挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ハーレム100 作者:松宮星

裏 ジパング界

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

135/224

くもの いと    【カグラ】(※)

 薄暗い森の中では、きらめく白い糸はほとんど見えない。
 だが、水の精霊マーイさんと同化してもらってるんで、肉眼じゃほぼ見えないものがはっきりと見えた。
 木々の間に広がるそれらは、まるでレースのカーテンのようだった。
 繊細な糸が同心円状に張られ、複雑な美しい模様を形作っている。上質なレースの刺繍が施されているようだ。
 森の奥の方まで、あちこちでカーテンが揺れているようだった。

 けれども、それは……
 美しいカーテン群ではなく……
 木々の間の宙に張られた、カスミ網のようなものだった。

 白いカーテン状のものには、いろんなモノが囚われていた。

 主に、雲みたいな形のはっきりしない霊だ。小鳥やウサギやタヌキや虫も居る。
 みんな動けないのか、動く気力がないのか、白い糸のそばでただジッとしている。疲れ果てているように見えた。
 人間の目で見ると、動物の中には見えるものと見えないものが居る。本物の動物に神霊が混じってるっぽい。

《くもの ようかい かぐらの あみだ》
 子供の姿の神様が、不機嫌そうな顔で淡々と言う。
《あみを はって えものを とる》

「ようかい……?」
『妖怪』って単語が頭に浮かんだ。
「妖怪って、なんです? 神様とは違うんです?」
《かみは まつられる ものだ。 ようかいとは そこに あるものだ》
 む?
「どうちがうんでしょう?」
《たいして かわらん》
 むむ?
《かみのなかにも ちいさきものが おり ようかいのなかにも おおきなものが おる。 ありようが ちがう だけだ》
 むむむ?
 アネコ様が、ジロリとオレを睨む。
《ことばを かさねても おまえには わからん。 ばかは あたまを つかうな》
 むぅ……
「わかりました」
 フィーリングで理解しよう。

 蜘蛛の網から、パメラさんへと視線を動かした。
 獣使いは、悲しそうな顔で囚われたものたちを見ていた。でも、助けようとはしない。弱肉強食は獣の世界では、常識。獣使いとして、獲物となった生き物に感情移入しながらも、捕食者の生態も否定できないんだ。

《かぐらは このもりの さきに いる。 おとこを とりこに する ましょうの おんな。 ちちも しりも でかい。 ねつを あげてる かみも おおいぞ》
 魔性のボンキュッボン……
 想像してたら、アネコ様のめつきが一層きつくなっていた。おっかない顔で、オレを睨んでる。
……ボンキュッボン好きの男に、もしかして怨みが? やたら、胸とお尻の大きさにこだわってるもんなあ、アネコ様。
《あえば きっと おまえも かぐらを すきに なる。 つよくて きれいな おんなだぞ》

 蜘蛛女か……

 キュンとこない。
 でも、魔王が目覚めるのは十四日後。萌えたからって仲間にできるとも限らないわけだし、出逢いのチャンスはなるべくものにすべき。

《まっすぐ いけ。 かぐらの いえへの みちだ》
 アネコ様が、森の先を指さす。
 レースのカーテンのような蜘蛛の網が、あっちこっちの木と木の間の空間に張られている。ざっと見ただけで、十はありそうだ。

《おれは ここに のこる。 おれが とおると すべてが だいなしだ。 わなも あとかた なくなる》
 むっつりした顔で、アネコ様が蜘蛛の網群を見る。あっちこっちの網に、いろんなものがくっついている。一つの罠に二〜五匹くっついているかんじ。
《かぐらめ よくばりすぎだ。 くいきれん だろうに》

 アネコ様が手毬をオレへと差し出す。
《もってけ。 おまえ しだいで たすけと なる》
「オレ次第?」
《おれの こころが つまっている》
 アネコ様が口の端をゆがめて笑う。
《かぐらに わたせ》
 紹介状かな?
 お礼を言って、手毬を受け取った。

 森の先の蜘蛛妖怪に会いに行くと伝えると、
「お一人では、危険です。ジョゼさんとサラさんを護衛におつけください」
 と、セリアに言われた。が、断った。
 護衛してもらうとなると神霊が見えなきゃ、話にならない。
 けど、精霊を憑依させてその目を借りたら……二人はパニックになる。絶対になる。特に、サラ。

 アネコ様は、自分の周囲に結界を持っている。結界の中には他の神霊が入ってこないんで、ここまでオレは気兼ねなく移動できた。
 だが、しかし……こっから先、アネコ様の結界外に出るわけで……
……いろんなものが芋洗いがごとくこみあう中を歩かなきゃならない。
 何かをムニュッと踏んづけ、グチャッと潰し、ネバネバヌルヌグッチョンベッチョンな空気をかきわけなきゃ進めないんだ。かなり嫌〜んな感じ。
 そのうえ……いっぱい居るんだ。結界ぎりぎりのところにゃ、ムカデの霊がびっちりと……。蛇やカエルやナメクジや油虫まで。
 うじゃうじゃ蠢いてる蟲達を踏んづけかきわけ進むとか……無理だろ、普通の女の子には。

 オレは装備を確認した。剣も装飾品もおっけー。
 水の精霊マーイさんが一緒だし、いざとなったら装飾品から他の精霊達を呼び出せる。何とかなるだろう。

 そう思って、外に出た。
 足元にも宙にも、何かがもじゃもじゃしてる。
 うひぃってな気分だったんだが……
 オレが足を踏み出した途端、そこにいたもの達は急いで脇へと逃げた。

 オレが近づくだけで、足元のも宙のも場所をあけて下がってくれる。

《……手毬のおかげです》と、水のマーイさん。
《ご主人様の体を覆うように、あの神様の結界のミニチュア版ができています……》

 おお!
 アネコ様の御威光で、進行方向の場所をあけてもらえるのか!
 踏まずに進めるぞ、ラッキー!

 と、調子にのって歩いてたら……
 近づいただけで、蜘蛛の網までもがオレの体の大きさ分だけ消えてしまった。
 ミニチュア結界が、蜘蛛の網を壊したんだ。
 蜘蛛の網が崩れ、そこに囚われていたもの達が逃げてゆく。

「………」
 やば。
 設置済みの罠を、壊してしまった。

「あ」
 背後から、パメラさんの声。
 振り返ると、ドラゴンのきぐるみの人は、困惑顔だった。
 逃げ行く動物の霊達を笑みと共に見送りながらも、オレには責めるような視線を向ける。静かにかぶりを振っている。

 蜘蛛の捕食網を壊してはいけない、とその顔は言っていた。

 だが、この先は蜘蛛の網だらけだ。道を塞ぐように、いっぱい垂れている。身を縮ませて端っこを歩いたって、無理。狭すぎて、通る時にどうしたって網を壊してしまうだろう。

「アネコ様」
 オレは子供の神様に聞いてみた。
「カグラは、強い妖怪なんですよね?」

《つよいぞ》
 アネコ様は口の端だけをゆがめて笑う。
《にんげんなぞ たばに なって かかっても かなわん》

 そうと聞いて、心は決まった。

 道の真ん中をつっきる事にした。
 囚われの獲物がいたら、そいつらに絡まってる網が外れるよう、進路を変えて前進した。

……囚われの霊達がジーッとオレを見ている。期待と不安がないまぜた目で。目のないヤツも、体をひねってオレに注目する。
 助けてくれるよね? そっちの子を助けたから、今度はこっちだよね? お願い、助けてと、みんなが全身で訴えている。
 オレはその思いに応えながら進んで行った。





 気がついたら、オレは、真っ暗な闇の中に居た。
 転移魔法かなんかで運ばれたんだろう。

《かぐらで、ありんす》
 闇の中に青白く輝く光があった。
 燐のような輝きが、妖艶な美女を闇から浮かび上がらせていた。

 とても綺麗だ。
 魔性の女と呼ばれるのも、頷ける。

 だが、しかし……
 オレ的には、まったくキュンキュンしなかった。

 まず髪形が普通じゃない。
 結いあげた髪に、髪飾りを凄まじいまでに挿している。櫛やら棒みたいのやら……チリンチリン鳴る飾りも垂れてる。左右対称になるよう綺麗に装ってはいるものの、すげぇ頭が重そう。

 でもって、たいへん色っぽい顔だちをなさっているんだが……
 表情がない。
 白塗りの顔に紅を差して眉を描いたお化粧も、つくりものめいて見える。まるで人形だ。

 そして何よりも、その衣装……
 重厚すぎる着物と帯。裾も長すぎ。重すぎて、まともに歩けなさそうな。
 前で結び、だらりと垂らした帯は赤。金糸銀糸をふんだんに使った豪奢な帯。花と蝶が美しくデザインされている。
 対して、ぶ厚い着物は黒地でシックな感じ。蜘蛛の巣柄が白紋で描かれている。
 目の前の女性が、蜘蛛の変化だと示すかのように。

《わらしさまから、聞きんした。ぬしさん、異世界勇者で、おありんすかェ》
 カグラの手には、アネコ様の赤い手毬があった。オレの手にあった物。奪られたようだ。
 そして、オレはというと……全身を糸でぐるぐる巻きにされてカグラの足元に転がっていた。首から上はかろうじて出ていたが、動けない。手足の指一本動かせないんだ。

 オレは心の中でマーイさんに話しかけてみた。何があったのか? と。
 けれども、返事が返らない。
 憑依していた水の精霊の存在が感じられない。
 マーイさんは、オレからひき剥がされたのか?
 なら、神秘を見通す目を失ったはずだ。なのに、蜘蛛の妖怪の姿がはっきりと見える。どういうことなんだ?

《術で御活躍を見ておりんした。わっちの巣を、壊して来なんしたね? 縁なき囚われのものを救い、見返りも求めず逃がす。深い情をお持ちの、ほんに……虫唾が走るほどにお優しいお方でありんすなあ》
 表情を変えず、声も澄ましている。しかし……
《良い事をしたと、お思いかェ? 人間はみな、同じ。憐れむのは、綺麗でかわいいものにだけ。蜘蛛なんぞの食べ物を奪おうが、家を壊そうが、お心は痛まんのでござんしょう?》
 オレを見下ろす目は、ゾッとするほどに冷たい。
《蜘蛛とて、食べねば死ぬ、家を奪われれば死ぬ。それで、わっちらが死んでも、構わんのにござんしょう? 醜きものも、光の下にあれぬものも、悪とお思いでありんしょう?》
「そんな事はない。見た目だけで相手を嫌ったりしないぞ」
《口では何とでも言えますハ……男なんぞ、口先だけ。くかいのおんなにご立派なおやさしいことを聞かせ、その実、実なぞ微塵もありんせん》
 むぅ……
 カグラは言い回しが難しすぎて、言ってることがよくわかんない。
 醜いモノを悪と決めつける奴は嫌い、口では優しい事を言うけど本当は優しくないから男は嫌い……そう言ってるのか?

「オレの精霊は何処だ?」
《ぬしさんのご家来かェ? 外に待たせてありんす》
 やっぱ剥がされたのか。
「精霊がいないのに、おまえの姿がはっきり見える。なぜだ?」
《わっちが、ぬしさんとお話したいからでありんす》
 む?
「妖怪って人に姿を見せたり見せなかったりできるのか?」
(しょう)によりんすハ》
 むむ?
《もののけには、これといった定めはござんせん。あるべき形にあるだけにありんす》
 むむむ?
 何だか、又、難しい話に……
 わかんない時は、何となくで理解しよう。
 アネコ様は子供にしか見えない神様、その辺にいるうじゃうじゃは神秘を見通す目がなきゃ見えないもの、カグラは人間に姿を見せることもできる妖怪。
 この世界の神霊は、個体ごとに性質が違う。たぶん、そういうことなんだろう。

 オレが口を閉ざしていると、カグラが微笑みかけてきた。
《もう心残りはござんせんかェ?》
 白塗りの美しい顔はまるで人形のよう。唇だけが笑っていた。
《ならば、ぬしさん、わっちと一つになりなんし》
 カグラの周囲から、わらわらと子蜘蛛が現れる。オレの親指ぐらいの大きさしかないが、半端なく数が多い。百とか二百じゃきかない数だ。
 襲わせる気か……
「オレを食べるのか?」
 カグラは袖で口をおさえて笑った。
《わっちらの食事を逃がしたにおざんしょう。身をもって、償いなんし》

「いやだ」
 はっきりと言った。
「悪い事をしてないのに、償えるか」

 カグラが、品の良い眉を微かにしかめる。
《さすがは勇者……。醜き蜘蛛なんぞ悪。その巣を壊すも、獲物を逃がすも、正義とおっせぇすか?》

「正義じゃない、掃除だ」
 オレはきっぱりと言った。
「自宅前の道を網で塞ぐな。誰かが通れるスペースぐらいあけとけ。お客が困るだろうが」

 カグラが更に眉をしかめる。
《戯言を。ただの『掃除』なら、獲物を逃がす必要はおありんせん》

「ああ。そうだ。必要ない。逃がしたいから、逃がした」
 そこは正直に認めた。
「けど、おまえだって必要ないほど捕まえてたろう? アネコ様が言ってたぞ、『かぐらめ、よくばりすぎだ。 くいきれん だろうに』って」
《何をどれだけ捕ろうが、わっちの勝手》
「ああ、そうだな。勝手だ。だから、オレも勝手にした。勝手に壊させてもらったんだ」
《なぜ?》
「オレが勇者だからだ」
 はあ? って感じに眉をしかめる相手に、しっかりと伝えた。
「助けを求める弱者を見捨てるのは、勇者道に反する。捕食者と獲物が生き残りを賭けてぎりぎりの戦いをしてるんなら、邪魔はしない。けど、おまえの網はそうじゃない。やり過ぎだ。だから、介入した」

 巣を壊さなきゃ進めないとわかった時、どーしようか迷った。
 会いにいくべきか、やめて来た道を引き返そうか。
 それに……『助けて』と訴える小さなもの達も気になってしょうがなかった。弱肉強食の掟からすると何もしないのが正しいんだが、心情的には弱者を見捨てたくなかった。

 どーしようか、しばらく考え……

《ばかは あたまを つかうな》……アネコ様のご助言を思い出した。
 考えてもわかんない時は、考えない。フィーリングで理解する。心の赴くままに行動する。それがオレには合っている。
『カグラは、強い妖怪』なのだと、アネコ様は言ってた。なら、巣が壊されても、いきなり飢え死にはすまい。そう信じ、オレは心のままに行動した。

《偉そうに……。ぬしさんに指図されるいわれはござんせん。許せんとおっせぇすなら、勇者としてわっちを調伏しなんし》

 カグラは悠然とたたずんでいたが……その周りの子蜘蛛達がわらわらとオレへと殺到してくる。

「よせ、戦いたくない」って言ったんだが、それに対しカグラは嘲笑で応えた。
《手足も翅もないその身で、何をおっせぇすやら。ここは、わっちの結界の中。剣は振るえず、ご家来衆は呼び出せずでは、なす術なしにござんしょう?》
 やっぱり他の精霊も呼び出せないのか……
 けど、オレにはまだ反撃の手立てがある。

《わっちらの肉になりなんし》

「オレと戦うと後悔するぞ」
 一応、警告はした。が、カグラは冷淡に笑うだけだ。子蜘蛛を止める気はなさそう。

 なので、最終兵器を使った。

 ものすご〜く、使いたくはなかったけど。

 糸でぐるぐる巻きになってるんで、体がどうなってるのかわかんなかったが……
 左手首には、絶対、アレがある。外れるわけがない。
 そう確信し、オレは光の封印を解く魔法を唱えた。

「窓を閉ざして」

 かくして……
『悪霊から守るくん 改・改』から、凶器の音楽が流れ始めた。
 マリーちゃんの歌声だ。

 裏冒険世界で大活躍だった『悪霊から守るくん 改・改』。その威力は、破壊的なまでに凄まじい。数えきれぬほどの魔を追い払い、数多くの人間を失神させ、精霊達はあやうく四散しかけた。
 ノーダメージだったのは、おそらく『マッハな方』だけ。
 それ以外の者は、耳にしただけで否応なく天国へと誘われてゆくのだ……

 まず子蜘蛛がひっくりかえり、つづいて、カグラの手からアネコ様の手毬が落ち何処かへと転がっていった。
 重たげな衣装のカグラが、ふらりと体をふらつかせる。
 白塗りの顔に、感情が浮かぶ。
 眉をしかめ、目を細め、紅を差した唇を噛みしめている。

 ドキンとした。

 苦しそうなその顔が、更に苦痛にゆがむ。

 気が遠くなるような音楽を耳にしながら、オレは見た。
 カグラの姿が一瞬で変わるのを。

 重たげな髪飾りは無くなり、髪は結いあげてもいない。洗ったばかりのように背に垂らしている。
 動きづらそうな重厚な衣装も無くなり、白い肌着のような着物だけとなる。
 顔も白塗りじゃない。人形めいた化粧をやめた顔は、とても綺麗で色っぽかった。しかし、艶っぽい表情の似合わない、少女っぽい幼さも漂っていた。
 カグラは大きく目を見張っていた。が、やがて悲しそうに微笑み、ゆっくりと瞼を閉ざしてゆく。
 うつぶせに倒れ行くその姿……
 背から血飛沫があがる。
 髪がばさりと広がる。その背には大きな刀傷が走っていた。
 地の上に乱れて散る黒髪。白い着物。赤い血……。
 そのカグラの上に、はらりと蜘蛛の巣が落ちる。
 黒い蜘蛛が居た。足が二本足りない。蜘蛛は不器用に、カグラの上を這いまわり……
 血の中へと溶け込んでいった。
 カグラと一つになっていった……

 幻……だと思った。

 けれども、死にゆく女が浮かべた表情はあまりにも憐れで……
 せつなくて……
 胸が苦しくなった。


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと十二〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。





 それから、どんどんカグラの術は解けていった。まるで霧が晴れるかのように。
 オレの体に絡んでいた糸が消え、青白い炎も失せ、真っ暗闇だった周囲が夕闇の野原へと変わる。カグラの結界が解けたのだ。

 オレは地面に倒れながら、カグラを見た。
 小さな黒い蜘蛛が一匹だけ、すぐそばの地面に転がっている。

 アネコ様の言葉を思い出した。《かみは まつられる ものだ。 ようかいとは そこに あるものだ》。
 この世界の仕組みはよくわからないけれども……
 妖怪とは恐ろしいだけのものではない……それだけは、なんとなくわかった。

「ジャン!」
 幼馴染の声。
 オレの名を叫びながら、ちょっと離れた森から幼馴染が飛び出てくる。魔術師の杖を持ったまま、懸命に駆けて来る。

「……サラ」
 心配をかけちまったか……大丈夫だと右手をあげたかったが、動けなかった。

 視界がぼやける。
 気が遠くなりかけている……

 サラがオレを抱き起こす。
 治癒してもらえるのかと思ったんだが……
 飛んできたのは平手打ちだった。

「さっさと、ソレを止めろ、馬鹿!」

 痛みで、意識がちょっぴり覚醒する。
『悪霊から守るくん 改・改』を稼働させたまんまだっけ。

 どうりで、失神しかけるわけだ。


 魔王が目覚めるのは、十四日後だ。


『悪霊から守るくん 改・改』を止めたら、マーイさんが戻って来た。良かった。


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№088)

名前 カグラ
所属世界   裏 ジパング界
種族     妖怪
職業     蜘蛛の親分・罠設置狩人。
特徴     森の中に蜘蛛の網をはりまくり
       獲物を狩っていた。
       独特の言葉使いをする。
       妖怪になるには悲しいいきさつが
       あったらしい。
戦闘方法   子蜘蛛を使う
年齢     不明。
容姿     飾りがいっぱいの変わった髪形。
       重厚すぎる着物と帯。
       苦界の女性の装いらしい。
       真っ白な白粉顔に紅をひいているが、
       化粧無しの顔の方が綺麗だと思う。
口癖    『わっち』『ありんす』
好きなもの  獲物。
嫌いなもの  醜いものや闇にあらねばならないものを
       迫害する奴。
勇者に一言 『勇者としてわっちを調伏しなんし』
挿絵(By みてみん)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ