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かませ犬の妹が土下座します。

作者:黛 カンナ
ちょっとしたリハビリ用です。深く考えずにどうぞ。
私の名前は河野(こうの) ヒナタ。ただのしがない小学生。





「ごめんなさい……もう、辞めてください……」



現在、私は頭から血を流してグッタリと倒れている兄を背に土下座をかましている。

「んふふ~?」

目の前にいるのは赤い髪の毛を更に赤い血に染めている、ここら一帯の不良を纏めているらしい男。

「本当に、申し訳ございませんでした!」

私はもう一度深く深く、コンクリートに頭をのめり込む勢いで土下座をかました。

なんでこうなったのだろうか。




☆☆


いつもの様に下校をしていた日のことであった。

「最近の猫缶は美味しいな~」

いつものようにコンビニで買った猫缶を開けてモグモグと食べながら歩いていた。

猫缶を食べきった私の視界の100メートル先に学ラン姿の兄が写った。

「アレ?お兄ちゃん?」

突然だが、うちの兄は不良である。

そこそこ強いらしいが『天下』とやらをとれる程ではなく、妹から見ても中の上くらいのかませ犬臭ただよう不良であった。

そんな兄が悪い笑みを浮かべていた。

因みに兄の仲間とおぼしき人たちも悪い笑みを浮かべており、その笑みの先には、明らかに雰囲気の違う学ランの人がいた。

髪の毛は赤色でサイドを黄色のピンで留めている。顔は整っているが目つきが悪いので怖さが引き立っている。

どうやら赤髪は兄達の敵っぽそうであった。

「(ん~こりゃ兄ちゃんお得意の騙まし討ちでもすんのかな?)」

兄の得意分野は騙まし討ちである。

兄の仲間複数で路地裏や人目のつかない場所にいるターゲット一人を袋叩きし、勝利をえる。
よく妹の私に得意げにいっていた。

クズだな~と思いつつ、適当にがんば~とも思ってる。

「あ、路地裏に入った」

ターゲットとおぼしき赤髪さんは、両手をポケットにしまい猫背の体勢で路地裏へと入っていった。

それを見るやいなや、悪人顔で笑う兄と愉快な仲間たちもそのまま路地裏へと入っていった。

騙まし討ちが始まるのだろう。

「ん~ヤバかったら救急車よんであげよう」

別にあの男がどうなろうと関係ないが流石に夢見が悪いし、死なれたら兄にまで迷惑がかかる。

そうと決めた私は猫缶を捨てて、ランドセルを背負いながらトテトテと軽やかに走って路地裏へとコッソリ走った。



「ふぅ…」

大きなゴミ箱の横に身を隠し、首だけひょっこりと出して様子を伺う。

さて、赤髪さんは無事だろ…う…か…

「え…?何コレ…」

あんぐり。

思わず絶句した。

そこで見た光景は、兄達のグループが騙まし討ちに成功して赤髪さんが無残にやられている姿ではなく。



兄達が無残にやられている姿であった。



「ヒャッハァアアア!!全員ぶっとばしてやるぜぇええ☆」

兄を殴りつける超いい笑顔の赤髪さん。
喧嘩をするのが生き甲斐とばかりに、赤髪さんは笑っている。お前はどこぞの戦闘民族かーい。

そして、よく見てみると赤髪さんの仲間とおぼしき人たちもいた。

「もう、ジンさん飛ばし過ぎだよ」ゲシュ!←顔を殴る音。
「さすがジンさんパネェ!!」バキ!!←鉄パイプで殴る音。
「ジンの楽しい姿を見れて嬉しいよ」バゴキュ←何か捻ってる音。

わー地獄絵図☆

って、いってる場合じゃない。

つまり、騙まし討ちをする筈だった兄達グループを逆に……赤髪さんたちが騙しうちしたのである。

卑怯だ。なんて卑怯なんだ。いや、そもそも兄達が悪いがそれはそれとして卑怯だ。

「どどど……どうしよ……きゅ……救急車!……け、警察!!……」

ガタガタと体が震えて、指も震えてスマホをまともにタッチ出来ない。早く早くと大パニックを繰り広げていると……。

影が…かかった。

「ッアハ☆お嬢ちゃん、こんな所で何をしてるのかな?」

後ろで声がした。
明るく、何も状況が分からなければ元気がよくて明るい青年の声だと思っただろう。

しかし……今の私には狂人のそれにしか見えない。

「か、かくれんぼです」

かなり苦しい言い訳だった。

その言い訳をニヤニヤ笑いながら、赤髪さんは私のスマホを取った。

「じゃあ、鬼に見つかっちゃったね☆」

うん、アンタ本当に鬼だよ。

なんていってる場合ではない。
どうしようかと頭をめぐらせ、ポケットに忍ばせてあるスタンガンをあびせようとしたとき……。

見てしまった。

「お兄ちゃん……!?」

赤髪さんの後ろで兄がいる。
意識を失っているにも関わらず、ぶん殴られて蹴られまくり……尋常じゃない程の血を流している。

あ……お兄ちゃんヤバイ死ぬ……

「まって!!お兄ちゃんをいじめないで!!」

ドンンンン!!!!と赤髪さんに体当たりを食らわせた。

「……!?……っと……」

彼がよろけた隙に、その向こうにいるお兄ちゃんに飛び付く。

「お兄ちゃん!!大丈夫!?痛くない!?」

「う……ゴボッ…………ゲホ」

仰向けでゴボゴボ泡をふき、額から血を流している兄を覆い被さるようにして抱き締める。

「……なんだ!?こいつ」

「子供?」

突然現れた私に驚き、流石に周りは蹴るのをやめてくれた。
私はその隙に兄が生きていることを確認し、そのあと兄の横で速やかに涙を流して懇願した。

「どうかお願いです!!いじめないでください!!」



☆☆☆☆☆


女子小学生の乱入によって周りは沈黙した。

「あ~……コイツの妹か?」

一番強面だが多分常識人っぽい茶髪オールバックさんが少し気まずそうに聞いてきた。

「はい!!妹です!!どうかお兄ちゃんいじめないで!!」

「いや……あのな?コイツから先に騙し討ちを……」

「でも!!皆さん怪我をしてないじゃないですか!!だったらいいじゃないですか、もう十分蹴りましたよね!?」

とかなんとかいいながら、兄の容態をそれとなく確認する。

傷は浅いが血がまだ止まっていない。骨折の心配も、先程の感触で折れていないことは確認出来たが、内蔵がやられている可能性がある。

「……ぅう……っぁ」

兄の呻き声が聞こえる。

フリかと思いきや、本当に苦しがっている。

小学生の私の筋力で兄を背負いながら逃げるのは無理だし、あの赤髪にスマホを取られているので救急車や警察も呼べない。

ならば……慈悲をこうて許してもらうしかない。

「どうか!!許してください!もうこのようなことはないようにキツクキツク叱っておきますから!どうか許してください!」

ほら~可哀想でしょ?か弱そうでしょ?ん?ん?

小学生をいじめるほどお前等は悪党じゃないことを祈ってます。

「お嬢ちゃんに免じて……ここは許してやってもいいんじゃないか?」

強面さんが仲間たちにそういってくれた。案外優しい人みたいだ。

「まぁ…な?」

「流石に可哀想だよな…」

よかった。何か『許そうぜ』的な雰囲気になっている。

そんな雰囲気のまま逃げよう。兄貴一人ならギリギリ背負える。他の人は…しらん。

「それでは…」

そういって、私が兄貴を背負おうとしたとき…。

「河野……ヒナタちゃんだね?可愛い名前~日向ぼっことかしたいね~☆」

狂人の声が響いた。
真っ赤な髪の毛がまるで血の色みたいである。

そんな彼は私のスマホをスクロールしながら楽しそうにいう。

しまった……通話する為に開きっぱなしなんだった。

「君さ~ネット通販で結構ヤバイもんかってるね~☆スタンガンに収縮棒に催涙ガスに~こりゃ年齢偽ってるでしょ~ダメだよ~☆」

ヤバイ……そんな履歴まで見られていたようである。
いや、だって兄がアレだから仲のいい私も自然と興味が沸くもんで………。

あーどうしよ!どうしよう!?

「ん~?ウフフ~?ん~☆」

そうこうしているうちに、赤髪がゆらゆらとこっちへ向かってくる。
貞○だ。○子だ。コイツ…人間かよ…。

というかコイツ…人間の言葉が通じてるのか?

「ジン…女の子が可哀想だから辞めてやれ。流石に子供に手を出したら…俺は流石にお前をかばいきれない」

「ん~☆暴力は振るわないけどさ~☆どうしよっかにゃ~☆この子可愛いし~☆」

「変態かよ…」

「違うってば☆ただなんていうの?……つついたら面白そうなの出そう」

コイツは薬でもかましているのだろうか?何故か☆がめっちゃ見える気がする。

「あの…お兄ちゃん…お兄ちゃんだけでも…」

必死で懇願する。
兄貴はクズだしかませ犬だが……それでも妹を可愛がってくれる兄貴なんだ。

他はどうでもいい。死のうが殺されようがどうでもいいから兄だけは…。

「じゃあ、ここで土下座しなよ」

「へ?」

意味が分からず首をかしげると、赤髪はニヤァァアっと笑う。

「ここで土下座するなら、許してあげてもいいよ?☆」

ニッコニコと赤髪の男は、無邪気に笑ってそういった。

まるで犬が芸をするのを面白く見ているような……余興を楽しむような笑顔だ。

「ほらほらどうすんの?早くしないと『お兄ちゃん』が死んじゃうぞ?」

そういって赤髪は足を兄の頭に乗せてグリグリと踏んでいる。
それに合わせて兄が苦しそうに声にならない呻き声をあげている。

このクズ男……!

「…う…あ…」

私は体が震え、周りを見渡してみるが男達は助けてくれそうにない。

そうこうしているうちにも兄の血が流れる。

これ以上時間がたっては駄目だと判断し、私は両膝と両手を地面に付かせて額も地面につけた。

「本当に…申し訳ございませんでした」

もう私のプライドなんてどうでもいい。兄さえ助かるならば…

「アッハハ~!お兄ちゃんが弱いばっかりに可哀想だね~☆」

赤髪の楽しげな声が路地裏に響く。

「どんな気持?ねえ、どんな気持ち?弱くて頭悪い兄貴を守る妹の心境ってさ~☆」

「…っ…」

唇を噛み締める。お前に何が分かるんだよと泣きたくなった。

うちのお兄ちゃんは弱くなんてない。父さんが私を殴ってる時も母さんが叩くときも私を守ってくれたんだ。優しい兄ちゃんなんだ。

お前みたいなクズとは違うんだよ。

「ねえねえ、反撃してみてよ☆君って結構頭いい方でしょ☆なんか面白いことをしそうなんだよね☆あ、でもこの男の妹だから期待損だわ☆この男もおつむ弱いし☆」

期待しないでよ…それにお兄ちゃんのおつむは弱くなんかない!!ちゃんと勉強教えてあげてるから毎回赤点を免れてるもん!

「ってかマジ噛ませ犬?噛ませ犬の妹とか可哀想☆」

プッツン…。

流石に限界であった。

「…死ね」

私はポケットからスタンガンを取り出し、クラウチンスタートの要領で飛び出して赤髪の鳩尾に電気ショックを食らわせてうやった。

「…う…グハ…ッ…!」

赤髪は一瞬だけ体を止めた。
その一瞬を私は見逃さずに、横に置いていたランドセルを右手で拾いあげ……

「えい!!」

赤髪の頭にめがけて…思いっきり振り落とした。
結構な勢いで当たった為に流石の赤髪も倒れる。

「や……やって…くれ…んじゃん☆」

倒れこんだ赤髪さんが私を見上げてそういった。
何処か本気で楽しそうだ。

「噛ませ犬の妹をなめないで下さい。つついたら出るのは…蛇かもしれませんよ?」

私はそういって倒れた赤髪さんの顔めがけてケリを入れた。

赤髪さんは鼻から血をだし……ピクピクと痙攣をした後に完全に倒れた。

流石に意識を失ったみたいだ。



ビィイィィィイ!!!

盛大に3本の防犯ブザーを鳴らす。
ぶっちゃけ、こんな人気のない路地裏ではあまり効果はなさそうだし、仮に来ても赤髪さんなら気にせずに喧嘩をしそうだ。

だが、赤髪さんのいなくなった残りのチームにはかなりの効果を発揮するはずだ。

「どうすんだ…!」

「ヤベーぞ!」

「とにかくジンを背負って逃げろ!」

いうやいなや、仲間たちは赤髪さんを背負って急いで去っていった。

「ふぅ…」

私はため息をつきながら防犯ブザーを鳴らすのをやめ、兄を背負う。

少し重くて引き摺ってしまうが問題はない。他のやつらは……知らん。



こうして、行き着けの闇医者のところまで兄をおぶって歩いたのであった。


ここで話が終ればそこそこハッピーエンドだったのだが…鬼は思いのほか粘着だった。


☆☆☆

夏休みの図書館帰り、赤髪は目の前に現れたのだ。

「やあ☆この間はどーも☆」

ニコニコと無邪気な笑みは、まるで少年のようだ。
……カブトムシを分解するような少年みたいだ。

「何の…ようですか?」

私は本の入っている手提げ鞄を両手でギュウゥッと抱きしめながらそういった。

「俺さ~喧嘩で負けたの初めてだったんだよね~☆なんかさ、興奮してきちゃったんだ☆強い人っていうの?面白いの大好き」

「あぁ、そうですか…」

私は赤髪さんから背を向け、そのまま全速力で逃げようとした

「あ~逃げちゃ駄目!!」

「…ッグェ」

赤髪に首ねっこをつかまれ、思わずグェッと声が出た。

それを見て彼はケタケタと笑う。

「別に逃げてもいいんだけどさ…アレ、死んじゃうよ?」

アレ……といって指をさしたほうに視線をす。
するとそこには…。

「お兄ちゃん!?」

ボロボロになっていたお兄ちゃんがいた。
赤髪の仲間らしき人達が、兄を押さえつけている。

「因みに攻撃してきたのはあっちだよ~☆本当、バカだよね~」

うん、兄貴はバカだ。擁護出来ない。

って、それどころじゃない!それどころじゃない!

「お兄さん、解放してあげてもいいんだけどさ~☆」

端麗な甘い顔で赤髪の男は私に囁く。
まるで誘惑する悪魔のように、鼓膜を溶かすかのように耳元で囁いてくる。

「ねえ、ヒナタちゃん。あーそーぼー☆」

鬼が笑う。無邪気に笑う。血のような真っ赤な色をして髪色で鬼が笑う。

退屈を尽した鬼がニヤニヤ笑う。

玩具を手に入れた子供のような笑みをして笑う。









どうやら土下座で許してもらえそうにない。
最後はぶっちゃけやっつけです。
本当はドロドロした最後だったんですけど、文字数が多くなりすぎたのでやめました。

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