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ハーレム100 作者:松宮星

裏 冒険世界

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裏 冒険世界から (※)

「私……勇者さまの、世界の、人間じゃ、ないんです〜」
 泣きはらした顔で、マリーちゃんが弱々しく微笑む。

「女神さまから、お許しを、いただいて、住ませて、もらっている、異世界人、なのです……」

……そうだったのか。

「生まれた、世界の、ことは、あまり、覚えて、ません〜 けれども、さみしい、所でした〜 この、裏冒険世界より、もっと、もっと、光のない、世界、でした〜」
 バジル達から離れ、螺旋階段の側でオレはマリーちゃんの話を聞いた。アナベラとリーズが距離をとってオレらを見守っている。

「暗くて、寒くて、おなががすいて……私、泣いて、ばかり、いました〜 そんな、私を、はげまして、くれたのが、おにいちゃん、でした……」
 マリーちゃんが右手を見つめる。
「顔も、名前も、おぼえて、いません。本当に、おにいちゃんか、だったのか、どうかも……もしかしたら、近所のおにいちゃん、だったのかも……でも、ずっと、手を引いてくれたんです……雪の中をずっと……」
 右の指を開いては閉じ、閉じては開きを、マリーちゃんが繰り返す。
「指を、ニギニギして、って言われ、ました〜 私、遊びで、ニギニギしてました〜 おにいちゃんが、ニギニギを、返して、くれるのが、嬉しかったんです〜 ニギニギの意味は、大きくなってから、わかりました〜 私の指が、凍傷に、ならないよう、血が通うように、ずっと、マッサージ、していて、くれたんだって……」

「雪の中に、たくさんの人が、いました……でも、少しづつ、いなくなって……おにいちゃんと、私、二人っきりになって、いました……」

「歩けなくなった、私を、おにいちゃんは、背負って、くれました……おにいちゃんだって、小さかったのに……私と、そんなに、背が、かわらなかったのに……」

「吹雪になって……どんどん寒くなって……寝ちゃ、だめだ、と、言われました。私を、眠らせないように、おにいちゃんは、いっぱい、話しかけて、くれました。少し、覚えています……『光はまけない』、『おまえはオレが守る』、『マッハで』……」

「なのに……私、眠ってしまったんです……目覚めた時、私、賢者さまの、腕の中に、いました……眠っている間に、転移して、いたのです……私一人だけ。おにいちゃんは、いませんでした……」

「次に目覚めたのは、聖修道院の、中でした。あたたかい、お部屋には、優しい方が、いっぱいいらして、あたたかい、食事を、ください、ました……別の世界に、来たんだって、子供でも、わかりました〜 おにいちゃんが、送ってくれたんだって」

「『マッハな方』が、最初に、降りて、らっしゃったのは、五つの時でした〜 鳥に憑依した、悪い霊が、私に襲いかかった時、祓ってくださった、んです〜 でも〜」
 マリーちゃんがクスッと笑う。
「今より、ずっと、素朴な、セリフを、おっしゃってました。『ワルいレイよ、おまえなんか、マッハでたおす!』みたいな〜 まだお小さかったんです……私と二つか三つ……それぐらいしか……違わない……なのに、私を……守りに」
 目元を覆うマリーちゃんに、ハンカチを差し出した。
「……ありがとう、ございます」
 弱々しく微笑み、マリーちゃんが目元をぬぐう。

「女神さまは、転移の、経緯は、語れないと、おっしゃいました〜 でも、『マッハな方』を、慕うのは、おっけぇ、だと。おにいちゃんは、女神さまの、眷族神に、なったのかも……そう思っていました。けれども……そうではなく……」
 マリーちゃんがオレを見る。
「どこか、別の、世界で、別の、神さまの、庇護を受けて、いると、魔界で、勇者さまが聞いて、くだすって……それは、たぶん、私の、生まれた、世界ではなく……」
 え?
「『邪悪によって滅びる世界など、二度と金輪際もう決して絶対にあってはならぬのだ』……そうおっしゃる度、あの方から、怒りと、嘆きが、伝わって、くるの、です……私と、あの方の、故郷は、きっと、もう……」

 存在しないのか……

「なぜ、私を、守り続けて、くれるのか、どこで、どんな風に、生きて、いるのか、だれか、支えて、くださる、方と、一緒なのか……知りたい。お話したかったんです……せめて、名前だけでも……私、おにいちゃんの、名前も知らない……」

 オレは、マリーちゃんの右手をそっと握った。
「いつか……絶対、わかります」
「勇者さま……」
「絶対です。だって、『マッハな方』言ってましたもん。『マリーを苦しませるなど、二度と金輪際もう決して絶対にせん』って」
 オレは、マリーちゃんに微笑みかけた。
「神の庇護をうける身では、神の望まぬ事はできない。今は語りたくても、語れないのかもしれない。けれど、マリーさんを悲しませたままにしとくなんて、あの方がするわけがない。いつか、わかりますよ」

「勇者さま……」
 マリーちゃんが、ほんわかした笑みを浮かべる。
「いつも、通り、ですね〜」
「はい?」
「ぜんぜん、驚いて、いらっしゃい、ませんね……私、異世界人、なのに〜」

「驚きませんよ、異世界人ぐらいじゃ」
 オレは笑った。
「イザベルさんなんか、異世界のもと女神様ですよ」
 マリーちゃんが、ほわっと笑う。
「あ〜 そーいえば、そーでしたね〜」
「オレは十二の世界で伴侶を探す勇者です。人間も神様も魔族も精霊も鬼も……みんな大切な伴侶です。生まれた場所が何処でも、どんな種族でも、気にしませんよ」

「だよなー」
 背後から生意気盗賊の声がかかった。
「オカマでもおっけ〜だったもんなー」
 む。
「勇者さまの伴侶って、人魚やネコやウサギやクマ、馬にドラゴンもいるんでしょー だいじょーぶ、聖女さまが、ツノとキバが生えた異世界人でも、勇者さま、気にしないと思うー」
 えへへとアナベラが笑う。
「あたしも、ぜーんぜん気にならない。聖女さまは聖女さまだもん」

「ありがとう、ございます……みなさま〜」
 マリーちゃんの目が、再びうるむ。  
 オレは次のハンカチを差し出した。
「……用意が、よろしい、のですね、勇者さま〜」
「勇者の嗜みです」
 オレがそう言うと、マリーちゃんは明るい顔で笑った。最近、大泣きしてばっかだったから用心して大目に持ってただけなんだが……マリーちゃんが楽しい気持ちになってくれたのなら、良かった。



「十八代目召喚勇者殿! 聖女殿! お仲間の方々! 救出感謝いたす!」
 ババーンと扉を開き、筋肉隆々のおっさんが現れる。ニカッと笑うと白い歯が見える。ぐっすり寝こけてたけど、治癒魔法で起こされたのか。
「ジュリエットとバジルから、全て聞いた。エグリゴーリは許せんが、今回の侵攻に関してだけは、大甘の処分で許す。食糧支援もする。飢餓の余り、又、攻められては困るからな」
 体もデカければ、声もデカい。おっさんが、だっはっはーと笑う。
 デカくてパワフルで、お日様みたいな王様だ。この人が、アンジェリーヌ姫のパパなのか……あんま似てないな。
「さて。隣室のものを助け出し、我が国へ帰ろう……と、いうか、わしには帰る手段はない! どうかわしらを連れ帰ってくれ、十八代目召喚勇者殿!」
「精霊達に頼めば、すぐにも帰還できますが……王様とマリーさんの他にも囚われた方が?」
「うむ。隣の部屋におるそうだ。生贄候補仲間だ」

 オレらは、階段から向かって左の部屋に入った。
 向かって右の部屋は、真っ黒な内装で骸骨の燭台が部屋を照らしていた。けど、それは、吸血鬼王ノーラを召喚する為の部屋だったからで……
 左の部屋は、白レースで飾り立てられたピンクのお部屋だった。天使の翼型燭台が並び、かわいいぬいぐるみも部屋の隅にいっぱい……こっちに来てたら、暗黒神が誰だか一発でわかったよな。
 んでもって、生贄として檻に入れられてるのは、小鹿に兎に犬に猫。きゅんきゅんしそうな愛らしい生き物ばかり。
「私〜 このかわいらしい、方たちと、暗黒神に、捧げられ、かけたんです〜 でも〜 召喚の、儀式が終わって、何も、起こらなくて、セーフでした〜」
 で、『戦慄の地獄の王』ことノーラを召喚したわけか。サボリ魔の暗黒神で良かった……



 塔から出ると、辺りはすっかり夜だった。真っ暗だな〜と思ったら、精霊達が飛びついて来た。
《ジャン!》と、ソワ。
《良かった、ご無事で》と、マーイさん。
《瘴気が消えたのに、ちっとも出てこないんだもんー》と、エクレール。
《べ、べつに、心配したわけじゃないけど、連絡ぐらいは欲しかったかも》と、ティーナ。
 精霊達は塔の中に入れなかったんだ。心配かけちゃったよな……「ごめん」と、謝った。

《精霊支配者が死亡すれば、契約は終了、あたしらは精霊界に強制送還される。無事なのはわかってたわ》
 アウラさんがケラケラ笑う。
《マリーさんも王様も取り戻せたみたいだし、王宮に帰りましょうか》
 アウラさんは、オレらと王様、それから助け出した獣達を檻ごと風の結界に包んだ。
 風の精霊は風から風に渡れる。知覚できる範囲か、行った事のある場所へ跳べるんだ。
 王宮を出てから六日かかった道程を、ほんの一瞬で渡った。

 アウラさんの風がやんだ時、オレらは王宮の召喚の間に戻っていた。

「お兄さま」
 抱きついてきたのは、ジョゼだ。
「ジャン」
 すぐそばにサラも居る。光・氷・土の精霊も。みんな無事だ。

「タイロン様」
「お父様」
 セレスティーヌ王妃様とお姫様が、タイロン国王のもとへ駆け寄る。

《わたし達の状況は、ずっとアナムに伝えてたから》
 ティーナが照れながら言う。
《ずいぶん前に、塔から瘴気が晴れたじゃない? みんな、ここでご主人様(マスター)達の帰りを待っていたのよ》

 オレは、王様と王妃様それからお姫様に挨拶をした。これから国へ還ると。

「還る?」王様はびっくりした。
「なにゆえだ? そなたはこの国の救世主、十八代目召喚勇者……つまりはアンジェリーヌの夫であろう?」 
「オレの世界で十四日後に魔王が目覚めます。奴を倒すのがオレの使命……オレは行かねばなりません」
「なんと!」
 王様は娘へと視線を移した。召喚勇者の妃となるのが、この王家の娘の倣い。勇者に去られる娘を案じているんだ。
 お姫様は父親ににっこりと微笑んでから、オレへとお辞儀をした。
「勇者様とお仲間の方々に、心より感謝いたします。みなさまのおかげで、我が国に光が戻りましたわ。魔王戦までお時間のないお忙しい中……本当にありがとうございました」
 お姫様がオレを見る。愛しそうに、せつなそうに……オレを見つめ続ける。
「ご武運をお祈りいたしますわ、勇者様……魔王戦の後、再会できるよう、神に祈りを捧げ、清廉な日々を送りますわね」

 王妃様とお姫様と侍女のロザリーさん、神聖騎士のジュリエットさんを魔王戦に招待する事も伝えておいた。
 ジュリエットさんはともかく、残りの三人は非戦闘員だ。魔王に対し何らかの敵対行為をしてもらわなきゃいけないけど……どうしたものか。ルネさんと相談しよう。

「魔王戦でお会いできるのですね。楽しみにしておりますわ」
 アンジェリーヌ姫はかわいらしく微笑んだ。

「国を挙げてそなた達に感謝したかったのだが、戦の準備とあらば仕方がない。十八代目召喚勇者殿、ご武運を」

「ロザリー」
 王妃様に命じられ、お姫様づきの侍女がしずしずと進み出てオレへと宝石箱を差し出した。
「王家に伝わる宝石より、アンジェリーヌがあなた様の為に選んだものです。お国でお好みの装飾品にご加工ください」
 てことは……国宝?
「いや、そんな、いただけません」
「どうぞお納めください」
 艶やかな王妃様が微笑む。
「王家の宝石の、ほんの一部ですのよ。全ての宝石を差しあげてもよろしいくらい。あなた様はタイロン様を助けてくださったのですもの」
 宝石箱の中には、大粒の宝石が整然と並んでいた。かなりいいモノなんだろう。
 お姫様が熱っぽい瞳でオレを見る。
「私と思って……どうぞその宝石達をお国にお連れください」
 仕方ないんで受け取ったが……どうしよう。こんな豪勢な宝石いらないのに。


 オレは『勇者の書 61――アリエル』を逆向きに、祭壇の上に置いた。

 頭を垂れ、額の前で両手を組み、お姫様は神に祈りを捧げている。
 ティアラをつけた金の巻き毛。ピンク色の若々しくも華やかなドレス。細い腰が強調され、大きくふくらんで広がったスカート。とても可愛らしいお姫様だ。

 お姫様が、呪文を唱え始める。
 呪文というより、綺麗な旋律の歌だった。

 オレも旋律をくちずさむ。
 召喚・帰還の呪文は、既にサラがお妃さま達から聞いといてくれた。オレはカンペを手に、お姫様の歌に続いた。

 お姫様の顔が、ゆっくりとあがる。
 白い肌、長いまつげ、線の細い可憐な顔……
 思いをこめてオレへと微笑みかける顔は、とても綺麗だった。

 祭壇に描かれた魔法陣が、輝き始める。

「どうぞ、お元気で」気のいい神聖騎士見習いが、オレらへと手を振る。
 神聖騎士のおねえさんは、剣を胸に掲げて敬礼していた。

 この国が平和になって良かった。
 魔王戦を思うと、かなり不安だけど……たぶん、大丈夫……きっと、おそらく……

 旅で出逢った者達を心に浮かべながら、オレは……
 裏冒険世界に別れを告げ、マリーさん達と共に、もとの世界へと還っていった……





 かくして、オレはもとの世界へと還り……

 頭を抱えるセリアの前で、小さくなっていた。


 夜更けだし、誰もいないだろうと思って還ったのに、真っ暗な部屋でニーナがクマさん一家とおままごとをしていて……
 すぐさまオレらの帰還を、セリア達に知らせに行き……

 ガウン姿のセリアとシャルルが登場。
 セリアのガウン姿には、ちょっとキュンとした。髪を下ろしてるから、無防備っぽくって……
 その上、ニコニコ笑ってるんだ。正直、びっくりした。
「ご無事のご帰還、なによりです! お喜びください、勇者様、裏ジパング界転移の呪文がわかりました!」

「おお!」
 託宣を叶える為に、オレはあと二つの異世界にへ行かなきゃいけない。精霊界、エスエフ界、ジパング界の裏世界は存在するのか? 存在するのならどのような呪文で行けるのか、セリアは知識人を招いてず〜と研究していたんだ。

「さすがだ、セリアさん! ありがとう!」
「いいえ。私一人では成し遂げられませんでした。パメラさんと優秀な学者様達のお力添えがあったからこそ。みなさまのおかげです」
 いつもはツンと澄ましてるセリアが、とろけそうな笑顔をみせる。幸せいっぱいって顔をしていた。

 その笑顔を曇らせちゃ悪い、と思った。
「もう夜も遅いですし、詳しい事は明日の朝にお話しましょう」
 うん、そうだね!
「ですが、私の主たる仕事は、情報を分析し、勝率を計算し、魔王戦までに最善の計画を立てる事です。お疲れのところ申し訳ありませんが、新たな仲間のデータをいただけますか?」

……てなわけで、オレは、裏冒険世界で誰を仲間にしたかをセリアに話さなきゃいけなくなって……

 セリアの顔から、満面の笑顔は消えたのだった……

「仲間にしたのは、神聖騎士……それはいいとして……お姫様に王妃様に侍女……? 暗黒神官を三人……そのうち一人は幼女? で、結界師?」
 セリアは頭を抱え、お貴族様は首を傾げた。
「そのお姫様と王妃様は、特殊な王家の方なのかな? 王家にのみ伝わる必殺の古代魔法が使えるとか?」
「……いや、普通のお姫様と王妃様」
「侍女は、特殊訓練を受けた秘密護衛なのかい?」
「……いや、普通の侍女さん」

「勇者様が、相手を選んで萌えるものですか!」
 セリアが、ダン! とテーブルを叩く。
「目の前の女性に、考えなしに無節操にキュンキュンなさるだけです!」
 そんな、ひどい……
挿絵(By みてみん)

 セリアがキッ! と、睨む。オレではなく、オレと共に異世界に行った仲間達を。
「なぜ、止めてくださらなかったんです? 勇者様がどういう方かは、みなさま、良くご存じでしょうに!」

「しょーがねーじゃん。向こう行ったら、バトルばっかでさ、はぐれちまうことが多かったんだよ」
 リーズがあさっての方を見ながら言った。
 うん、そうだよな。でも、チビッ子暗黒神官に萌えた時は側に居たよな?
「そんでも、胸と尻がデカイ女は警戒してたんだぜ。けどさー こいつ、読みづらいんだよ、萌えツボが」

「勇者様の萌えツボは、容姿、破廉恥な格好、けなげ系の性格、日常と非日常のギャップ、それから幼女と動物です」
 ちょっ! それ違う! 幼女と動物は入れないで!

「へー よく知ってるじゃん」
「当然です。私は百一代目勇者様の学者ですから」
 リーズがニヤニヤ笑う。
「なら、次は、あんたがついてって、そのフラフラ男を監視したら?」
 へ?

「何をくだらぬことを」
 フンとセリアが息を吐く。
「私には、裏世界を探すという急務があるのです。勇者様がよりよい伴侶を得られるよう、精霊界もしくはエスエフ界の裏への道を探さねばいけません」

「いや、案外……それは正しい助言かもしれないよ、セリア」
 お貴族様は顎の下に手をあて、やけに真面目そうな顔をしていた。
「我々はあらゆる角度から『勇者の書』や魔法陣を研究してきたが……正直、行き詰っている。殊に君は、ジャン君の為、可能な限りの実験はもう終えてしまっただろう?」
「ですが、」
「事態は、思わぬところから好転するかもしれない。裏ジパング界の時のように、ね」
 シャルルにそう言われ、セリアが口を閉ざす。
 裏ジパングへの行き方、よっぽど変わった方法で見つかったのかな? パメラさんのおかげとか言ってたよな。

「裏ジパングに行ったところで、何の手がかりも得られないかもしれない。だが、それでも、ろくな進捗の無い研究をして無為に過ごすよりは、ジャン君の監視ができる分だけいい。未来につながる」

 セリアがオレをジーッと見つめる。
「勇者様。八大精霊と話をさせてください。裏冒険世界で仲間にした方々の情報を彼女達から得たいのです」
 オレは八大精霊を呼び出した。つっても、メリザンドとシモーヌの情報は精霊達はあまり持ってない。オレがセリアに伝えた。

「……暗黒神官のうち、召喚士は問題ありません。死神王を召喚してもらえばいいのですから。けれども、残りの二人は戦力外の可能性が高そうです」
 え?
「モードはチビッ子だけど、小山のようにデカい御使いを操れて、」
「勇者様、伴侶の方々は魔法陣で召喚されます。その時、共に運べるのは身につけている荷物だけですよ?」
 あ。
「小山のように大きな生き物など、伴えるわけがありません」
……でした。
「結界師にしても……闇の結界で知覚を遮断し、同士討ちさせたようですが……その戦法、魔王には使えませんよね?」
 う。
「借金五人分追加……ですよね?」
 うぅぅぅ。

「裏世界は海のものとも山のものともつきません。これから赴く裏ジパングにしても、戦闘力皆無の女性ばかりかもしれません。けれども、その中でも、少しでも良き出逢いをし、少しでも戦闘力の高い女性を仲間に加えていかねば……魔王戦に勝利できなくなります」

……伴侶を百人集められれば、もう負けないと思う。
 伴侶達だけで5000万ちょいのダメは出せるはず。オレがチュド〜ンすれば、勝てる。
 っくそ……

「その分、アタシ達が頑張りましょう」
 拳を握りしめ、幼馴染が強い口調で言う。
「一ダメージでも二ダメージでも、少しでも多く魔王にダメージを与えられるよう、ギリギリまでアタシも修行を積むわ。絶対、勝つの。勝って笑顔で賢者様の目覚めを迎えるのよ、みんなで」
 サラの言葉に義妹が頷き、こちらも不安そうにオレを見る。

 サラの鼻の頭は、赤く染まっている。瞳も揺れている。
 オレのせいだ。
 オレが究極魔法のことを教えちまったから……ものすごくオレのことを心配しているんだ。馬鹿だった……伝えるべきじゃなかったのに。

 ジョゼも、『チュド〜ン』のことを薄々気づいている。強い仲間を百人集められないとオレがひどい目に合うと、わかっているんだ。

 強い仲間を集めなくっちゃ……

「さあ、解散としよう。ジャン君達には休息が必要。会議は夜が明けてからだ。ルネさん達への連絡は私に任せておきたまえ。セリア、データ収集はほどほどにして、君も休みたまえ」

 風呂や食事をどうするかとセリアに聞かれたが、面倒なんで断った。
 ニーナの為に闇の精霊ソワを呼び出して、オレは眠る事にした。

 ソワときゃいきゃいしてたニーナが、ベッドに入る前のオレに言った。
《あのね、おにーちゃん、あたし、今はあんまりさびしくないんだよ》
 ニーナの手には、ポチ2号の培養カプセルがあった。
《ポチちゃんって、一日五分しか寝ないんだ。ずーっとニーナとお話ししてくれるの》
 それは良かった……ニーナは幽霊だから眠る事ができない。オレ達が眠った後、闇の中で一人ぼっちで遊んでるの、かわいそうだと思ってたんだ。
《それにね、イザベルおねーちゃんのおにーちゃんたちが遊びに来てくれるの》
 ぎょっとした。
 床の上のお父さんクマと二体の子供クマが、立ち上がったからだ。ぬいぐるみなのに。
《雷のトネールおにーちゃんと、炎のフラムおにーちゃん、闇のニュイおにーちゃん》
 イザベルさんの精霊が憑依してるのか……
《おしごとがない時、精霊さん、ニーナの所にきてくれるの。イザベルおねーちゃんがそうしなさいって言ってくれたの》
「そうか……良かったな、ニーナ」
《うん。ニーナ、しあわせ。アンヌもソワちゃんもおにーちゃんもおねーちゃんも、みんな大すき。あたし、きっと最期まで笑ってられるよ》
 オレはニーナの頭を撫で撫でした。

 魔王戦は十四日後だ……その日、オレとニーナはこの世界から消えるかもしれない。

 ジョゼやサラや水の精霊マーイさんが、心に浮かぶ。お師匠様の顔も……

 生き残れる道を探し続けよう……オレは瞼を閉ざした。
+注意+
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