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ハーレム100 作者:松宮星

裏 冒険世界

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七日間勇者     【セレスティーヌ】(※)

 庭園を走り、闇を葬り続けた。

 刃で浄化すると、闇は人間を吐き出した。
 華麗な宮廷人、召使い、逞しい騎士や兵士達。
 半分以上が女性で、皆、気を失っていた。
 目の端で見た感じ、若くて綺麗な子が多い。まあ、むさくるしい野郎とか、ナヨナヨしたお貴族様とかも混じってたけど。
 うっかり萌えないよう、女の子の顔は絶対に見ないようにした。
 三人も非戦闘員の伴侶を増やしてしまったんだ。これ以上、増やすのは危険だ。既にチュド〜ン濃厚な気もするが……きっと、まだ大丈夫! そう信じ、ともかく闇を倒してゆく!

 どれだけ剣を振るったのか、どれほど闇を浄化したのかわからなくなった時……
 庭の木立の反対側から、光がふくれあがるのが見えた。

 駆けつけるとそこには、光り輝く半球状のドームが見えた。その中には、決めポーズをとる『マッハな方』とこの世界の人間達がいっぱい居た。

 聖女様と対しているのは、おどろおどろしいバケモノ。小山のようにデカく、象に似ている。色は紫だが。
 そいつの背に、黒の総髪(ポニーテール)の黒衣の女性が座っていた。遠くて顔はよくわからない。錫杖を持っており、衣装は神官っぽい。
 女性の騎乗獣が突然暴れ出す。頭を振り、走り出そうとするのを、黒衣の女性はなだめようとした。が、獣は静まらない。
 その人は何かわめいてから、フッと姿を消した。騎乗獣と共に。

 逃げたのか?

 防御結界の中の『マッハな方』が振りかえって、オレを見る。
 結界を解き、ズンズン近づいて来る。
 凶悪な目つきで睨み、何か言っている。が、聞こえない。
『マッハな方』がオレの前に立ち止まる。顎をつきだし尊大にオレを睨んでるが、マリーちゃんのが小柄だ。オレが見下ろす形となる。
 何かをわめいてから、聖女様の肉体が右手をふりあげ……
 遠慮の無い拳が、オレの頭をガツンと殴った。

 痛〜

 顔をあげると、ほわ〜と微笑む聖女様がたたずんでいた。
 マリーちゃんだ。
 周囲の邪悪を駆逐しきったんで、『マッハな方』は還ったのか。
 かわいらしいマリーちゃんが、オレに話しかける。が、何て言ってるのかわかんない。
 耳栓をしていた事を思い出し、マーイさんに取ってもらった。
「勇者さまが、讃美歌を、大音量で、流して、いらっしゃったので、襲撃者の、ボスが、逃げて、しまったの、です〜 それで、あの方、怒ってたの、ですよ〜」
 オレはルネさんの発明品『悪霊から守るくん 改・改』を左手に装備している。というか取れないんで、仕方なくつけている。
 周囲に邪悪が居なくなるまで、讃美歌……ていうか調子外れのマリーちゃんの歌声を流し続ける作り。破壊的なマリーちゃんの歌声のせいで、邪悪も仲間もみんなオレの側から逃げ出していたんだ。
 ひっぱったが、改改は外れない。
 ぬるぬるのシャボンでこすってみるか?
 けど、下手に触ると爆発しそうで怖いんだよな、ルネさんの発明品。

「貴殿が勇者様か」
 ふらつきながら、結界内に居た者達が駆けつけて来る。マリーちゃんの歌声効果だろう、みんな顔色が悪い。
 若者ばっか。その中の一番身分が高そうな男が代表して、オレに恭しく挨拶をする。
「貴殿がいらっしゃらねば、我々は魔の手に落ちておりました。偉大なる神の代行者様と勇者様に、心より感謝いたします」
 その男の背後の奴等も、一斉にオレらに深々と頭を下げた。国王に対してのような、最上級の礼だ。

 貴族の男の説明によると、オレは『召喚勇者』らしい。
 王国の危機に『勇者』を召喚するのがこの国の伝統。
 魔族に襲われ大ピンチとなったんで、この国の王族がオレを召喚したのだそうだ。
 来た道に怪我人がいっぱい居たし、闇は人間をさらおうとしていた。オレが仲間と共にこの世界に来なきゃ、確かにヤバイ事になってたろう。

 英雄世界の裏に行こうとしたオレを、占い師のイザベルさんは止めた。
『あなたがその道を進めば……おびただしい死者が……。あなたのせいで、数えきれないほど多くの命が消える……』
 裏冒険世界へ行かないと、『十二の世界で伴侶を得る』託宣が叶えられなくなる。その意味の警告かと思った。
 けど、それだけではなさそう。あの時、あのタイミングで召喚に応じてなきゃ……この王宮で死者がいっぱいでたろう。魔に蹂躙され、この世界はひどい事になっていたんだ。

 今、居るのは王宮の庭園。貴族の男の案内で、礼拝堂の先の召喚の間まで向かった。

 オレらの後をぞろぞろと、この国の人間が続く。みんな闇に捕まっていたところを、マリーちゃんに助けられたのだそうだ。

「神聖魔法や、浄化の技を、使える、人間が、とても、少ないのだ、そうです〜 現国王さまと、神聖騎士さま達だけ、なのだとか〜」
 マリーちゃんが、おっとりと説明してくれる。
「ここ、『マッハな方』の、十二の、世界の、おひとつ、らしいのです〜」
 え?
「時々、国王さまに、降りて、来て、邪悪を、追っ払って、いたそうです〜 この国の、みなさま、あの方の、ファンなのだ、そうです〜」
 へ〜
『マッハな方』は、奇跡代行アルバイターだ。十二の宇宙で清き者の身に宿り、邪悪と戦って神様の代わりに奇跡を起こしている。
 十二のうちの一つが、オレらの世界。あと、英雄世界もそうだ。カンザキ ヤチヨさんを憑依体にしていた。
 そっか……ここ、あの方の担当世界だったのか。
 あの方を降ろしたマリーちゃんや、勇者なオレが尊敬されるのも納得。

「この世界、たしかに、冒険世界の、裏のようです〜」
 ん?
 マリーちゃんのほんわかした顔に、ほんのちょっと陰が差す。
「神さまの、存在が、感じられ、ないのです〜」

「どういう事ですか?」
「私達の、世界に、女神さまが、いらっしゃるように、各世界には、創造神さまが、いらっしゃい、ます〜 冒険世界の、主神さま、つまり、ナディンさんの、お父さまは、それはそれは、たいへん、お力の、強い、偉大な、方でした〜」
 そうなの?
「ナディンのお父さんに会ったんですか?」
「いいえ〜 でも、冒険世界は、すみずみまで、主神さまの、尊い御力に、満ち、あふれて、いました〜 お姿を、拝見、しなくても、強大な方、なのだと、わかりました〜」
 なるほど。

「けれども、この世界は、冒険世界とは、逆に、魔の気の方が、強い……神聖な、気が、とてもとても、弱いの、です〜」
 そういえば、神が不在だと『マッハな方』は言ってたな。
 神の居ない世界なのか……

「でも、まったく、気が、無いわけでは、ありません〜 神さまが、魔に、屈されたのなら、根本的に、世界の、ありようが、変わる、でしょうし……たぶん、一時的に、この世界を、離れ、られて、おられるのでは、ないかと〜」
「神様が創造世界を離れる? そんな事あるんですか?」
「神さまにも、それぞれ、ご事情が、ありますから~ ご用事があって、よその世界か、天界に、お出かけ、なのではないかと〜 いずれは、お戻りに、なられるとは、思います〜 そうでなければ……」
 マリーちゃんは、つらそうに瞳を伏せた。
「聖なる、光は、完全に、消えます〜 この世界は、魔族の、ものに、なるでしょう……」





「初代、レオポルド様。お隣が二代目、ムハンマド様。三代目、トリスタン様。四代目、ペドロ様……」
 召喚の間と礼拝堂の間の渡り廊下。
 オレらはそこに案内され、この国の歴史を教わっている。護衛のマーイさんのみを残し、精霊達には散ってもらった。王宮の守護と怪我人の運搬や治療を任せている。
 渡り廊下に飾られている絵をご説明くださっているのは……なんと、この国の王妃様だ。

 豪奢な羽根飾りをつけた、バケツみたいな形に高く髪を結いあげた方……
 髪形が変なわりに、お顔はたいへんお美しく、右頬につけているハート型のつけぼくろがセクシー……
 胸元が開いた青いドレスも、胸の黒いハートのつけぼくろも色っぽい……

 つまり……
 オレが八十一人目にキュンキュンした方は、この国の王妃様だったわけだ。
 セレスティーヌ様とおっしゃるそうで。
 人妻、しかも国王の正妃。
『伴侶』って形で仲間にしちゃったことは、黙っておこう……

「十五代目、サクライ マサタカ様。十六代目、ジャッキー様。そして、十七代目が私の夫、タイロン国王でございます」
 王妃様が掌で示した肖像画は、筋肉隆々のハンサムの絵だ。オールバックの金の髪、ウインクをし、ニカッと白い歯を見せて笑っている。爽やかな好男子を印象づけるような、軽そうな……あ、いや、敬愛されやすそうな国王だ。

「全て召喚勇者様の肖像画にございます」
 王族として毅然としておられ、しかも艶っぽい。魅力的な王妃様が、オレを見る。
「そして、あなた様こそ十八代目勇者様……我が国の十八番目の救世主。我が娘アンジェリーヌの召喚にお応えいただき、感謝いたします。勇者様、どうか……我が国をお救いください」

 国の危機に王族の求めで召喚されるのが、『召喚勇者』。
 歴代の召喚勇者は、豪傑ばかり。武力、魔法、策……何らかの方法で、皆、国を救ったらしい。

 色っぽい王妃様の側には、ゴールデンブロンドの美少女が居る。落ち着いた大人の魅力にあふれた王妃様とは異なり、ピンクのドレスの美少女は華やかで若々しい。この国の王女様、アンジェリーヌ姫だ。
 アンジェリーヌ姫は、うっとりとした目でオレを見つめている。

 彼女の忠義の侍女ロザリーも居る。王妃様とお姫様から少し離れた場所に控え目に立っていて、こちらは聖なるものを見るかのように、オレを見ている。
 更に背後の、家臣やら聖職者それに護衛兵達までも、オレに敬意の眼差し。生き神様か何かと対しているかのような。

 何つーか……むずかゆい。ここまで尊敬されるの、初めて。もとの世界でも、ここまで持ち上げられたことないぞ。てか、オレ、王城には行ったけど、あっちじゃ王族にお会いしてすらいない。世界を救う勇者なのに、『おお、勇者よ、この世界を頼む』的イベント皆無だったよなあ。

 オレは仲間達を見渡した。
 全員、困惑の表情だ。
 話の先を聞けよと、リーズが手ぶりで促して来る。

「この世界は、どんな脅威に晒されているんです? 魔族の襲撃があったようですが」
「『大災厄』に見舞われております」
「大災厄?」

「数十年に一度の間隔で、魔族が活性化します。その年に、海の向こうの暗黒の国エグリゴーリより、邪悪が攻めて来ます。それを私達は『大災厄』と呼んでおります」
「そこは魔族の国ですか?」
「はい。エグリゴーリは、魔族や邪教信徒の住む国。光の神を信奉する我が国とは長く敵対関係にあります。邪悪なるものどもの目的は光の神を辱める事……私達光の信徒をさらうのです」
 王妃様が悲しそうに瞳を伏せる。
「正しきもの、美しきもの、強きものをさらうのです。暗黒神への生贄に捧げる為に……」
 生贄か……

「十六年前……私が少女であった時にも、大災厄が起きました。私は召喚の間で神の奇跡を願い……十七代目勇者タイロン様を召喚したのです。異世界の神聖拳闘士でいらっしゃいました」
 王妃様が、愛しそうに夫の肖像画を見つめる。
「タイロン様はお強くて、パワフルで獣のような方でした。瞬く間に魔どもをギッタンギッタンのバコンバコンに倒し、平和を取り戻してくださったのです。そして、晴れて私と夫婦となり、この国の王となられたのです」

 王妃様、お姫様、侍女さんが、期待のこもった目でオレを見つめる。

「どうぞ、勇者様、我が国をお救いください。エグリゴーリの者達を追い払ってください」
「そして、勇者様……お役目を果たされた暁には……私と婚姻を」
「どうか、勇者様、アンジェリーヌ様を(めと)られ末永くこの国をお守りください」

 邪悪を追い払って、お姫様と結婚?

 ちょっ!

「それは、できません。オレはもとの世界に還らなきゃ」

「還る?」
 渡り廊下にざわめきが起こった。

「送還の呪文って無いんですか?」
 なきゃ、この世界に来た時の呪文と今までの帰還の呪文をつきあわせ研究しなきゃ。
「ございます……」
 良かった。

「ですが、使用した事はありませんわ。勇者様はみなさま、王となってくださいましたもの。エグリゴーリの地でお亡くなりになった十五代目サクライ マサタカ様とて、王家に尊い勇者の血だけは残してくださいましたし」
 ん?
『サクライ マサタカ』?
 どっかで聞いたような……?

「勇者様……今すぐお戻りになられるのですか? どうか、お待ちを。あなた様だけが頼りなのです」
 王妃様が、すがるようにオレを見る。
「勇者様がいらっしゃらねば、この国は滅んでいました。この半月の猛攻で神聖騎士団は壊滅状態となり、束ねていた我が夫タイロン様も行方不明に……」
 え?
 じゃ、王妃様の夫というか国王は……亡くなってるかもしれないのか。
 絵の中のおっさんは、殺しても死ななそうなタフガイっぽいのに……。
「光の守護者達が居ないのです。勇者様こそ最後の希望の光。勇者様がお還りになられてしまっては……次の襲撃で私達になす術はございません。この国は滅びます。私も娘も暗黒神の生贄に捧げられ、絶望の中で命を落とすでしょう」
 う。
 見渡せば、周囲の家臣たちも懇願モード。行かないでくださいと、オレにお願いポーズをしている。
「今すぐは還りません。勇者として、できるだけ協力します。けど、それほど長くは滞在できません」

 お姫様がうるんだ瞳で、オレを見る。
「勇者様、アンジェリーヌがお嫌いですか?」
「いや、そういうんじゃなく」

「私……醜いのかしら?」
 お姫様がクスンと涙ぐむ。ああああ、泣かしちゃった。
「いいえ! とてもとてもお綺麗です!」

 尚も悲しそうにお姫様が、目元をぬぐう。
「でも、勇者様のタイプではありませんのでしょ?」
「そんな事ないです! キュンキュンしました!」

「でしたら、邪悪を追い払い、私と婚姻してくださいますね?」
「無理です!」
「そんな、ひどい……」
 うわ。大粒の涙が。

「召喚勇者様と結ばれ、この国を守るのが王家の娘の務め。私、勇者様と結ばれる日を夢見て育ってきましたのに……」
 涙がキラキラと輝く。可憐なお姫様は、泣く姿すら美しい。
「お願いです。邪悪を追い払い、私と婚姻してください」
「すみません……無理なんです」
「そんな、ひどい……」
 あああ、また涙が!
「ごめんなさい、けど、オレは、急いで」
「そんな、ひどい……」
「待って、泣かないで」
「でしたら、私と……」
 どわぁぁ、無間ループ! YESって言うまで逃げられない?

 右側面から鋭い一撃。
 オレは床につっぷした。
 周囲がざわつく。この世界の救い手たるオレが襲われたわけだが……襲ったのはオレの仲間。黒のローブの魔術師。杖でぶん殴ったのだ。
「すみません、王妃様、お姫様。無礼をお許しください」
 痛む頭を抱え、サラを見上げる。幼馴染の鼻の頭は真っ赤になっていた。
「でも、駄目なんです。勇者ジャンは、この世界にさしあげられません」
 サラの側にはジョゼも居る。サラに同意するように小さく頷き、潤んだ瞳でオレを見ている。

「見え見えの手管にまどわされんなよ、バーカ」
 リーズが、床の上のオレをジロリと見下ろす。
「甘い顔ばっか見せてねーで、言う事はビシッと言え。てめーには、てめーの事情があるだろーが」
 王族の前だろうが、生意気盗賊は気にしない。歯に衣着せず、オレをののしる。
「てか、もうオレら、もとの世界に還ってもいいんだぜ。ここで仲間はつくった。次に行っていいんだろ? 勇者として見過ごせねえ、この世界も救うってんなら、ケジメつけろよ。一番大事なのは何だよ? てめーのケツもふけねえ奴等を助けて、オレらの世界を滅ぼす気か? だったら、本気でバカだぜ、おまえ」

 一番大事なもの……

 リーズの口汚い言葉に高貴な方々は茫然とし、王家への侮辱を含む発言に警備兵達もうろたえる。
 剣こそ抜いてないが、アナベラが周囲を警戒している。いざって時には仲間を守る為に。

 オレは立ちあがり、全員の注意がオレに向くよう大きな声で言った。
「オレの世界では、二十日後に魔王が目覚めます。オレの宿敵です。ここを含め三つの世界で、オレ、あと十八人を仲間にして百人の女性と共に魔王と戦わなきゃいけないんです」
 まず、お姫様に謝った。
「魔王を倒すまで、大切な女性は選べないんです。あなたを最愛の方にはできません。許して下さい」
 それから、王妃様に向かい直った。
「勇者として、ご助力します。しかし、オレはオレの世界も救わねばならないんです。この世界に滞在できるのは……」
 魔王が目覚めるのは二十日後だから……
「最長七日。どんなに遅くとも、七日目にオレは元の世界に還ります」

「七日間……」

 王妃様が瞳を伏せる。
「わかりました、所属世界が存亡の危機でしたら、長期滞在は無理。勇者様のご事情はわかりました。七日目には必ずもとの世界にお送りしましょう」
「ありがとうございます」

 お姫様が顔を伏せ、声を殺して静かに泣く。
 結婚を断わられたのが、そんなにショックだったのか。
 顔をお上げなさいと娘をたしなめながらも、王妃様もとても残念そうにオレを見ていた。

 滞在は最長七日。
 その間に何ができるのかを、考えねば。

「あの〜 ちょっと、よろしい、でしょうか~?」
 聖女様が、手をあげてのんびりと質問をする。
「この世界で、神のお力を、振るえるのは、国王さまと、神聖騎士団だけと、伺いました。神聖騎士団、壊滅って、みなさま、どうなさったのですか〜?」

「海辺の砦、そして、この王宮の守護に騎士団はついていてくれました」
 沈痛な顔で、お美しい王妃様がおっしゃる。
「ですが、王宮の最奥まで魔が侵入して来たのです。タイロン様も誇り高き騎士達も、殉死なさったのでしょう」

「でも〜 ここから、北西に、強い、光が、あるのです〜」
 ん?
「神様では、ありません。けれども、神様に、近い、存在……私と同じ、神の、代行者が、いらっしゃる、のでは、ないかと~」

「神の代行者……? では……」
 王妃様が口元に手をあてる。
「もしや、タイロン様……?」

「かも、しれません〜 かなり、お強い、力を、お持ちの方です〜」
 聖女様に『マッハな方』が降りたことは、ここに居る者はもう知っている。タイロン国王と同じものを降ろせる者からの言葉だ。
 歓声があがり、皆の顔に笑顔が浮かんだ。

 マリーちゃんが、オレににっこりと微笑む。
「少し、遠いですし、道中には、邪悪が、いっぱい、居ります。けれども、勇者さまなら、大丈夫〜 そのお方を、お迎えに、あがれると、思います〜」
 そうか……
「王妃様、オレ、そのお方を必ず王宮までお連れします……この国に再び平穏が戻るように」
「おお、ありがとうございます、勇者様。あなた様だけが頼りです」

 この世界を守り続けるなんて、オレにはできない。
 神の代行者を見出し、連れて来る……
 それぐらいなら、七日間でできそうだ。

 オレらの世界で、魔王が目覚めるのは二十日後だ。

 神の代行者なんだ、この世界の神様がお戻りになられればパワーアップするだろう。暗黒の国エグリゴーリの奴等を追い払えるに違いない。

 王妃様の口元に、艶やかな笑みが浮かんでいる。
 国王が生きているかもしれない……そうと知ってから、美貌が一層輝いた。
 召喚勇者だった夫を、心から愛しておられるんだろう。

 その後ろのお姫様は、ジーッとオレを見つめていた。責めるというより、せつなそうなお顔で。

 チリッと胸の痛みを覚えた。


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№081)

名前     セレスティーヌ
所属世界   裏冒険世界
種族     人間
職業     王妃
特徴     十七代目召喚勇者タイロンと結婚し、
       王妃となった。
       セクシーで色っぽい。
戦闘方法   戦闘は無理だろう……
年齢     アンジェリーヌ姫の母親だから、
       三十以上だろう。
容姿     バケツみたいに高く髪をゆいあげ、
       白くなるよう粉をまぶしている。
       髪形はナニだけど、美人。
       右頬のハートのほくろは、既婚の証だそうで。
       腰をぎゅっと締めたボンキュッボン。
       大きな胸にもつけぼくろをしている。
口癖    『あなた様だけが頼りです』
好きなもの  タイロン国王
嫌いなもの  エグリゴーリ国
勇者に一言 『勇者様、我が国をお救いください』
挿絵(By みてみん)
+注意+
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