挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ハーレム100 作者:松宮星

裏 ジパング界

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

140/224

ルネのひとりごと (※)

 魔王戦は、五日後。

 武器開発は、もはや最終段階。
 アルファテストを終え、ベータテストに入り、最後の改良をする時期に入った。
 シャルル様の立ててくださった計画では……

 けれども!
 世の中とは、思い通りにならないもの!

 決してサボっていたわけではない!
 休みなしで、睡眠時間を削って頑張ってきた!

 しかし!
 ベータどころか、アルファテストにすらこぎつけられていない!
 現在、武器は鋭意製作中なのだ!

 私だけではなく開発メンバーも、最大限の努力をしてくれている。
 さまざまなアイデアを出してくれ、魔法炉等の私の苦手分野の開発・改良・接合を引き受けてくれ、ネジ作りやネジ巻きの単純作業をやってくれ、ご飯まで作ってくれる。
 ものすご〜く感謝している。
 助手って形で、大学や工房から来てくださったみなさまに、問題などない。みなさまのおかげで、飛躍的に開発スピードはあがった。

 でも!
 世の中には、ハプニングがつきもの!

 完成品が爆発したり、開発途中のものが爆発したり、部品が爆発するのは、よくあること!
 作っているうちに、あれ? これ? 何か違うな〜 ここをこうしたらもっと凄くない? と気づいて最初から作り直すのもよくあること!
 計画したものとは、ちょっとというか、かなりというか、まったく違うものが出来るのも、よくあること!

 発明とは独創的なもの!
 人類史上になかった新たな物を生み出し、私は歴史を作っているのだ!
 迷うのは当然、失敗があるのも当然、遅れるのも当然なのだ!

 発明は生活をより豊かにし、みんなに笑顔を運ぶ為にある!
 今回は武器!
 過程はどうでもいい!
 納期までに、魔王に大ダメージを与えられるエゲツナイ武器が準備できていればいいのだ!

 今日を含め、五日もあるんだし!

 不眠不休で頑張れば、どうにかなる!

 前向きになると、絶好調に良いアイデアが浮かぶ。

 人間の最大欲求は『睡眠欲・食欲・性欲』。
 百日もの間眠っていた魔王は……いいなあ、百日も寝られて……二、三時間、横になりたい……
 いやいやいや!
 寝てる場合じゃない!
 ともかくも! 魔王は百日も眠ってたわけだから! 睡眠欲はすごく満たされているわけで!
 対して、食欲と性欲は飢餓状態のはず。
 そこをつけば、ダメージが与えられる?
 豪勢なお食事と美女をちらつかせる? 見せるだけ? でも、それだけでは精神ダメージしか与えられない……
 そうか!
 食事や美女が爆発すればいいのか!
『おたべになって 君』!
 あ〜……でも、魔王は男だし〜
『君』は没。
『おたべになって ちゃん』!
 これに決めた!

 新アイデアを盛り込んで新たな(・・・)武器を、朝から作り始めた。

 だが、こんな時ほど、邪魔が入る。
 好事魔多し。


「聖教会の偉い方から召喚状?」
 すぐに来いとのお召し。
 今それどころではないのだけれども、お言葉に従う事にした。
 聖教会は敵に回せないのだ。
 聖教会の教えは世に深く浸透している。聖教会が『悪』と定めたものは、世の中で『悪』として受け入れられてしまう。
 私や私の発明品を悪しざまに言われたら、もはや復旧不可能。私の発明家人生はピリオドを迎える。
 絶対、嫌われてはいけないのだ。
 それに、偉い方はいずれスポンサーになってくださるかもしれない。
 ご機嫌はとっておくに限る。


 大学院生で貴族のサガモア君を助手として伴い、聖教会まで行った。

 奥の立派な部屋に通され、白髭のお爺さんに会う。
 副院長様とのこと。
 かなり偉い方だ。

 何だか難しい話をいっぱいしてくださった。
 しかし、それは……
 拷問に等しかった。
 耳に心地良いお優しい声で、訓話や教えを交え、延々と語りかけてくださるのだもの……寝るなという方が無理だ。このとこ平均二〜三時間睡眠だし……
『迷子くん』を着て来て良かった……直立不動姿勢のまま固定できるし、頭部はフルフェイスのヘルメットだ。半透明なシールドガードだから顔は外からまったく見えないし、音声カットすれば寝息が外に漏れることもない……
 サガモア君が居るし、後はどうにかしてくれるだろう……
 そう思いつつ、眠りに就いた。

 電気ショックで、目が覚める。
 助手のサガモア君が、『迷子くん』の緊急起床回路を使用したようだ。さすが、サガモア君! 私の発明品を熟知している!
 サガモア君が副院長様の話を要約して語った上で、どうなさいます? と聞いてきた。さすが、サガモア君! 素晴らしい連携プレイ! 私が寝ていたのを内緒にする形で、事情説明までしてくれるとは!
 副院長様は、蓄霊器『霊力ためる君』を使っちゃ駄目だとおっしゃっていたようだ。
 人の魂を削る構造に違いなく、彷徨える魂に悪しき影響を与えるであろう、と。
「わかりました。ご忠告に従います」
 と、神妙に答えておいた。

 ずいぶん前に聖教会の普通の神父さんにした質問が、めぐりめぐって偉い方のお耳にまで届いたらしい。

 あの時は、ニーナさんの霊力をエネルギーに変換し、大ダメージの武器を作りたかったのだ。
 けれども、その後、エスエフ界に行って、エネルギー問題はエネルギーパックを使用する事で解決した。
 更に言えば、高エネルギーが必要だった『最終兵器ひかる君』や『ラグナロク君』は魔王戦での使用をあきらめている。魔王城で使用すれば、勇者とその仲間達の生命も危険だというのが理由だ。

 蓄霊器『霊力ためる君』が使用不可となったのは、正直、痛い。
 まあ、今回の発明品には、何の問題も無いが。現在あるエネルギーパックで足りるよう、魔王戦用の武器は開発する。

 けれども、エスエフ界の部品は有限だ。
 エネルギーパックは、いずれは無くなる。
 魔王戦後に、軽量な金属、伝導率のいい回路、エネルギー変換効率のいいエネルギー媒体……何らかの技術進歩をもたらす発明をしなくては……

 そういえば、エスエフ界から持って来た金属合板。あれと同じものを魔法金属で製作しようとしたら、まず魔術師が魔力を吹き込む過程を見学させていただいて……

 どわっ!

 電気ショック再び!
 痺れる!

「ルネ、又、寝てるのか?」
 サガモア君の声は、不機嫌そのもの。
 だからって、話しかけるのに緊急起床回路を使わなくとも……ぶちぶち。
「今は起きてますよ。金属合板改良のアイデアが浮かびかけていまして」
「で、又、トリップしていたのか……」
 サガモア君が溜息をつく。

 気がつけば……
 辺りの景色が違う。
 聖教会から出て、街の通りに出たようだ。
 おお、何時の間に!
「素晴らしい! 私、副院長との話を何時の間にか終わらせ、きちんと外に出ていたんですね!」
「何を言ってるんだよ! キミが黙りこんで返事しないから、僕が『迷子くん』をリモコン操作したんだ! 『YES』『NO』をしゃべらせ、僕に追従させて移動したんじゃないか!」
「おおお! そうだったんですか! サガモア君、助かりました! ありがとーございます!」
「まったく……キミって人は」
 サガモア君が大きく溜息をつく。
「すぐトリップしちゃうわ、話はちぐはぐだわ……天才とは、天才ゆえに、人としてあるべきものが何処かしら欠けていても仕方がないが……」
「お誉めいただき恐縮です!」
「誉めてるのは半分だけだ! 半分は文句言ってるんだよ!」
「恐縮です!」

「ルネ。これから、オランジュ邸に行ってくれないか?」
「え〜」
 せっかく絶好調なのに。
「後じゃいけませんか? 実は今朝、いいアイデアが浮かびましてね、『おたべになって ちゃん』という食べ物型爆弾を」

「ちょっと待て!」
 私の話をサガモア君が遮る。
「今日は『ポチンとな君』の照準の最終調整をする予定だったろ? 終わったのか?」
「アレですか! アレはですね、まあ、アレですよ! そこそこのとこまでは、たぶん!」
「……終わってないんだな?」
「そうとも言います! でも、大丈夫! 射出はしますから!」
「照準が合ってなきゃ、魔王に当たらないだろ!」
「大丈夫! (まと)が大きいから、飛びさえすればきっと当たりますよ!」
 めまいを起こしたのかフラ〜ッとよろけ、サガモア君が額に手をあてる。
「わかった……『ポチンとな君』の照準の最終調整は僕がやるよ」
「え? いいんですか?」
 サガモア君、何っていい人! 精確性を追求するだけの、つまらない単純作業を代わりにやってくれるなんて!

「『ポチンとな君』は僕が引き受ける。だから、キミはオランジュ邸に行ってくれ。シャルル様のご予定を伺って来てくれないか?」
「シャルル様のご予定?」
 シャルル様は私のスポンサーだ。金払いのいい方。発明の相談にも気軽にのってくださる、頼もしいパトロンだ。
 大学の教授や学生&工房の親方や弟子達を私に助手として斡旋してくれたのも、非常に助かった。
 シャルル様のご紹介で、サガモア君も私の助手となった。子爵家の三男なのに、三度のゴハンより機械(メカ)が好き! な話の合う子だ。貴族って感じがしない

「当初の予定では、今日、ベータテストだったろ?」
「はあ」
「開発の遅れはシャルル様とてご承知だ。だが、あの方が昨日どころか今日になっても何のアプローチもなさってこられないんだ。おかしいとは思わないか?」
 首を傾げた。
 サガモア君は、侯爵家嫡子のシャルル様を『様』付けで呼び、どういう理由(わけ)か年下のシャルル様をやたら尊敬しているんだけれども……
「いいじゃないですか、ほっとけば。スポンサーが催促に来ないなら、めっけものです」
 実際、今、出来てないわけだし。

「そうじゃない! あちらで何かトラブルが遭ったんじゃないかって僕は心配してるんだ!」
 え?
「勇者様が異世界に旅立って、九日が過ぎた。魔王戦は五日後。あと、もう一つの世界に行かなきゃいけなんだろ?」
「そうですね」
「勇者様が異世界からご帰還なさると、毎度、会議だったよな?」
「そうですね」
「会議の招集……昨日も今日もないよな? 勇者様の異世界滞在予定は一週間内だったのに」

「………」

 え?
 て、ことは?

「もしかして、勇者様、還ってない? 裏ジパング界で迷子? それとも死んだ? あの方、騙されやすいし! イザベルさん曰く『運気最低』だそうですし! どこで死んでもおかしくありません! この世界の希望の光が、異世界で露と消えたんですか!」

「ルネ、声が大きい! 街中なんだから、もっと静かに!」

 たいへんだ。
 たいへんだ。
 たいへんだ。
挿絵(By みてみん)
 勇者様が死んだら、私の華麗なる未来はおしまい。
 魔王戦で大活躍した発明家として、脚光を浴びる予定だったのに!

 魔王の天下になったら、発明どころではなくなってしまう!


 サガモア君を残し、『迷子くん』の背中のロケットエンジンで空を飛んでオランジュ邸に行った。

 予想通り、屋敷内はただならぬ雰囲気。

 勇者様の部屋では、シャルル様とシャルロット様、それにみんなでテーブルを囲んで話し合いをしていた。

「あら、ルネさん」
 占い師のイザベルさんが、うふふと笑って手を振ってくれる。
 私はイザベルさんのもとへ直行した。
 この方は、凄い占い師なのだ。
 私の発明品が売れ出したのも、勇者様の仲間となれたのも、その縁でシャルル様をスポンサーにゲットできたのも、全てイザベルさんのおかげ。
 発明品を着て歩けば運気があがるとイザベルさんが教えてくださったからこそ、今の私があるのだ!
 イザベルさんのお告げさえあれば、今回も絶対どうにかなる!
「勇者様、還ってないんですよね? どうなさったんでしょう? 占ってください!」

「ごめんなさい、シャルルさま達にもお伝えしていたのだけれども、私、目の前にいる人間しか占えないの。裏ジパングで勇者さまが今どうなさってるかはわからないのよ」
「……そうなのですか」
「でも、多分、亡くなってはいないわ」
 イザベルさんが、テーブルの上の水晶玉を撫でる。
「勇者さまが亡くなれば……勇者さまと深い絆のある私たち……そして、この部屋の魔法陣に何らかの兆しが現れるはず……勇者さまはご無事よ」
 そうと聞いて、少しだけホッとした。

「ルネさん、どうぞお心を乱されないよう。明るいあなたに、苦悩の影は似合いません」
 シャルル様が金のおぐしを撫で、フッと笑みを浮かべられる。
「几帳面で責任感の強いセリアが同道しているのです。帰還の遅れには相応の理由があり、勇者も仲間達も納得の上で裏ジパング界に留まっていると判断すべきでしょう」
 なるほど!

「裏ジパングが当たりの国で、がっぽがっぽ仲間を増やしてるとか?」と、リーズさん。
「あー そうだといいねー」と、アナベラさん。
「けど、まあ、100人揃えられなかった時の用心に、別館の女どもをそのままにしときゃいいんだろ?」
 勇者様は、十二の世界で百人の女性を仲間としなければいけない。十二の世界を回っても百人集められなかった場合に備え、シャルル様はこの世界で優秀な仲間候補の女性を探していた。
 リーズさん達はそのお手伝いをし、『これは!』という女性を集め、オランジュ邸の別館に連れて来たのだ。
 と、いっても、魔王に116万以上のダメは無理そうな女性ばかり。
 いわば、補欠。
 魔王戦前日までは別館にとどめおいて、定員割れした時にのみ勇者様に会ってもらう……ということらしい。

「でも、しっかりしているように見えて、セリア姉さま、けっこううっかりさんだから」
 シャルル様の妹のシャルロット様が、口元に手をそえて令嬢らしく微笑まれる。
「こよみを間違えてるとか〜 何らかのトラブルに巻き込まれた可能性も否定できませんわよね」

「それを言わないでくれ、シャルロット……」
 考えないようにしてるのだからと言いたそうに、シャルル様が額に手をあてる。
 リーズさんも、あさっての方角を見つめる。
 ニーナさんも心配そう。
 イザベルさんとマリー様とアナベラさんは、いつも通りにこやかだけれども。

「あれこれ思い悩んだところで、仕方がない。何か打てる手があるわけではなし……。この世界に残っている我々はなすべきことをなしていればいい」
「そうですね! さすが、シャルル様!」と、私。
 持ちあげられるタイミングは見逃さない!
 スポンサーは大事にしなくては!
 ドレス着用義務を怠っている分、他の所でしっかり点数を稼がねば!

 スポンサーからのリクエストではあるけれども、ドレスは今は無理!
 着替える時間があったら発明したいもの!

 ん?

 あ!
 そうか!
『迷子くん』の上から着用すればいいのか!
『迷子くん』用のドレスを発明しよう!
 どーせなら、ギミック満載のドレスがいいなー ポケットから鳩が出るとか、スカートがめくれてミサイル発射とか……


「と、いうことで、私は」
 シャルル様が席を立たれる。
「ルネさんの屋敷に行く。後は、頼んだぞ、シャルロット」
「はい、お兄様」

 は?

 なぜ、私の家にシャルル様が?

 シャルル様が私に対し、頭を下げる。
「ルネさん、魔王戦用武器のテスト日を指定しておきながら何の連絡もせず、すみませんでした。呼びに来てくださったのでしょう? お美しいあなたを煩わせてしまって、たいへん申し訳ありませんでした」

 え?

 嘘!
 そんな〜

 ああああ、サガモア君の馬鹿〜!
 テストの誘いに来たと思われちゃったじゃないか〜

 まともに動くの、ほとんど無いのに〜


 魔王が目覚めるのは、五日後……


 でも、徹夜でがんばれば、きっと……

 いや、絶対、間に合う!
 前向きにそう信じる!

 私はやれば、できる!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ