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ハーレム100 作者:松宮星

裏 ジパング界

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あめの かみさま  【オカミノカミ】(※※)

《これはいかん。湧いておるな》
 間もなくおかみの神の山に着く、そう言ってしばらくしてから天狗のクロバさんは真面目な顔となった。
《……おかみの神の結界が解けておる。なんぞ、やっかいごとがあったのやもしれん》

 クロバさんの風魔法に運ばれ、オレ達は空を飛んでいる。
 風の結界でオレらを包み、クロバさんは後ろから大団扇で扇いで飛ばしてくれているんだ。

 遠くに連なる山々。
 それが、ぐんぐん迫ってくる。
 ようやくオレにもわかった。マーイさんに同化してもらってるんで、目に見えぬものが見える。
 黒い霧状のものが、緑の山々を包んでいる。ねっとりとした、いやらしい気だ。
 魔族だよな……
 魔族が大量発生してるのか?
 あそこに、サラやパメラさんやカトリーヌが居るってのに。

《おかみの神のお山を穢すとは、けしからん》
 クロバさんは憤然と言った。
《わしは祓いの巧いものを連れて来る。その方ら、共に来るか? 先にお山に入り、穢れを祓っておるか?》

「お山に行きます」
《承知。おかみの神がおられるのは奥の滝じゃが、手前までしか送れん。魔を祓いながら、滝を目指してくれ》
「わかりました。精霊を呼び出してもいいですか?」
《呼びだすだけならな》
 精霊の存在が、クロバさんの風魔法に悪影響を及ぼせば大変な事になる。風結界が解け、オレ達は地面へとまっさかさまだ。
「では、風と光の精霊を呼びます」
 その二体なら、天狗と性が似ている。風魔法の妨げにはならないだろう。

 神秘のものが見えないセリアには、ジョゼが事情を説明してくれていた。
 セリアはぶつぶつと呪文を唱え、さまざまなポーズをとる。古代技法の仕込みを始めたようだ。

 光と風の精霊を呼び出す。
 ルーチェさんは、天狗スタイルだ。衣装は白で袈裟は黄色で房は赤、履物がオレンジ、翼は青と藍と紫の羽根からなり、髪の毛は緑……ストライプ模様の山伏装束でなくて良かった。ルーチェさんにしては、比較的まともじゃん。
 オレの思考を読んだ光の精霊がムッとした顔になる。
《ま、ま、ま。気を静めて。今から戦闘だから》
 風のアウラさんが、ルーチェさんを押さえてくれた。助かる。

《送るぞ》
 爆乳天狗が、大団扇を大きく扇ぐ。

 強風に押され、オレ達は瘴気渦巻く山へと突っ込んで行った。
 魔の力に満ちた闇は濁流のように、一方向を目指していた。
 魔を止めようとしている神霊の姿もあった。人型や鳥獣。小さな霊達が闇へと攻撃をしかける。だが、巨大な魔の動きを多少鈍らせるぐらいの効果しかない。力を失い、逃げて行く光のものも少なくない。

 オレ達が接近すると、魔の一部が動きを変えた。
 勇者とその仲間達を獲物と定め、流れから離れ、オレ達を飲み込むべく襲いかかってきた。

「……  様と子と聖霊の御力によりて、奇跡を与え給え。絶対防御の法!」
 着地とほぼ同時くらいに、セリアが古代技法を発動させた。
 クロバさんの風結界が消滅し、あらゆる攻撃を防ぐ完璧な守りがオレ達を包み込む。
 押し寄せて来る魔を、光の防御壁がはね返してゆく。

 しかし……
 この世界には、あふれかえらんばかりに神霊が居るってのに……瘴気の中には魔しか居ない。
 まともに歩けぬほどひしめきあっていた小さなものたちは、逃げられたのだろうか?
 それとも……瘴気に喰らわれてしまったのだろうか?

 怒りが、オレの内を駆け巡る。

「勇者様、全ての精霊を呼び出してください。絶対防御の法は時間が経てば効果が無くなります。その前に、結界の張り直しを」

 まずは結界の指示。
「ルーチェさん、セリアさんを中心に光の結界を頼む」
《了解です、勇者ジャン》
 私を中心? って顔のセリアに、左の二の腕を見せた。そこには、アネコ様からいただいた手毬がある。形をかえ、スカーフのようになって腕に巻きついている。
「アネコ様がついてくれてるから、オレは大丈夫」

 荷物入れの中には、サラが置いてってくれたボウタイチョーカーもある。飾りの石が炎のティーナとの契約の石だ。
「ティーナ、サブレ、グラキエス様、エクレール、ソワ」
 全ての精霊を呼び出し、オレは命じた。
「魔を祓い、おかみの神の滝へ向かう。サラ達の居場所がわかったら教えてくれ」
 魔が流れていた方向に居るのだとは思うが。

《場所はわかるわ》と、炎のティーナ。
《どんなに離れていても、アナムが何処にいるかはわかるもの》
 アナムはサラに同化している。アナム居るところに、サラありだ。

「先導を頼む」
《おっけー》
 オレンジ色の髪は炎そのもの、光輝く体は一糸まとわぬ姿。ティーナは人型を捨て、炎そのものの姿となって結界外に出て、宙を駆けた。ティーナの浄化の炎に燃やされ、充満していた闇が後退してゆく

《困ったなーという時には、これ! 『ルネ ぐれーと・でらっくすⅢ』〜》
 取り出したものをオレへと見せてから、雷の精霊は顎でセリアを示した。
 オレは頷きを返した。
《学者さんには、これ! 『悪霊あっちいけ棒 改・改』!》
「え? 私ですか?」
《持つだけで、聖なる灯りが広がるの。先っぽの飾りが聖教会で清められた水晶だから、灯りそのものが邪悪へのダメージになるんだってー》
 戸惑い顔のセリアにオレは言った。
「古代技法は強力だけど、発動まで時間がかかる。セリアさんに何かあってから、後悔するのは嫌なんだ。それで、邪悪な気を祓える。使ってくれ」
 セリアが口元に微笑を浮かべる。
「わかりました。ありがとうございます、お借りします」

 こんな時こそ、『悪霊から守るくん 改・改』がありゃ良かった。マリーちゃんの歌声が流れりゃ、潮が引くように魔族は逃げてくんだから。
 けど、無いものは無いんだ。
 みんなでどうにかするしかない。

 ティーナの後について、オレらは山道を走った。

 樹木を燃やさず、魔だけを燃やす。なかなかに器用な事をしながら、ティーナが先を行く。
 左右後方から押し寄せてくる奴等を精霊達が倒し、光のルーチェさんはセリアを中心に結界を張りながら浄化の力を使っている。
 セリアも走りながら、協力していた。『悪霊あっちいけ棒 改・改』のライトをいろんな角度に向けている。
 だが、いかんせん数が多すぎる。
 倒しても倒しても、後から魔が押し寄せてくる。
 何処かに魔族の湧きポイントがありそうな。
 精霊達に尋ねると、山の周囲に数か所の異次元通路があり、通路の数は時間をおって増えているのだとか。

《魔は、とてもはしゃいでいます》
 不愉快そうにルーチェさんが言う。
《この地の神……おかみの神を滅ぼす千年に一度あるかないかの好機が訪れた……そう言ってますね》

「異次元通路って壊せます?」
《無理》と、アウラさん。
《前にも言ったけど、次元通路関係は弱いのよ。あたし達精霊は、自力じゃ精霊界から出られなかったでしょ? 次元の壁をぶち壊すことも修正することもできないのよ》

《通路自体を凍結すれば、一時的に魔の出現は塞げますわ》
 氷のグラキエス様が、ツーンとした顔でおっしゃる。
「お願いします!」
《ソワを貸しなさい、ジャン。ソワの闇に紛れ、分散している異次元通路の側まで行きますわ》
「了解。グラキエス様の指示に従ってくれ、ソワ」
《うん》と、ソワ。
《いずれは氷は解けますわ。その前に、おかみの神とやらに力を取り戻させなさい。よろしくって、ジャン?》
「わかりました!」
 どうやるかわかんないけど、その方向で!

 グラキエス様達が姿を消す。

 だからって、いきなり敵の数が減るわけじゃない。
 精霊達に守られながら、オレとジョゼは襲い来る前方の敵を倒した。ティーナが倒し損ねた奴等だ。

 雷の精霊を身に宿らせた義妹は、全身が紫に輝いている。レイの力の宿った拳や蹴りが、敵を粉砕してゆく。140〜180万と素晴らしい数字が出ている。

 対するオレも絶好調。130〜160万ぐらいのダメージ値を出し、追加効果も184万ダメになっている。完全なオーバーキル。
 てか、やっぱ、追加効果はオレのダメージ値次第だったんだ。100万以下を出してないんで、追加効果は常に184万ダメ。仲間の数が92人だから、その倍の値が出てるんだ。
 この世界の魔も、裏冒険世界同様に防御力が低いんだ。だから、オレでもこれだけ大活躍ができるんだよなー

《……それだけではありません》
 オレの内側から、水の精霊マーイさんの声がした。
《ご主人様はお強くなられました》
 む?
《裏冒険世界では……ジョゼさんは魔に対し110〜150万ダメージを出していました。が、あの時、ご主人様は90〜105万ダメージしか出せなかったのです》
 そうだったかも。
《ですが、今日はジョゼさんは140〜180万、ご主人様は130〜160万です……》
 おおお!
 なるほど!
 強くなってる! 前回は最高ダメージでも、ジョゼの最低ダメにすら及ばなかったのに! 最高ダメではあいかわらず負けてるけど、ジョゼの最低ダメ以上は出せるようになったじゃん、オレ!
《手毬のおかげですね……魔族へのダメージ倍率を伸ばす効果もあるようです……良かったですね、ご主人様。力のある神様のご寵愛を得られて》
 マーイさんの声には、元気がなかった。どことなく暗い。あまり嬉しくなさそうな……?
《……そんな事はありません。ご主人様がお強くなられ、魔王戦で生き延びてくださること……それが私の一番の望みですから……》
 寂しそうに笑っている……そんなイメージがマーイさんから伝わってきた。


 急斜面は結界ごと風の精霊の空中浮遊で運んでもらい、迫りくる魔だけを退治する。

 沢の音、落下する水流の音が近づいて来る。

 木々の間から、遠くに滝が見えた。
 崖からかなり豪快に水が落下している。大きな滝のようだ。
 木々の枝が邪魔で、よく見えないが。

 結界ごと沢へと降り、上流を目指す。

 黒い瘴気が強くなる。
 滝を目指し押し寄せる邪悪なものたち。
 そいつらの侵攻を、雄大な滝の前で紅蓮の炎が防いでいる。

 サラだ。

 まばゆく燃えているのは、浄化の炎だ。
 滝へと近づく邪悪を捕え、跡形も残らぬよう焼き尽くしている。

 そして、一時的に炎を切り裂き、飛び出てくる矢。
 道を塞ぐものを、全て貫き、全て葬ってゆく 青い光だ。
 99万9999ダメ。
 一直線に走る矢が、魔を葬り、何処までも飛んでゆく。
 カトリーヌの黄金弓の矢だ。
 青い光が遠のくと、次の矢が炎の先から現れる。

 サラが滝を守り、カトリーヌが迫る魔を倒している。

《このまま、まっすぐ。あたしの後について来て》と、ティーナ。
《あたしの通る道には、狩人さんは矢を射ないでくれる。アナムがあたし達の接近を伝えてるわ》

 ティーナと共に前方の敵を倒し、道を切り開き進む。

 オレ達が近づくと、炎の結界はそこだけぱっくりと割れた。
 急いで中に入ると、あっという間に、穴は閉ざされた。

 ひんやりとした空気を感じた。
 結界の内側は清浄そのもの。
 炎がもたらす熱すらも入りこんでいない。

 神々しい滝があった。
 崖から激しく落ちる水。
 轟音。
 水煙で滝壺は半分以上見えない。水飛沫が遠くまで飛んでいた。

 滝壺からそれほど遠くない岩の上にサラは立っていた。
 目を閉ざし、うつむいた顔が厳かに見える。その口はぶつぶつと小さく何かをつぶやいていた。
 岩の上に杖をつき、たたずむ魔術師。ストロベリーブロンドの髪をなびかせるその姿は、冒険物語の大魔術師のようだった。

「パメラと神様は滝壺の中よ!」
 別の岩にたたずむ狩人が叫ぶ。
 黄金弓を用いて、敵を葬りながら。
 滝壺の中? 水中?
「聖なる結界を張って! タマちゃんが産まれるまで、パメラ達を守って!」

 滝壺に向かいながら、オレは光の精霊に助力を頼んだ。

 聖なる結界が、滝とその周辺をドーム状に包み込む。

 輝かしい光に押され、魔が後退してゆく。

 滝はもちろんオレ達もすっぽり覆う形で、ルーチェさんの結界が完成。
 それを見届けたサラが、ぐらりと体を揺らした。
 杖に体重をあずけ、何とか堪えようとする。が、かなわず、そのまま倒れかける。

 駆け寄り、その体を支えようとした。

 だが、しかし……左手首から先が言うことをきいてくれなかった。治してもらったばっかの手は、まだまともに動かないんだ。
 サラを支えきれず、濡れた岩に足をすべらせオレは尻もちをついた。
 痛っ〜
 けど、サラはオレの上に覆いかぶさってる。無事……なはず。

「大丈夫か、サラ?」

 幼馴染が顔をあげる。
 顔色が悪い。全身から力も抜けている。精も魂も尽き果てたって感じだ。防御結界を張るのに、魔力も体力も使いきったのか。
 その口が何かをつぶやく。
 しかし、滝の音がうるさすぎて聞こえない。

 顔を近づけ、マーイさんに頼んだ。聴覚をもうちょっと良くしてくれ、と。

 サラの声が聞こえた。

「バカ……」

 む。

 血の下がった真っ白な顔。オレを見て、幼馴染は弱々しく微笑んだ。
「かっこわるぅ……女の子ぐらい……ささえろ」
「おまえが重すぎるんだよ」
 嘘だけど。
 サラがクスッと笑う。
「……起きてよかった、ジャン……」
「ああ。起きた。寝ぼすけで、ごめんな」
 頑張らせすぎちまった……ごめんよ。

「パメラさん……守って……」
「わかった」
「ちょっとだけ……やすむ……。すぐに起きる……から……」
 サラが瞼を閉じる。
 オレは幼馴染をぎゅっと抱きしめてから、土の精霊に頼みサラを運んでもらった。心配そうにジョゼが、サラのもとへ走り寄る。

 ルーチェさんの光の結界に阻まれ、魔は滝には近寄れない。だが、立ち去る気はないらしく、結界外の闇がどんどん濃くなってゆく。

「なにがあったんだ? おかみの神の試練を受けてるって聞いてきたんだが」
 オレはカトリーヌに尋ねた。

 キツネ耳とキツネ尻尾をつけたまんまのカトリーヌが、闇を睨みながら岩の上に座る。吐く息が荒い。長時間、矢を射続けていたんだろう、こちらも疲れきっているようだ。
 カトリーヌの側には、緑色のもこもこが小さな岩のようにうずくまっていた。
 ドラゴンのきぐるみだ。だが、中に誰も入っていない。折り畳まれている。

「試練を全てこなして、パメラはおかみの神様に気に入られたわ……おかみの神様はタマちゃんを産み直す事を約束してくださったの」
「産み直す?」
「そ。パメラのたまごはね……産まれてくるのに、同族の気が必要だったの。両親兄妹祖父母……誰かしらから力を分けてもらわないと誕生できないってわけ。でも、私達の世界にはタマちゃんの同族は一匹もいない……だから、同族亜種のおかみの神様に産み直していただき、気をわけていただく事にしたのよ」

「産み直す? どうやるの?」
 カトリーヌは肩をすくめた。『そんなの、私が知ってるわけないでしょ』と言いたそうに。

「パメラとおかみの神様とタマちゃんは儀式中。滝壺に沈んでもう一昼夜よ……難産っぽいわね……すぐに産み直せるって、おかみの神様おっしゃってたのに……心配だわ」
「一昼夜も滝壺の中ぁ? パメラさん、溺れて死んでない?」
 カトリーヌがジロリとオレを睨む。すげぇおっかない顔。
「……すみません。馬鹿なことを言いました」
「水神と一緒なのよ、溺れるものですか。でも、お産が長引いたせいで、おかみの神様の御力が弱まって聖なる結界が解けちゃったのよね。夜中からず〜っと滝を防衛してたのよ」
 徹夜なのか……お疲れさまです。

 まだ日が落ちてないのに、辺りは真っ暗になってしまった。
 魔の気が濃すぎて、日の光がさえぎられているんだ。
《おかみの神は聖なる水の神……瘴気が強くなって光系物質が不足したせいで、お産が遅れてるのかもしれません》
 ルーチェさんが神妙な顔となる。
《私、おかみの神に吸収されてきましょうか?》
「やめて。すぐに次の世界に行かなきゃいけないのに、今、ルーチェさんに四散されたら困る」
《……ですよね》

 セリアが『悪霊あっちいけ棒 改・改』のライトを滝壺へと向ける。多少は援助になるかもしれないが……
 闇を祓う爆発的な光が無くては、おかみの神の助けとはならないだろう。

 オレがそう思った時だった。
 高笑いが聞こえたのは。

 目ではなく、マーイさんが知覚したものをオレも感じた。
 凄まじい風と神々しい光が、遠くから凄い勢いで接近して来る。

《待たせたな》
 闇の中から、クロバさんの声がする。続いて聞こえたのは男の声だった。

「大気汚染、結界破壊、交通妨害、小霊の四散、殺神未遂の現行犯だ。みのほどしらずに、あつかましくも、分をわきまえずに、水神を倒そうなどど思いあがったクズどもよ。内なる俺の霊魂が、マッハで、きさまらの罪を言い渡す」

 あ?

「有罪! 浄霊する!」
 この変なしゃべりは、あの方以外ありえない! てか、裏ジパングでもバイトですかっ!

「その死をもって、己が大罪を償え・・・真・終焉ノ(グッバイ・)滅ビヲ(イービル・)迎エシ神覇ノ(ファイナル・)贖焔(バーン)!」
 出た、大技! 吸血鬼王(ノーラ)と互角だったヤツ! 死霊王(ベティさん)もこれで吹っ飛ばされたらしい!

 闇の中から光が一気にふくれ上がり、どデカい白光の玉と化してゆく。見る見る闇が溶けてゆく。
「ククク・・・滅べ」
 男が呟くと同時に、強大な浄化魔法が爆発的に周囲に広がっていった。





 西に傾きかけた太陽。強い日差しが照っているというのに、雨粒を感じた。
 パラパラと雨が降っている。
 虹のかかった滝の前に、女の人が居た。

 その美しさに、オレは息をのんだ。


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと七〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 胸まで垂れた髪と裸体に絡みつく白い大蛇によって、大事なところは隠されていたが……
 一糸まとわぬ姿だった。
 素晴らしいボンキュッボン。
 やわらかそうな大きな胸、きゅっとしまった腰、張りが合って豊かなお尻……すらりとした長い四肢……
 全てが完璧だ。

 赤みの少ないブロンドの髪はさらさらと流れ、そのグレーの瞳は澄みきっている。眉も鼻も唇も神の采配を感じさせる美の極致、神像のように美しい。
挿絵(By みてみん)
 オレ達を見て女の人が微笑む。慈愛に満ちた女神のような顔で。

「パメラさん……?」
 パメラさん……だよな?

《すまなんだ、黒羽(クロバ)に行者。助力感謝する》
 パメラさんの口から厳かな声が漏れる。その声もしゃべり方も表情も、パメラさんのものではない……
 何かに憑依されている……

 オレの背後に、爆乳天狗のクロバさんが居た。
 少し後方に修験者姿の男も。男は神霊ではなく、人間。年の頃は三〜四十。
 パメラさんに対し、クロバさんも男も膝をつく。

 パメラさんを敬う男の姿や表情からわかった。『マッハな方』はもう居ない。この近辺の邪悪を祓った後、『マッハな方』は還ってしまったようだ。

《よそから来た勇者よ》
 パメラさんがにっこりと微笑む。
(われ)の娘を頼むぞ》
「娘さん?」

 パメラさんが、体にまとわりつく白蛇を撫でる。
 む?
 違う。蛇じゃない。足がある。それに口はワニみたいだし、角があるし……

 思い出した。
 桃桃酒家でユンユンちゃんに見せてもらった『龍』……あれによく似ている。

《このものを産み直し、我の娘とした。水の神の子じゃ。龍のおらぬそなたの国に、新たな一族を築くであろう》

 龍……

 オレが萌えたのは……
 パメラさんに宿る『おかみの神』様のようだ。


 魔王が目覚めるのは五日後だ。

 パメラさんは、龍の子を自分の獣にしたらしい。


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№093)

名前 オカミノカミ
所属世界   裏 ジパング界
種族     龍神
職業     水の神
特徴     古えの時代から尊敬される、
       えらい神様らしい。
       ドラゴンと龍の違いがわからない。
       セリアによると、アシュリン様は火竜、
       おかみの神様は水龍なのだそうだ。
戦闘方法   不明
年齢     不明
容姿     龍。
       人型変化は、美人だといいなあ。
口癖    『(われ)
好きなもの  水
嫌いなもの  魔
勇者に一言 『我の娘を頼むぞ』
挿絵(By みてみん)
+注意+
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