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ハーレム100 作者:松宮星

冒険世界

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闇に潜まぬ影    【ロビン】(※)

 夢の中で、上役の声を聞いた。

『おはよう、ロビンくん。君に特殊任務を授ける』
 夢じゃない。眠りから覚めかけていたところで、幻術をかけられたのだ。

『次の標的(ターゲット)はこの男だ』
 標的の等身大の幻が現れ、男のデータが頭の中に染みこんでゆく。
 男の能力・特徴・立場・癖・交友関係などなど。

『消せ』
 無情な指令が言い渡される。
『手段は任せる。目障りだ。一刻も早く私の前から消し去ってくれたまえ』


 起きたら、部屋に一人だった。
 でも、必要な情報は頭の中。これから何をすべきかはわかっている。

 おニューのスーツを試そうかしら?

 仕事着や道具を選ぶ。仕事前のこの一時は、楽しい。
 もちろん一番楽しいのは、任務を完璧に遂行した時。
 証拠を残さず、標的を葬った時だ。


* * * * *


「この辺り、ずいぶん都会なんだな」
 オレは周囲を見渡した。

 桃桃酒家を出てから魔法の絨毯に乗って海を越え、別の大陸に渡った。
 昨晩、野宿した原野は牧牛が盛んな土地だった。
 ツバ広の帽子を被り、踵の高いブーツを履いた、カウガールのおねえさん達と出逢った。乗馬した姿は、セクシーかつワイルド。
 ガンベルトに弐丁拳銃、背にはライフル。いさましい格好の彼女等は、いきなり発砲してきた。牛泥棒と勘違いしたようだ。誤解を解こうかとも思ったが、勇者(アイ)の測定によると彼女らの攻撃力は1万程度。萌える必要もないんで、早々に立ち去った。
 剣じゃなく銃がメイン武器なあたり、オレらの世界より高文明なのかな? とは思ったんだが……

 今、オレらは、ビル群が山脈のように連なる街の上空にいる。
 眼下の道路を車がびゅんびゅん走り、歩道には人ごみができている。人口が多い。
 エスエフ界ほどじゃないが、英雄世界ぐらいには文明が発達してそうな。

《転移神の影響よぉ〜》
 魔神ナディンが、魔法の絨毯から下を見下ろして教えてくれる。
《機械文明が大好きな方が、この地を統べてるからこうなったのぉ〜》
「サンドラの支配地が猛吹雪であったのと、同じ理由です。転移神の居城に近い地ほど、文明が発達しているのでしょう」と、魔女ドロテア。
 そこに存在するだけで周囲に影響を及ぼす神も居るとは聞いたが……文明にまで影響を及ぼすのか。

《ここ、あたしの知り合いの庭だったんだけどぉ》
 魔神は溜息をついた。
《押しの強い転移神に負けて、()られちゃったのよねー》
 ありゃ。
 その神様は土地の大半を奪われたものの、そのまま国の端っこに暮らしている。
 冒険世界では、神様同士の土地争いはしょっちゅう。処刑やら永久追放やらの、深刻な結末になる方が珍しいらしい。
《その知り合いから、可愛くって強い子情報ゲットしといたわぁ》

「ありがとう、ナディン」
 ナディンは、美味な食事を三食用意してくれるし、夜には天幕を準備し護役もしてくれる。移動も仲間探しも頼りっぱなしだ。
「本当にいろいろ世話になっちゃって……」
 サラ似の魔神が、嬉しそうに微笑む。
《いいのよぉ、勇者くん。好きでやってることだからぁ、気にしないでぇ〜》

「良かったな……オカマは情が深いからな」
 そっぽを向いているリーズが、ポツリとつぶやく。
 思い出させるな、こら。

「申し訳ありません、旦那様」
 爆乳熟女が、抱きついてくる。
「もっとご奉仕したいのですが、あいにくこの辺りには知り合いが居らず……何のお力にも……」
「あ、いや、気にしないで。ナディンを連れて来てくれたのはドロテアだし」
 むっちんぼよよんな胸が、オレの頬をもにゅもにゅする。
「最初にドロテアが仲間になってくれたから、ここまでこられたんだ。感謝してるよ」
「あああ、慈悲深い! さすがドゥルガー様の夫!」
 動きがどんどん激しく……うぉぉぉ、気持ちいい!

「良かったな……年増はテクニックがすごいからな」
 そっぽを向いているリーズが、ポツリとつぶやく。
「元気がでるだろ?」

 いや、あの……
 サラとジョゼの冷たい視線があるんで、あんまり。

 サラなんて、鼻の頭が真っ赤だ。
 いつもなら間違いなくキレて、『エッチ!』と杖でオレをぶん殴ってるレベルだ。
 けど、しない。
 うふふ体験してればオレが元気になると思ってるのかねえ……いい加減、心配されんようにならんと。

「元気になってるの?」
 オレの顔を、正面からアナベラがのぞきこむ。そんな子供みたいな目で真っ直ぐ見られても、その……
 アナベラは、えへへと笑った。
「んじゃ、あたしも勇者さまに元気をあげるー」

 反対側からビキニアーマーの人が抱きついて来て……
 ぷるんぷるんがほっぺたに……

 うぉ!

「………」

 はっ。

 一瞬、頭が真っ白になってしまった。

 ちょ!
 待って!
 君はまずいでしょ!
 ナマ胸だし!
 ずれるよ、紐ビキニ!

 さすがに周囲が騒然とする。

 左右から素晴らしい圧迫が……
 そんな! 激しく押しつけたら、息が! はふ! あぅぅぅぅ……

 空気を求め、オレは顔をあげた。

 キラッ! と、何かが光ったような気がした。

 鳥?

 いや、ちがう。
 飛行機って乗り物だ。

 そこから、何かが落ちた?

 ぐんぐん大きくなってくる。

 ぐんぐん……赤い何かが……

 ギラッと光ったような……?

 刃?

 オレの頭上に、刃が迫る。

 恐怖心に、精霊が反応した。
 魔法の絨毯の周囲に、水の結界が張られる。
 空気中の水分に潜み、常にオレを護衛してくれている水の精霊が守ってくれたんだ。

 何時の間にか、アナベラも両手剣を抜いている。オレを背にかばい、上段に剣を構えている。

 水の防御壁が噴水のようになって、落ちて来たものをはじき飛ばす。
 剣と持ち手。
 猛スピードで落下してゆく。
 真っ赤だった。
 頭から足の先まで、全身が赤い。
 人間じゃない?
 精霊? 神?

 明らかにオレを狙っていたが……

「アウラさん! エクレール! ティーナ!」
 風を操る精霊、素早く動ける精霊、攻撃力の高い精霊。
 敵の捕獲を命じた。

 けれども、その時には奴は変形していた。

「へ?」

 たとえるなら、モモンガ。
 左右の手から側面そして足にかけてに、大きな布がババッ! と現れたんだ。
 で、奴は上手く風に乗って滑空し、高所から地面へ舞い降りてゆく。
 六十階はあろうかという高層ビル街を。
 すいすいと。

 アウラさんが周囲の風を乱し、落下し始めたそれにエクレールとティーナが襲いかかる。

 途端、そいつは爆発した。
 黒いもくもくとした煙をあげ、跡形もなく消えてしまったのだ。


* * * * *


 奇襲に失敗。
 鈍男(にぶお)かと思ったのに、標的は勘が良かった。

 標的のデータを、確認する。

勇者ジャン
 異世界勇者。精霊支配者。攻撃力不明。
 百日で百人の女性を集める使命を帯びている。
 容姿平凡。身長170センチ・体重60キロ(推定)。
 サークレット、マント、勇者の剣。
 気弱。軟弱。獣っ()好き。かわいいものに弱い。
 魔神ナディン・魔女ドロテアを配下に従える。
 聖女マリー他、異世界から女の手下を伴っている。

 厄介なのは、魔神ナディンと魔女ドロテア。
 ナディンはS級、ドロテアはA〜B級の神族。まともにやりあっては、命が幾つあっても足りない。

 彼等にけどられぬよう、速やかに標的に接触する方法……

 となると……お色気ね。


* * * * *


 さっきのは神霊ではなく、人間だとドロテアは言った。
「この世界にも、暗殺を生業(なりわい)としている者も()りますゆえ。旦那様のお命を狙うとは、不届き千万! 次に()うたら、八つ裂きにしてくれます!」
 生け捕りにしてと頼んだ。何でオレを狙ったのか理由を知りたいし。
「無駄にございます。プロは口を割りませぬ。自害して果てるだけにございましょう」
 それでも殺しちゃ駄目だ、と強く言っておいた。
 ドロテアは非常に不満そうだったが、聞きわけてくれた。

「ほ〜んと、(あま)!」
 そっぽを向いているリーズが、聞こえよがしに言う。

 良いんだよ、甘くても。
 無闇に人の命を狙うなんて、オレはもうやりたくないんだ。

「お兄さま……」
 オレの背に、ジョゼが体を合わせてくる。
 いきなりどうしたの? と、びっくりした。
 が、何故、抱きついてきたのか、すぐにわかった。
 静かにオレを包もうとしてくれるジョゼ。
 対するオレは……ガタガタと震えていたんだ。

 刃が怖かった。

 キラッと光った刃を目にした時、体がすくんだ。
 鬼の大将と対した時よりも、恐怖を感じた。

 血の幻も見えた。

 ニノンに刺されたお師匠様まで思いだした。
 刺されるのはオレだったんだ。それをお師匠様がかばって……

 くそ。

 みっともなさすぎ!

 オレは剣で戦う勇者だ。
 相手の刃にビビってたまるかよ。

「……もう平気だ、ありがとう」
 そう言っても、ジョゼは離れなかった。
「私がこうしていたいんです……ごめんなさい、お兄さま、後もう少しだけ……」
 オレの震えがおさまるまで、ジョゼは寄り添うつもりなんだろう。

 サラやマリーちゃんのあたたかい視線も感じる。

 ありがとう……心配されないですむよう、はやくまともにならなきゃな……

「でも、暗殺者は自爆したし、当分は安全よね」と、サラ。
「いや、又、すぐに襲ってくるだろう」と、オレは答えた。

 あの赤い奴は凄かった。
 飛行機から飛び降りて剣でオレを狙うとか、モモンガ変形したりとか……まともじゃない。
 だが、しかし、オレは知っている。
 それが出来るジョブを。
 自爆が演技だったりしたら、決定だろ。
 間違いなく、あのジョブだ。





 オレ達はナディンの案内で、とある高校(ハイスクール)に向かった。暗殺者を警戒して、精霊はそれ用に配置しておいた。

《チアリーダー部が花形らしいんだけどぉ、よその部の子も強いしぃ、かわいい子も居るみたい〜》
 ほうほう。
《スポーツの一軍選手ってすっごいのよぉ〜 炎のサーブを打ったり、空までジャンプしたり、シュートで大岩に大穴開けたり、熊殺ししちゃったり〜》
 おおお。
《瞬間移動、未来予知、洗脳、無重力、透明化、分身……誰しも何らかの能力を持ってるのぉ》
 超能力みたい!
《地震とか竜巻とか〜 天変地異を起こせる子も居るみたいだしぃ〜 あっちこっち見てみましょ》
 すごいんだな、学生スポーツ選手!
 それなら、女子高生でも、英雄世界とジョブ被りしなさそう!

 チアリーダー・ソフトボール・バスケ・テニス・サッカー・ラクロス・バレーボール・レスリング部を順に見学するとのこと。

 高校の敷地に入ると、剣にマントなオレは浮きまくった。高校生達のファッションは、英雄世界のに似てるもんで。
 けど、異国の人間に慣れてるのか、オレはさほど注目されなかった。
 オレは、だが。

 いつの間にやら、人垣ができていた。

 美女・美少女だらけなんだ。野郎に注目されて当然。
 特に、ビキニ戦士は大注目の(まと)
 でっかい両手剣を背負い局部をアーマーでガードしているとはいえ、ぷるるんな胸も、ぷりんぷりんなお尻も、ほぼ! 全部! 露出! だもんなー
『それ何のコスプレですか?』『握手してください!』『写真を』『サインください!』
 アナベラはえへへと嬉しそうだった。が、『今、お仕事中だから、ごめんねー』と全てのお願いを断っていた。

《おにーさん、透明化していい? 人だらけじゃ、護衛しづらいわ》
 風の精霊アウラさんが、文句を言う。
 ごもっとも。
 だけど、学生達の前からいきなり消えたら大騒ぎにならないか?

 どうしようかと思った時、変なのと目が合った。
 野郎学生の中に、変なのが居る。

 何、その格好……?

 そいつが、ばっちんとウィンクしてくる。
 いや、まあ、かわいいけど。

 右手を振ってきたから、振り返してやった。

 人ごみを縫うようにして、そいつは動く。器用に、どんどん近づいて来る。
 又、オレへと手を振る。
 手を振り返そうとすると……それは、一気に距離を詰めた。オレのすぐ前にまで。

 腹に、ズンと衝撃が走った。
 パキンと金属的な音も響く。

 腹を刺されたんだ。

「貴様!」ドロテアが叫ぶ。
《勇者くん!》よろけたオレをナディンが支える。
 炎、水、風、雷の精霊が、そいつをとりおさえようと迫る。

 だが、そいつが大口から、猛烈な勢いで黒煙を吐き始め……
 周囲の学生達がパニックとなって……

 煙幕が晴れた時には、オレを刺した奴は消えていた。

 いや、外身(そとみ)は残ってた。
 大熊猫(パンダ)のきぐるみ、だけは。

 それを着ていた奴は、何処へともなく消えてしまった。

「っくそ」
 きぐるみを調べていたリーズが悪態をつく。

《しっかりして、勇者くん!》
 サラ似の魔神が、魔法で救急箱やら医者をパッパッ呼び出してはパッパと消してゆく。
《ああああ、こんなんじゃ駄目ねっ! 暗殺者の刃じゃ、毒が塗ってあったろうしっ! 聖女ちゃん、お願いっ! 勇者くんを助けてぇ!》
 魔神がポロポロと涙を流す。本気で心配してくれてるんだ……顔が赤い。鼻の辺りが特に赤いとこまで、サラに似てる。

「どけ! 魔神、私が癒す! さ、さ、旦那様、お脱がしいたします! 私と交われば体が活性化し、傷は塞がり、あらゆる毒は抜け、まさに生まれ変わり」
 いやいやいやいや!

「なんでもいいよ。早く治してもらえよ、死ぬぜ」
 青い顔でリーズまでも叫ぶ。
「あたしが、毒、吸ったげようか? 虫歯ないから、へーき」
 アナベラまで。

「……大丈夫。怪我はしてない」
 どうにか声がだせた。立ちあがって、みんなに腹を見せた。
 傷はない。
 サブレに一体化してもらっていたんだ。土の精霊は、物理守護能力に()けている。体は岩のように硬くなっていた。暗殺者の剣を折っちまうほどに。
 よろけたり、今まで声が出せなかったのは……オレの心が弱いからだ。
 刺された瞬間、体から力が抜けちまったんだ……恐くて。
 情けなさすぎ。

「ごめん。内緒にしてて。敵にバレないよう、みんなにも作戦を言わなかったんだ」
 一緒に旅してきたジョゼ達は、この戦法を知っている。だから、冷静だった。けど、この世界の二人と、リーズとアナベラは知らなかったわけで。
「ごめん……」

《いいのよぉ〜 無事ならぁ!》
「良かった! 旦那様!」
 魔神と魔女が感激の抱擁をしてくる。二人ともアレだけど……すげぇ愛されてると実感した。

「よかったー」
 アナベラはニコニコ笑顔となった。

 が……
「っざけんじゃねーよ、バーカ!」
 赤い顔で怒鳴り、盗賊はきびすを返した。
「てめーの心配なんざ、金輪際しねえ! とっと、くたばっちまえ!」
 走り去ってゆくリーズを、アナベラが追いかける。
 ティーナとエクレールに後を追わせた。二人がこの世界で迷子にならないように。

 内緒にしてたのは、まずかったか……


* * * * *


 お色気誘惑の術、失敗。

 ヤツ好みの獣っ()に変装したのに。

『桃桃酒家』に潜むKUSAは、顧客データを流してくれた。
 勇者(ヤツ)は、大熊猫好きでふわもこ萌えのはず。

 好みの女に迫られれば、普通の男なら気がゆるむ。
 なのに、勇者は冷静に精霊で防御(ガード)したのだ。

 下手な小細工は通用しそうにない。

 正々堂々正面勝負でいこう。

 本気でやれる相手など久しぶり。
 こんなことなら、とっておきも用意しておけば良かった。
 ロケットバーニアや手甲型レーザー砲どころか、ヌンチャクまで置いてきちゃったのよね。

 オーソドックスにいくか……


* * * * *


 リーズ達と合流しようとしたら、突然、暴れ馬の一団が現れた。後でわかったんだが、乗馬部の馬だったそうで。
 つづいて、農学部の牛と羊、大量の野生のハト・野良犬・野良猫が嵐のように襲ってきて、獣たちの群れに流され……
 気づいたら、オレは一人だった。

 人影のない並木道に居た。学生すら居ない。

「勇者殿! 勝負デース!」
 声と共に、木の上から何かが飛び降りて来る。くるくると前方宙返りをし、 着地と同時に足元からパパーンと紙吹雪を舞いあがらせて。

 刀を背負った、真っ赤なタイツ人間。凹凸のある体形は女性っぽいが……頭から足の先までタイツ。目元がほんのちょっと見えてるだけで、後はタイツだ。
 怪しすぎ。
 とりあえず、剣袋の紐は外しておいた。

「……ど、どなたさまでしょう?」
「キサマラに名乗る名前は無いデース!」
 はずんだ声でタイツ人間が言う。『この台詞、言いたかったんだ!』ってオーラをびんびん出してる。『貴様ら』じゃねえだろ、オレは一人なんだから。

「……モモンガになった人?」
 怪しい人が、ギクッ! と体をゆらす。
「さっき、大熊猫のきぐるみを着てました?」
 さらにギク! ギク! っとなる。

「忍びの方ですね?」
 オレがそう聞くと、タイツ人間は露骨に驚いていた。
「なぜ、それヲー?」

「いや、だって、バレバレですから」

 ジパング界で、くノ一のカエデさんを仲間にしている。
 でも、子供の頃から忍者のことは知っていた。『勇者の書』で凄い人気ジョブだったから。
 忍者は、ジパング界や冒険世界の他にも、三つの世界で存在が確認されている。
 超一流の諜報員で暗殺者。
 ファンタスティックな忍術を使い、アメージングな体術を使い、風のように現れ風のように去ってゆく神秘的な存在……

 飛行機から飛び降りての奇襲、モモンガ変形の術、自爆にみせかけた身代わりの術、煙幕。実に忍者らしい。
 その真っ赤な全身タイツも、『忍ぶって言葉の意味を知ってますか?』とつっこみたくなるあたりが忍者っぽい。
 きぐるみを着てた理由だけはわかんないが……

「見抜いていたとは……さすがは勇者デース」
「なんで、オレの命を狙ったんです?」
「フッ。SHINOBIたる者、口が裂けようとも、任務は明かせんのデース」
 鼻にぬくように笑い、陶酔しきって決め台詞を言う。

「勇者殿には怨みはないデスが……消えていただきマース。ではでは、ジンジョーに勝負デース!」
 そう言ってタイツさんは、その場に座り込み、
「礼!」
 かけ声と共にオレに土下座をした。

 ホログラフなのか、彼女の背の上に『ZEN』の文字が浮かび上がる。

 はい?

 つい、あっけにとられてしまった。
 で、対応に遅れた。
 土下座していたタイツさんが、いきなり跳躍し、抜刀した時に。

 閃く刃……

 どくん、と心臓が鳴った。

 腰のキンキラ剣を抜き、刃を受け止めた。

 途端、信じられない事が起きた。
 敵の刀がポッキリと折れたのだ。

 ただ攻撃を受けただけなのに!

 勇者(アイ)が、攻撃値を教える。
 敵の攻撃は、1万2397ダメ。
 受けたオレの方は……814ダメ。追加効果75万ダメ。

 追加効果75万ダメって……

『百人の伴侶がそなたに力を与える。心を交わせ合った者が増えれば増えるほど、この剣は威力が増す。伴侶達のそなたへの愛が、そなた自身の攻撃力に上乗せされるのじゃ』
 アシュリン様の言葉を思い出した。

 七十五人の伴侶の数だけ、追加効果がついた。
 つまり、100人集めたら追加効果は100万ダメに……?

 たしかに『どっか〜ん』な剣だ。

 笑みが漏れた。
 こんな凄い剣を貰っといて……
 みんなに支えられてて、何が怖いんだよ……
 馬鹿みたいだ、オレ。

「正々堂々勝負で、この私が敗れるとは……」
 赤タイツさんが、がくっと地面に座り込む。
「負けましたデース……どうぞ殺してくだサーイ」

 へ?

 降参しちゃうの?
『何があっても生き残り、泥水すすってでも任務を遂行する』のが、忍者の美学じゃ?

「私はマスターオブNINJAロビン! ブシドーも極めてマース! SHINOBIたる者、生き恥をさらすぐらいなら死を選びマース!」
 む?
 武士道って……侍のものでは?

 なんか、キミ……いろいろ間違ってない?

 赤タイツさんが首の脇にあるボタンを押す。
 ぷしゅ〜と音をたて、目元の穴が広がり、顔が露わとなる。

 どこに収めてたんだってぐらい大きな金のポニーテールが、ぼよんと飛び出る。
 意外と童顔。愛らしい緑の瞳、ピンク色の頬、かわいらしい桜色の唇。

「覚悟はできてマース。この身をどうぞお好きにしてくだサーイ」
 ロビンがうなじを見せるように、体をかがめる。
 そこを斬れってことだろうけど……

 お好きにって……かわいいキミを?

 好きにって……


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと二十四〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


 何で、萌える、オレ!

 てか、何で仲間枠入り?

 くノ一は、もう居るのに!

 神様のジョブ選定基準、わけわかんないよ!


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№076)

名前     ロビン
所属世界   冒険世界
種族     人間
職業     マスターオブNINJA
特徴     秘密諜報員で暗殺者。
       オレの暗殺指令を受けている。
       ファンタスティックで
       アメージングすぎる暗殺技。
       ブシドーも極めている。
戦闘方法   刀・忍術
年齢     秘密
容姿     素顔は、金のポニーテールで童顔。
       凹凸は普通。
       真っ赤な全身タイツは、
       モモンガ変形、ホログラフ投影、
       紙吹雪、スイッチ着脱と、意外と多芸。
口癖    『SHINOBIたる者』
好きなもの  ブシドー・東洋の神秘
嫌いなもの  敗北・任務失敗
勇者に一言 『この身をどうぞお好きにしてくだサーイ』
挿絵(By みてみん)
+注意+
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