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ハーレム100 作者:松宮星

裏 英雄世界

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悪の組織も多すぎる 【五十嵐 ひとみ】(※)

 改造マニアの悪の組織 NEOワルイーゾ。
 歴史改竄をもくろむ未来人 未来教会。
 人間に悪夢を植えつける 闇妖精。
 自爆霊を操り日本政府転覆をたくらむ、ARK―RYO(アクリョー)
 宇宙からの侵略者 エリア512。
 海からの使者 どざえMOON。
 地底王の先兵 もぐら兄弟。
 アレなものばかり呼びだす 悪魔召喚士連合。
 武器密輸結社 ウェポン商会。
 爆弾マニア テロテロ団。
 愉快犯の集まり 犯罪紳士クラブ。
 暗殺請負業 SHI・GO・TO衆。
 人間みなごろしの ワイルドアニマル帝国。

 以上が、トーキョー・シティーを騒がす悪。
 だが、他にも、何処からともなく怪獣が現れたり、妖怪が出たり……
 カルト集団、謎の科学者、大企業の裏組織……数多くの悪が水面下で怪しい活動をし、秘密の正義の味方が彼等の野望を打ち砕く為に戦ってるらしい。

 悪の数だけ正義は存在するのだそうだ。
 どっちも、多すぎる……

 巨大モニターを使ってミドリさん達が、この世界や自分の敵のことを説明してくれる。

 NEOワルイーゾは、人類皆怪人がモットー。優秀な人材を誘拐し、改造して同士を増やしているのだそうだ。
 闇妖精は、さびしい人に悪夢を見せて生きる気力を奪う。アイリちゃんは闇妖精を退治して、お花という形でさびしい人の心に夢や希望を与えるらしい。
 未来教会の構成員は、未来人。歴史を変えようとしている彼等を止めるべく、エスパー・ポリスのゴールドさんはこの時代にやって来たらしい。
 ARK―RYO(アクリョー)は呪術組織。自爆霊が悪さを始めると『マッハな方』がユリカさんに降りて来て、邪悪を駆逐しきるまで暴れるらしい。

 タイプの違う敵ばかりだ。

 素朴な疑問を口にした。
「なんで、トーキョー・シティーに悪が集まるんです?」

 悪を惹きつける何かがあるのか? と思ったんだが、特に珍しいものはないとのこと。
 首都だから、人口が多く、政治経済や流行の中心地である……それぐらいのようだ。

「創造神様の趣味だと思うよ」
 マサタ=カーンこと、サクライ マサタカさんがキラリと歯を見せて笑う。
「トーキョー・シティーで、一つの悪を滅ぼしても別の悪が誕生する。正義と悪の戦いは果てる事がない。この地でヒーロー達が戦うのを、神様は観戦したいんじゃないかなあ」

 嫌な神様だなあ……

「まあ、そんな世界だからこそ、アイリちゃんみたいに修行に来る正義の味方がいるし、僕のように招かれる者も居る。正義と悪とのパワーバランスを、神様が保ってらっしゃるんだろう」

 マドカさんの旦那さんは、自分のことを『トリップ体質』なのだと説明した。
「ここを含め、十二の世界に行っている。ほとんどは、一度きりの転移だ。使命を果たすと帰還となり、以後、二度と呼ばれない。だが、この世界だけは勝手が違ってね、数日程度の滞在ばかりだが、年に二桁は来てるよ」
 表裏の関係にある世界だからか?

 八年前、ミドリさんを助けた時からなりゆきで正義の味方となり、風来戦士マサタ=カーンと名乗っているのだそうだ。
「異世界に行っても転移直後の時間に還れる事が多いんだが、ここは時間が同期している。過ごした日数分、あちらも時が経ってしまう」
「じゃ、しょっちゅう行方不明になってるんですか?」
「いや、それは大丈夫。影武者を置くようにしたから」
 そう言ったマサタカさんの背後に、八色のゆらめきが見えた。赤、青、緑、黄、水色、紫、白、黒……精霊だ。
「十二の異世界に行ったおかげで、僕はいろんな力を得ている。精霊支配者で()あるんだよ」
 精霊支配者で()
 マサタカさんが爽やかに笑う。
「いつトリップしてもいいように、普段から精霊には事業を手伝わせている。手持ちの精霊の内、常に八体はあちらに残るよう術もかけてある」
 そんな術があるのか。
 マサタカさんの背後から感じる精霊の気は多い。八体を英雄世界に置いて来てるってのに、まだ数十体居るようだ。
 数多くのしもべを所持する、超一流の精霊支配者のようだ。カガミ マサタカさんのように。

 ん?

 今、気づいた。
 ジパング界の巫女さんとこの人、同じ名前じゃん。
 あちらは、ご先祖様の名を継いだ十三代目だったよな。
 むむ。
 同名は紛らわしい。マサタ=カーンさんて呼ぶか。
……いや、長すぎか。カーンさんにしとこう。

「仕事のことは心配ないんだ。だけど、もうすぐ魔王戦だろ?」
 カーンさんが、ふーっと溜息をつく。
「まどかの側に居てあげたかったんだ。なのに、冷蔵庫を開けた途端、こちらに転移してしまってね……。今回は何日滞在する事になるのか……」
 マドカさんは、ちっちゃくって可愛い人だった。同い年なのに、十三、四にしか見えなかった。けど、フリフリのエプロンの下の胸は大きくて、そのギャップが良かった……
「篝さんも居るし、僕の仲間達もついている。大丈夫だとは思うが……」
 マドカさんは『リアル・ファイトの経験ゼロ! 戦うなんて無理!』って言ってた。仲間にしちゃったことに、オレも責任を感じてる。

「この世界の神様を満足させれば、還れるはず。派手に暴れまわろうかと思っていたが、」
 カーンさんがオレらを見る。
「君らの仲間探しを手伝うべきだな……その為に、今回は呼ばれたような気がする」

 え? なんで?

「還る前に、お金をつくってよ」
 ミドリさんがフフフと笑う。
「この前、あなた、私達を敵の真っ只中に置き去りにしたのよ。お詫びも兼ねてたっぷりちょうだい、スポンサーさん」
 カーンさんが肩をすくめる。
「了解、リーダー。今日はスポンサー業に徹しよう」

「シルバー、機械を借りるよ」
 シルバーメタリックのロボットに話しかけ、カーンさんがオペレーター席に座る。
 近寄って見てみた。
 シルバーロボはツルツルのテカテカ。頭髪はなく、顔はお面みたい。体形からすると女性メカみたいだが……
 萌えはこなかった。

 カーンさんがキーを叩き、複数の画面をパンパン切り替えてゆく。
「マサタ=カーンには未来予知能力()あるのよ」
 ミドリさんが教えてくれる。
「自分の未来こそ見えないものの、現状のままなら『なるであろう未来』が見えるんですって」
 へー
「時々、正義や悪が変な形で現実に介入して、未来予想が変わる事もあるけれど、八割は当たるみたい。株式の売買や宝くじ、ギャンブル……競馬、競輪、競艇、オートレースなどでそこそこ稼いでくれるわ」
 む?
「その能力を生かし、悪の組織傘下の企業の洗い出しもできる。いずれ正義の味方に鉄槌を下される企業……そこの表に出せないお金を盗って来てくれる事もあるわ」
 むぅ?
 カーンさんが複数画面を見ながら、背後の精霊達に指示を出し始める。座ったままお金作りを始めたようだ。

「アレは放っておいて……みなさん、アジトを案内するわ。ゆりか、食事の準備をよろしく。アイリとゴールドは仮眠室を二つ掃除しておいて。勇者クン達は地下に泊まってもらうわ」





 そんなわけで……
 オレ達は、正義の味方の手伝いをする事になった。
 NEOワルイーゾ、闇妖精、未来教会、ARK―RYO(アクリョー)。ジャスティス戦隊のみんなの敵が暴れ出したら、戦闘に参加。
 それ以外の時間は、仲間探しをする。
 緊急連絡手段として、腕時計の形の通信機を人数分もらった。仲間の証だ。ちょっと格好いい。


 ミドリさんの紹介で、あっちこっちの正義の味方に会いに行った。
 連絡は通信機、移動はゴールドさんの瞬間移動。
 マーメイド戦隊、秘密警察、トーキョー防衛軍、プリティーアニマルメン。正義の味方組織を四つ巡り、それぞれで女性隊員と面談した。
 正義のヒロイン達は、みんなレベルが高かった。美人でスタイルが良く、アナベラ曰く『わりと強い』子ばかりが揃っていた。
 だが、しかし、駄目だった。キュンキュンきても、仲間枠には入らなかった。

 あと五人ともなると、ジョブ被りが厳しくなってくる……


 ジャスティス戦隊のアジトで、今後のことをみんなと話し合った。

「残り一日になるまでは、この地での仲間探しを勧める」
 シャルルが、気障ったらしい仕草で顎に指をあてて言った。
「仲間候補の女性をオランジュ邸に集めてはある。しかし、100万以上のダメージを望んでは酷な方ばかりなのだよ」
 そうなのか……
「一人、ず抜けて能力が高い者が居る。しかし、ジョブ被りでね」
 ありゃ。
「ジョブの変更も試みたが、残念ながら成功していない。強引にジョブを変える手はなきにしもあらずだが……最終手段にとっておきたい」
 ん?
「残り五人もこの地で探そう。アナベラさんの目にかなう強い女性に萌えたまえ」
 この世界には、戦闘力の高い人間は多い。
 正義の味方は、ごまんと居る。いずれ正義の味方になる、今は世に埋もれている人間も。頑張って探せば、強い子に会えそうな気がする。

「……太陽……光……南……。勇者さまの出逢いは、この地から南……日の昇っている時刻にありそうだわ……」
 水晶珠を撫でながら、うふふとイザベルさんが笑う。
「歪んだ輝き……怒り……嫉妬……無慈悲……暴力。問題のある方みたいね……でも、強い。仲間にできれば、強力な剣となる……」

「そんな方では……」
 ためらいがちに、ジョゼが尋ねる。その肩には、紫の小鳥に化けた雷の精霊レイがいる。
「正義の味方でないのでは……?」

「悪でも問題はありませんよ、ジョゼフィーヌ様」
 シャルルが格好つけて、ジョゼに笑いかける。
「あなたの兄君は、魔族まで仲間にしておられるのです。悪の(サイド)の者であれ、萌えさえすれば仲間枠入りです」

「仲間にするのは簡単でも……」
 珍しい。
 ジョゼがしつこく食い下がる。
 声は震えているが、一歩も引かないと言うかのように顔もまっすぐあげている。
「……魔王戦で手をぬくかも……。悪が悪と戦う理由はありません……」
 そうか……。異世界の魔王でも、悪は悪。正義の味方なら喜んでぶっ飛ばすだろうけど、悪は……。
「なるほど。悪を仲間とするのなら、魔王戦で本気にさせる策が必要という事ですね?」
 シャルルの問いに、ジョゼが頷く。

「あと五人……あと少しなのです……頑張って……頼りになる仲間を探しましょう……お兄さまを……正しい道に導くために……」

『必ずおまえを正しい道に導いてやる』

『強力な仲間を探しましょう。必ずあんたを正しい道に導いてやるわ』

 お師匠様とサラの言葉が、心に蘇った。

 ほわっと微笑む義妹。その顔に、今はこの場にいない二人の面影が重なって見えた。





 翌朝。
 アジトに緊急放送が流れた。
 NEOワルイーゾの怪人が、登校中の小学生を襲ってるとのこと。

 オレは仲間と共に、指令室に急ぎ駆けつけた。約一名、警報を聞いても目を覚まさなかった(シャルル)が居たが、むろん部屋に置いて来た。

「ジャスティス戦隊、出動!」
 ミドリさんはビキニとミニスカ、バイザーつきメット。背中には緑の翼っぽいショートマント。
 ゴールドさんは、全身ゴールドタイツ姿。

 で、もって、
(アクア)装着!」
 ワイシャツにズボンの三十代のおっさんが、それっぽいポーズをとる。
 おっさんの背後に居た精霊のうち、水の精霊が青い光と化す。精霊支配者の体に青い光がまとわりつき、あっという間に戦闘服が構成される。そのプロセス、わずか0.05秒。
「風来戦士マサタ=カーン! (アクア)(バージョン)!」
 仮面型のヘルメットに戦闘スーツ。いかにも正義の味方な姿の男が、決めポーズをとる。

 えっと……

「思いっきり、正義の味方してますね」
 精霊を何に使ってるんですか。

「正義の味方たるもの、正体は隠すものだよ」
 青色スーツのおっさんが爽やかに笑う。
 でも、昨日の戦闘でアイリちゃんとユリカさんは顔を隠してなかったよな。顔を隠すかどうかは、趣味の問題?
「素顔のままでいいのかい? 精霊支配者だから、君も変身できるぞ」

 へ?
 精霊を体に装着させて正義の味方に変身しろ、と?
 そんな恥ずかしい……

「恥ずかしいのは、最初のうちだけ。慣れると、快感だよ。本物のヒーローになって注目されるんだ。ズバッ! と格好よく、ビシッ! と決めてみようよ」

「………」

 本物のヒーローか……

《勇者ジャン……心が動いてますね?》
(わたくし)に戦闘スーツになれと命じたら、凍らせますわよ》
《やってもいいけど……勇者が黒でいいの?》
《おにーさん、緑はあっちのおねえさんと被るわ。やるんなら、他の色で!》
《青も被ります……。勇者なら、やはり赤なのでは……》
《えーッ! 絶対いや! ンな恥ずかしい真似できない!》
《そっかな? 格好いいと思うよ。ルネの発明品のメカメカしいのを装備しよーよ。爆発するかもしれないけどー》
《……私、喜んで戦闘スーツになります。ダサくてみっともないヒーローになって一緒に大衆から嘲笑を浴びましょう、ご主人様……》

 やんねえよ……。


 ユリカさんは通学、アイリちゃんは闇妖精探しってことで、その場にいるメンバーで現地に向かった。
「勇者クン達は、今回は見学してて。私達の戦闘スタイルを学んでちょうだい」
 ゴールドさんが瞬間移動できるんで、あっという間に到着。

 小学校の正門の前に三体の怪人がいて、黒タイツの下っ端がうじゃうじゃ居る。小学生を捕まえては、檻の中に押し込んでいる。檻の天井には大きなメカがくっついており、迎撃用と思われるぶっそうな銃もついていた。
 そいつらの前に、オレ達は瞬間移動で現れた。
「ジャスティス戦隊、参上!」
 ミドリさんを中心に、ゴールドさん、カーンさんがハモって名乗り、決めポーズをとる。
 う。
 輪に入り損ねた。

 先生が『みんな、ジャスティス戦隊が来てくれたぞ。もうだいじょぶだ』と叫び、『お! すげぇ! マサタ=カーンがいる! カッコいいー!』と近くの子供たちから歓声があがる。
 檻の中の子供たちも、『ジャスティス戦隊がんばれー!』と大はしゃぎだ。
 予想以上の人気。
 さすがヒーローが認知されている世界。

 人類皆怪人をもくろむNEOワルイーゾは、優秀な人材を誘拐して改造するって聞いたが……
 子供を改造目的で誘拐するのか?
 普通、頭がいい人とか、スポーツ選手とか、特殊能力のある人とかをさらわない?
 いや、まあ……子供には将来性がある。優秀な人材の卵とも言えるけど。

 額に数字がある怪人、四七号、四八号、四九号。それと黒タイツが、オレ達に襲いかかってくる。

 ミドリさんが緑の羽根を手裏剣のように四七号に投げ、ゴールドさんが周囲の小学生達を瞬間移動で安全な場所へと運んでゆく。

 そして……
「いくぞっ! マサタ=カーン・パァァンチ!」
「うぉぉっ! マサタ=カーン・キィィック!」
 とか叫びながら雑魚の群れに飛び込んでいく人が居る。
 しかも、二体の怪人をひき連れ、余裕で走り回っている。更に、
「くらえっ! マサタ=カオス!」
 闇精霊で周囲の敵の視界を悪くし、ひるんだ隙に、
「これで終わりだ! マサタ=カッター!」
 風精霊に風の刃を撃たせたりなんかして……
 ノリノリで技名を連発している。
 ちょっと格好いいかも……
 精霊を使役する時に、技名を言うのか……
 そう思った瞬間、冷気を感じた。
《品が無い方とは、付き合いたくないと……(わたくし)、前に言いましたわよね?》
 う。
 すみません。やりません、グラキエス様。

 アナベラとジョゼも、雑魚敵減らしに協力。
 ビキニ戦士が雑魚を倒すと、周囲の建物や通りからひときわ高い歓声があがる。結構、一般人が遠巻きに見てる。ケータイで撮影してる人も多い。ぷるんぷるんのぷりんぷりんの勇姿に、年齢問わずほとんどの男性が夢中みたいだ。熱い声援を受け、アナベラは上機嫌。えへへと笑っている。
 白いドレスで戦うジョゼも人気だ。雷の精霊を体に宿した義妹は、体の周囲が紫に輝いている。

 ミドリさんが四七号を倒し、マサタ=カーンの支援を受けて四八号との戦闘を始める。
 正義側のが圧倒的に強い。

 オレとイザベルさんとマリーちゃんは、ジャスティス戦隊の戦闘を見学していた。
 たまに雑魚が近づいて来るが、精霊達が払ってくれるので問題ない。

「運命の出逢いは近い……」
 水晶珠を撫でながら、イザベルさんがつぶやく。
「行って、勇者さま……留まっていては機会を逃すかも……。私達は大丈夫……私も八体の精霊を持っているもの……攻撃も防御もできるわ」
「勇者さま〜 ファイト、です〜」と、マリーちゃん。

 送りだされたが、戦闘は気がのらなかった。
 勇者の剣は常に100万以上のダメージを出す。手加減などできない。戦えば、相手を殺してしまうだろう。

 オレは檻へと視線を向けた。
「子供たちを助けますね」
「だめよ!」
 戦闘中のミドリさんが、鋭い声で叫ぶ。
「迎撃システムや自爆装置があるの。不用意に檻に近づいちゃ駄目。まず怪人達を倒して、檻のリモコンを奪わなきゃ」

「じゃ、その物騒な装置を破壊します」
「え? そんなことができるの?」
 自信をもって、オレは頷いた。

 オレに、メカの知識などない。
 だが、この世界の機械なら、たぶん楽勝。
 すぐにも沈黙させられるはずだ。

 オレは息を大きく吸い、戦闘中の義妹へと叫んだ。

「レイ、檻の迎撃システムと自爆装置の破壊を頼む〜 エスエフ界のロボを沈黙させた手でよろしく〜」

《貴様、偉そうに思考しておいて、吾輩頼りかっ! 見下げた根性である!》
 ジョゼの体を使ってレイが怒鳴る。だが、ジョゼに『お兄さまのお願いを聞いて……レイちゃん』と説得されれば逆らえるわけがない。
 同化した義妹の体を使ってレイは、雷の素早さで動く。一瞬で距離をつめ、跳躍し、檻の上部のメカを殴った。
 それだけで終わった。義妹の体が側にたたずんでいるのに、迎撃システムも自爆装置も作動しない。
 檻のリモコンらしきものを持った怪人が、おろおろしている。

 できると思った。
 レイは機械に詳しい。
 エスエフ界でも、ユーリアさんのロボットを楽々と破壊していた。『電磁波で電子機器内部の配線に過負荷を与え、沈黙させた』とか何とか言って。
 超高度の精神&機械文明シャフィロス星の立て直しもやったレイだ、この世界のメカの構造など、すぐにわかるだろう。

「ナイスだわ! ホワイト!」
 ミドリさんが親指を立ててジョゼを誉める。
 ジョゼはドレスが白いから『ホワイト』なのか。
 アナベラは髪とビキニが目立つから『レッド』ぽいな。
 マリーちゃんは……『ブラック』?
 じゃ、オレは?
《イエロー! イエローしかありません! 私を戦闘服にまとってください! ドジなお笑い担当にふさわしい、失笑を誘うみっともないデザインにしますから!》
 体の中でサブレがいろいろ叫んでいた。が、とりあえず無視した。

 四八号もミドリさんが倒し、残るは四九号だけ。

 戦闘は、あっちに任せて……

 オレはジョゼと共に檻に囚われていた小学生を救出した。
 檻の中からジャスティス戦隊を応援していた子供たちを、順に出してあげる。

「ありがとう!」
 子供たちが感謝し、走り去ってゆく。背でランドセルが揺れている。
 その元気な姿を見ていると、笑みがこぼれた。

 オレらの世界じゃ、勇者は世俗とは交わらない。
 オレがどんな人間で、魔王とどう戦うのか、ほとんどの人間は知らないんだ。

 お師匠様やジョゼやサラ……みんなを守りたいから、オレは魔王と戦う。
 死ぬ事となったとしても、それは自分の意志だ。誰かに恩を着せる気など、さらさらない。

 しかし、それでも……
 オレの戦いを、知られずに逝くのはちょっと寂しく思っていた。

 守ることの達成感。
 生きがいが欲しくなる時もある。

 やっぱ、現行の勇者の教育システムは間違っている。
 勇者は、世界と繋がるべきだ。
 自分の世界やそこに住む人々を守りたい! と、心から思う為にも。

「ありがとう、おにいちゃん……」
 抱き上げた、ツイン・テールの女の子が可愛らしく笑う。
 そのキラキラした笑顔。
 まっすぐに向けられる好意に、胸が熱くなる。

『ありがとう』の一言が、たまらなく嬉しい時もあるんだ……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと四〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 あ?

 あれぇ?

 固まってるオレの背後で、
「私のかわいい子達を、よくも倒してくれたな……覚えていろ、マサタ=カーン。次に逢う時が、貴様の最期だ!」
「のりちゃん! 良かった、また会えて! 話を聞いてくれ! て、無視? ちょっ! 待って! 行かないでくれ、のりちゃん!」
 な会話が流れていたが、振り返る気力がなかった……

「うふふ。出逢うべき星に背を向けて、他の星に萌えてしまったのね。ほ〜んとステキだわ、勇者さま。どうしてあなたの星は、悪い方へ悪い方へと転がりたがるのかしら」
 イザベルさんの楽しそうな声が聞こえる……


 魔王が目覚めるのは三日後だ……

 小学生か……

 あぁぁぁ……


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№096)

名前 イガラシ ヒトミ
所属世界   裏 英雄世界
種族     人間
職業     小学二年生
特徴     NEOワルイーゾに捕まっていた
       普通の小学生。
戦闘方法   戦えるわけがない。
年齢     七才。
容姿     ツインテールの女の子。
       おとなしい感じで、可愛い。
口癖     不明。
好きなもの  ジャスティス戦隊
嫌いなもの  NEOワルイーゾ
勇者に一言 『ありがとう、おにいちゃん……』
挿絵(By みてみん)
+注意+
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