくった。
 ミライ2号は、与ダメの多いオレやカーンさんを特に嫌がって払った。
 殴られても平気! 土のサブレが物理耐久力を高めてくれてるから!

 しかし、ミライ2号のHPは2500万以上ある。
 いずれ、みんな、体力の限界がくる。
 みんなが元気なうちにもっともっと攻撃力を高めなきゃ、勝てない。

 と、あせった時……

「遅くなって、ごめーんッ!」
 空飛ぶピンクの花びらにのって、魔法少女アイリちゃんが登場!
「どこの誰だか知らないけれど、花園を荒らす奴は許さない! ゆめみのアイリが華やかに退治しちゃうわ!」
 ピンクの魔法少女が、ひらりと舞い降り踊り出す。
「フラワー・シャワー!」
 刃物のように鋭い花びらの雨が巨人へと降り、
「フラワー・グローイング!」
 筍が巨人の体を貫き、
「フラワー・タイフーン!」
 爆発する花の嵐が巨人を飲み込む。
 フラワー・シャワーとフラワー・グローイングは効果時間が長い。太さも長さも人間の五倍はある筍が、足の裏から頭のてっぺんまでミライ2号を貫く。

 アイリちゃんの参戦でミライ2号のHPは2300万ぐらいに。

 そして……

「マーメイド・アタック!」
「九八式改!」
「スーパー大型高速冷凍砲!」
「イーグル ダーイブ!」

 見渡せば……
 周囲に、正義の味方がいっぱい居た。
 マーメイド戦隊、秘密警察、トーキョー防衛軍、プリティーアニマルメン。
 ミドリさんの友人達だ。それぞれの組織の女性隊員を紹介してもらいに行ったんで、面識がある。

「救援要請に応えてくれたのよ」
 緑の羽根を手裏剣のように飛ばしながら、ジャスティス戦隊のリーダーが言う。
「宿敵以外とは戦わないのが、ヒーローのルール。でも、救援要請された時は別なの。トーキョー・シティーの平和を守る為、一丸となって悪と戦えるのよ」

 ヒーロー達の集中砲火を浴びて、敵のHPは1500万を切った!

 アイリちゃんの筍が竹と化す。じきに、花が咲くだろう。足止め魔法は、間もなく消える。

 ゴールドさんが銃ではなく、超能力に切り替えミライ2号を攻撃する。

「暴走と、破壊と、器物破損と、傷害と、殺人未遂の、現行犯です〜 あなたの、罪は、マッハで、自ずと、自明なのです〜」
 背後を振りかえると……まばゆい光を発する聖女様が静かに歩いていた。
 マリーちゃんがスッと右手を突き出し、ビシッと親指を突き立てる。
 で、くくく・・・と笑い、手首をゆっくりひねって親指を下へ……。笑い方まで似せなくとも……

「ごめんなさい、有罪です〜 浄霊、しますね〜」

 尼僧姿の聖女様から光が一気にふくれ上がり、どデカい白光の玉と化してゆく。

 と、そこへ、何処からともなく光が走り寄る。
 まぶしすぎてはっきりとは見えないが……
 光の中心がおぼろげには見えた。白い小袖に紫の袴、ポニーテール……

 マリーちゃんから広がる光と、駆け寄って来た光。
 二つの光が混じり合い溶けあって、更に神々しい輝きと化してゆく。

「死んで大罪を償っていただけますか〜?真・終焉ノ(グッバイ・)滅ビヲ(イービル・)迎エシ神覇ノ(ファイナル・)贖焔(バーン)!」
「その死をもって、己が大罪を償え・・・真・終焉ノ(グッバイ・)滅ビヲ(イービル・)迎エシ神覇ノ(ファイナル・)贖焔(バーン)!」

 ツイン真・終焉ノ(グッバイ・)滅ビヲ(イービル・)迎エシ神覇ノ(ファイナル・)贖焔(バーン)

 強大な浄化魔法が爆発的に広がる。
 光の世界だ。
 その中心は、まばゆ過ぎる。人が二人並んでいるようなのだが、精霊の目でもよく見えない。

 凄まじい勢いで巨人の体が溶けてゆく……

「みんなー、これが最後よ! 力を貸して!」
 ミドリさんの声。

 オレも斬らなきゃ!

 ヒーロー達が必殺技を叫び、ミライ2号にぶつける。

「くらえっ! 勇者アターック!」
 ノリでオレも叫んだ。炎のエフェクトののったキンキラ剣がミライ2号を斬る!
 203万7103+追加効果392万ダメージ……

 き、気持ちいい……

 ジョゼの体が宙へと浮く。
 さらさらの黒髪と、靡く白いドレスが美しい。

 風のアウラさんが義妹を、巨人の心臓部手前まで運ぶ。
 ミライ2号は心臓もデカかった。縦長に四角いそれは、ワードローブというか、立てかけた棺桶というか……

 舞うように美しくジョゼが動く。
 雷の精霊を宿した右手が、悪霊召喚装置を殴る。

 レイに内部から破壊され、未来の機械は沈黙した。

 闇は完全に祓われ、そして……

 ミライ2号を象っていたものが崩れ落ちてゆく。
 機械の部品と……人間だ。人間も吸収されていたのか!

「マサタ=カーテン!」
 カーンさんの風精霊が、アウラさんが、イザベルさん家の精霊が、ミライ2号にとりこまれていた人間を風の結界で包みこみ地面へと下ろしてゆく。
「怨みつらみ……負の感情につかれていた人々も吸収されていたのよ」と、ミドリさん。

 怨霊の集合体に飲みこまれていたせいか、皆、フラフラだった。

 アウラさんに運ばれオレのすぐ側に下ろされた女性を見て、ドキッとした。

 格好からして、悪!
 野牛の角の飾りのついた兜、背にはマント、肩や腕や脚にはメカメカしいプロテクター、膝上までのロングブーツ。

 しかし、美しい悪だ!
 ボンキュッボン!
 胸元が深く開いた黒のボディースーツ姿! V字に開いたそこから大きな山の谷間はもちろん、おへそまで見えて……おまけに美脚……

 そして、誇り高き悪!
 正義などには屈さぬ! と叫ぶかのようにオレを睨む。
 まともに立てないほどフラフラなのに。

 更に言うと、ギャップのある悪!
 目元は黒シャドー、唇が真っ赤の濃い化粧。
 けれども、よく見れば若い。目が大きいし、頬もふっくら。十代? いっても二十そこそこ。

 何というか……

 可愛い……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……

 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと一〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


「ノリちゃん!」
 風のように駆けて来る正義の味方。

 風来戦士マサタ=カーンさんに、その女性が左手を向ける。
 腕の装甲の一部がまたたく間に変形。
 左腕に銃が生える。

 周囲に銃の連射音が響き渡った……


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№099)

名前 アベンジャー ノリコ
所属世界   裏 英雄世界
種族     人間
職業     悪の女幹部
特徴     本名はアベ ノリコ。
       風来戦士マサタ=カーンの昔の仲間。
       発明家の娘で、お父さんと一緒に
       マサタ=カラクリを作る。
       今は何故か悪の組織の幹部に。
戦闘方法   発明品
年齢     二十歳ぐらい?
容姿     お化粧が濃いけど、童顔。
       ボンキュッボンな体を、メカメカしい装甲と
       ボンテージファッションで覆っている。
       野牛の角つき兜をしている。
口癖    『覚えていろ、マサタ=カーン。
       次に逢う時が、貴様の最期だ』
好きなもの  メカ
嫌いなもの  マサタ=カーン
勇者に一言  なし
挿絵(By みてみん)
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