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ハーレム100 作者:松宮星

裏 英雄世界

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あなたの望む未来  【??】(※)

 女性が、けだるげにオレを見る。

 スレンダーな裸体を覆うのは、黒の流紋。布とは思えないが、何で出来ているのかはわからない。足の指先から、しなやかな肢体、首にまでセクシーに絡まりつき、大事なところを人目に晒さぬように隠している。

 エルフのように先がとがった耳、虹彩のある猫のような目、青い髪……人間じゃない。
 だが、綺麗だ。

 憂いを含んだ瞳が、笑みを形づくる。
 淡く微笑みながら、抑揚のない声で彼女は言った。

《さあ、お斬りなさい。あなたの望む未来の為に……》


* * * * * *


マサタ=カーン
レベル  999
職業   正義の味方
種族   人間
力強さ  S
防御力  S
素早さ  S
魔力   S
知性   E
信仰心  E
カリスマ A
運    F
健康状態 良好
特殊能力 未来予知・時空操作・自己再生……
装備   マサタ=カラクリ一式 まどかの写真


 レベル999。パラメーターの半分はS。けど、運はFで、知性や信仰心はE。そっか〜 この人、オレよりバカなのか〜 ちょっとだけ親近感。

 背広姿のヒーローが、敵と戦いながら教えてくれた。

 オレ達は機械(コンピューター)の中に居るのだと。


 ゴールドさんの敵の未来人の仕業だろうと、カーンさんは言った。
 未来には、人をデータ化して超リアルな仮想現実の中に転送する技術があるのだそうだ。

「二か月前にも、ジャスティス戦隊のみんなとゲームに取り込まれた」
 凄まじい数のメカ妖怪に襲われるゲームだそうで。
「ゲーム自体は、未来にあるもの。不正に複製したソフトウェアごとコンピューターをこの時代に持ち込み、新感覚体感ゲームと銘打って秘密クラブに持ち込んでたんだ」
 カーンさんの説明は難しい。未来の高度なゲームをこの時代用にエミュレートできず、秘密クラブの秘密ゲームとしてこっそり商売を始めたのだとか、なんだとか。
「プレイヤーにはゲーム上には本来無い、超強力なチート武器が渡される。無双状態で戦場を駆け巡る、疑似連続大量殺人体感ゲームとして大人気だった。PK(プレイヤー・キラー)もできるしね」
 そのプレイ代が、未来教会の活動資金に回っていたらしい。
「普通は精神だけを転移させて、ゲーム上のアバターと同化させて遊ぶんだ。けど、僕らは一般プレイヤーと異なり、肉体ごと転送された。仮想空間の中でも、傷を負えば怪我をした。現実と一緒だった。殺されれば死んでいたろう」
 未来教会は、ゴールドさんを仮想現実の中で抹殺しようとしたのだ。

 仲間探しの為に街に居た、オレ、シャルル、カーンさん。
 あの街に悪霊の存在を察知し祓いに来ていたユリカさん、てか『マッハな方』。
 今回、仮想現実にとりこまれたのはこれで全員なのか、他にも誰かいるのか……
 あの街に居た者全員が転送されたのなら、ジョゼやマリーちゃんやアナベラにイザベルさん、弱いとアナベラが言っていた若者達も居るだろう。

「この電脳世界の何処かに、ゲームマスターが存在するはずだ。そいつを探しだして破壊する」
 ゲームマスターってのは、仮想現実管理プログラム。前回は、それを破壊して元の世界に還ったのだそうだ。

「ゲームマスターさえ破壊すれば、ゲーム世界は崩壊する。前回は、超巨大要塞の司令官としてゲームに参加してたよ。今回も、そうそう倒されない強いNPCになっていると思う。ボスっぽい強敵をかたっぱしから倒してゆこう」


 てなわけで、野郎三人+女の子だけど中身男の……あまり楽しくない即席PTで電脳世界を旅する事になった。

 戦闘に次ぐ戦闘。
 数歩歩けば、敵に当たる頻度。

 だが、まったく問題ない。

 魔族・悪霊系の敵と接近すると、オレの背中の方がガバッと起きていつものアレな魔法で一掃してくださる。
 神霊の憑依体となるのは半端なく疲れ、魔法を使わなくてもじわじわと疲労してゆくものだ。
 んでもって、『終焉ノ(グッバイ・)滅ビヲ(イービル・)迎エシ神覇ノ(ブレイク・)贖焔(バーン)!』をうつと、ユリカさんのMPはガコーンと五分の一ぐらい減る。
 だが、しかし、現在『マッハな方』は絶好調中。バンバン大技を使っている。
 シャルルからHP&MP自動回復の護符を奪った……いや、譲ってもらったからだ。
 大技を連続使用しても、ちょっと時間をおけばMPはフル回復する。
 魔族・悪霊系の敵には、ほぼ無敵だ。

 それ以外の敵に対しても、今は無敵。
 カーンさんが、一撃で敵のHPを1にまで削ってしまうからだ。HPが1になった敵に対しては、この人は無力になるが。殴る蹴るしても、ダメはゼロ。どうあっても、とどめが刺せないのだそうで……。死神サリーに呪いをかけられたせいらしいが、どうしてそうなったのかはまだ聞いていない。
 とどめはシャルルが担当。魔力温存の為、カーンさんから借りたマサタ=カラクリを主に使っている。火焔放射器型ライター、射出式手裏剣な名刺入れ、小型レーザー銃な懐中時計。侯爵家の何でも斬り裂く剣も使っていた。

 オレも、たまに勇者の剣でとどめに協力している。
 たまに、だが。
 オレのメインの仕事は……眠るユリカさんを背負って運ぶこと!
 最初こそかわいい巫女さんを背負う事にドキドキしたが、中身はあの方だし……
 女の子をしょって走り続けりゃ、バテる。心臓はドキドキではなく、バクバクになった。
 戦闘中はユリカさんを下ろして、一休み! 戦闘中は休憩タイム! 戦闘に参加できる余体力などなかった。


 城やら砦やらダンジョンに乗り込み、最奥の大型の敵を倒してゆく。
 鬼、巨人、大ムカデ、悪魔……

 だが、ゲームマスターは居ない。


 森から草原、砂漠へと舞台は変わった。
 砂漠は日差しがきつく、流砂で歩きづらい。
 暑さにじわじわと削られるHPは『マッハな方』が適度に回復魔法をかけて癒し、お貴族様が魔法で水を出してくれたんで喉の渇きもどうにかなった。

 ゲーム内の全てが本物のように感じられた。が、よくできていても作りものだ。食えそうなものがあっても手は出さず、携帯食料を分け合って食べた。
 いざって時の用心にオレは干し肉を持ってるし、カーンさんも菓子風の非常食を持ってたんで。

 食事休憩中、どれほど時間が経ったのかが話題となった。

 何度か日没や日の出を見ている。
 だが、明らかに一日が短すぎる。
 体感時間でいうと、一時間で一日が過ぎている感じだ。
 ゲーム内は、現実とは時の流れが違う。皆の意見は一致した。

「電脳世界で九日が経過したが、実際には九時間経ったぐらいだろう。さっさとボスを倒して現実に戻れば、魔王戦に間に合うよ」
 そう言って、カーンさんは励ましてくれた。いい人だ。

 ふと見ると、『マッハな方』は眠っていた。食事を終えた途端、眠ってしまったようだ。
 電脳世界では、戦ってるか眠ってるか。せっかく一緒に旅しているのに、会話らしい会話ができずにいる。
 マリーちゃんのお兄さんなんですか? と聞いたところで、答えてはくれないだろうけれども……少しでもいいから話を聞いておきたい。

 シャルルも口を閉ざした。
 ユリカさんが起きてる間は、そこそこしゃべる。騎士きどりでユリカさんをチヤホヤし、『マッハな方』に蹴られたり殴られたりしている。
 しかし、饒舌なのは女性に対してだけ。ユリカさんが眠ると静かになる。

 自然、愛想のいいおっさんとオレとの会話が多くなる。

「そうだ。これをあげよう」
 カーンさんが、胸ポケットからペンそっくりなモノを取り出す。
「マサタ=カラクリの最高傑作の一つ、ヒーロー・スプレー。ペン先から強化スーツの素が噴射される。塗布すると、筋力・防御力・命中力・敏捷性が高まり、正義に燃える心を攻撃力に変換する事ができるんだ」

 正義に燃える心……

「もしかして、正義に燃える心を炎のパンチにしたり……できます?」
 カーンさんが頷く。
「望めばそうなるよ。幻影効果で、スーツの色も形もエフェクトも装着者の思いのままだ」
「じゃ、正義に燃える心を炎のキックにしたりも?」
 もちろん! とカーンさんが歯をきらっと輝かせて笑う。
 おぉぉッ!
 いいな!
 ガキのころ、そーゆうのに憧れてたんだよ! 伝説の剣の振るい手とか、無敵格闘技マスターとか、変身勇者とか、竜騎士とか……ヒーローっぽい勇者になりたかったんだ!

「防水タイプだから濡れても大丈夫。効果時間は約6時間。だが、もう古いものだから、残量が……」
 カーンさんがペンをシャカシャカと振る。
「全身スプレーは無理だが、右手のみの塗布なら1〜2回は使えそうだな。良かったら使ってくれ。なんなら魔王戦でも」
「ありがとうございます!」
 礼を言って受け取った。

「マサタ=カラクリってのは何なんですか?」
 小学校で着てた強化スーツは、精霊だった。だから、今は消えている。
 しかし、マサタ=カラクリは普通のアイテムのようだ。このスプレーに、火焔放射器型ライター、射出式手裏剣な名刺入れ、小型レーザー銃な懐中時計……
「おやっさん……安部泰三さんとその娘ののりちゃんの発明品だよ。八年前から正義の味方を始めた僕の為に、発明好きの二人がヒーロー支援用アイテムを作ってくれたんだ。大きなものでは、変形バイクとか鳥型ロボットもあった」
 ほほう。
「二人とも発明の天才だった」
 ルネさんみたいな人達なのか。
「だが、おやっさんは四年前に亡くなり……のりちゃんは何故か悪の道へ」
 ん?
「今では、アベンジャーのりこと名乗り、NEOワルイーゾの女幹部になっている」
 昔の仲間が悪に?
「更生させたいんだが、話すら聞いてもらえなくてね……。ワルイーゾを嫌っていた彼女が、なぜその後継組織の幹部になんか……」

 胸が痛んだ。

 それは……つらい。

 自分にあてはめて考えれば……サラが敵にまわったようなもんだ。
 短気で強気で暴れん坊。ツンデレとは名ばかりのツンツン。だけど、思いやりがあって、優しいサラ……照れると鼻の辺りが赤くなる可愛い奴。
 サラが敵……?
 ありえない。
 サラに命を狙われても、オレは戦うことなどできないだろう。

「洗脳されたんでしょうか?」
「そうかもしれない。だが、悪には悪なりの理由がある。洗脳されたにしろ、自分の意志にしろ……のりちゃんが悪となり、悪であり続けることに、理由があるはずだ。僕はそれが知りたい」

 悪の理由……
 その言葉がやけに気になった。


 砂漠を越え、荒野に出て……

 いかにも怪しいぞ! って城にたどりついた。
 おどろおどろしい曇天の下、木々すらない荒野にドーン! っとそれはあった。
 山のように巨大な城。それでいて、教会堂みたいにデザインは美しい。中を走る水色の光の筋によって淡く輝く壁。まるで氷の城のようだった。

 機械兵、死霊、暗黒騎士、獣戦士、悪魔、竜。
 城の中に居る敵もさまざまだ。ボス城の敵だ、もの凄く強いのだろう。
 しかし、実感できなかった。『マッハな方』とカーンさん+シャルルに次々に駆逐されてゆくだけだったんで。

 最上階に、ひたすらデカい黒い扉があった。
 美しい流紋の入ったそれは、馬車が余裕で通れそうなほどの高さと幅があった。
 だが、カーンさんが軽く押すと、それは簡単に開き、中から眩しい光が広がってきて……
 光に飲みこまれる瞬間、数字だらけになった。1と0ばかりの数字の配列が、これでもかってぐらいにオレの中を突き抜けてゆき……


* * * * * *


 気づいたら、オレは一人だった。

 たった一人で、この女性と顔を合わせていた。

 真っ暗でだだっ広い部屋。
 その中心の床だけが淡く光っており、そこに彼女は立っていた。
 青い髪、エルフのような耳、裸体を覆う黒の流紋……

 誰かは、直感的にわかった。

 オレの敵……

 倒さなきゃいけない相手だ。

 勇者の剣の柄に手をかけている。いつでも抜ける。
 カーンさんから貰った、ヒーロー・スプレーもある。

 だが、この女性は穏やかな顔でオレに微笑みかけているだけだ。
 戦意など、まるでなさそう。

「ゲームマスターさんですね?」
 耳に心地よい声が返る。
《私はこの世界を司るもの……この世界の神です》

「みんなは、何処です?」と、質問したんだが、
《しかし、終わりなき時を生きるのには、もはや厭きました。この世界の住人達では、創造主たる私を倒せない……だから、あなた達をこの世界に招いたのです》
 むぅ。
 会話が噛み合ってないぞ。
 なりきった役の、決まった台詞をしゃべってるだけのような……
 まあ、『マッハな方』もカーンさんも、シャルルにしたところで、オレよりずっと強いわけだし。心配する事はないか。

《あなたがもとの世界に還る方法はただ一つ……》
 女の人が両手を広げる。
《召喚主を殺すこと……。さあ、私を斬りなさい。こうしている間にも、現実では時が流れています。あなたの望む未来の為、そして、私の癒されぬ心を自由にする為……殺してください》

 ゲームマスターってのは、仮想現実管理プログラム。それを破壊すれば、ゲーム世界は崩壊する。もとの世界に還れるだろうとカーンさんは言っていた。
 電脳世界にジョゼ達まで連れ込まれていたとしても、ゲームマスターさえいなくなれば、皆揃って元の世界に還れるって事らしい。

 モンスターだらけの、この電脳世界。
 モンスターを管理してるのも、ゲームマスターだ。半端ない数の敵をけしかけてきたって事は、殺意があったわけで……

 しかし……

 この(ヒト)は、やるせなさそうに、オレを見ている。
 猫の目のような虹彩のある瞳を悲しそうに細め、淡く微笑んでいる。
 エルフのように先がとがった耳、青い髪……裸体に絡まりつくように刻まれた流紋。

 退廃的な雰囲気のある人外の女性。
 生きる気力を無くしたその姿に胸が痛む。
 悪となり、悪であり続けたことに、理由があるはずだ。

《さあ、お斬りなさい。あなたの望む未来の為に……》


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと二〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


「少しお話できませんか?」
 勇者の剣の柄から手を離し、聞いてみた。
「無理なら、あきらめますが……」
 まえに、ルネさんが言っていた。
 機械ってのは、あらかじめ与えられた機能以上のことはできないって。言語機能がなきゃ会話できないし、自律脳が搭載されてなきゃ命令通りの動きしかできない。

 だからといって、無闇に命を奪うのは嫌だ。人じゃなく機械だって、同じだ。


《なにが知りたいのですか、勇者ジャンよ》
 名前を呼ばれて、びっくりした。が、ステータスが丸見えなんだ。知ってて当然か。

「全部です。オレ、電脳のゲーム世界初めてだし、わけわからないまま放りこまれちゃったから、何がなんだかさっぱりで……。オレやオレの仲間達がログアウトするには、あなたを倒す以外の道は無いんでしょうか?」

《え?》
 女の人が眉をひそめる。
《わけわからないまま放りこまれた? どういう意味です?》
「街の中に居たんです。なのに、気がついたらゲームの中にいてロウアウト不能だって言われたんですよ」

《ログインからの履歴を調べます》
 そう言ってから、間を置かず女の人は言った。
《正規ツールでログインしてませんね。確認します、ご自分の意志でログインなさったわけではないのですね?》

 オレは頷いた。
「未来教会の仕業だって、カーンさんは言ってました」

《誤差0.5hでログインした全プレイヤーの履歴を調査したところ、十分の九が不正ログインでした。あなた同様、第三者によって不正ログインさせられた可能性があります。全員を保護モードで排除します》

 む?

《プレイヤーに負荷なく、このゲームから退去させるという事です》

「もとの世界に還れるんですか?」
 女の人が頷く。もう微笑んではいない。表情のない顔となっている。でも、綺麗だ。

「ありがとうございます! その十分の九の中にジョゼは居ます? オレの義妹なんですが」
《他プレイヤーの個人情報に関するご質問にはお答えできません》
 むむ?
《ですが、全員の退去が可能です。その件はお伝えします》
「ありがとうございます! じゃ、もう一つ! オレがここに来てから、どんぐらい時間が経ちました?」
《リアルでですか? 14.5hです。半日と二時間半ですね》
 オレがとりこまれた時、魔王戦は三日後の昼だった……
「なら、間に合う! 良かった! ありがとう、ゲームマスターさん!」

《私はゲームマスターです。お客様にご満足いただけるよう、常に柔軟かつ適切に対応しています。想定外のトラブルであっても、迅速処理します》
「何言ってるんだかよくわかりませんが、助かりました! ありがとうございます!」

《わかりませんか?》
 ピクッと女の人の眉が微かに動く。
《私の説明の何処に問題があるのでしょうか? 具体的に指摘していただけますか? 苦情対応への回答をバージョンアップします》

 この(ヒト)、ちょっとセリアに似てる……

「いや、説明が悪いわけじゃないです。オレが電脳世界に詳しくないから、わからないだけで……」
 青い髪エルフ耳のボスに聞いてみる。
「……この世界のボスなんでしょ? オレ達を解放しちゃって、後で未来教会の上役から怒られません?」
《ご質問の意味が理解できません。私はDQFFWZ社の『デ・ナニノ・ヲシス』のゲームマスターです。私はDQFFWZ社に帰属しています。未来教会という組織とは無関係です》
 む?
 オレ達を電脳世界に跳ばした奴等とは無縁なのか?

「でも、あなた、オレ達を殺そうとしましたよね?」
《ご質問の意味が理解できません》
「山のようにモンスターをけしかけてきましたよね?」
《はい。あなたはS級のプレイヤーと行動を共にしていましたので。このゲームはプレイヤーごとに難易度が設定されますが、PT時は最高パラメーターの人間に合わせた難易度に調整されます》
 へ?
《ソロとPTでは遊び方が変わります。全プレイヤーにゲーム世界を楽しんでいただけるよう、適宜状況を変化させています》
……そいや、一人の時は襲われなかったよな。シャルルと会ってから、雑魚に絡まれるようになって……超強い二人と合流してから襲われまくりになったわけで……
 モンスター・ラッシュになったのは、カーンさん達のせい?

《イベントも敵も、プレイヤーごとに変化します。最終ボスとの決戦はボスとの一騎討ち、個別イベントとなりますので、敵も戦闘内容も人によりまちまちです。あなたの連れの方々には、違う形態の私が応対しています》
「違う形態? てことは、分身ですか?」
《分身という表現は不適切ですが、そのように理解していただいても構いません。プレイヤーの数だけ、私はボスNPCを生み出します。さまざまなNPC、天候、舞台、イベントも管理しています。私は、DQFFWZ社とプレイヤーの為に存在しています》

「……あなたを斬っていたら、どうなってたんですか?」
《ゲーム攻略とイベントに関するご質問にはお答えできません》
 む。
「じゃ、これだけ! もとの世界に還れたんですか?」
《いいえ。あなたの予約残り時間は『無期限』設定でしたので、緊急ログオフ要請がない限り、お目覚めになられる事はありませんでした。ボス討伐後には二周目モードに突入していました》
「二周目?」
《ロックが外れたモードです。敵がより強くなり、二周目ならではのシナリオ・NPC・戦利品が用意され、今まで行けなかったマップへ到達可能となります》
「はあ」
《ボスは必ず別タイプの敵となります。倒すと三周目になります。全マップを手に入れる為に十二周回、追加シナリオ・コンプの為に現在二百四十五周回お楽しみいただけます》
 へ?
《DQFFWZ社の『デ・ナニノ・ヲシス』は豊富なマップと追加シナリオと隠しイベントをご用意しております。ご自宅からでも当ゲームに接続可能ですが、旅行感覚でご利用をご希望のお客様の為にDQFFWZ社は専用のコールドスリープ装置を多数ご用意しております。ご予約時間いっぱい、リアルの煩しさを忘れ、『デ・ナニノ・ヲシス』の世界を堪能いただけます。お客様もぜひ次回は当社の予約ログインをご利用ください。別世界に転生した気分を味わえますよ」
 無表情だったゲームマスターさんが、にっこりと微笑む。営業スマイルだ。

 電脳世界から出してもらえるのはありがたいが……
 ずいぶんイメージが変わったな、ゲームマスターさん……


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№098)

名前 ゲームマスター
所属世界   裏 英雄世界
種族     プログラムの疑似人格
職業     ゲームマスター
特徴     未来のゲーム会社DQFFWZ社の
      『デ・ナニノ・ヲシス』のゲームマスター。
       殺してくれと言ったのは、
       オレ専用のイベントだったらしい。
       そこにキュンキュンきたのに、残念。
       ゲームを管理し、ゲームプレイヤーを
       楽しませる為に存在している。
       不法プレイヤーの処分、
       クレイム応対も担当。
       ゲーム攻略とイベントに関する質問には答えない。
戦闘方法   不明
年齢     不明
容姿     スレンダーの裸体を黒の流紋で隠している。
       エルフのように先がとがった耳、
       虹彩のある猫のような目、
       青い髪……ミステリアスな美しさ
口癖    『私は、DQFFWZ社とプレイヤーの為に存在しています』
好きなもの  DQFFWZ社
嫌いなもの  不正プレイ
勇者に一言 『次回は当社の予約ログインをご利用ください』
挿絵(By みてみん)
+注意+
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