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ハーレム100 作者:松宮星

裏 英雄世界

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正義の味方が多すぎる【ミラクルみどり】(※)

「はじめまして、(すめらぎ)ゆりかです。ジャスティス戦隊では、パープル役です」
 マリーちゃんの右横に居たのは、ポニーテールの女の子。まっすぐに切り揃えた厚い前髪をしている。
 目鼻立ちのはっきりした顔立ちをしている。美少女だ。
 白い小袖に濃い紫の袴を着ている。

 ドキンとした。

 ジパング界のカガミ マサタカさんによく似たその姿は……巫女。

 巫女さんだ!

 神に仕えて神事を行う女性。神霊をその身に降ろして託宣をしたり、呪術を使ったり、お祓いをしたりする。
 長い黒髪が神秘的な、理想的な大和撫子。黒髪命。お札や御幣や勾玉で戦うと『勇者の書』にはあった。人気ジョブの一つだ!

 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……

 しかし……
 鳴っただけだった。
 巫女さんだもんな……仲間にできるわけがない。カガミ マサタカさんと、ジョブ被りだ。



《ゴールドだ》
 マリーちゃんの左隣には、かなりナニな人がいた。
 スタイルが良くて、すらりと背も高い。
 けど、まったく、キュンキュンこなかった。
 金ぴかにテカテカ光ってるんだもん。
 顔から手足の指先にいたるまで、ゴールドメタリックの表皮で覆われている。マスクも、目があるはずのところに三角釣り目型の白い穴が開いているだけだ。
 アンドロイドか、タイツ人間。どっちにしろ、既に仲間に居る。キュンキュンできても、仲間にできなさそう。



 そして、三人目。
 マリーちゃんの背後から進み出て来た女性。
 とても魅惑的だった……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと五〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


「ミラクルみどりよ。よろしくね」

 正義の戦隊……
 そのヒーロー&ヒロインの衣装をオレは知っている。
『勇者の書』に載ってるし、英雄世界で目にする機会があった。テレビで、なんちゃら戦隊VS悪の組織な番組をやってたんだ。
 正義のヒーロー達は、正体を隠す為、仮面型のヘルメットを被る。体は戦闘スーツ。あとは手袋とブーツだ。
 メンバーは、赤、青、黄、緑、ピンク。赤は熱血漢、青はクールと、色ごとに性格も分かれていた。ピンクが女性で、あとは男だった。

 しかし……
 その女性は、緑だった。

 緑の衣装を着て、緑色のヘルメットを被って目元はバイザーで隠している。

 ともかく、凄い!

 白いブーツに、白い手袋! 腰にはベルト! ホルスターには銃と緑の羽根型の遠隔武器! 翼のようなショートマントが背中にひらめいている!
 それはいいとして!
 超ボンキュッボンな体を覆うヒーロー衣装は、ビキニブラとミニスカ! おなか丸出し! セクシーなおへそが出ちゃってる! 強化服なのにいいのか? お腹が無防備じゃん!
 むっちりとした魅力的な胸。大きすぎるせいだろう、ビキニにおさまりきらず下からぷりんなふくらみが見えていて……つまり、胸のふくらみの下の部分が出ちゃってて……
 きゅっとくびれたウエスト! 豊かなお尻!
 超ミニのスカートからあらわれるのは、うっとりするような美脚! キックしたら、モロだ!
 戦隊ものヒロインなのに、なんかエッチ!
 ドキドキした!

……顔が半分見えないのに、どーしてキュンキュンしちゃったんだろう。
 にっこりとした口元。ほくろも色っぽいが……
 やっぱ、下乳の魔力か……?


「みんな、そこそこは強いよ。魔王に100万は、びみょーだけどー」と、アナベラ。
「他を支配下に置く女王の(そう)……みなさま、素敵な星の方ばかりね」
 イザベルさんが仲間になさったらと勧めてくる。
 既に四分の三にキュンキュンしてます。仲間にできたのは二人でしたが。

「勇者ジャンです」
 代表して名乗り、この世界に来た目的を伝える。
「帰還まで一緒に戦ってくれるの? 嬉しいわ」
 リーダーのミドリさんと、握手をかわした。
「まずは、アジトに案内するわね」

「え、でも」
 オレは周囲を見渡した。
 瘴気は晴れたし、黒タイツの悪役も消えた。
 だが、未だに銃声やら爆発音が止まない。ちょっと離れた所じゃ、誰かが戦っている。
「まだ戦闘中なんじゃ?」

「いいの、いいの」
 ミドリさんが、手をひらひらさせる。
「残ってるのは、ワイルドアニマル帝国とテロテロ団とウェポン商会。私達の敵じゃないのよ」

「え?」
「あっちで、別の正義の味方が戦ってるってこと」
 と、言ったのは、魔法女アイリちゃんだ。
「正義の味方たる者、己の敵以外は見逃す。それが、ルール。説明したでしょ?」
「ああ……そうだったね」
「担当の正義の味方の到着までなら、雑魚減らしはオッケー。一般人を守る、って大義名分があるから。でもね、怪人級の悪との戦闘は絶対NG! あんたがそれやったら、あたし達まで他組織から総スカンくらうんだからねッ!」
「はい。肝に銘じておきます」

「私の敵がNEOワルイーゾ、アイリの敵が闇妖精、ゆりかの敵がARK−RYO(アクリョー)、ゴールドの敵がミライ教会。それ以外の敵は無視していいわ」と、ミドリさん。
「ゴールドのテレポートでアジトに移動しましょう。そこで、いろいろ教えてあ・げ・る♪」





 瞬間移動で跳んでった先は、何もない、だだっぴろい部屋だった。天井もやけに高い。
「戦闘ロボの格納庫だったの。今は何も置いてないけど」
 ミドリさんがフフフと笑う。
「戦闘スタイルが変わったから、よその組織に売却しちゃったのよ」

 ミドリさんがヘルメットを外す。
 現れたのは……戦闘とは無縁そうな、優しげな美貌。
 軽いウェイブのかかった柔らかそうな髪。目尻の下がった目も、口元のほくろも、たいへんセクシー。
 微笑みの浮かんだ、唇は妖しいほどに赤く……
 とても肉感的……
 超色っぽい……

 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 その横で、ゴールドタイツさんも一瞬で変身する。
 ツヤツヤピカピカの全身タイツが小さくなり、顔が露わとなった。
 アンドロイドじゃなくて、人間。光沢タイツは強化服だったんだ。
 美人!
 クールでコケティッシュ!
 耳や顔のラインがはっきり出るベリーショートな金の髪。
 鼻や頬骨が高い、かっこいい輪郭。白い肌、色素の薄い目、薄い唇。化粧っけはないが顔立ちは端麗で、女性らしい色気も漂っている。
 衣装も、短めトップスと裾の広がったズボン姿へと変形。あいかわらずツヤツヤテカテカしてるけど、上着がきわどいデザイン! 胸の形が分かるほど大胆にカットされてる! 脇からだと、柔らかそうな胸のふくらみがはっきりと見えちゃって……

 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……

 しかし……
 鳴っただけだった。
 瞬間移動(テレポート)を使ってたし、この女性(ヒト)、エスパーだ。たぶん、エスエフ界のラリサさんとジョブ被りだ。


「素晴らしい。花開いたばかりの可憐なピンクローズたちと、蕾の時代を終えて華麗に咲く大輪の薔薇が美の競演をしているかのようだ。みなさん、お美しいね……」
 お貴族様がオレに話しかけるやいなや、
「あんたは黙れ! キモいわッ!」
 と、魔法少女が素早く反応していた。
 激しく同意。


 ミドリさんが腕の通信機で誰かと話す間、アイリちゃんがざっと説明してくれた。
「アジトの上は、みどりさんがオーナーのマンションなの。あたし達それぞれ部屋を貰ってるけど、下に居ることのが多いわ」
 アジトには、装備・弾薬・食料の備蓄庫、司令室兼レーダー室、工場、演習場の他に娯楽・遊戯室や仮眠室、牢屋まであるそうで。
「あたし、お花の国からこっちに来て困ってたのよ。誰も魔法少女に部屋を貸してくれないんだもん。戸籍ないしー 保証人立てろとか、無理。みどりさんに拾ってもらえなきゃ、浮浪少女になってたわ」

《私も似たようなものだ》
 ゴールドさんは、未来から来たらしい。

 巫女のユリカさんが溜息をつく。
「私は二人とは違い、この世界の人間です。お断りしておきますが、この格好はコスプレではありません。実家が神社なのです。私はレイヤーではありませんからね?」
 はあ。
「巫女なので、神降ろしは子供時分からできました。でも、トーキョー・シティーに来てからやっかいなものに気に入られてしまい……やむをえずみどりさんの保護下に入ったのです」
「やっかいなもの?」
「神霊です」
 ユリカさんが、ハァァ〜と更に重苦しい溜息をつく。
「お祓い好きの変な神様です。何かというと『マッハ』って口走るあの方のせいで、学生寮から追い出されました」
 え?
ARK−RYO(アクリョー)が自爆霊を使って悪さをする度に、あの方が私に降りて来るんです……」
「地縛霊?」
「自爆霊。爆発する霊です」
 は? 霊が爆発しちゃうの、何で?
「あの方、正義の為ならやりたい放題で……真夜中に高笑いなさるし、窓をぶち破るし、止めに入った人達を蹴散らすし……。こちらにいる限り、まともな家に住めそうにありません」
「もしかして、さっき『マッハな方』に憑依されてました?」
 巫女さんが頷く。
 そいや、紫袴がチラッと見えたよな。

「私が、駆けつけた時には、浄化は終わっていて、あの方は、お還りに、なって、いました〜」
 マリーちゃんがほわっと微笑みかけてくる。
「ユリカさんは、この春、高校に入学してから、あの方に、憑依されるように、なった、そうで、あの方のことは、よく知らないのだ、そうです〜」
「そうでしたか……残念でしたね」
 聖女様が、小さくかぶりをふる。
「勝手をして〜 ご心配まで、おかけして、しまって、すみませんでした〜」
「いいえ、そんな……。あの、元気だしてくださいね」
「ありがとう、ございます〜 でも、大丈夫です〜 私、落ち込んでません〜 この世界に、滞在している間に、出逢える機会が、あるかもしれませんし〜 出会えないまま、還っても、いつかは、あの方と、触れ合えるはず〜 そう信じるように、しましたから〜」
 とてもかわいらしくマリーちゃんが微笑む。
「勇者さまの、おかげです〜 ありがとう、ございました〜」
 え?
 オレのおかげ?
 オレなんかしたっけ?


「シルバーに防御システムを解除してもらったわ。指令室に行きましょう」
 ミドリさんがオレらへと微笑みかけ、メンバーの説明をしてくれる。
「シルバーはうちのオペレーターなの。超古代機械文明の生き残り、三千年の眠りから覚めた正義のヒロイン。基地の管理、索敵、情報収集は、彼女に頼りっぱなし」
 へー
 優秀なんだ。
 どんな女性だろう? メンバー全員が美形だって、アイリちゃんが言ってたよな。

「それから、みんな」
 ミドリさんが、自分の仲間へとにっこりと笑いかける。
「マサタ=カーンが戻ったんですって。今、指令室に居るわ」

 フッと空が揺れ、唐突にゴールドさんとユリカさんとアイリちゃんが消える。
 超能力の瞬間移動で消えたっぽい。

「どうしたんです、みなさん?」
 敵襲か?
「莫迦を殴りに行っただけよ」
 コロコロと笑いながら、ミドリさんが言う。
「風来戦士マサタ=カーン。ジャスティス戦隊のスポンサーの風来坊が、十日ぶりにアジトに戻って来たのよ」

 指令室に向かいながら聞いた。

 八年前……
 ミドリさんは悪の組織ワルイーゾに捕まった。人類皆怪人をもくろむワルイーゾは、ミドリさんの体の一部を機械化し、常人よりも運動能力の優れた『ミラクルみどり』に改造したのだそうだ。
 しかし、心まで改造される前に組織から逃亡。あやういところを風来戦士マサタ=カーンに救われたのだそうだ。
 ミドリさんは、ワルイーゾと戦い続け……
 五年前にワルイーゾを滅ぼし、この世界の一部(・・)に平和をもたらしたらしい。

 けれども……おととし、NEOワルイーゾが現れる。
 ワルイーゾの生き残り達が集まった、改造マニアな悪の組織だ。

 NEOワルイーゾの野望を打ち砕く為、ミドリさんは立ち上がった。
 風来戦士マサタ=カーンから資金援助を受け、ジャスティス戦隊を設立。
 戦隊のメンバーは、ワルイーゾの被害者達。NEOワルイーゾを憎む彼等は、果敢に戦ってくれたものの……

「全員引退しちゃったの。ピンクとレッドはできちゃった婚、ブルーは海外に医療研修、イエローは家業を継ぎにナニワ・シティーへ……。今、ジャスティス戦隊の正式メンバーは私だけなの」


 オレらの世界では、賢者や勇者には納税の義務はない。どころか、魔王討伐時には王家から報奨金が出るし、賢者には毎年特別助成金が支給されている。

 しかし、この世界の正義の味方は、ボランティアなのだそうだ。
 国家からの支援はなく、武器も装備も弾薬も自前。
 しかも、正義の仕事は、キツイ、キタナイ、キケンの典型的な3K。宿敵が暴れ出したら、夜も昼もない。休日がつぶれるのは当たり前。就職しようにも、戦闘時間が不定期な為、まともな職に就けない……
 強力なスポンサーがいるか、大金持ちの道楽でもなきゃ正義の味方なんかやってられない。
 生活の為に、やむをえず正義の味方を引退する者が後を絶たないのだそうだ。

「うちにはマサタ=カーンってスポンサーがついてるけど……アレは風来戦士だから、いつ来るか幾らくれるかわからないの。資金不足じゃ、優秀な隊員の補充は難しい。とはいえ、安い新人を採っても、教育に割く時間はないし……」
 それで、と緑のお姉さんが笑う。
「正式メンバー探しをやめ、正義の味方同士で助け合う事にしたのよ。NEOワルイーゾと戦ってもらう代わり、アイリ達に宿と食事を提供し、彼女達の敵の索敵や討伐も手伝う。そいういう形にしたの」
 ふーん。
「つまり、正義の味方互助組織ですね?」と、シャルル。
「そういうこと。NEOワルイーゾに加え、闇妖精、ARK−RYO(アクリョー)、ミライ教会と敵は増えてしまったけれど、一人で戦うよりは一流の特殊能力者達と組んだ方が楽なのよ」


 話してる間に、目的地に着いていた。

『指令室』と書かれた扉が開き……

 正面壁面の巨大スクリーンが、ど〜んと目に入ってくる。
 巨大スクリーンは、小さな画面に分割されチカチカと光っている。いろんな場所の監視映像、表やグラフなどが映っている。
 スクリーン前に並ぶのが、オペレーター用の機械と椅子だ。
 五席あったが、使っているのは一箇所だけだった。
 座っているのは……シルバーメタリックの……彫像? いや、ロボットか。体中から細いチューブを出し、機械とくっついている。

 後居るのは……アイリちゃん、ユリカさん、ゴールドさん。
 三人は、床に座っている男を囲んでいた。マサタ=カーンってスポンサーか? 三十代ぐらいに見える。ビジネススーツの男性は苦笑を浮かべ、頬を押さえていた。髪も少し乱れている。

 その男の人を見た途端……
 何だか異様に胸が熱くなった。
 まるでキュンキュンしたかのよう……
 いやいやいや!
 男にキュンキュンはない! オレにそんな趣味は無い!
 だが、何と言うか……嬉しくって感極まるっていうか……
 ジョゼと再会した時に感じた喜びを何倍にも強めたような思いだ。
 この感覚、覚えがある。前にどっかで感じたような……?

 それはともかく……

 部屋を見渡したが、他には誰もいなかった。

 む?
 超古代からの美女は、いずこ?

「みんな、気はすんだ?」
 ミドリさんがニコニコ笑いながら、アイリちゃん達に聞く。

「ぜんぜんッ!」
 アイリちゃんが唇をとがらせる。
「フラワー・タイフーンをくらわせてやったのに無傷なのよ、こいつ! 時空操作であたしの魔法を消しちゃうんだもん!」

《私の念動力も通じない》
 ゴールドさんがいまいましそうに男を睨む。
《拳で殴ってもすぐに再生するのだ、気にくわん! テレポートでマグマの海に沈めてやりたい!》

「悪霊退散のお札も、悪霊封印のしめ縄もきかないんです。祓いたいのに!」

 怨まれてるなあ。

「その人、スポンサーなんじゃ?」
「スポンサーよ」
 ミドリさんが楽しそうに笑う。
「スポンサーで、司令官で、オペレーターで、メカニックで、臨時戦闘員もしてもらってるの」
 人手不足な組織らしい……

「風来戦士マサタ=カーンは、正義の味方の中でもウルトラS級のヒーロー。一人で悪の組織をほぼ壊滅させられる超強力戦士よ」
 へー
「でも、理由(わけ)あって能力を制限されてるの。戦隊プレイじゃなきゃ、まともに戦えないのよ。私達がいてこそのマサタ=カーンなのに、こいつ考え無しの莫迦で足ひっぱってばかりなのよ。このまえ、NEOワルイーゾの女幹部アベンジャーのりこと戦闘になって……こいつ、挑発でのりこをカンカンに怒らせて……でもって消えやがったのよ、私達をその場に残して。ひどいでしょ?」

「その言い方には語弊がある!」と、男が叫び、
「そのものズバリじゃないッ!」と、アイリちゃん。
《おまえのせいで我々は死にかけたんだぞ!》と、ゴールドさん。
「逃げるの、たいへんだったんですよ!」と、巫女さん。

「あれは不可抗力だ! 事故も同然だ! 君達も知っての通り、僕は自分の未来は見えない。あそこで帰還になったのは、僕だって不本意だったんだ。のりちゃんともっと話したかったのに」
「その『のりちゃん』って呼びかけも、敵を怒らせてましたよね」と、巫女さん。
「僕にとっては、彼女はずっとのりちゃんだ。悪の道から更生させてあげたいんだが……」
 ふぅと男が溜息をついて、オレ達へと視線を向ける。
「……新メンバー?」

「臨時メンバーよ。四日後が魔王戦だから、じきに自分の世界に還るんですって」

「え? 魔王戦? 四日後?」

 男がオレを見る。
 オレも男を見る。
 目と目が合う。

「あれぇ?」
 互いの口から、その言葉が漏れた。

 背広の似合う、整った顔立ち。

「勇者ジャン君……? 百一代目勇者の?」
 オレを知ってるのか。

 風来戦士マサタ=カーンの名前に覚えはないけど……
 この顔には覚えがある。
 どこかで会ってるのか……?
 どこでだっけ?
 むぅぅぅ。

「……サクライ マサタカさん?」
 オレの背後から、問いかけが聞こえた。
 振り返ると、義妹が小首をかしげていた。
「……マドカさんの旦那様のサクライ マサタカさん……ですよね?」
 男が照れたように笑う。
「そうだ。君は確か、ジョゼさんだったね? ジャン君の義妹の」

 あ。

 そっか。

 そうだ、この顔は!

 思い出した。

 英雄世界でオレらの面倒をみてくれたのが、幼な妻のマドカさん。フリフリのエプロンが素敵な、かわいらしくって、それでいて胸が大きい女性だった。
 オレらがマドカさんのマンションにお邪魔していた間、旦那さんは『ニューヨーク出張』とかで不在だったが……
 リビングにはマサタカさんの写真がいっぱい飾られていたんで、見るとはなしに旦那さんの顔は見ていた。

 そうか、マドカさんの旦那さんか〜

……ん?

 英雄世界の人間が、なんで裏英雄世界に居るんだ?

「どうして、私の名前を……?」
 ジョゼが不審そうに尋ねる。
「久遠寺葵さんから君達の写メを貰っていている。百一代目勇者一行の顔と名前は覚えているよ。勇者ジャン君、格闘家ジョゼさん、魔術師サラさん、幽霊のニーナちゃん、女狩人カトリーヌさん、それと賢者シルヴィ様だったね」
 英雄世界を訪れたメンバーの名前をあげてから、男が白い歯をキラッと輝かせて笑う。
「今回はだいぶメンバーが違うんだね。賢者様がご一緒じゃないのが驚きだが、会えて嬉しいよ」

 思わず聞いてしまった。
「マドカさんの旦那さんが、何故、この世界に居るんです?」

「それは、まあ……」
 男が苦笑いを浮かべる。
「転移したからだよ。僕はこの世界では、正義の味方の一人なんだ。このトーキョー・シティーに危機が訪れると、転移してしまう。かなりの頻度でここに来ている……僕はどうも、この世界の神様に愛されているらしい」


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№095)

名前 ミラクル ミドリ 
所属世界   裏 英雄世界
種族     人間
職業     ジャスティス戦隊リーダー
特徴     色っぽいおねえ様。
       改造人間とサイボーグの違いがわからない。
       マサタ=カーンことサクライ マサタカさんが
       設立した戦隊のリーダーをしている。
       人手不足なので、行くあてのない正義の味方を
       拾って臨時メンバーにしている。
戦闘方法   銃。緑の羽根手裏剣。
年齢     二十代
容姿     スーパー・ボンキュッボンで、色っぽい。
       軽いウェイブのかかった柔らかな髪。
       目尻の下がった目、口元のほくろが、セクシー。
口癖    『フフフ』
好きなもの  平和。
嫌いなもの  NEOワルイーゾとワルイーゾ
勇者に一言 『いろいろ教えてあ・げ・る♪』
挿絵(By みてみん)
+注意+
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