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ハーレム100 作者:松宮星

冒険世界

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サービス♪サービス♪【ユンユン】(※)

 三つのお願いは、『萌え美女になってください』『二十六日後の魔王戦に召喚するので、可能な限り大ダメージをだしてください』『二十六日後に一日体を空けてくれればOK。それまで他の誰かの願いごとを聞いてていいです』となった。
 二つ目は、冒険世界の主神の怒りを買わない為の予防策。
 三つ目は、魔神のせいだ。二つ目を言ったら、あの野郎、さめざめと泣きだして《成就に二十六日もかかるしぃ。二十六日も次のお願いを聞けないのねぇ……》とか怨みがましく言いやがった。
 けど、まあ……オレの願いを叶えても、残りは9018。一万まで、まだまだ遠い。二十六日も無為に過ごさせちゃ確かにかわいそうだ。

 三つの願いを聞き届け、魔神はランプの中へと戻っていった。

 三つのお願いをしたらランプを譲渡するのが規則(ルール)だと、ドロテアが教えてくれた。
 オレは、ジョゼにランプを譲った。「叶えやすい願いを三つ、言ってやって」と。
 オレは百日で百人の伴侶を探す勇者だ。数をこなさなきゃいけない辛さは、身にしみて知っている。できるだけ協力してやりたい。

 ジョゼがランプをこすると、ハゲ・ヒゲ・ムキムキの巨人の姿で魔神は現れた。
 最初に出逢った時の姿。
 その濃い姿がデフォルトということは……
 やはり、魔神は……
 いやいやいやいや!
 ナディンは女の()! そうに決まっている!

 ジョゼはオレをチラッと見てから、最初の願いを口にした。
「私達の前に出る時は……お兄さまが萌えた時の姿になってください……」と。
 ありがとう……ジョゼ……お義兄ちゃんはお前が大好きだ!
 それからジョゼは、『雷神なんちゃら拳』についての相談を始めた。相談を二つ目にしたわけだ。攻撃力が安定しないんで困っているらしい。
 で、三つ目に、攻撃力が『できるだけ安定する』方法を望んだ。美女な姿となった魔神はいったんランプの中に戻り、手首・足首用の輪を持って来た。能力向上兼バランサーらしい。

 サラは「アタシ達がもとの世界に還るまで、仲間探しに協力して」「仲間探しに協力しつつ、他の人の願いを聞いていいわ」と二つのお願いを言った後、炎以外の魔法の制御法を教わっていた。

 リーズは「あんたが最高と思うもの、一コづつ頼む。オレに使いこなせて、呪われなくて、さほど大きくないモノでね」と条件づけてから、『お宝』『魔王戦お役立ちアイテム』『盗賊用お役立ちアイテム』と要求した。
 で、魔力のこもったすごく大きなルビー、変わった形の耳飾りと腕輪を貰っていた。
 一個づつでいいなんて意外と欲が無いと思ったら、「量より質だよ。お宝を山ほど抱えて身動きがとれなくなるなんてさ、盗賊としちゃ下の下だぜ」と生意気盗賊は笑った。

 アナベラのお願いは『おいしい食事』『おいしいお酒』『おいしいデザート』。
 あの……
 叶えやすいお願いをしてやってとは頼んだけど……
 いいの、そんなんで?

 魔神の張った天幕で、ちょっと早めの晩餐となった。

 仮テーブルの上は、豪勢な食事でいっぱいだ。砂漠の国らしい香辛料のきいた独特な料理。美味そうだったが、七人で食べきれる量じゃなかった。
 ニコニコ笑顔のアナベラ、『もっとマシなこと願えよ、バーカ』と文句言いつつけっこう食べるリーズ。美味な料理に、二人の顔はゆるんでいた。
 だが、それ以上に魔神ナディンはご機嫌だった。
《一日に十五もお願いが叶えられるなんてぇ、夢のようですぅ。あと9006ですぅ。ありがとう、みなさん》
「そのお願いって、精霊がしてもいいの?」と聞いてみると、願い主は人間でなくてもいいとのこと。
 だったら……
「オレ、精霊を八体持ってるんだけどさ、全員に三つづつさせようか? 残りが更に二十四減るだろ?」

 サラ似の魔神はびっくりと目を見開き、それからポロポロと涙を流し始めた。
《なんて、いい方っ! ああああ、もう本気で惚れちゃいそう!》
 感激のあまり、魔神が抱きついてくる。

 ぞわっと鳥肌が立った……

 このヒトは、女……本当の姿も、女……ハゲ・ヒゲ・筋肉じゃなくって、女……
 懸命に自己暗示をかけた。

 魔神ナディンの反対側から、むっちんぼよよんな肉体が抱きついて来る。ドロテアだ。
「軽々しく旦那様に触れるでない、新参者。旦那様は、ドゥルガー様と私のものだ」
 いや、君のものでもない。

「私は輪廻世界の八大将軍と言われた女。貴様ごときに頼らずとも、あらゆる願いをかなえられるが、」
 ジロリとナディンを睨んでから、お色気たっぷりな顔で魔女がオレへと微笑みかける。
「願いは、旦那様にお譲りいたします」
 へ?
「先程はどうでもよい事しか願えなかったでありましょ? さ、さ、遠慮なさらず私の分の願いをお使いください、酒池肉林でも絢爛豪華なお宝でも」
 オレに媚びまくってから、コロッと態度を変えて魔女は横柄に言う。
「魔神。私の最初の願いは『残り二つの願いを旦那様に譲る』だ。良いな?」
《承知っ! 残り9005!》

 魔神が、わくわくした顔でオレを見る。
 いきなり振られても、困る……
 なにを頼もう……

「魔王戦でオレ、この魔法剣で戦う予定なんだけど」
 と、キンキラの剣を魔神に見せてから言葉を続けた。
「攻撃ダメージを伸ばす方法があったら、教えて欲しい」
 魔神は上から下までオレを見つめてから、提案してきた。
《神聖防具はいかがです? 装備すればするほどぉ、邪悪へのダメージ倍率が伸びてゆきますぅ。今、手元に邪悪へのダメージ一・二倍の頭装備がございますがぁ》
「んじゃ、三つ目のお願い。それください」
《承知っ! 残り9003!》

 魔神ナディンがくれたのは、銀のサークレットだった。サークレットにマントに勇者の剣か。かなり勇者らしくなったぞ、オレ。

 食事の後、ほんわか聖女様が言った。
「私〜 聖職者ですから〜 お願い事とか、本当は、してはいけないのです〜 でも、人助け、じゃなかった、魔神助け、ですから〜 神様も、きっと、お許し、ください、ますよね〜」
 マリーちゃんは、にっこりと微笑みを浮かべた。
「ナディンさん、お願いですぅ。あなたの、悩みを、私に、聞かせてください〜」

 そんなわけで、天幕で一晩を過ごす事になった。
 野を越え山を越え、マリーちゃんとナディンが遥か遠くへ行ってしまったからだ。精神的にだが……

《あたしぃ、努力家だからぁ、パパやママの望む通り剣も格闘も魔法も極めようとしたのぉ。でもね、大きくなるにつれ、どんどん『違うな』って違和感が強くなったのよぉ。体を鍛えれば鍛えるほど、『本当のあたし』から遠のいてゆくというかー》

 オレは布団にくるまり、両耳をふさいでいた。
 もう夜更けだ。マリーちゃんとナディンを除くみんなは、眠っている。
 オレだって眠ってしまいたかった。
 魔神のお悩み相談なんか聞きたくない。
 けど、目が冴えちゃって眠れない。同じ天幕に居るから、どうしても相談内容が漏れ聞こえてくる。
 ナディンは、冒険世界の主神の百何番目かの子供らしい。両親の期待に応えようと己を偽って頑張ってきたけれど、ついに我慢できなくなって反旗を翻したのだそうで……
《だって、パパったら、あたしにぃ、結婚しろって言ったのよぉ。相手もお式の日取りも決まってて、もうどうあっても逃げられなかったの。だから、あたしぃ……》

「それは、おつらかった、ですね〜」
 マリーちゃんの優しい声が、ナディンを包み込む。
「でも、ナディンさんは、心と、肉体の、性別が、一致なさって、いないだけ〜 それだけ、です〜 お気に病まれては、いけません〜 周囲から、理解を、得るのは、とても、難しいことですが、ナディンさんなら、大丈夫です〜 お心が、綺麗ですから〜 きっと、いつか、お父様も、わかって、ください、ますよ〜」
《ああああ、ありがとぉ! 女の尼僧さんが理解してくれるだなんてぇ! 感激ぃ! こぉんないい人達、初めて! 勇者くんは、みっともないあたしを伴侶にしてくれるしっ!》
 う。
《明日から、あたし、頑張るぅ。勇者くんの為に、萌え萌えな女の子を探してみせるわぁ》
「はい〜 ファイト、ですぅ〜」
 うぅぅぅ……

……オレも男だ、潔く認める!
 心は乙女だし、いい奴だし……ナディンが本当はどんなでもいい。ナディンも伴侶だ。責任とって、大切にする!





 翌朝、ナディンに聞くと、マリーちゃんは三つのお願いをしたという。
 最初が、ナディンの悩みを聞く。
 次は『話し合いの機会が、できましたら、理解して、もらえないと、あきらめたりせず、お父様と、ちゃんと、お話、してください〜』。
 最後が、『みなさんと、なかよく、楽しく、旅をしてください〜』。
 全然、自分のことをお願いしてないじゃん。
《ほぉ〜んと、抱きしめたくなるぐらい、いい子ぉ。あたしが男だったら、ほっとかないのにぃ》と、ナディン。
……とりあえず、ノーコメント。

 精霊達の願いごとは今日の夜以降って事で、伴侶探しに出かけた。
 ナディンの空飛ぶ魔法の絨毯に乗って、砂漠を越え、大きな都や遊牧民の住む草原を過ぎ、神聖な美女がいっぱ〜い居るという神様達の余暇エリアを目指し飛んだ。
 けど、ナディンは魔神に堕とされている。神様達の集まる場所とかに行っても平気なのだろうか?
《へーきよぉん。あたし、永久会員カード持ってるからぁ、神族のご友人三人まで案内できるのぉ。勇者くんと、転移神のおねえさまと、聖女ちゃんなら、準神族だから、おっけぇだと思うの》
 神聖美女なら、魔王に100万以上のダメージも軽そうだ。
 問題は、ジョブ被りにならず仲間にできるかどうかだ。

 魔法の絨毯は、緑深い山の奥の奥へと降りて行った。
 谷川からどんどん上流へとのぼってゆくと……
 やがて、花の森となった。
 辺り一面が、淡い紅色の花の木となった。
 枝にびっしりと、薄紅色の小さな花が咲いている。愛らしく、それでいて清楚な花だ。
「綺麗!」
 どこもかしこも花、花、花だ。
 サラやジョゼが笑顔となる。
「へー」
 リーズまでもが、口元をほころばせ周囲を見渡していた。
 優しく甘い香りが漂っている。

《桃の木の森ですぅ。お伴の方達は、ここでピクニックなさっててぇ》
 ナディンが、魔法の絨毯の上にご馳走を出す。連れて行けないメンバーの為に、花見の準備をしてくれたようだ。

 いざって時の連絡&護衛用に、光・闇・炎・雷の精霊を置いてく事にした。
 お花見なら、ソワは喜ぶだろうし、ティーナはぬいぐまとデート気分が味わえる。
 エクレールは、紫の小鳥の為に呼んだ。けど、あいつはジョゼさえいりゃあ満足なのかも。むぅ。

 ルーチェさんは、ナディンによく似た格好で出現した。
 砂漠の踊り娘風。
 七色ファッション+白だ。金とオレンジを基調とした胸当てと付け袖、半透明なふわふわの白のロングスカート。首飾りと腰のベルトからは赤・青・緑・紫・藍の宝石やビーズが数珠つなぎでいっぱい垂れていて、ジャラジャラ輝いている。
 スカートがエッチ。深くスリットが入ってるから太腿までチラチラ見える上、半透明だから足が透けて見えてる。太腿までジャラジャラが垂れてるから、下着は見えそで見えない。
 金の長髪をポニーテールにしてるのも、かわいい! セクシー! 魅力的!
 キュンキュンとハートを鳴らすオレに、光の精霊はにっこりと微笑んだ。とても満足そうだった。
 ベテランしもべのルーチェさんに精霊達の指揮を任せ、『精霊達にも三つの願いをやってもらう。みんなの願いの相談にのってやって』とも頼んでおいた。

 お花見組を残し、神様の集う場所とやらに向かった。
 先頭のナディンの後を、魔法のランプを持ったマリーちゃんが続く。譲渡してないんで、まだマリーちゃんが主人なのだ。

 桃の森をしばらく歩くと、山にぶちあたった。
 洞窟があった。
 洞窟の遥か奥が、ぼんやりと明るい。
 その光を目指し、薄暗くて狭い通路を延々と歩いた。
 近づくにつれ、奥の光が大きくなっていった。

 それは……
 光り輝く扉で、扉の上には点滅する光の看板が掲げられていた。
『桃桃酒家』と。

 扉の先は、やたらキラキラした建物の中だった。
《いらっしゃいませ〜》
 小さな白黒クマが、オレ達を迎えてくれた。後ろ足で立ってるのに、オレの膝までしかない。目の周り・耳・足・肩から胸だけ黒くて、あとは白い。かわいい……胸がキュンとした。
《ようこそおいでくださいました、ナディン様〜》
《おひさしぶりぃ、ユンユンちゃん。お元気ぃ?》
《ありがとーございま〜す。ボクはいつも元気でーす》
 うぉぉ、か、か、かわい……

《本日のお相手は、猛男にいたします? それとも偽娘〜?》

 はい?

《今日は接待なのぉ。この勇者くん好みの娘を紹介してくれるぅ? 萌え萌え彼女。気に入ったら、二十五日後に店外デートの予約入れたいんだけどぉ》
《店外デートの予約まで! ありがとうございます!》

 白黒クマさんがジッとオレを見上げる。
 かわいすぎ……
《はじめまして〜 ユンユンでーす》
 もこもこの体の中から、クマさんが名刺を取り出してオレにくれる。
『桃桃酒家 店長 大熊猫(パンダ)ユンユン』
 名刺の裏には、クマさんのラブリーな足形が……
 はぅぅ……キュンキュンしそう。

《では、四名様ご案内いたしま〜す》
 奥から出て来たお猿さんに受付を任せ、白黒クマさんがオレ達を超豪華な小部屋へと案内する。店長自ら接待とは、VIPなんだなナディン。
 部屋の真ん中の丸いテーブルについた。
 オレの隣には当然のようにドロテアが座って、べた〜としなだれかかってくる。クマさんもオレの隣。ちっこいんで座らないと会話しづらいからだな。

「ここは一体……?」
 きょろきょろと室内を見渡す。答えたのは、魔神だった。
《浮世の憂さを忘れて、楽しくお料理をいただくお店。お酒も絶品なのぉ》
 へー
《これから、コンパニオンを決めるの。接客係よぉ》
《当店は、楽しい会話と美味な食事が売りでございます。コンパニオンへのお触りはご遠慮くださいね〜》
 白黒クマちゃんが、オレに釘をさす。
 しませんよ、そんなこと……
 あああ、でも、クマちゃんは抱っこしたいかも……
 マリーちゃんも、うずうずしている。シロさんとピアさんの抱っこ祭りの時は、マリーちゃんも参加してたもんな。

《お客様のお好みのタイプは? 女性がご希望でしたね? 幼女から老女まで、さまざまな仙女が居りますよ〜》

「魔王に117万ダメージ以上を出せる美女。攻撃力は高ければ高いほどいいんだが」

《種族のご希望はございますか〜? 人型から、馬・蛇・狐な妖怪型まで。更には龍・麒麟・鳳凰・霊亀などもご用意しておりますが》

 テーブルの上に、さまざまな女の子……というか獣の幻が次々と現れる。クマさんの幻術のようだ。
「龍……」
 アシュリン様とジョブ被りか? けど、間違いなく強そう。麒麟・鳳凰・霊亀ってのも。
 前足の生えた蛇、鹿もどき、鳥、亀じゃ、萌えようがないが。
「人型変化は可能?」

《お客さん、通好みですね〜》
 白黒クマちゃんが、このこの〜 と肘でツンツンする。
《人型が良ければ、素直に人型で選べばよろしいのに〜 あえて人外にいって『オレ様の為に変化をしてもらう』んですね〜 俺様趣味でしたか、良いご趣味です〜》
「いや、人外すぎると萌えないからで……」

《ツノとかシッポがちょろっと残ってる、獣っ()がご希望なのですね〜》
「そうじゃなくって」
《え〜っと……二十五日後にフリーな娘は……》
 クマちゃんはオレの話を聞いてくれない。足形印のついた手帳を取り出して、女の子リストをチェックし始める。

《あ〜 申し訳ありません……龍・麒麟・鳳凰・霊亀は予約が入ってました〜 不人気なカメ子ちゃんまで埋まってるなんて意外と流行なんですね、人外萌え〜》

「別に人外じゃなくていいですよ? 魔王に大ダメージ出してくれる萌え美人なら、誰でも」
 するとクマちゃんはキッ! と、オレを睨んだ。
《最高のサービスと最高の食事! それが当店の売りでございます! お客さまに妥協いただくなんて、店の恥にございます!》
「いや、でも、人外に特に拘りないし」
《お心づかいありがとうございます。ですが! お客様にお気を使われてしまうサービス店など、あってはならないのです! 攻撃力の高い獣っ娘ですね! 絶対、ご用意いたします!》
 話を聞いてよ、クマちゃん……

 クマちゃんはパラパラパラと手帳をめくり、口をあんぐりとあけた。そのトホホな口の開け方からして、めぼしい女の子は予約でいっぱいなんだろう。
 目に涙をためながら、白黒クマちゃんは手帳をめくり続ける。
 必死に。
 ひたすら。
……かわいそうになってきた。
 で、しばらくして、クマちゃんはパッと顔を輝かせた。実にわかりやすい。

《お客様、ボクはいかがでしょう?》

 へ?

《二十五日後でしたら、ボク、休日なんで空いてま〜す 魔王とは戦ったことはないですが、ボク、大熊猫ですからわりと強いですよ〜》

「愚か者。旦那様がお探しなのは、萌え美女じゃ」
 むっちんぼよよんな魔女が、オレに更にスリスリと体をすり寄せる。
「チビが旦那様の伴侶になろうなぞ、百年早いわ」

 クマちゃんがムッと顔をしかめる。でもドロテアもお客様なので、口調は荒げなかった。
《獣っ娘変化をいたします。お気に召さねば、チェンジをご希望ください。当店は、三回までチェンジできますので〜》
 はあ。

 オレの隣で、ボワンと白い煙があがった。
 最初はクマちゃんサイズだった煙が、ぐんぐん大きくなってオレよりやや小さいぐらいにまでなる。

 次第に煙は薄れてゆき……

 二つおだんごの黒髪少女が現れた。
 ふよふよと羽衣をまとってるから、仙女なんだと思う。
 大きな黒い瞳、ふっくらとした頬、ちっちゃな唇。ラブリーな美少女だ。
 ドレスは真っ赤で、かわいい大熊猫模様。首の辺りが詰め襟なのに、なでやかな肩の線、胸や背の曲線がはっきり出ちゃうタイトな作り。
 袖は無く、黒の付け袖をつけている。スカートの裾は膝上なのに、スリットがものすごく深い。腰まで? 下着見えるんじゃ?
 黒いガーターストッキングをはいた足はすらりとしていて……なかなかの美脚!
 真っ赤なハイヒールも、扇情的!

 美少女が、にっこりと微笑みかけてくる。

 オレのハートは、キュンキュ……

 いやいやいやいや!

「一つ教えてください!」
 オレは拳を握りしめた。

「ユンユンさんって、女の子ですか? 男の()ですか?」
《ボクは女の子ですよ〜》

「生まれた時から、精神も肉体も?」
《はーい。メスで〜す》

 ボクっ()だったか!

 ならば、萌えて問題なし!


 オレのハートは、キュンキュンと鳴った……


 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。
 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。

《あと二十五〜 おっけぇ?》
 と、内側から神様の声がした。


「それで〜 どのへんが、獣っ娘なんですか〜?」
 マリーちゃんの質問に対し、大熊猫娘ちゃんは席を立ち、オレに向かってお尻を向ける。
《ここでーす》
 かわいくて小さな美尻。真っ赤なドレスの上に、毛糸玉のような白いシッポが生えていた。
《あと手と足が黒いでしょ? おめめも、おだんごも。大熊猫の時の模様が残ってるんです〜》

 ふーん。
 クマちゃんの時は、目の周りと耳と、肩から胸にかけてと前足、後ろ足が黒かった。
 見えないが、真っ赤なドレスの下の肩から胸は黒いのかな? おへそ丸だしの短い下着(ハーフトップ)を着てるようなもんか。
 で、下半身は……後ろ足だけが黒かった。

 あ?

 じゃ、腰の辺りは……素肌?

 上は黒ブラだけど、下はすっぽんぽん……?

 ノーパ……

 変な想像をしてしまった。

 急いで、鼻の下を押さえた。


 魔王が目覚めるのは、二十五日後だ。


 店長おすすめコンパニオンさんが三人、接待してくれた。人型、鳥娘、魚娘だったんだが……仲間にできなかった。ジョブ被りかよ……くそ。

 食事は、ものすご〜く美味しかった。
 長寿・健康アップ+魔力・霊力増強+美容効果があるお料理だそうで。
 オレの目から見ても、女性陣がイキイキツヤツヤになったのがわかった。
 オレもキレイになったのかねえ。

 お店から出る前に、店長室で特別サービスをしてもらった。
 ユンユンちゃんを抱きしめた……

 お触り禁止の店なのに……ありがとう、ユンユンちゃん。肉球まで触らせてくれて♪

 ぬいぐま好きのサラ、悔しがるだろうな。かわいいもの好きのジョゼも。

 さっきのエッチな想像のせいで最初ドキドキしたけど、すぐにふわふわのもこもこに夢中となった。
 オレとマリーちゃんは、心ゆくまで大熊猫を抱っこした。

 ユンユンちゃん、最高っ!


* * * * *


『勇者の書 101――ジャン』 覚え書き

●女性プロフィール(№075)

名前     ユンユン
所属世界   冒険世界
種族     仙人
職業     桃桃酒家 店長
特徴     大熊猫(パンダ)姿の店長さん。
       最高のサービスをモットーとしている。
       サービスに燃えるあまり、
       人の話を聞かないところも。
戦闘方法   不明。わりと強い。
年齢     千年店長との噂。千歳以上?
容姿     人型時は、ツインおだんご美少女。
       真っ赤なチャイナドレス。
       黒い付け袖、黒いストッキング、
       赤いハイヒール。
口癖    『最高のサービスと最高の食事!
       それが当店の売りでございます!』
好きなもの  お客様にご満足いただくこと
嫌いなもの  最高のサービスを提供できないこと
勇者に一言 『お客様、ボクはいかがでしょう?』
挿絵(By みてみん)
+注意+
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