挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ハーレム100 作者:松宮星

勇者の一番長い日

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

102/224

仲間

「君も知っての通り、賢者様は不老不死だ。重傷を負ってお亡くなりになられても、必ず蘇られる。しかし……」
 シャルルは溜息をつき、セットの乱れた金の髪をかきあげた。
「石化は行動不能状態だ。死亡したわけではない。それゆえ、再生が開始しないのだよ。そして、やっかいな事にこの石化は解呪できない」

 シャルルの目配せに頷きを返し、マリーちゃんが状態異常治癒の魔法を唱える。

宵ヲ彷徨フ(クレセント・)月将ノ(シェイド・)菩蓮掌ディスアピア!」

 魔法の輝きがお師匠様を包む。
 だが、何も変わらない。
 お師匠様は硬い石のままだ。

「マリー様の治癒魔法は、魔法・呪術・自然要因による状態異常を全て癒せる。毒・麻痺・弱体化・混乱・魅了・呪縛・石化など、なんであれ正しくないものを払い、正しい姿へと人を導ける。だが、賢者様に解呪の魔法はかからないのだ」

 シャルルはもう一度ため息をついた。
「……いっその事、殺してさしあげるべきかと思った」
 殺す?
「ジャン君。賢者様は不老不死だ」
 オレに言い聞かせるように、シャルルは強く言った。
「千々に砕けたとて、傷一つないお姿で蘇られる。そうだろう?」
「……そうだ。だけど、傷を負えばお師匠様だって痛いし苦しい。普通の人間と感覚は一緒なんだぞ」

「しかし、このまま石化状態にあるのは賢者様の本意ではなかろう? 死の苦痛を味わおうとも、君の側に戻る事をあの方は望まれる。そうは思わないか?」
「だが!」

「今のお体を粉々に砕き死亡状態とすれば良いのではないか?……そう思ったのだがね」

 シャルルが腰の剣を抜いた。
「ポワエルデュー侯爵家に伝わる魔法剣だ。触れただけであらゆるものを切り裂く、凄まじい切れ味の剣だ。これで賢者様の髪の先を切ってみせよう」
 オレを刺激しないようにだろう、髪先しか切らないと何度も断り、シャルルはゆっくりとお師匠様に近づき石化した髪の先っぽへと剣を振り下ろした。
 ガキン! と耳障りな音がした。
 が、それだけだ。
 石と化したお師匠様の髪は、シャルルの剣をはじいていた。

「岩をも砕く剣もこのありさま。攻撃魔法も同様だ。治癒魔法をはじいたように、あらゆる呪をはじいてしまう。賢者様の今のお体は、良きものであれ悪しきものであれ、何も受け付けない」
 ご覧の通り殺してさしあげることもできないと、シャルルは自嘲の笑みを浮かべた。 
「君は不快を覚えるだろうが、この石化魔法は呪いではない、祝福だよ。あらゆる攻撃から被術者を守護する鉄壁の守りの魔法だ。解けるのは術師だけだろう」

「じゃあ、もう一生、解けないのか……」
 オレをかばった姿のまま、お師匠様はこの部屋にたたずみ続けるのか……
「オレが……エクレールにあの女を殺させたから……」

「殺させた?」
 シャルルとマリーちゃんが、オレからサラへと視線を動かす。
 幼馴染は肩をすくめた。
「あの女の人の心臓を、エクレールが止めたでしょ? 精霊は精霊支配者の命令に逆らえないから……仕方なく『殺した』」

「まあ、確かにそうではあるが……」
 歯切れの悪い言い方をするシャルル。
 とまどうマリーちゃん。

 違和感を覚えた。

「もしかして、殺してないのか……?」

 聖女様が、いたわるようにオレを見ている。
 殺意にとりつかれた愚かな男。その狂気に心を痛めて。

 直感した。

 生きているんだ……

 オレは幼馴染を睨んだ。
「嘘をついたのか、サラ?」

 サラがオレを睨み返す。
「嘘なんか言ってない。精霊達はニノンさんを殺したわ。あんたの為に、あの人の心臓を止めたのよ」
「本当だな?」
「本当よ。それで、『殺せ』って命令の履行は完了。言葉の呪縛から精霊達は解放されたのよ。その直後に、マリーさんがニノンさんに癒しの魔法をかけた……ただそれだけのことだわ」

 カーッと頭に血が上った。

 あの女が生きている……?
 お師匠様をこんな目に合わせた、あの女がまだ生きているだと……?

「ティーナ! マーイさん! アウラさん! サブレ! グラキエス様! エクレール! ルーチェさん! ソワ!」
 八体の精霊達の名前を呼んだ。

『殺せ』では曖昧すぎた。はっきりと息の根を止めろと言えば良かったんだ、治癒魔法で助けられないように。

 繰り返し名を呼んだ。しかし、しもべ達は姿を現さない。

「いくら呼んでも来ないわよ。よく見なさい。あんた、契約の証をつけてないのよ」
 言われて初めて気づいた。ペンダントもブローチもブレスレットも腰のベルトもない。寝てる間に、サラ達に奪われたのか……契約の証を通してでなきゃ、オレの声は精霊達に届かない。

「マーイさん!」
 空気中の水分に潜み、常にオレを護衛している水の精霊。彼女なら側にいるはずだ。
「水の精霊もいないわよ。散歩に行ってもらってるの。あんたの声が届かない遠くまで、ね」

「なんでだよ、なんでそんな勝手な!」
 サラがキッ! とオレを睨む。
「じゃ、あんた、精霊に何をさせたいのよ?」
 オレの胸倉をつかみ、サラが顔を近づけてくる。
「二度と蘇生できないよう、ズタズタに引き裂けとでも命じるつもり? 首を刎ねろとか? そんな事を、本当にさせたいの? あんた、精霊をなんだと思ってるの?」
「精霊は……オレのしもべだろ」

 左頬をはたかれた。
 派手な音が部屋に響き渡った。

「目を覚ませ、バカッ!」
 怒りの形相のサラ。

「あんた、前に私に言ったじゃない! 精霊を支配する気はないって! しもべにはなってもらったけど、本当の主従関係じゃない、魔王戦で共に戦ってもらう仲間なんだって!」
 オレの体を揺さぶり、サラが怒鳴る。
「期間は精霊が望む間だけ、嫌になったらいつでも契約を反故(ほご)にしてもとの世界に帰っていいって約束したわよね? 彼女達は友達でしょ? 友人に人殺しをさせたいの、あんたは?」

 怒鳴られながらオレは、風の精霊アウラさんの言葉を思い出していた。
《しもべは奴隷とは別物よ。そこだけは間違えないで。あたしは、おにーさんの頼みを聞いてあげるお友達ってとこ。どーしても嫌なことは拒否するからね。存在にかかわること。性質に反すること。エッチなこと、よ》
 そうだ、グラキエス様も言っていた、《慈善事業(ボランティア)でしもべとなったのです。私を奴隷扱いしたら、お仕置きしますわよ》と。

 みんなの顔を思い出した。

 一緒に生まれたアナムを慕い、共に同じ世界に行きたいと望んだ情熱的なティーナ。
 変化が下手で誰のものにもなれず千二百年も孤独だった、マーイさん。
 気ままで悪戯好きだけどベテランしもべ。つたないオレを助けてくれたアウラさん。
 変な趣味だけど、《ジャン様に出会えて、私、幸せですわ……私のご主人様はジャン様だけです》とまで言ってくれたサブレ。
 三流精霊支配者のオレを導き続け、体調が悪くなっていた事すら隠していたグラキエス様。
 陽気で明るく、いつもからっとしているエクレール。
 光の精霊を仲間にできなかったオレの為に、導き手の役職を休んでしもべとなってくれたルーチェさん。
 優しい人のものになりたい、誰かから微笑みかけられたい、頭を撫でられたいと、ささやかな願いを抱いていたソワ。

 オレはうなだれた。

 カッとしちまったとはいえ……
 してはいけない事をした……

 オレは……
 精霊達を下僕扱いし……
『人殺し』を無理()いしたんだ……

 伴侶だ、仲間だ、って言ってたのに、口先だけだった。

 友人に人殺しをさせようとしたんだ。

「ごめん……みんなに謝る」

「そうよ。後でたっぷり謝りなさい」
 鼻息も荒くサラが言う。
 オレは頷いた。

「ありがとな、サラ……それから、ごめん。オレ、おまえを殴ったよな?」
 シャーマン戦士を殺そうと暴れたオレを、仲間達は止めた。
 とりおさえようとし、魔法で静めようとし、正気に戻そうと声をかけ続けてくれ……
「誰に何をやっちまったのか覚えてないんだ。けど、おまえなら……必死にオレを止めてくれたよな……オレが殴ろうが蹴ろうが、おまえはオレを止めようとしてくれたんだろ……? ありがとう」

「バカ」
 サラが、オレへと拳を突き出してくる。オレの頬を殴る直前で拳を止め、サラはニッと笑った。
「アタシだけじゃないわ。みんなも、よ。ジョゼもマリーさんもカトリーヌさんも……あの場にいた全員であんたを止めたのよ。あんたを人殺しにしたくなかったから」

「あの人を殺しちゃったら、あんた、後で絶対後悔するもの。賢者様の術を解く為とか、そういうちゃんとした理由抜きでも、ね」

「アタシ達、仲間だもん。あんたが間違った方向に行こうとしたら、全力で止めるわよ」

 仲間……

「あんたは一人じゃない。百人の仲間と魔王を倒す勇者でしょ? みんながあんたと一緒に居るのよ」

 気持ちのままに動いた。

 サラを抱きしめた。
 勇ましくってめちゃくちゃ格好いいくせに、その体はほっそりとしてる。
 女の娘なんだ。

 サラが、ビクッと体をすくめた。
 だが、逆らわない。
 今のオレは、でっかいガキも同然だ。すぐに泣きわめく情緒不安定なガキ。人のぬくもりを求めるお子様を、サラが拒むはずがない。

「ごめん……ちょっとだけ……」

 サラの体はあたたかく、やわらかい。
 鼓動を感じる。

 生きているんだ……

 やわらかな手がそっと髪に触れてくる。

 いたわるようにオレの頭を撫でる手……

 優しいサラの手を感じながら、オレは瞼を閉じた。



 もう一度サラに礼を言ってから、離れた。
 マリーちゃんと、ついでにシャルルにも礼を言った。
 よく見れば……
 二人とも顔色があまりよくない。
 いつもは、ほわほわとしてるマリーちゃんが、やつれたように見える。
 見栄っ張りの塊のお貴族様が髪形を乱し、目の下にクマをつくっている。
 お師匠様が石化してから、半日以上経ったとサラは言っていた。二人とも、術を解こうと手をつくしてくれてたんだ。

 オレがガキみたいに暴れたり拗ねたりしてる間に……

「……シャーマン戦士に会いたい」
 その願いは、自然と漏れた。
「会って話がしたい。なんでオレの命を狙ったのか、聞きたい」

「気持ちはわかるが、君は会わない方がいい。君は人がよすぎる」
 はあ?
「と、セリアが言っていた」
 シャルルが静かに笑う。
「犯行に及んだ理由によっては、憎い仇であっても同情しかねない。ほだされたら、そのまま高確率で萌えるはず。あの女性を仲間としたら君は更に苦しむだろうから、絶対に会わせてはならない……セリアにそう頼まれているのだよ」

「萌えねーよ」
 さすがにムッときた。
 セリアの奴、オレを節操無しの馬鹿だと思ってるのか?
 お師匠様を石化した女にキュンキュンするかよ。

「尋問はセリア達に任せておきたまえ。セリアが責任をもって、役目を果たすだろう」

「ジャン、ここか部屋で待ってて」
 サラが扉へと向かう。
「何か聞きだしてるかもしれないものね。話を聞いてきてあげる」
「けど」
 サラは扉の前で立ち止まり、振り返った。
「一人ぼっちだと泣いちゃう?」
 その顔には、サラらしい笑みが浮かんでいた。
「アタシがいないと寂しい? なら、ず〜っと側にいてあげてもいいわよ?」

「ンなわけねーだろ、馬鹿」
 とっとと行けよと睨むと、サラは屈託のない笑顔を見せ扉の向こうへ消えて行った。

 いつも通りだ。
 オレ、さっき究極魔法のことまでぶちまけちまったってのに。
 内心は穏やかじゃないだろうに、ぜんぜん表に出さない。
 つくづくサラは強い……

 オレが側に居ると二人の気が散っちまうだろうから、部屋に戻る事にした。
「勇者さま」
 マリーちゃんが駆け寄って来る。
暁ヲ統ベル(エターナル・)女王(マリー・)ノ聖慈掌(セインツ)肆式(ゼロフォー)!」
 癒しの魔法がオレを優しく包み込む。暴れまくった時の怪我が全て消える。
 マリーちゃんがそっとオレの手を握った。
「大丈夫です〜 明けない、夜は、ありません。必ず、朝は、きます〜」
 きゅっとオレの手を握ってから、オレの前で印を切ってくれる。
「勇者さまに、神の、ご加護が、あります、ように〜」


 部屋に戻り、ベッドに腰かけた。

 時計を見て、間もなく夜明けの時間だと知る。

 魔王が目覚めるのは、二十九日後となったのだ。
 あと二十八日で二十九人を仲間にしなきゃいけない。
 のんびりしている時間などない。

 だが……今、何をすべきなのかわからない。
 次に行くべき世界も思いつかない。

 勇者として、皆を守りたい……その思いは取り戻せたが……
 もともと空っぽだった頭が、よけいひどくなったみたいだ。

 オレは、ただぼんやりと座っていた。

 ノックが響き、意外な人物が部屋に入って来た。

「勇者さまー 朝食だよー」
 どうやってノックしたんだって思うほどの荷物。パンに果物にスープに肉。両手に抱えた盆の上に料理が山盛りだ。アナベラは足で扉を蹴って閉めると、テーブルに直行した。
「いっしょに食べよー あたし、セリアさんにお世話係たのまれたのー」
「世話係?」
 料理を置くと、アナベラは駆け寄って来た。いつものビキニアーマー姿だ。大きな胸がぷるるんと揺れてる。
「サラさんがダウンしちゃったから」
「え?」
「徹夜したからだと思うー 一晩中、勇者さまにつきそってたからー」
 う。
 そうか。
 やっぱ、そうだったのか……
 オレの前じゃ気丈にふるまってたけど、心労もあったろうし……
「へーき、へーき。ねむれば、へーき。サラさん休んでる間に、勇者さまも元気になろーね」
 サラの代役で、アナベラ?
 どーゆう人選だよ……
 そりゃあ、オレのぷるんぷるんのぷりんぷりん好きはみんなにバレてるが……
 今、そんな気分じゃないのに。

 アナベラはオレをひっぱってテーブルにつかせると、隣に腰かけた。
「いただきまーす」
 手を合わせ、アナベラはオレの横で料理をぱくつき始める。肉をスープをパンをどんどん口に運ぶ。朝っぱらから、豪快な食いっぷりだ。
 オレはあっけにとられて、その食事を眺めていた。
「食べないのー?」
「……食欲がないんだ」
「そっかー」
 アナベラはにっこりと笑って、オレの前にあったスープ皿を手に取った。
「んじゃ、あたしが食べさせたげるー」
 へ?
 匙でスープをすくい、フーフーと息をふきかけると、満面笑顔のアナベラがスプーンをオレの口に近づけてくる。

「あーん」
 ちょっ!

「あーん」
 そんな! いくらなんでも!

「あーん」
 待って、オレ、病人ってわけじゃ!

「あーん」
 口あけなきゃ、ダメ……?

「あーん」
 うぅぅぅ……

 根負けして口を開けると、アナベラはえへへと嬉しそうに笑った。

 口の中にまろやかな味が広がった。
 塩気をおさえた口当たりのいいポタージュスープだ。

「おいしい?」
 ニコニコ笑顔には逆らえない。
「……おいしい」

「んじゃ、次ね。あーん」
「待って、自分で」
 むぐ。

 強引にスプーンをつっこまれた。

「あーん」

 アナベラの有無を言わさぬ笑顔に負け、スープを一皿あけた……

「もう一杯食べる?」
「いや、もういい……」
 口元をおさえ、オレはうつむいた。ちょっと気持ち悪い……

「落ち込んでる時はねー おなかすかせちゃダメだよ、勇者さま」
 アナベラが自分の食事を再開する。
「おなかがさびしーと、気持ちがもっとさびしくなるからー」
 大きな骨付き肉にかぶりつきながら、アナベラが笑う。
「おかあさんの教えー だから、あたし、おとーさんとおかーさんが二人とも死んじゃった日も、ちゃーんと食事したんだ」
 え?
「ご両親、亡くなってるの?」
「うん。十才の時にー」
 あっけらかーんとアナベラは笑う。
「そうか……オレと一緒だな」
「だよねー 勇者さまも、おとーさんとおかーさんがいないんだよねー 人間、死ぬ時はポロッと死んじゃうんだよねー」
 死を語っても、まったく暗い影を見せない。アナベラはとことん明るい。

「でも、賢者さまは死んでないー また会えるからだいじょーぶだよ、勇者さま」
「え?」
「あの女の人が言ってたのー 時間がくれば、かならず解ける魔法なんだってー」

「ほんとに……?」
「ほんとー」

「なんで、そんなこと知ってるんだ?」

「あたしねー さっきまで、セリアさんやリーズといっしょだったの」
「じゃ、ニノンって女の尋問に立ち会ってたのか?」
「うん。ボディガード役で」
「……あの女、暴れてるのか?」
「ううん。ぜーんぜん。自殺しよーとしたのを、何回か止めたけど。そんだけー」

 自殺……?

「すっかり、がっくりしちゃってー いろいろ話してくれてるよ、今は」
「いろいろって?」
「いろいろー」

 ぐ。
 世話係をアナベラにした理由がわかったぞ。
 アナベラは隠し事なんかしない。けど、オレに複雑な事情を説明できる頭もない。

 セリアからの説明を待たなきゃ、事情はさっぱりわかんないわけだ。

 っくそぉ……

「石化の魔法、いつ解けるんだ?」
「ないしょー」
 む?
「セリアさんが教えちゃダメだってー」
 むぅ。
「なんで?」
「教えたら、勇者さまが暴れるかもしれないって、そー言ってたー」

「絶対、暴れない。教えてくれ」
「ダメ」
「教えてくれたら、オレ、元気になるから」
「元気に?」
 オレはテーブルの上を見回し、なんとか喉を通りそうなモノを探した。
「教えてくれたら、これ食べる。次の食事には、もっと食べる。だから、教えてくれ。頼む」
 オレはリンゴを手にアナベラに頭を下げた。
「……つらいんだ。何も知らないまんまじゃ……。どんな真実でもちゃんと受け入れるから……教えてくれ」

 アナベラが骨付き肉を皿に置き、オレと向き合う。
「三十日」

 顔をあげると、アナベラはいつになく真面目な顔をしていた。

「石になってるのは、三十日だけー 三十一日目には、もとどーりだって、あの女の人、言ってた」

 三十一日目に石化が解ける……?

 お師匠様が石化されたのは昨日だ。

 全身から血の気が下がった。

 魔王が目覚めるのは二十九日後だ。

 お師匠様の石化は、魔王戦の翌日に解けるという事だ……
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ