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ハーレム100 作者:松宮星

裏 英雄世界

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はじまりは魔法少女!【ゆめみのアイリ】(※)

「わははは。貴様等の本気はその程度か。痛くもかゆくもないわっ!」
「くっ! 負けるかっ! 正義の炎が消えない限り、不死鳥は何度でも蘇るっ!」

 異世界についたら、何だかアレな会話が聞こえた。

「死ね、ジャスティス戦隊!」
「テロテロ団、今日がおまえ達の最後だ!」
「ウェポン商会! 命は購えぬと思いしるがいいッ!」
《オホホホ……亡べ……亡べ、亡べ》

「くらえっ! 新商品デリンジャー・ハッパー!」
「コズミック・アニマル・ボンバー!」
「せいっ! 必殺! ムーン・カウンター!」

 辺りはすごく賑やかなんだが、よく見えない。
 黒煙と濃い瘴気が、周囲を霧のように覆っている。
 固まっている仲間……ジョゼ、マリーちゃん、イザベルさん、アナベラ、シャルルがかろうじて見えるぐらいだ。

 音の響き方からして、屋外に居るのは確か。
 戦ってるのは、数十人。三〜四組の対戦がごちゃ混ぜっぽい。
 ドッカンドッカン爆発音も聞こえる。
 だが、見えない。

 闇の向こうから光が広がり……
 雷鳴にも似た爆裂音が響く。
 ビキニ戦士アナベラが両手剣を抜き、飛んで来た何かを斬る。よく見えなかったが……流れ弾か?

 つづいて動いたのは、義妹だった。
 ふわっとレースのドレスを靡かせ、闇の中から襲いかかってきた人型の黒いモノを弾き飛ばした。

 オレらの周囲に、水壁が出来る。
 水の精霊マーイさんが張ってくれた結界が、爆風を防いでくれる。

「ティーナ、アウラさん、サブレ、グラキエス様、エクレール、ルーチェさん、ソワ」
 残り七体の精霊を一気に呼びだす。
 炎のティーナとの契約の証は、今まではサラのぬいぐまの首に預けていた。が、今回の旅にサラは居ない。ルビーのボウタイチョーカーは背中のバックの中に入っている。

 ジョゼとアナベラは迎撃の姿勢。オレやマリーちゃんやイザベルさんを守る為に。
 シャルルの野郎は後方から動かない……てか、寝ぼけ眼で欠伸してやがる。働けよ、天才魔術師。腰に家宝の魔法剣もあるだろうが。あらゆるものを切り裂く、凄まじい切れ味なんだろ?

 勇者の剣を抜き、土のサブレに同化を頼む。
 視界が悪すぎる。精霊の目を借りねば、何が何だかわからない。
 やばい所に転移しちゃった事だけは、わかるけど。

 サブレの目を借りたんで、おぼろげに見えてきた。
 やはり、街中に居るようだ。
 瘴気と爆煙に包まれ、ビルに囲まれた広い通りでたくさんの人間が戦っている。
 衣装からして、善玉と悪玉。
 善玉はいろいろ。動物っぽいのやら、戦闘スーツっぽいのやら、トレンチコートに帽子な人達やら。
 悪役もさまざま、魔族っぽいの、メカメカしいの、軍隊みたいのも居る。

 そんな中に、ひときわ眩しい何かが居た。人とは思えない。まるで、地上に落ちた太陽のようだ。光が強すぎて輪郭ぐらしかわからない。

「憑依、洗脳、騒乱、器物破損、殺人未遂の現行犯だ。内なる俺の霊魂が、マッハで、きさまらの罪を言い渡す」

 闇の向こうから声が聞こえた……

 この台詞を言う正義の味方を、オレは知っている。

 オレは、すぐそばの仲間へと顔を向けた。
 仲間もオレへと視線を返す。大きな瞳を見開いて。

「有罪! 浄霊する!」
 光り輝く人が、決めポーズをとる。バッと紫袴が広がったような。
 紫袴……?
 袴を履いてるあの子が『マッハな方』?
 また、奇跡代行アルバイトをしているのか?
 それとも……本人?

瓏ナル(ディフ)幽冥ヨリ(ェンス・)疾ク奉(ガード)リシ麗虹鎧・バリア
 光の防御壁を張り、マリーちゃんが駆けだす。
 たった一人で、声がした方角へと。
「待って、マリーさん!」

「勇者さま……その方角には、女難が……。選択を誤れば、勇者としてのあなたの生は終わるわ……」
 背後からイザベルさんの声がした。
 なんかヤバそう。けど、行かなきゃ。あそこに、『マッハな方』が。

「その死をもって、己が罪業を償え・・・終焉ノ(グッバイ・)滅ビヲ(イービル・)迎エシ神覇ノ(ブレイク・)贖焔(バーン)!」

 前方の光が一気にふくれ上がり、どデカい白光の玉と化してゆく。
「ククク・・・あばよ」
 強大な浄化魔法の奔流が迫ってきた。
 その光は、先を行くマリーちゃんを、後を追うオレ達をも包みこんでいった……

 今はサブレが目を貸してくれてるんで、何とか見えた。
 まばゆい光をものともせず、マリーちゃんは『マッハな方』を目指し駆けている。
 だが、距離は縮まらない。浄化魔法を放ち終えた後、『マッハな方』は後方へと移動を始めている。次なる敵を倒す為か? それとも……

「!」
 光の中から、猛スピードで何かが出て来る。
 黒い気。
 羽虫のようにも見える。
 ぶつかる!
 浄化の光を逃れてきたのだろうそれを、オレは勇者の剣でどうにか斬り捨てた。
 93万ダメージ。追加効果186万ダメ。
 黒の気は消滅した。

「あーっ!」
 すっとんきょうな声があがった。
「バカーッ! なんて事すんのよ!」

 そこに、彼女は居た。

 さっきの『マッハな方』の攻撃で、瘴気は晴れた。
 まだ爆煙は残っていたが、だいぶ視界がきくようになった。
 オレ達は、アスファルトに覆われた道路のまん真ん中に居た。車が通る車道って場所のはずだ。だが、車は見あたらず、爆発の痕が点々と続き、『歩行者天国』と書かれた柵のようなものが転がっていた。
 高層ビルが並ぶ、繁華街のようだ。

 銃声やら爆発音も聞こえるが、遠い。
 オレらの周囲に居るのは、彼女だけだった。動く度にひらひらと花びらを舞わせる彼女は……花の精のようだった。


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと六〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 女の子がオレを睨む。
 しかし、それが……何とも可愛いのだ。

 頬はふっくら、口は小さめ、まつ毛の長いキュートな顔。
 んでもって、ボリューム感あふれる髪は、不思議なピンク色。
 衣装もピンク。超ミニなワンピース! レースびらびらで、裾のところで、ぶわ〜っと広がっている。
 頭にも服にも、色とりどりの花を模した飾りがいっぱい!
 右手には、トップがバラの小さなステッキを持っている。

 ナニな格好だけど、ラブリーだ! 十四〜五才ぐらいかな?

「よくも闇妖精を倒したわね! 119体目になるはずだったのよ!」
 少女が、すごくおっかない顔でオレを睨む。
「あと246体の闇妖精を退治しなきゃ、お花の国に還れないのに!」
 う。
 ここにも、数をこなすのがノルマな人が。

「ごめん、襲われたから、つい」
「ごめんで、済むかッ!」
 美少女が、オレへとステッキを向ける。
「どこの誰だか知らないけれど、花園を荒らす奴は許さない! ゆめみのアイリが華やかに退治しちゃうわ!」

 今、それどころじゃないのに!

 遠方は未だに黒い煙に覆われたままだ。マリーちゃんは多分、あの中だ。『マッハな方』も。

「すまない! すぐに仲間のとこへ行かなきゃ! 話はあとで聞くから!」

「逃げる気?」
 そう言ってから、美少女がしゃららら〜んって感じに回転し、ぴたっと止まる。ステッキの先端をオレへと向けて。

「フラワー・タイフーン!」
 ステッキの先端から色とりどりの花が飛び出し、突風にのって襲い来る。
 まるで花の竜巻だ。
 風の精霊アウラさんが結界を張り、突風の向きをそらしてくれる。オレらの横を綺麗な花が渦を巻きながら飛び去り……
 黒い煙から出て来たキーキーわめく黒いタイツ人間達。そいつらにお花嵐は激突し……
 ボンボンボンボンと爆発が起きた。
 全身黒づくめの人間もどきが、跡形もなく消えてゆく。

……爆発する花?

 サーッと血の気がひいた。

《……お花攻撃です、ご主人様》
 体の内に宿らせている土の精霊が、やけに興奮している。
《バラにマーガレットにアネモネにゼラニウム……ひまわりも……あぁぁ、なんてス・テ・キ》
 む? 花が好きだったのか?
《土界には土しかありませんので、ずっとお花に憧れてました……》
 そういうことか。けど、爆発する花だよ?
《美しくて危険……うっとりしますわ。私、お花畑の土になるのが夢だったんです……ヒゲのいっぱい生えた若い根が、強引に私の間に押し入ってきて……私の中を蹂躙しつくして、水やら養分をむしりとっていくんです……あぁぁ、私を好き勝手にして咲く、ヒモな花達! 彼等の肥しに私はなりたい……》
 はぁ、はぁと喘いでいるイメージが伝わってくる……
……あの、もしもし、サブレ?

 美少女がステッキを振り振り、奇妙なステップを踏む。で、最後にステッキの先端を空へと向けて叫ぶ。
「フラワー・シャワー!」
 天より花の雨だ。舞い散る花びらはカカカッ! と地面に突き刺さってゆく。花が鋭利な刃物になってるんだ。アウラさんが風で払いのけたそれが、残ってた黒いタイツ人間を残らず退治した。やられると黒人間は、爆発する。そういう仕様なのか、あいつら?

「んもう!」
 今度は華麗なジャンプを交えてのダンス。フリフリのスカートが風をはらんで揺れる。大技なのか、長めのダンスだ。
……もしかして、踊らないと魔法が発動しない?
「フラワー・グローイング!」

《ご主人様、足元です》
 と、警告をくれたのは水のマーイさんだった。
 足元のアスファルトがめきめきっと盛り上がってきた。地面深くから、にょきにょきと何かが伸びてきている。巨木サイズ?
「サブレ、防御!」
《え〜》
 拗ねながらも、土の精霊は命令に従った。アスファルトが見る見る平らに戻されてゆく。地面から飛び出ようとしたものを、土の精霊が押さえつけたのだ。
(たけのこ)が、すごい速さで力強く伸びてたのに……太さも長さも、人間のゆうに五倍……竹になって花が咲くまで伸び続けたでしょうに、もったいない……あぁぁ、あれに貫かれていたら、きっと……》
 死にますね、オレが。

「やるじゃない」
 女の子がキッ! と、オレを睨む。
「でも、次はそうはいかないわよ! ゆめみのアイリ究極平和魔法をお見舞いするわッ!」
 オレを倒す気まんまんだ。
「ごめん! あのさ、闇妖精だっけ? 倒しちゃって、悪かったよ。すまない。けど、あれは」
「だから、ごめんじゃ済まないの!」
 女の子が、キッ! とオレを睨む。
「悪のたわごとなんて聞かないわ!」
「え?」
 悪?
「オレ、勇者なんだけど……」

「悪よ」
 少女がきっぱりと言い切る。
「正義の味方たる者、己の敵以外は見逃すものよ! 好き勝手に暴れた以上、あなたに正義を名乗る資格なんてないわ!」
「ごめん! ルール違反しちゃったんだね。だけど、知らなくてやったことで」
「バカッ! 知らないじゃすまないの! 正義の味方は、それぞれに悪と縁があるのよ! 魔物を倒して体の部位を取り戻してるとか、敵から情報を聞きだしてるとか、武器に敵の魂を吸収してるとか、ヒーローごとに事情があるのよ! 第三者に運命の敵を倒されちゃったら、バッドエンディングまっしぐらよ!」
 う。
「すみません!」
「よその敵はね、雑魚しか倒しちゃいけないの! 怪人とか幹部とかボスとか、手を出しちゃいけないの!」
「ごめんなさい! 本当にごめんなさい! ご迷惑をおかけしました!」
「許さない! あんたなんて、もぐり勇者よ! あたしが退治してやるわ!」

 ピンクの髪が天に向かって逆立っている。女の子の周囲を包むピンクのオーラが、どんどん大きくなってゆく。魔力を高めているんだ。
「二度と戦えない体にしてやるッ!」
 フフフと女の子が笑う。
「あらゆるものをお花に変える、究極の平和魔法! その名も、フラワー・ドリーム。あなた達の武器も、服も、靴も、アクセサリーもぜ〜んぶ綺麗なお花にしてあげるわねッ!」
 ちょっ!
 全部、花?
 勇者の剣も、精霊との契約の証も、アネコ様がくれた左腕のマフラーも、ナディンがくれたサークレットも、花にする気?
 そりゃ、まずい!
 ジョゼやイザベルさんやアナベラの服も全部、花になっちゃうのか!

「結界を張ってても無駄よ。平和を愛するあたしの心が、全てを美しい花にしちゃうんだから!」
……どんなデザインで?
 花冠みたいに編んだ、花の下着?

 は!

 もしや!
 大事なとこだけにお花がくっつくのではッ!
 胸とそれから下の方に、ぽちんと……

 おおお!

 絵的にビキニアーマーよりすごい!
 むっちり爆乳のイザベルさん。
 ぷるんぷるんのぷりんぷりんのアナベラ。
 そして、ジョゼ……
 豊かな山々と秘境が花で飾られ、オレの目の前に連なるわけで……

《スケベ》
 風の精霊アウラさんに、頭をポカリと殴られてしまった。
《おにーさんもあっちの彼も大事なとこだけ、お花よ? いいの?》

 オレとシャルルもお花……

「………」

 ようやく、妄想が消えた。
 花にされては困る!

《空気を歪めて音の伝導を防いでみるけど……》魔法を防げるかわからないと、アウラさん。
《花魔法で、移動魔法が封じられています。逃げられません。攻撃を、勇者ジャン》と、七色サマードレスのルーチェさん。
《相手は踊らなければ役立たず。魔法を使わせぬように攻撃し続ければよろしいのよ》と、氷のグラキエス様。

 守護に水と風と土の精霊のみを残し、残り五体に攻撃を命じた。アナベラもジョゼも結界外に飛び出した。
 んだが、その途端、再び刃のような花びらの雨が降り始め、巨大筍がボコボコとアスファルトを突き破って現れる。さっきの魔法の効果が残っていたのだ。
 少女の周囲にも花嵐の結界が出来ている。他を寄せつけず、女の子は自分の結界の内で踊っていた。余裕の笑みを浮かべて。
 精霊が焼いても凍らせても、アナベラが斬り続けても、花は湧いて出る。
 誰も、踊り狂う女の子に近づかない。

 このままでは、究極平和魔法が発動してしまうのか?
 全てが花に?

 と、思った時だった。

「……我が魔力が、願わくば、美しきあなたの守りとならんことを。深紅の天鵞絨(ビロード)
 けったいな言葉を口にし、シャルルがパチンと指を鳴らす。

 途端……

 ピンクの少女の周囲を、柔らかそうな布が何重にも包み込んでゆく。まるでヴェールかカーテンのように。少女が御していた花々が、パタパタと地面へと落ちて行く。
「キャッ! なに、これ!」
 布の内側で、女の子がもがく。だが、布ははがれない。魔法を使ってはがそうとしているようだが、うまくいかないようだ。
「離れろ! この! この! この!」

「無駄だよ……君の心が安らかにならない限り、その守りは外れない。他人を攻撃する事はおろか、自分を傷つける事もできない。その布は全ての刃を封じるんだよ」
 シャルルが欠伸を噛み殺す。朝に弱いんで、まだ本調子じゃないようだ。
「花魔法も、君の守護を願う私の思いまでは拒めなかったようだね。敵意に反応する防御魔法は、えてして善意には愚鈍なものだ」
「うっさわいわね、バカ! 女の子を拘束して、あんた、変態なんじゃないの! ロリコン! オカマ!」
 魔力の布も、言葉の刃は封じられないようだ。
「捕まってもなお強がるとは……実に可愛らしい」
 きゃんきゃんわめく魔法少女に、気障男がフッと笑いかける。ののしられても、まったく意に介してないようだ。
「美しいけれども、もろく傷つきやすい……まるで硝子細工のような方だ。お嬢さん、こわがらなくとも大丈夫。我が魔力が柔らかな天鵞絨となって、君をなめらかに包み込んでいるだけだ。君の繊細な美を騎士として守る為に、ね」

 ぐっ!

 ぐぉぉぉぉ!

 キモ! キモ! キモ!

 やっぱ、やだ、こいつ! まだ半分以上寝てんじゃねえの! 起きろよ、寝ぼすけ!
 ほら、見ろ。おまえの婚約者にされてるジョゼも、怯えてイザベルさんにくっついてるじゃないか!

 一瞬、口を閉ざした後、魔法少女も、
「黙れ! キモいわッ!」
 と、叫んでいた。
 激しく同意。


 天鵞絨なんちゃらは、女性にしかかけられない、天才魔術師様のオリジナルの魔法らしい……
「魔術師学校で学ぶべき課程は修了しているからね。手すさびに、ご婦人方を守護する魔法を作ったのさ」
 自慢たらたらにハハハと笑う馬鹿はとりあえず放っておいて……

「すまない。君の敵を倒してしまって……」
 オレは、布に囚われた魔法少女に頭を下げた。
 なんであたしが捕まるのよ! と、少女が涙ながらに怒る。
「悪事を働いたのは、あんたでしょ! 正義の味方資格はく奪ものよ!」
「ほんと〜に、ごめん! この世界に来たばっかで、ここのルールを知らなかったんだ。許してくれ」

「え?」
 少女がきょとんと目をしばたたかせる。

「この世界に来たばっか……?」

 オレは改めて少女に頭を下げて、自己紹介をした。
「オレは、異世界の勇者ジャン。四日後に魔王を倒す為、七人の強くて綺麗な女の人を探しに来た。さっき転移して来たばかりなんだ」

「じゃあ……あなた達、無所属(フリー)?」
 ん?
 オレ、ジョゼ、アナベラ、イザベルさん、シャルルを見回し、少女が首を傾げる。
「どこの組織にも所属してないの?」

 は?
「いや、あの、勇者だから……」
 勇者って……王様に雇われてるわけじゃないよな? しいて言えば、神様の子分? つっても、聖教会とは交流がないし……

「この世界においては、そうだね。我々は、どこの組織にも所属していない」
 お貴族様がそう答えると、少女の顔がパッと輝いた。

「やッだ、もう! 無所属(フリー)の異世界人なの! しかも、五人も! それなら、そうと早く言ってよ!」
「はあ」
「闇妖精を倒したお詫びをしてくれるのよね?」
「もちろん」

 少女が満面の笑顔となる。
「じゃ、決まり。もとの世界に還るまで、あんた達、ジャスティス戦隊のメンバーね。この世界の平和を一緒に守って」
 へ?
「でも、七人、いや、あと六人の仲間を探さないといけないんで」
「だーいじょーぶ! ずっと戦いっぱじゃないから。ナンパの時間もあるわよ! 暇な時ならあたしも手伝ったげるし、それにうちの戦隊、美形ばっかよ!」
「ほんと?」
「ほんと! ほんと!」
 いや、でも、ジョブ被りするんじゃないか? 全員、正義の味方なわけだし……
 だけど……美形揃いか……

「みどりさんなら、他の組織にも協力を頼める。うちの戦隊に入れば、美女探しも楽ちんよ〜」
「みどりさん?」
「リーダー」
 む?
「あたし、この世界に闇妖精を倒しに来たんだけど〜、ちょっと事情(わけ)ありでね、ジャスティス戦隊にも入ってるのよ」
 むむ?

「ジャスティス戦隊として戦いながら、毎日毎日毎日、人の心に潜む闇妖精を探してるのよ。レーダーなんてないから、不幸そうな人がいないか街中をうろついて探すしかないの。総当たりで人間を調べてるんだから」
「……たいへんそうだね」
「ものすご〜く、たいへんよ! こっち来てから自由(オフ)な日なんて一日も無いわッ!」
 布の中から、少女がちょっとズルそうに笑う。
「しばらく、ジャスティス戦隊の仕事を肩替りして。苦労して見つけた貴重な闇妖精を、ぶっ倒してくれちゃったわけだし。それぐらい、やってくれるわよね?」
 ぐ。
「あたし、あと246体の闇妖精を退治しなきゃいけないの。365体倒さないと一流の花魔法使いになれないんだから」
 ぐぅぅ……

 数をこなさないといけないのは、つらいよな。
……わかるよ。

「わかった……君の仕事を手伝うよ」

「やったーッ!」
 魔法の布が鮮やかに光り、空気に溶け込むように消えていった。
「彼女から敵意が完全に消えたようだね」と、お貴族様がつぶやく。

「隊員が一気に五人も増える! 二〜三日でも助かるわッ!」
 ピンクの少女はぴょんぴょん飛び跳ねてから、オレへと右手を差し出してきた。
「はじめまして! お花の国のプリンセス、魔法少女ゆめみのアイリよ! さびしい人の心にお花を咲かせるのが使命なの!」
「勇者ジャンです。魔王を倒す為に百人の仲間を探して十二の世界を旅しています」
「この世界に来たのは、勇者と四人の仲間ってわけね?」

「いいえ〜 勇者と、五人の、仲間、です〜」
 オレらの近くの空気が揺れ、四人の人間が現れる。
 移動魔法か?

 一人は、マリーちゃんだ。
 見た感じ、怪我はしてなさそう。いつも通り、ほんわかと微笑んでいる。

 そして、マリーちゃんの後ろには……
 素晴らしい美女達が三人居たのだった……


 魔王が目覚めるのは、四日後だ。


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№094)

名前 ゆめみの アイリ
所属世界   裏 英雄世界(本当の世界は、お花の国)
種族     魔法少女
職業     魔法少女
       お花の国のプリンセス?
特徴     魔法少女だが、
       ジャスティス戦隊所属らしい。
       一流の花魔法使いになる為と世界平和の為に
       戦っているようだ。
戦闘方法   花魔法
年齢     十五才くらい?
容姿     ボリューム感あふれるピンクの髪、
       まつ毛の長いキュートな美少女顔。
       超ミニな、レースびらびらのピンクの
       ワンピースを着ている。
       頭にも服にも、花を模した飾りがいっぱい。
       右手には、バラのステッキを持っている。
口癖    『さびしい人の心にお花を咲かせるのが使命なの』
      『ゆめみのアイリが華やかに退治しちゃうわ!』
      『黙れ! キモいわッ!』
好きなもの  仲間が増えること。
嫌いなもの  闇妖精を倒されること。
勇者に一言 『あんたなんて、もぐり勇者よ!』
挿絵(By みてみん)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
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