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ハーレム100 作者:松宮星

裏 冒険世界

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裏 ジパング界へ

 会議前、オレはルネさんを捉まえた。左手首の発明品を取って欲しい、と。

「外れない? おかしいですね。接着剤噴射機能はないんですが……勇者様にジャストフィットのサイズだったんですねー 『悪霊から守るくん 改・改』に注目なさるなんて、さすが勇者様。お目が、高い!」
 注目はしてません、外れないだけです。
 オレの左手の発明品をいじりながら、ルネさんは首をかしげた。今日も今日とてロボットアーマー姿だ。
「電ノコなら外せるかも? でも、無理やり外すのはお勧めしません。魔法機関が爆発する危険がありますので」
 う。
「これ、魔力充電式なので、稼働後最長二十日で活動が停止します」
「稼働してから二十日……って、魔王戦当日じゃん!」
「いいえ、大丈夫! 勇者様は『悪霊から守るくん 改・改』を何度かご使用になってますよね? 残量メーターからして、このままでも十日もすれば燃料切れでーす。ご使用いただければ、更に活動時間が短縮されます」
「じゃ、それから解体してもらえばいい?」
「いいえ! 解体の必要はありません!」
 ロボットアーマーの人が、えっへんと胸をそらせる。
「自爆機能が搭載されてますから!」

 自爆……?

「内部燃料が乏しくなりますとね、『無念。モハヤココマデ!』と叫んで自爆するんですよ! 自爆ですよ、自爆! メカのロマンです! カッコいいでしょ?」

 いやいやいやいやいや!
「外してください、すぐに!」
 オレの左手首で爆発だなんて、冗談じゃない!

「え〜! 自爆といっても、本体破壊のみの小規模爆発。装備者には無害ですよ」
「ほんとーに?」
「本当です」
「でも、オレの手首で自爆しちゃうんでしょ? 無傷なんて、ありえないんじゃ?」
「いいえ、だいじょーぶですよ! 勇者様のお体には傷一つつくはずがありません!」
「何で……そう言いきれるんです?」
「それは、もちろん」
 ルネさんが、あっけらかーんと言いきる。
「発明家の勘でーす。私の勘が、勇者様はご無事だと全力で告げているんです!」

「外してください、今すぐ!」

 悪いけど、ルネさんの勘は信じられない!

 しかし、結局、外れず……
「ぶっ壊すぐらいなら、いざって時の用心に旅に持ってたら? かなりアレだけど、実際、役に立ったわけだし」と、横からリーズに言われ、呪いのアイテムもどきをしばらくつけてる事にした。
 燃料残量に気をつけつつ、ヤバい時期にさしかかったら土の精霊に同化してもらう。物理防御力の高いサブレが憑依してくれれば、左手首から先が無くなる事はないだろう……多分。

 ついでに言うと、『ルネ ぐれーと・でらっくすⅢ』を貰った。前回同様、雷のエクレールに預け、チェックを頼んだ。旅の間に役に立ちそうなモノを、すぐに出してもらえるように。





「では、会議を始めます」
 みなで長テーブルを囲んだ。オレの伴侶達とシャルルとシャルロットちゃん。
 今回も全員、ケモ耳、ケモ帽子、きぐるみ姿だ。

 ドラゴンのきぐるみ姿のパメラさんは、もふもふの手で小さな箱を手にしていた。ポチ2号の培養カプセルによく似ている。

 わんこ耳のセリアが、いつも通り進行役をする。
「魔王戦は十四日後。増やすべき仲間は、あと十四人。昼食後には、勇者様には裏ジパング界へ旅立っていただきます。時間もありませんので、要点のみを簡潔に私からお伝えします。ご不明な点がございましたら、遠慮なくおっしゃってください」

 セリアはまず、裏冒険世界でのオレ達の行動・新たな仲間について、かいつまんで語った。
 王宮残留組からも話をしっかり聞いていた。オレらが旅立った後、王宮でも一回だけ大きな戦闘があったらしい。知らなかった。
 しかし……セリアはちゃんと睡眠をとったのだろうか? きびきびとした姿はいつも通りで、体調は悪くなさそうだが。

 つづいて、こちらであった事を語ってくれた。
 精霊界とエスエフ界の裏世界については、尚も研究中。ルネさんの武器開発は、おおむね順調らしい。

 そこまで話が進んで気づいた。
 セリアの左右に、またいとこのシャルルとシャルロットちゃんが居るんだ、セリアの補佐役として。
 だが、シャルルは何も言わない。机に肘をつき、額に手の甲をあててうつむいたままだ……さっきから、ずっとその姿勢。
 もしかして……
 寝てる……?
 何しに来たんだよ、おまえ……
 シャルロットちゃんは、しゃんとしている。良かったね、朝が弱いバカに似なくて。金の巻き毛にネコ耳カチューシャ。シャルロットちゃんは、とても可愛い。オレの視線に気づいたシャルロットちゃんが、にっこりと微笑みかけてくれる。ますます可愛い。


「勇者様と冒険世界に赴く仲間も千慮いたしました……まずは、獣使いのパメラさん」
『女神の何でも答えちゃおうコーナー』で、神様が言ってたんだ。パメラさんが魔王戦で使えるペットは、オレが十番目に訪れる世界で手に入るって。次がその十番目。パメラさんは絶対に連れて行かなきゃ。
「実はですね、勇者様。裏ジパング界への呪文が判明したのは、パメラさんの卵のおかげなのです
 ん?
「パメラさんが、獣使いの村で得た卵……かなり長い年月、卵のまま村に伝わっていたものなのだそうですが……それはずっと歌を歌っているのだそうです」
 む?
「モンスターの卵はある程度育つと、さまざまな事ができます。移動したり、獲物を食したり、仲間同士で意思疎通したり、人間の言語を覚えたり……」
「へー。で、パメラさんの卵は歌を歌っているのか」
「その歌は私にはまったく聞こえません。でも、パメラさんの耳には、はっきりと届くのだそうです。その歌をパメラさんが人間の言葉に翻訳してくれ、それがきっかけとなって裏ジパング界への転移・帰還呪文がわかったのです」
「……どういうこと?」
「パメラさんの卵は、裏ジパング界に行きたがっていて、あちらの世界のことを歌っているのですよ。あちらに、欲しいものがあるのでしょう」
 モンスターの卵は、温めても孵るとは限らない。卵ごとに好みがあり、満足できるものを与えられなきゃ、生まれようとしないらしい。
 孵る気もなく、『ずっと夢を見たがっている』卵に、パメラさんは困っていた。
 セリアの視線が、パメラさんの手の中の箱へと向く。オレもつられて見た。
「今、卵はあの中です。異世界に無事に運べるよう、ルネさんが衝撃吸収用の箱を準備してくださったんです」

 卵が孵るのはめでたいが……

 パメラさんが持っている箱は、掌サイズの大きさだ。
「……小さい卵だね」
 ヒュドラのヒュドちゃんは建物の三階に頭部が届くほどデカかったし、ものすごく強いらしい。
 産まれたばっかの幼獣が、ヒュドちゃんより強いのだろうか?

「モンスターの強さは、体の大きさだけでは決まらないわ」
 と、言ったのは、パメラさんではなく、女狩人だった。
「小指サイズのモンスターがたった一体で、村を全滅させる事だってあるのよ」
 人間との会話が苦手なパメラさんの代わりに、言いたいであろうことを代わりに言っているのだ。
「パメラの卵はね、獣使いの村に伝わる一番いい卵だったの。ず〜っと誰にも懐かなかった卵が、この子を主人と認めたのよ。いい? これは凄い事なのよ? ヒュドちゃんよりも強い仔が孵るのよ、絶対だわ」

 パメラさんや卵への侮辱は許さない! カトリーヌの鼻息は荒い。

「パメラさん」
 オレが声をかけると、ドラゴンのきぐるみはビクッと身をすくませた。
「裏ジパングへの道を見つけてくださって、ありがとうございます。卵さんにも感謝します」
 パメラさんがおどおどとした顔で、オレを見る。パメラさんは人間が苦手だ。ドラゴンの帽子を被っただけのオレじゃ、やっぱまだ怖いみたいだ。
「向こうで、卵が孵るのが楽しみですね」
 オレがそう言うと、パメラさんは弱々しく微笑んだ。
 すごく綺麗だ……
 澄みきったグレーの瞳。眉も鼻も唇も頬も完璧で、パメラさんは神像のように美しい。
 殊に、目に惹かれる。穢れたところが全くなくて、赤ん坊か動物みたいな目なんだ。

「裏世界に赴く二人目は、狩人のカトリーヌさん。カトリーヌさんならば、パメラさんと卵の旅を手伝うことができますし、戦闘力もありますので」
 当然でしょって顔で、女狩人がフフンと笑う。今日も、キツネ耳を装着している。

「それから、魔術師のサラさん。格闘家のジョゼさん」
 幼馴染と義妹が一緒なのは、いつものこと。
 だが、セリアがこの二人を選ぶのは、オレの為だろう。
 お師匠様を失った時、オレは精神的なもろさを見せた。旅の間にオレが精神的に不安定とならないよう、サラとジョゼを伴わせるわけだ。

「最後の一人なのですが……」
 セリアは、マリーちゃんを見つめた。聖女様は、修道尼僧の頭巾の上にウサ耳サークレットをつけている。
「強化補助及び回復の使い手は旅に必須。勇者様の精霊以外にも、一人欲しいところです。一番優秀な使い手はマリーさんである事はよく存じております。しかし、」
 セリアは一呼吸おいてから、言葉を続けた。
「裏ジパング界には、私が参ります。マリーさんは、どうぞご静養ください」
 静養?

「あの〜 セリアさん、私、どこも、悪く、ないのですが〜」
 マリーちゃんがおっとりと言うと、セリアはかぶりを振った。
「裏冒険世界でのことは精霊達から聞きました。三日間何度も『マッハな方』の憑依体となり、残りの三日は暗黒神官の虜囚となられていたのだと。お体は、かなりおつらいはずです」
「そんなこと、ないですよ〜 だいじょうぶ、です〜」
「今、無理をしていただきたくありません」
 セリアが強い口調で言った。
「魔王戦は十四日後……万全の体調で臨んでいただきたいのです。魔界で私がご無理を強いたせいで、マリーさんは治癒魔法がかかりづらいお体になってしまわれました。過労には、充分な休息と睡眠と栄養のある食事が一番です。どうか今はご静養ください、お願いします」

「でも……」
 マリーちゃんが、困惑した顔でセリアを見る。
「たしかに、少し、体は、重いですが、それぐらい、です〜 休む、ほどでは、ありません。勇者さまを、お助けして、光の教えを、守ることが、私の、役目。私は、みなさまのために、働きたい、のです〜」

「聖女さま。そうやって無理をなさるのが、あなたの悪いところ。あなたは勇者さま達との間に壁をつくっていらっしゃるわ……」
 イザベルさんだ。テーブルの上の水晶玉を撫でている。
「あなたは、苦しい胸の内を誰にも打ち明けず、体がつらくても隠そうとばかりなさる……ご自分を大事にしなさすぎですわ」
「そんなことは……」
「いいえ、そうです……罪悪感、ですね……あなたは自分を卑下しすぎている……『ここに居てはいけない』……そう思ってません?」
 え?
「涙……苦しみ……故郷の方々に申し訳なく思っていますね……自分だけ助かってしまったから……」
 なぜ、それを?
 マリーちゃんが異世界人だって事、オレやアナベラやリーズは知ってる。けど、他の誰にも話してないし、精霊達から話を聞いたセリアもその事に関して何も触れなかった。
 なのに……わかってるんだ。
 感じとったのか!
 さすが、イザベルさん! 国一番の占い師。
「そして、勇者さま達に……あ、いいえ、違うわ……人間全てに遠慮している……神さまに仕え、この世界の為に働かなくては、と必死になっている……」
 イザベルさんが、丸い水晶を撫でている。
「あなたはお優しい方だから、苦しみにある方を支え助けようとなさる……でも、人を助けるばかりで、誰かを頼ろうとはなさらない……みんな、がっかりですわ。勇者さまも、セリアさんも、サラちゃんも……みんな、あなたが大好きですのに。あなたから受けた優しさを、万分の一でもお返ししたいと思っているのに」
 うふふとイザベルさんは笑った。
「倒れるまで無理なさってはいけないわ。あなたがどんな人間でも、誰も気にしません。あなたは勇者さまの伴侶……セリアさんたちの仲間なのです……たまには、弱さを見せてはいかがです? あなたから甘えられれば、みんな喜びますわよ」

 マリーちゃんは、しばらくイザベルさんを見つめ、それからうつむいた。
「あなたは、『ここに居ていい』のです……あなたが『ここに居ること』を、みなが望んでいるのですから……」
 納得がいった。マリーちゃんが、時にひどく頑固だったり、自分を捨てて他人に奉仕しようと頑張りすぎるのは……異世界人である負い目からだったのか。

 オレは急いで席を立った。が、間に合わなかった。
 目元をおさえたマリーちゃんに、左右からハンカチが差し出されている。ジョゼとリーズだ。更にジョゼの隣のサラまでハンカチを持っている。
《いいこ、いいこ。おねーちゃん、なかないで》
 白い幽霊ニーナが移動魔法でマリーちゃんのそばに現れ、頭巾を被った頭を撫で撫でしている。
 マリーちゃんはジョゼのハンカチを受け取り、ひっこめかけていたリーズやサラのハンカチも『いただけますか?』とお願いして受け取り、三枚をそっと胸にあてた。
「ありがとう、ございます、みなさま〜」
 涙を流しながら、マリーちゃんはほわっと微笑んでいた。
「わがままを、言わせて、いただきます……体が、ちょっと、つらいので、魔王戦に、備え、しばらく、お休みを、いただきます〜」

「いいんじゃねーの」
 そっぽを向きながら、リーズが言う。
「あんたの体が元気なら、魔王戦であのマッハ野郎が大暴れできる。総ダメが伸びるわけだから、学者のおねーちゃんも勇者も大喜びだぜ」
「はい……」

「次の世界で、もしも『マッハな方』に会えたら、話せる事は全部話してもらいます。マリーさんの気持ちも、ちゃんと伝えておきますね」
 オレがそう言うと、マリーちゃんはとてもかわいらしく微笑んだ。
「ありがとう、ございます〜 勇者さま〜」


 セリアがコホンと咳払いをする。
「では、勇者様と共に異世界に赴くメンバーは決定という事で」

 それから、セリアはテキパキと指示を出していった。
「私が不在の間、何か問題が生じましたら、シャルルかシャルロットまでお願いします。ルネさんは武器開発、ニーナはポチ2号の世話、マリーさんとイザベルさんは静養……」
 学者の視線が、ビキニ戦士と盗賊に向く。
「アナベラさんとリーズ。あなた方はシャルルの指示で動いてください」
「いいよー」とビキニ戦士は二つ返事だったが、
「なんでだよ」と、生意気盗賊はすごく嫌そうだった。セリアの隣のお貴族様を、毛虫でも見るみたいに見てるし。

「前にも言いましたよね? 勇者様は、十二の世界で百人の女性を仲間としなければいけません。裏世界で仲間をあまり増やせなかった場合に備え、この世界で優秀な仲間候補を探しておかなければならないのです。シャルルが諜報員を使ってさせている仕事を、しばらく手伝ってください」

「少々、荒事もあるので……一流の戦士と盗賊に手伝ってもらえると有り難い」
 起きてたのか……顔をあげたシャルルがフッと気障に笑う。ネコ耳カチューシャをつけてるから、格好つかないが。
 リーズはケッ! と視線を外した。


 会議は終わり、ルネさんは自宅へ。
 アナベラとリーズは、シャルルに連れられて何処かへ行ってしまった。あああ……最近、見なれてたけど、離れるとなるとすごく寂しい……さようなら、ぷるんぷるんのぷりんぷりん……

「勇者様」
 サラ達も旅の支度を整えに部屋へと戻った。残っているのはニーナぐらい。すっかり閑散とした部屋で、セリアがオレに話しかけてきた。わんこ耳をやめて、学者の角帽を被ってる。

「少々、気になる事がございます……まだ推測の段階なので、勇者様だけにお話しいたしますが……」
 そう言って、セリアがオレに紙を手渡した。
「精霊達からデータをもらいました。まずはこちらをご覧ください」
 オレは書いてある文字を目で追った。


※勇者の剣ダメージ値※

●仲間75人の時【攻撃対象 NINJAの武器】 
   814ダメ+追加効果 75万ダメージ

●仲間79人の時【攻撃対象 魔族】
 14万ダメージ+追加効果 79万ダメージ
105万ダメージ+追加効果158万ダメージ

●仲間80人の時【攻撃対象 魔族】
101万ダメージ+追加効果160万ダメージ

●仲間82人の時【攻撃対象 魔族】
 95万ダメージ+追加効果 82万ダメージ
102万ダメージ+追加効果164万ダメージ
 89万ダメージ+追加効果 82万ダメージ
 93万ダメージ+追加効果 82万ダメージ
(類似につき以下省略)

●仲間84人の時【攻撃対象 海賊の武器】
 54万ダメージ+追加効果 84万ダメージ
 38万ダメージ+追加効果 84万ダメージ
 62万ダメージ+追加効果 84万ダメージ
 49万ダメージ+追加効果 84万ダメージ


「データが少ないので、断言はできませんが」
 セリアがメガネのフレームを持ちあげる。
「勇者の剣の追加ダメージは、勇者様の攻撃によって変化するように思われます」
 え?
「勇者様の攻撃が814ダメ〜95万ダメの時は、追加効果は仲間の数だけでしたが……101万〜105万ダメの時には、仲間の数の二倍となっております」
 オレは、紙の数字をもっかい目で追った。
 確かに! 追加効果が100万オーバーになったのは、オレが100万以上のダメを出した時だけだ。
「勇者の剣とは、勇者様の攻撃力が高ければ高いほど、追加効果が大きくなる剣……そのような推測が成り立ちます」

 え、じゃあ……
「オレが201万以上のダメージ出せば、追加効果は仲間の数の三倍?」
 100人の仲間がいれば、追加効果300万ダメージ?

「その可能性はありますね」

 魔王戦で……
 オレがショボイ攻撃をすれば、追加効果は100万。
    101万以上のダメなら追加効果は200万
    201万以上のダメなら追加効果は300万
    301万以上のダメなら追加効果は400万
    401万以上なら……

「倍々かもしれませんが……」と、セリア。
 え?
「101万以上のダメなら追加効果は200万、201万以上なら400万ということです」

 じゃあ……
 301万以上のダメなら追加効果は800万!
 401万以上なら、えっと、1600万! おぉぉぉ! 501万だと……


「勇者様、夢ばかり見ないでください。無礼を承知で、言わせていただきます。裏冒険世界で101万以上のダメージを出せたのは、相手の防御力が低かったからです。魔王相手に101万以上の攻撃など……不可能ですよね?」

 う。

 うぅぅぅぅ。

……そうですね。

……魔王って防御力、めちゃくちゃ高いし。
……無理ですよね、オレには。

「勇者の剣とは、勇者様の攻撃値次第で爆発的に追加効果が伸びてゆく剣。私の仮説が正しければ、確かに『どっか〜んな剣』ではありますが……」
 セリアが口元に手をあて、考えこむ。

 せっかくの剣も、今のオレじゃ生かせない。宝のもちぐされだ。
 何か手はないものか……

 せめて、101万以上出したい……
 いや、どうせなら、201万……
 もうちょっと頑張って301万……
 ハッ! オレが501万出せば、追加ダメ3200万か! すげぇ、でかい!
 いやいやいや! ちょっと待て! 601万出せば、6400万なわけで! おおおおおお! チュド〜ンを越えとる!
 そうだ! 701万を出せば、オレは1人で1億以上……





 夢を見てる間に昼食も終わり、旅立ちの時間となった。

 オレは、『勇者の書 39――カガミ マサタカ』を魔法絹布の上に逆さに置いた。
 この書を使うのは、これで三度目。お世話になりまくりです、カガミ マサタカさん。

 共に旅立つ仲間のうち、セリアだけが前に居る。聞き取りづらい声でブツブツと何かをつぶやき、手や足や首や体をせわしなく動かしている。古代技法の仕込み中だ。
 ジョゼ、サラ、セリア、パメラさん、カトリーヌはオレの後ろに居る。カトリーヌはキツネ耳と尻尾をつけたまんまだ。異世界でも、それで通す気なのか? パメラさんが喜ぶから?……ちょっと見直したぞ、女狩人。愛の為に、そこまでやるのか!
 少し離れた所から、マリーちゃん、イザベルさん、ニーナ、シャルロットちゃんがオレ達の旅立ちを見守っている。

「……  様と子と聖霊の御力によりて、奇跡を与え給え。魔法陣反転の法!」
 三十九代目勇者の書の下から、明るい光が広がり始めた。
 魔法絹布に刻むべき魔法陣に、古代技法の力が作用しだしたのだ。

 魔法陣反転の法の効果時間は、十分ほど。
 セリアが下がり、代わりにオレが一歩進み出る。

「どうぞお気をつけて……勇者様、セリア姉さま、みなさま」
「みなさまに、神の、ご加護が、あります、ように〜」
「うふふ。よりよい良い星がみなさんの頭上に輝くよう、お祈りしておりますわ」
《おにーちゃん、おねーちゃん、がんばってね! またねー》

 残る仲間達へと手を振ってから、セリアからもらったカンペを見た。
 仲間達が苦労して見つけてくれた呪文だ、ありがたく思いながら唱え始めた。


 魔王が目覚めるのは、十四日後だ。


 異世界への旅も、裏ジパングを含め二つとなった。

 あと十四人……
 百人まで、あともうちょっとだ。

 生き延びる為に、頑張ろう。

 そう思いながら、オレは魔法陣を通って仲間達と共に裏ジパング界へと旅立って行った……
+注意+
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