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ハーレム100 作者:松宮星

裏 英雄世界

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電脳世界へ     【?】(※)

 突然、気持ち悪くなった。
 平衡感覚が狂い、まともに立っていられない。
 というか、自分が立っているのか座っているのか寝ているのかすらわからない。
 ぐにょりと体が曲がったかのような錯覚。
 幻覚も見えた。
 前方から迫る眩しい光。
 光に飲みこまれた瞬間、数字だらけになった。1と0ばかりの数字の流れが、これでもかってぐらいにオレの中を突き抜け、オレを揺さぶり……
 自分の体が吹き飛んだような気がして……


 気がついたら、オレは暗闇の中に居た。

 真の闇だ。鼻の先すらも見えない。星明かりもない新月の夜のようだ。

 ソワにサングラスに変化してもらって、かけていた。今朝、小学生のイガラシ ヒトミちゃんに萌えちゃったから……
 アナベラが『この子は強いよ』と太鼓判を押す子が現れるまで、サングラスをかけっぱにしようと思ってた。
 ソワのサングラスは、レンズの部分が本当に真っ黒。かけるとまったく周囲が見えなくなる。まともに歩けなくなったんで、体の操作は土のサブレに任せていた。

 だが、この暗さはサングラスのせいではなかった。


 左手が何も握っていない。
 さっきまで義妹と手をつないでいたのに……

 垂らしていたオレの手を、そっと優しく握ってくれたんだ。
 ひんやりとした、なめらかな手だった……

「ジョゼ?」
 義妹の気配がない。

「マリーさん、イザベルさん、アナベラ、カーンさん」
 近くに居た仲間達の名前も呼んでみた。が、答えが返らない。
 腰には剣袋に入れた勇者の剣がある。剣袋の紐を手探りで解いた。

 顔にソワのサングラスは無かった。目を開いているのに、闇しか見えない。
 闇の世界?
 招かれたのか?
 ソワだけじゃない、同化させていた土の精霊も、側に居るはずマーイさん、風の結界を張ってたアウラさんも消えている。
 無駄だろうと思いつつ、呼んでみた。
「ティーナ、マーイさん、アウラさん、サブレ、グラキエス様、エクレール、ルーチェさん、ソワ」
 やはり、応えはない。
 ドロテアやカグラの支配領域に招かれた時と同じだ。精霊が入れない空間に連れ込まれたんだろう。

 どぉぉん……と、遠くで雷鳴のような音がした。
 しかし、何も見えない。

 キンキラ剣を抜き、振ってみた。勇者の剣は剣身が通った後が、光の軌跡となって残る。剣で描いた光が闇の中でキラキラと輝き、周囲を照らした。
 近くの景色だけが部分的に見える。
 木々や茂った草がある。森の側の街道に居るっぽい。

 おかしい。

 裏英雄世界に居たはず……しかも、有名ファッションブランド店が並ぶ大きなお洒落な街に。
『勇者さまが出逢いへと導かれるのはこの地ね……』とイザベルさんが占ってくれたから、そこで仲間探しをしてたんだ。

 アウラさんの姿隠しの結界に包まれたまま、オレ達は宙に浮いていたらしい。目が見えなくなったオレに、ジョゼがそう説明してくれた。
 ジョゼ、マリーちゃん、イザベルさん、アナベラ、それとマサタ=カーンさんが同じ結界の中に居た。
 マドカさんの旦那さんは『せっかく会えたんだ。百一代目勇者の仲間探しを手伝いたい』とついて来てくれたのだ。いい人だ。

 あの時は……
 シャルルだけが結界外に居た。
『シャルルは社交界でたいへん人気があります。外見が華やで、話術が巧み、女性を尊重し、気前がいいからでしょう。私達と感性が近い世界でしたら、シャルルは女性の注目を集めるはずです』
 とセリアが推薦したんで、シャルルをこの世界に伴った。

 その女寄せの釣り餌は……
『レイヤーの路上パフォーマンスみたいだね』と、カーンさんに評されたくせに……この世界的にはかなりイタイ格好らしいのに……

『なんなの、あのイケメン外人!』
『芸能人?』
『路上プロモ? ゲリラ撮影? ちょーかっこいいんですけど!』
『失礼、お美しいお嬢さん方。この地は初めてなのです。よろしければ少し歓談しませんか?』
『お、お嬢さん?』
『やばい、声までカッコイイ!』
『おにーさん、いっしょに写メとって!』
『共に並べばよろしいのですか? 喜んで。その胸のリボン、よくお似合いですね。リボンもあなたも愛らしいアネモネの花のようだ』

 モテモテだったようだ……

 キモ男のくせに!

 ま! 目が見えないから、不愉快な姿を見ずに済んだけど!

 だが、しかし……
『ん〜 強い女の子はいない。カイゾー人間とか、人ごみにいっぱい混じってるのにダメだー リーズの半分も強くない』
 とアナベラは言った。
 リーズは盗賊。攻撃は得意じゃない。魔王に100万ダメージは無理だろうと予想している。

 できれば、100万以上のダメを出せる人を探したい。

 なので、釣り餌を置いたまま、その場にしばらく居た。

 イザベルさんの占いは、絶対に当たる。
 超強い女性との出会いがあるはずだと信じて。

 けれども、目が見えない上に何もする事がなかったんで、ついあれこれ考えちまった。

 仲間をあと四人見つけられなきゃ、オレらの世界は魔王カネコ アキノリに滅ぼされる……

 伴侶を100人集めりゃ、勝てる。
 伴侶達だけで魔王に5000万以上のダメは与えられるはず。
 必殺の究極魔法を使や、絶対に負けない。

 オレは、チュド〜ンして死ぬが。

 暇だったせいで、しょうもない事ばかりを考えていた。

 伴侶の女性達が、どれほど魔王のHPを削れるのかが気になった。
 直接攻撃をしないのは……先制攻撃の法を唱えるセリア、ポチ2号に結界を張らせるニーナ。
 ダメがほとんど期待できないのは……幻想世界の小人のモーリンちゃん、英雄世界のみんな、魔界のスライムとゾンビ、裏冒険世界のお姫様達。ニビィやシヅも弱いだろうし、イガラシ ヒトミちゃんも……
 で、気づいた。
 魔王に大ダメージは無理な人が……ざっと二十五人も居ると。

 四分の一が攻撃に不参加。借金は2500万ダメ……

 英雄世界の全員を戦力外と計算している。ユナ先輩やカンザキ ヤチヨさんは、そこそこのダメを出してくれるはず。
 だから、実際はもうちょい借金は低い。
 そう思いたい。
 しかし、リーズやカトリーヌも100万は無理だし……
 少なく見積もっても、借金は2000万以上ありそうな……

 やっぱ、オレ、駄目かも……

 それで落ち込んでたら、ジョゼが手を握ってくれたのだ。

 情けない顔をしてたのかもな、オレ。

 サングラスをしてたんで見えなかったが、ジョゼはほわっと可愛らしく微笑んでいたんだと思う。

 ジョゼは変わった。
 お師匠様が石化してから、特に。
 オレが不安になっていると、すぐにわかるようだ、よりそってくれる。さりげなく側に来て、静かに励ましてくれる。

 あたたかな優しさが嬉しかった……。


 なのに……
 なんでこんな所に一人に?
 あの数列が猛烈に流れこんできてオレを吹き飛ばして……
 ううーん。



 勇者の剣を振り振り歩く。

 とりあえず道沿いに。
 道沿いの森は、深く暗く静まりかえっている。

 時々、ドォォンと遠くから地を揺るがすような音が響いてくる。

 キョロキョロと周囲を見渡した時、目の端に変なものが映った。

 しかし、注目する前に暗くなった。
 光の軌跡はしばらく経つと消えちまう。頭の上のものをよく見ようと、オレは素振りを続けた。

 オレの頭上に、赤い横棒が浮いている。
 肩幅よりやや小さいぐらいの大きさだ。
 頭を動かすと、横棒も一緒に動く。
 オレの動きに追従してる。

「なんだ、こりゃ?」
 横棒に注意を傾けると、文字が頭の中に見えてきた。


ジャン
レベル  96
職業   勇者
種族   人間
力強さ  C
防御力  C
素早さ  C
魔力   ――
知性   D
信仰心  D
カリスマ D
運    E
健康状態 良好
特殊能力 百人伴侶強制仲間枠加入・勇者眼・自動翻訳機能……
装備   勇者の剣・光のサークレット・福の神の手毬……


 なんだ、これ……?
 オレの能力……なのか?

 レベルが96?
 のわりには低パラメーター……

 む?

 96?

……もしかして、伴侶の数?
 そのままレベルになってる?

 じゃ、オレ、ジョゼを仲間にしてレベル1になったのか?

 それまでレベル0?
 お師匠様と十年も修行したのに?

「………」

 あ!

 そっか!
 魔王が現れて、勇者にクラスチェンジしたのか!
 それまで勇者見習いだったとか!
 そうだよな! 絶対、そう!
 そうじゃなきゃ……悲しすぎる。


「ジャン君?」
 急に明るくなった。
 近くに光源用の光球が生まれたのだ。魔術師の作る魔力の灯りだ。
 その光に照らされ、剣を抜いたシャルルが立っていた。
 シャルルの頭上にも、横棒があった。しかも、二本も。上が赤、下が青だ。
 棒に注目してると、頭の中にデータが入りこんできた。


シャルル
レベル  32
職業   魔法騎士見習い
種族   人間
力強さ  B
防御力  C
素早さ  B
魔力   A
知性   A
信仰心  B
カリスマ A
運    B
健康状態 良好
特殊能力 なし
装備   侯爵家の剣・侯爵家の護符・ジョゼフィーヌのハンカチ


 ちょ!
 おま!
「なんだよ、その高ステータスは!」
 つーか、知性がAとか何かの間違いだろ!

 今朝だって、馬鹿だった!
 寝起きだったこの馬鹿は、魔法で変身した。髪のセット、全身美容や化粧、爪の手入れまでして、早変わりで着替える魔法……
『賢者様が不幸に見舞われた時は、私も考えさせられてね……あの時は徹夜のせいでみっともない姿を人前に晒してしまったが、有事こそ泰然とし家人・領民の範となるのが貴族の務め。常と変わらぬ姿を保てねば恥ずかしい』
 お師匠様が石化したのがきっかけで、寝巻から一瞬で着替える魔法をつくったわけだ。
 やっぱ、本当の馬鹿だ……

 そう思ったのに!

「あまり見ないでくれ……ポワエルデュー侯爵家嫡男として己を恥じているのだ。オールA以外は許されないのに、私の防御力はCだったとは……」
 ンな世の終わりが来たかのような顔するな!
 オレなんか最高がCで、Eまであるんだぞ!

「てか、その装備……ジョゼのハンカチぃ?」

「ああ……だいぶ前にいただいた物だよ。モン・アムールに薔薇を差しあげようとした時に、うっかり指を切ってしまってね」
 ハハハと馬鹿が笑う。
「愛しい方の思いやりのこもったハンカチだ。記念に頂戴し、以後、お守りにしている。ああ、ジャン君、心配しなくとも大丈夫。あの時はちゃんと返礼として、花籠とチョコレートそれにブローチをジョゼフィーヌ様にお贈りして」
 ンな話は、聞きたくない。
 正直、ちょっと驚いたけど。アナベラやパメラさんのほぼ! 裸! を見て鼻の下を伸ばすわ、女と見りゃカトリーヌであろうが口説くわ、単なるスケベ野郎かと思ってたんだが……ジョゼのハンカチをお守り代わりに携帯してるなんて。ジョゼのこと、本気だったのか?
……だとしても、その婚約はぶち壊してやるが。ジョゼが嫌だと言っているから。チュド〜ンしても婚約破棄になるよう、国王陛下への遺言をしたためてある。

「ここは何処だ? 頭の上の棒は何だろ?」
「ここは誰かの支配空間。我々は招かれたのだ。何の為に、どうやって、誰に招かれたのかは不明だがね」
 魔力の灯りに照らされているお貴族様が、自分の頭上の赤と青の横棒を指さす。
「赤い棒が私のHP、青い棒がMPだよ。この世界では見せて歩くのが、ルールのようだ」
 へ?
「HPとMP? 本当に?」
「自分に攻撃魔法を使って試した。ダメージを受けると上の棒の赤ゲージが減り、魔法を使うと下の棒の青ゲージが減る」
 へー
「ジャン君、君に魔力は無い。だから、二本目のゲージは空となり、ステータスの魔力欄も『――』となっているのだろう」
 気をつけてよく見るとわかる。オレの頭上の赤棒の下に、同じぐらいの大きさの何かがある。けど、透明だ。色がついてないんで、闇色に染まっている。

「魔法を使ったわりには、青棒のゲージが減ってないぞ」
「ポワエルデュー侯爵家の護符のおかげだ。装備しているだけで、HPとMPが徐々に回復する」
 さすが侯爵家嫡男、いい装備を持ってるなあ。てか、それ、魔界でマリーちゃんに持たせてあげたかったなあ。

「聞きたいんだが、君の特殊能力……」
 お貴族様が、ジーッとオレを見る。

「究極魔法ってなんだい?」

 え?

 びっくりして、オレは自分のステータスを確認した。


特殊能力 百人伴侶強制仲間枠加入・勇者眼・自動翻訳機能……


 究極魔法なんて記されていない……
 と、思ったら情報が変化した。特殊能力の欄だけに注目したせいで、詳細ページに飛んだようだ。


特殊能力 百人伴侶強制仲間枠加入・勇者眼・自動翻訳機能・勇者の馬鹿力・究極魔法


 能力が多すぎるんで、最初の表示では後半の二つが省略されていたわけか……

「魔力が無いのに魔法が使えるとはね。どんな魔法か教えてくれないか?」
 シャルルが探るようにオレを見る。

「……ピンチになった時に使う秘密魔法だよ」
 サラにはぶちまけちまった。が、アレは大失敗だった。
 自爆魔法は、賢者と勇者の秘密だ。もう誰にも教えるものか。
「だから、秘密にしてなきゃ意味が無い。どんな魔法かは内緒だ」

「ふーん……なるほどね。魔王戦の隠し玉なのか」
 シャルルは何か言いたそうだ。
 話題を変えるべき。
「で? どっちに行く?」

「あちらだ」
 お貴族様が闇の森を指さす。
「索敵魔法で調べた。あちらで、誰かが戦っている。行ってみよう」
 シャルルが呪文を詠唱し、オレに魔法をかける。
「能力向上の補助魔法だ。しばらくはもつ」
 自分のステータスを見たら、全パラメーターに(プラス)が付いていた。

 素早さが向上したから、歩きでも結構速い。シャルルの周囲が光魔法で明るいんで、夜の森でもどうにか進める。

 雷鳴のような音がどんどん大きくなり……
 閃光が広がる。
 遠くから光と爆音が迫ってきて、木々がオレ達の方になぎ倒されてくる。
「光輝なる(とばり)
 爆風も爆煙も倒木も、お貴族様が防御魔法で防ぐ。

 遠方に炎があがっている。

 倒木や草むらから、ヒルに似た生き物やら蜂もどきが現れ、群れとなり襲いかかってきた。しかし、
「氷結の茨」
 お貴族様が範囲氷魔法で凍らせ、
「終焉の鐘」
 衝撃波で一掃してしまう。
「この近くに人間が二人居る。モンスターに群がられているようだ」
 索敵魔法で前方を探りつつ、障壁を張り、明かりをともし、雑魚を範囲魔法で一掃……
 複数魔法を制御してやがる。天才魔術師ってのはホラじゃなかったんだな。

 真っ暗だった周囲が、しらじらと明け染める。
 朝だ。
 魔王が目覚めるのは、明後日になってしまったのか?

 やがて倒木も無くなり、視界が開ける。

「居た」
 周囲の木々を爆炎魔法で吹き飛ばしてしまったのだろう、そこは窪地となっていた。
 男女が背中合わせとなって、モンスターと戦っている。二人とも頭の上に赤棒と青棒がある。
 ()られても()られても、後から後からモンスターが二人に襲いかかる。灯りに魅せられる蛾のように。

 両腕をクロスさせては勢いよく開き、爆炎魔法を放つ男。その姿が見えた時、何故だかホッとした。まるで生き別れだった家族と再会したような……そんな喜びすら感じた。ひどく懐かしい。
 カーンさんだ。オレ同様精霊を払われたんだろう、戦闘スーツではなくビジネススーツを着ている。
 この人、魔法も使えたのか。

 カーンさんと背中合わせになってるのは、ポニーテールの女の子だ。白い小袖に紫の袴。気の強そうな顔の美少女。
「ユリカさん」
 巫女装束のユリカさんも、範囲魔法を使う。こっちも炎魔法だけど、威力も効果範囲もカーンさんの十分の一ぐらいしかない。

 迫り来る炎を、シャルルの魔法障壁が完璧に防ぐ。
 オレ達は二人を目指して走った。

 あからかと燃える炎に映える美貌。
 敵を見すえる、凛々しい眼差し。
 ユリカさんが戦う姿は美しい。
 それでいて、巫女ってのがいい。
 揺れるポニーテール。
 白い着物と紫の袴。

 綺麗だなあ……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと三〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 あれ……?

 仲間入り?

 ユリカさんには前にキュンキュンした。けど、仲間にできなかった。
 ジパング界のカガミ マサタカさんとジョブが一緒なのに……何で仲間にできたんだ?

 オレ達の存在に気づいたユリカさんが、きつい眼差しを向けてくる。

「そこの巻き毛」
 シャルルへと叫ぶ。
「きさま、働け。この馬鹿が魔法を撃った直後に、周囲に範囲魔法を撃て。最弱魔法でいい」
 ユリカさん……いつもと口調が違う。ひどく横柄だ。
「この下僕、無駄に攻撃力があるくせに、どんな雑魚にもとどめが刺せん。敵のHPを必ず1だけ残してしまう。実に、まったく、甚だしくも、無能なのだ」

 む?

「仕方ないだろ。僕は、敵にとどめを刺せない呪いを死神サリーにかけられてるんだ」と、カーンさんがムッとして言う。
 へ? 死神サリー……?
 ハート眼帯のチビッ子堕天使?
 知り合いだったんですか……?

 それは、ともかく……

「承知しました。お美しい方からのお求めに応えるのが騎士の務め。何なりとお言いつけください」
 二人と合流したシャルルが、ユリカさんに気障ったらしい仕草でお辞儀をする。
 巫女さんは凶悪とも言える目つきでお貴族様をジロリと睨み、その脛を蹴っ飛ばした。
「気色悪い。寝言をほざく暇があったら働け。内なる俺の霊魂は、マッハできさまに嫌悪を感じている・・・」

……中身が違いますね……ユリカさん……

 オレは、ユリカさんの赤と青のゲージを見つめた。
 情報が頭に流れてくる。


皇ゆりか(神の使徒)
レベル  15(99)
種族   人間(人間)
職業   巫女(神の使徒)
力強さ  E(B)
防御力  E(C)
素早さ  D(D)
魔法力  B(S)
知性   B(C)
信仰心  A(SS)
カリスマ C(E)
運    D(D)
特殊能力 なし(憑依・精神時空移動・邪悪挑発……)
健康状態 やや疲労(良好)
装備   呪札・勾玉(なし)


 ステータスが二人分あるんですけど……

( )の中のものが『マッハな方』のデータか。
 信仰心がSS、魔法力がSは凄い。だが、低い能力も多い。
 カリスマなんかEで、オレより低いし。人望が無いんですね……まあ、わかりますが……

 ユリカさんが両腕を組み、アゴをつきだしふんぞりかえってオレを見る。
「俺は休むぞ、マリーの下僕よ。移動となったら、きさま、この体を背負え」
「還るんですか?」
 ユリカさんがフンと鼻で笑う。偉そうだが、ユリカさんのが背が低いからオレが見下ろす形となっている。
「還るに還れん。この世界、ログアウト不能だそうだ」

 は?

「『ログアウト』って、何ですか?」
「知らん。だが、ボスを倒さねば、もとの世界に還れんようだ」
 ボス?
「詳しい話は、そこの三十オヤジに聞け。俺は眠る。この憑依体を休ませる」
「わかりました」
「マッハでボスを倒せ。グズグズしてると、百日目が過ぎるぞ」
 う!
 言いたいことだけ言って横になり、『マッハな方』は眠ってしまった。

 カーンさんが群がる敵に派手な魔法をぶっぱなし、シャルルがとどめを刺す。
 背中あわせで戦う二人。
 二人の周囲の結界の中で、クークー眠るユリカさん。
 する事がないオレは、ユリカさんの側に座っていた。

 目を閉じたユリカさん。まつげが長いし、頬がふっくらしてて可愛い。

 ユリカさんに萌えたのなら、いい。

 けど、オレ……

 もしかして、中身を伴侶にしてしまったのだろうか……?

 背筋がゾッと冷たくなる。

 裏ジパング界でおかみの神を仲間にした時は、肉体はパメラさんだった。なのに、おかみの神が仲間になったんだ……

 今回も……そうなのか?

 中身なのかぁぁ?

 魔王戦に中身が来ちゃうのか?
『マッハな方』が憑いたユリカさんならいい! 妥協する!
 けど、本人が来ちゃったら……

 いやいやいやいや!
 ないないない! それはない! 『マッハな方』の所属世界ここじゃないだろうし!

『マッハな方』はお強い。
 参戦してくれるのなら心強い。
『マッハな方』と会えれば、マリーちゃんは大喜びだ。ずっと会いたがってたし……
 お兄さんかもしれないんだし……

 ああああ、だけど!

 ごめん、マリーちゃん、やっぱ無理!

 あの方が伴侶枠で来るなんて、絶対、嫌だッ!
 ナディンと違って、完全な男だし!


 魔王が目覚めるのは……明後日?


 明後日が怖い……


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№097)
(中身じゃなく外身が伴侶! そう信じて記す)

名前 スメラギ ユリカ
所属世界   裏 英雄世界
種族     人間
職業     巫女・女子高生
特徴     田舎の神社の巫女さん。
       トーキョー・シティーの高校に通学する為、
       学生寮に入ったが、『マッハな方』に憑依体に
       選ばれたせいで、寮から追い出された。
       やむをえず、ジャスティス戦隊に入る。
戦闘方法  『マッハな方』憑依
年齢     十五才
容姿     ポニーテールの美少女。
       まっすぐに切り揃えた厚い前髪をしている。
       白い小袖に紫の袴。
口癖    『巫女なので、×××はできます』
好きなもの  神聖
嫌いなもの  邪なもの
勇者に一言 『この格好はコスプレではありません』
挿絵(By みてみん)
+注意+
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