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ハーレム100 作者:松宮星

冒険世界

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冒険世界から (※※)

「ジャン様、サラさん、おかえりなさい」

 天使が舞い降りた……かと思った。
 冒険世界から帰還したオレの前に、この世のものとは思えぬ美少女が居る。
 見るからに貴族のお姫様って感じで、ともかく、すっげぇかわいい。金の縦ロールの髪型もゴージャス、肌は雪のように白く、まるでお人形さんみたいで……

挿絵(By みてみん)

 オレの萌えツボは、キュンキュンキュンキュン! と、鳴った!
 鳴り響いた!

 ああああ、幸せ!
 もとの世界に戻って、一番最初に見るのが美少女の笑顔だなんて、ツイてる! 気力がみなぎってくるぜ!

「シャルロットさん!」
「お久しぶりです、勇者様」

 声が可愛い!
 仕草が上品!
 何もかんも完璧!

「シャルロットさん? どうして、ここに……」
 魔術師学校ではシャルロットちゃんの後輩だったサラが、不思議そうに尋ねる。

「私とて魔術師のはしくれ。セリア(ねえ)さまやシャルルお兄様の助手を務めておりましたのよ」
 ああ……そうか。シャルロットちゃんは、シャルルの妹で、セリアのまたいとこだったよな。そんでもって、天才魔術師なんだ。

 部屋を見渡した。
 アンヌばあさんがオレ用に用意してくれた部屋なんだが……オレが居ない間は、ニーナの遊び場になったり、セリアかシャルルの書きもの部屋になっている。異世界からオレが還った時、すぐにわかるように。
 しかし、今はシャルロットちゃんしか居ないようだ。
 ソファーにニーナのぬいぐま一家が座ってるし、テーブルの上に書類やら本が積まれてるってのに。

「セリア姉さま達は隣室の賢者様の所です。よろしければ、勇者様達もそちらにお急ぎになって……」

 シャルロットちゃんがそこまで言いかけた時だった。

 屋敷がズシンと揺れたのは。

 近くから、轟音と悲鳴が聞こえる。

 なにごと?

「まあ。やはり駄目でしたか〜 お屋敷が全壊しないと、よろしいのですが」
 シャルロットちゃんの緊迫感の無い声を背中で聞きながら、オレらは廊下へと飛び出した。


 隣室はすごい有様だった。
 巨大な大蛇達が、窓枠をぶっ壊して部屋に侵入している。
 波のように体を動かす大蛇達が、石化したお師匠様とその周りにいる人間達へと迫っている。
 蛇たちのもとへ走ろうとしているものを、カトリーヌとセリアとシャルルが止めている。
 三人が必死に押さえているのは……

「ごめんなさい! パメラ! ぜんぶ、私が悪かったの! お願い、落ち着いて!」
「殺人はいけません! ヒュドラを下げてください! 勇者様とて、堪えられたのです! ニノンを殺しては、勇者様の思いを踏みにじることになります!」
「パメラさん、どうぞ冷静に。賢者様は亡くなられたわけではありません。時が経てば石化は必ず解けます」

 あの大蛇たちは、ヒュドラの頭部か!

 オレは走り寄った。
 緑色のきぐるみのもとへと。
 きぐるみの巨大な口の部分が上下に開き、上顎と下顎にはさまれる形で、顔が現れている。
 衣装より漏れる、赤みの少ないブロンド。澄みきったグレーの瞳。神像のように美しい、人間の理想美のような顔は……怒りと涙でゆがんでいた。

 石化したお師匠様の側で、パメラさんは泣いていた。
 もと竜騎士のお師匠様を、パメラさんは心から慕いそして尊敬していた。

 呼び寄せたヒュドラと共に、仇を討ちに行こうとしてくれていたのか……

「パメラさん!」
 オレが抱きつくと、パメラさんはびくっと体をすくませた。

「ありがとう。お師匠様の為に怒ってくれて。けど、いい。もう、いいんだ……お願いだから、ニノンを殺さないでくれ」

 なんか目がじわっとしてきた。
 パメラさんの怒りと悲しみが移ってきたみたいだ。
 ちきしょー。今はオレが泣いてる場合じゃないだろ。

「ニノンを殺しても、お師匠様は喜ばないよ。絶対だ。許してあげてくれ。二十二日したらお師匠様は目覚める。そん時、笑顔で迎えてあげられるよう、今は怒りを鎮めてくれ、頼む」

 パメラさんが動く。
 ヒュドラの首のもとへ走ろうとしていたのをやめ、オレと向かい合い、もふもふの右手でオレの頬に触れた。涙を拭いてくれたんだ。

 あどけない子供のような目が、戸惑うようにオレを見ていた。

「賢者さまの……匂いがする……」
 オレから……?

 赤く染まった顔を歪め、パメラさんが声をあげて泣き出す。
『賢者さま』とお師匠様を呼びながら、オレを抱きしめて、パメラさんが号泣する。

 何か、もう……
 たまらなくなって……

 オレも感情を爆発させた。

 パメラさんと抱き合い、そのうちその場に座り込んで、二人してわんわん声をあげて泣き合った。


 まだぐっすんと肩を震わせて泣いているパメラさんを、幼馴染のカトリーヌが抱きしめる。
「ごめんね、ヒュドちゃん……お師さまのお(うち)に帰って……」
 パメラさんがそう言うと、部屋の中に侵入していたヒュドラの頭たちはパメラさんを慰めるように絡みつき、それからスルスルと後退していった。
 この部屋……三階だったよな。九つの頭部の一部が三階まで届くとか、どんだけデッカいんだよ、ヒュドラのヒュドちゃん。

 従僕達が部屋の片づけをするんで、移動となった。

 ジョゼがハンカチを差しだしてくれ、サラがタオルを渡してくれる。そうだよな、ハンカチじゃ足りないよな。礼を言って、二人から布を受け取って急いで顔を拭いた。

「正直、何故君が勇者なのか疑問だったのだが、」
 シャルルがため息をつく。
「女性に対し誠実な人柄が、高く評価されたのかもしれない。私には死んでもできない方法で、君はパメラさんの怒りを鎮めた。ニノンが無事だったのは、まさに奇跡。君の手柄だよ」
 見んなよ、男の涙を。見ない振りぐらいしろよ、あいかわらずマイペースな野郎だ。
 オレの内心など気にもかけないお貴族様が、オレの頭に何かを被せた。
 む?

 キザ男が金の髪をかきあげる。今、気づいた。こいつ、頭に変なモノをつけてる。
「実はね、ジャン君。仲間全員がパメラさんと会話可能になるよう、私は密かに準備を進めていたのだよ」
 ついでに言うと、カトリーヌもつけてるし、セリアまで学者の角帽を外してつけてる。
「対人恐怖症のパメラさんと会話をするには、獣にならねばならないからね」

 それで、ケモ耳かよ!
 お貴族野郎はネコ耳、カトリーヌもネコ耳、セリアはわんこ耳のカチューシャを頭にさしていた。

「人数分以上の獣耳を準備した。ネコ耳と犬耳以外にも、ウサ耳、たれ犬耳、クマ耳、狐耳。充実のラインナップだ。区別のつきづらい犬・猫・クマ・狐耳の為に、別室にはシッポつきベルトも用意してある。ポワエルデュー侯爵家出入りの仕立屋につくらせた最上級の獣セットだ」
『獣手も作らせようと思ったのだが、戦闘の妨げになりかねないのでやめたよ』と、ハハハとお貴族様が笑う。
 ケモ耳とシッポを、一流の職人に大量に特注?
 前々からそうなんじゃないかと思ってたけど……

「おまえ、バカだろ」
 あ。リーズが、オレの代わりに言ってくれた。

「そうかな? きぐるみや腕人形よりは、邪魔にならないと思うのだが」
 そう言って、お貴族様がリーズの頭に手に持っていたものをスポッとくっつける。

 うほ!
 白ウサ耳か!
 きっつい性格だけど、見た目はかわいいリーズ。そこに、キュートなウサ耳を選択するとは!
……いいかも。
 意外と良い趣味してるじゃん、シャルル〜

「なにしやがんだ、バカ!」
 あ〜あ、取っちゃった。

「ウサ耳はお気に召さないかな? ならば好きなものを選びたまえ。君の趣味でね」


 オレの部屋の姿見の鏡の前に、馬鹿男が運び込ませた衣装ケースがあった。
 耳とシッポがセットで入っている。
 ネコに見えたけど、カトリーヌのは狐耳のようだ。セットで用意されているシッポが、襟巻みたいにゴージャスだわ。

「ルネさん達には使いを送りました。間もなく会議となります。不本意かと思いますが、みなさん、パメラさんと意志の疎通が可能となる装いをお願いします」と、セリア。
 セリアは、ピンと張ったわんこ耳だ。タレ耳の犬より、凛々しい系が好きなんだな、きっと。
 それだけ言うと、セリアはテーブルについた。雑事があるみたいで、書きものをしたり、シャルロットちゃんと話したり、従僕を呼んで指示を出したりしだした。

 衣装ケースを見つめて硬直するリーズ。
 あれこれ選んでは、自分やリーズの頭に差すアナベラ。
 ジョゼは迷わずウサ耳、サラはクマ耳。だけど、他の耳もちょっと試したりしてるあたりが女の子らしい。

「マリー様には特注品を作らせました。頭巾とベールの上から装着可能です」
 キザ男が手渡したウサ耳のサークレットを、マリーちゃんが笑顔で受け取る。
「ご親切に〜 ありがとう、ございます〜」
 修道女の頭巾をしたまま、マリーちゃんの頭にウサ耳が……
 ウサ耳シスター!
 ちょ!
 それ、ヤバくない?
 萌えるんですけど!

 オレは頭の上のモノを取って、まじまじと見てみた。マリーちゃん同様、オレも特注品だ。帽子になっている。
 しかし……
「……なんで、ピンクのロバ帽子?」

「おや? パメラさんにとって、君はピンクのロバさんではなかったのかね?」
 そんな情報まで握ってたのか、クソ貴族め。嫌な顔で気障ったらしく笑いやがる。

「不満そうだね。仕方がない。こちらに代えてあげよう」
 キザ男が、オレの帽子を取りかえる。
 で、ピンクのロバ帽子を持ってって、被るかね? とリーズをからかいに行く。

 新しい帽子のオレを見て、パメラさんが目をうるうるとうるませる。

 ただの帽子なんだが……効果があるみたいだな。
 新しい緑の帽子も、生き物の頭部をデザインしたものだ。パメラさんのきぐるみの頭によく似ている。ちょっとユーモラスな顔の、ドラゴン帽子だ。


「おかえりなさ〜い、勇者さま。お元気? あなたをよりよい未来に導きに参りましたわ〜」
《おにーちゃん、おねーちゃん、おかえりー》
 うぉ!
 移動魔法で、いきなりイザベルさんとニーナが登場!
 八体のゆらぐ影みたいなのを伴ってる。イザベルさんの精霊達か。
 ニーナとイザベルさん……一緒に居たのか!

 抱きついてきた白い幽霊をなでなでしてあげたが、目はついイザベルさんにいってしまう。ずっと行方不明だったが……良かった、無事だったのか。

「イザベルさん!」
 たれ犬耳のアナベラとクマ耳のサラが、イザベルさんのもとへ駆け寄る。
「だいじょーぶ? ケガはない?」
「ご無事で何よりです」

「ご心配をおかけしてしまって、ごめんなさい。もっと早く帰るつもりだったんだけど、いろいろあって」
 イザベルさんが、いつものうふふ笑いをする。ハスキーな色っぽい声だ。
「本当にごめんなさいね、勇者さま。あなたの星が最も陰る時に側に居られなくて」
 イザベルさんが、オレに謝る。前で手を合わせて頭を下げたもんだから、爆乳な胸が左右からぎゅっと寄せられて更に大きく魅惑的に……
 あいかわらず、素晴らしい乳だ。胸元が大きく開いたドレスから見える褐色のふくらみは、ドロテアと同じかそれ以上の大きさ。はちきれんばかりの迫力だ。

「オレの方こそ、ご心配をおかけしてしまったみたいですね。すみません。でも、みんなのおかげで何とか立ち直れました」
 立ち直りつつある……が、正しいかなあ。
 もっかいニーナの頭を撫で撫でしてあげる。白い幽霊は嬉しそうに笑い、パメラさんのもとへと走って行った。
「魔王戦まで、あともうちょっとですから。頑張りますよ」

「うふふ、可愛い。あなたって本当に素敵だわ、勇者さま」
 艶っぽくイザベルさんが笑う。
「運気は最低最悪なのに、それでも諦めず、星は輝いているんですもの。応援したくなっちゃうわ」

「オレはずっとイザベルさんに助けられてますよ」
 胸のポケットから、絵を取り出した。即席絵画製造機械『撮れルンです君』で作った絵。現実の一瞬を切り取ったような絵だ。
 冒険世界で作ったそれには、オレとドロテアが写っていた。
「あら」
「イザベルさんの昔の部下です。昔とは姿が変わっているそうですが……」
「大丈夫。わかるわ……魂は同じですもの」
 イザベルさんはドロテアを見つめ、赤く厚い唇をほんのりと開いて微笑んだ。
「冒険世界に居たのね……」
「伴侶になってもらいました。仲間探しをずっと手伝ってくれたんです」
「うふふ。義理堅くって、何ごとにも一生懸命な子だったでしょ?」
「はい。オレらが還った後も、オレの伴侶の一人を助けてくれるそうです。早く自由の身になれるように」
「あいかわらず、面倒見がいいのね」

「名は冒険世界の主神に捧げてしまったから、名乗れない。でも、アスラ八大将軍の一人だったって教えてくれました」
「そう。名前を……」
 イザベルさんが、眉をかすかにひそめる。
「イザベルさんの事を『我らが王』と呼んでいました。輪廻世界に帰還し、イザベルさんを再び王に戴きたいと願っていました」

「ほ〜んと変わってないのね。ロマンチストな子」
 イザベルさんは微笑み、天を見上げた。昔を懐かしむかのように。

「……帰還の意志はまったくないんですよね?」
「ええ」
 イザベルさんがうふふと笑う。
「私が帰還したら、デーヴァと戦になるもの。滅びる為だけの戦なんて、起こせないわ。私を慕い、アスラ達が集うのなら尚更……」
「戦ったら負けるんですか?」
「勝てるわけないわ。私も他のアスラも弱体化してしまったもの。私がアスラに願うことは……生き続けて欲しい。新たな世界で新たな生き甲斐を見つけ、アスラらしく生きて欲しい……それだけよ」
「イザベルさん……」

 唐突に、イザベルさんが悪戯っぽく笑う。しんみりとした雰囲気を払うかのように。
「そうそう。ごめんなさいね、勇者さま。私、星を読み間違えてたわ」
 え?
「私、勇者さまの星は魔界でアスラと交差するって読んでたの。だから、魔界に旅立つ前に伝言箱をお渡ししたのよ。魔界の次の次……冒険世界だったなんて、大外れだったわね」
「とんでもない」
 オレは胸のポケットを叩いた。伝言箱が入っていたそこには、今は冒険世界の絵が入っている。
「イザベルさんからの小箱は、魔界でもエスエフ界でもお守りでした。オレの支えでした。持ってて良かったです、ありがとうございました」

 イザベルさんが微笑む。とても魅惑的な色っぽい表情で。
「ステキすぎて、めまいがしちゃうわ。勇者さま、ありがと。あなたの星を、ますます輝かせてあげたくなっちゃうわね」

 赤紫のヘッドスカーフを外し、イザベルさんは白ウサ耳のカチューシャをつけた。
 うぉ!
 ウサ耳いきますか!
 その豊満なお体に清純派の白ウサギとは……さすがです、イザベルさん。素晴らしい選択! ギャップ萌えです!


 ニーナはピンクのクマさんを抱っこして、ため息交じりに座っていた。テーブルの上に置いたポチ2号の培養カプセルに、小さな声で話しかけている。ケモ耳をつけた仲間達をチラチラ見ながら。

 オレは闇の精霊ソワを呼び出した。まだルネさんが来てないから会議は始まらない。お土産を渡して来てと頼んだ。
 髪も体も服も闇色のソワが現れ、白い幽霊ニーナのもとへと走る。
《ニーナちゃん、これ……》
 おずおずとソワが差し出したのは、ピンクローズの髪飾りだった。
《お土産なの。つけてあげるね》
 きょとんとしているニーナ。ニーナは、全身も髪も服も霊体だ。物に触れることはできるけど、装いを変える事などできなかったんだ。
 けれども……

 姿見の鏡に映る自分を見て、ニーナは大きく目を見開いた。
《どーして?》
 鏡の中の顔が次第に笑顔となる。
《すごい! すごい! すごい! どうして? かわいい! すっごくかわいい!》
 ニーナの頭の左側に、大きなピンクローズの髪飾りがついている。華やかで愛らしいバラが、ニーナの髪に咲いている。

《冒険世界の魔神さんにもらったの。このお花も、霊体なんだって。ず〜っとキレイに咲いていたいって気持ちのまま、消えちゃったかわいそうなお花。その思いを花の女神様が叶えてくださって、この子たちは不死の髪飾りになったの》
《この子たち?》
 照れながらソワが自分の頭に髪飾りをさす。ニーナのものとまったく同じ髪飾りを。
《……おそろいにしたの。このリボン、幽霊や精霊の髪を結べるって聞いたから……》
 ニーナの顔が、満面の笑顔となる。
《ソワちゃん、かわいい!》
《アタシの髪じゃネチャネチャしてて、お花さん嫌かもしれないけど……ニーナちゃんと一緒にしたかったの》
《ソワちゃんの髪、あたし好き》
 ニーナがにっこり笑う。
《ソワちゃんのお顔も、やさしいところも、みんな好き。ありがとー ソワちゃん、大好き!》

 白い幽霊のニーナが、闇の精霊ソワに抱きつく。
 ソワも嬉しそうに、ニーナを抱きしめ返した。

挿絵(By みてみん)

 抱きしめ合う二人を、オレ達は静かに見守った。

《あのね……実はね、この髪飾り……もう一つあるの》と、ソワ。
《え? どうして?》
《人間がつけても、大丈夫なんだって……だから、その……》
 もじもじしながら、ソワが言う。
《ニーナちゃん、アンヌさんが大好きでしょ? アンヌさんともおそろいになったら、嬉しいかなあと思って……》
 ニーナの顔がパーッと輝く。
《ソワちゃん……》
《ニーナちゃんが嫌じゃなかったら……ニーナちゃんからアンヌさんにプレゼントって事で……。もちろん、嫌ならいいのよ。嫌なら、この髪飾りは他の人に……えっと、ジャンにでも……》
 え? オレ? 明らかに似合わないよ、そんなかわいいの!
《あたしが、アンヌにプレゼントしていいの?》
《うん》
《ありがと、ソワちゃん! 大大大すきー!》
 ニーナがソワをぎゅーっと抱きしめる。
《あたしね、ずっとね、アンヌにプレゼントをあげたかったの! いっつも、もらってばっかなんだもん! うれしー! すっごくうれしー! アンヌにプレゼント! アンヌとソワちゃんとおそろい!》

 ルネさんが来るまでの間、ニーナははしゃぎまくり、とろけそうな笑顔で部屋の中を駆けまわった。
 髪飾りを誉められては嬉しくって飛び跳ね、『アンヌへのプレゼントを包装したい!』とかみんなに話しかけまくっていた。英雄世界から持ってきた、包装紙とリボンを使う気のようだ。自分の宝物だから、それもアンヌばあさんに贈りたいんだろう。


「遅くなりましたー たいへん申し訳ありません!」
 ロボットアーマーで入室して来たルネさんが全員に頭を下げ、それからシャルルに『すみません、ドレスは時間がある時に!』と謝っていた。スポンサーからのリクエスト『なるべくドレス着用』はあんま守ってなさそうだな。
 ルネさんはフルフェイスヘルメットの上に、ピンクのロバ帽子をのっけた。


「全員揃いましたので、会議を始めます」
 セリアがきりっとした表情で、テーブルについた仲間達を見渡す。わんこ耳なところが、ちょっとマヌケだが。

「勇者様の冒険世界でのご活躍は、後ほど詳しく伺います。が、一つだけお教えください。何人、お仲間を増やされましたか?」
「八人だ」
「では、残り二十一人ですね……魔王が目覚めるのは二十一日後。仲間探しに割ける日数は今日を含め二十日となりました」
 だな。

「勇者様達の冒険中、学者・魔術師・聖職者の第一線でご活躍の方々をオランジュ邸に招き、『勇者の書 7――ヤマダ ホーリーナイト』・『勇者の書 39――カガミ マサタカ』・『勇者の書 78――ウィリアム』を研究し、魔法絹布に残された魔法陣模様も参考に、裏世界について調べました。しかし……」

 しかし……?

 ガタンと音がした。セリアがすごい勢いで立ちあがり、頭を深く下げたんだ。座っていた椅子が派手な音を立てて、床に倒れる。
「各書の裏世界へ行く為の呪文、未だ一つも解明しておりません! 必ず見つけると大口をたたいておきながら、たいへん申し訳ありません!」

 え?

 そうなの?

 還って来るの早すぎた?

 もうちょっと冒険世界で仲間探しをすべきだったのか?
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