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最後の迷宮

一応の完結となります。

「……よろしかったのですか? ジオ様」


 ユニが着せかけてくれる上着に袖を通しながら、俺は称号『夜の帝王』を解除した。

 途端、するすると俺の逸物は通常サイズに戻る。

 実を言えば称号『夜の帝王』はナニが巨大化するだけの物じゃない。

 ナニのサイズをある程度自在にすることが出来、かつスタミナ増強の効果をも併せ持つ称号なのだ。

 それをわざわざ誤解されるように最大サイズでコーラルに見せつけたのはユニからコーラルの気持ちを伝え聞き、向こうから諦めさせるためだが……


「……まあ、な。いくら何でも年も離れすぎだしな……新進気鋭の若手冒険者を40男の妾にする訳にゃいかねぇだろうよ」

「……妾、ですか? 別に本妻でも良いのでは……」

「あ~……本妻な。本妻は枠が埋まってんだよ」

「……というと……武具屋のアーネス様とか……ギルドのイナリス様とか……? ああ、でもこの前陛下から姪御様を紹介されていましたわね。とするとそちらが本命……」


 こいつ……天然か? それともわざと言っているのか?


「ちげえよ。本命の女がな、奴隷身分を買い戻すのを待っているって言ってんだよ!」

「……え?」


 絶句して動きの止まったユニに、小さな小箱を放ってやる。


「ちと早えが、今の稼ぎなら買い戻しまで後1ヶ月もかからねえだろ……だからやるよ。開けてみろ」


 おそるおそるユニがビロード張りの小箱を開けると、中から出てきたのは輝く石をはめ込んだ銀色の指輪だ。


「え、ええと……これ、もしかして」


 パーティメンバーとしてのユニの取り分は収入の10分の1。

 本当はきちんと頭割りにしたかったんだが、ユニはそれ以上は頑として受け取らなかった。

 それでも『窓』を得てからは収入が飛躍的に上がっていることもあって、ユニはそろそろ自分の身分を買い取れそうなのだ。

 だからその時期に合わせて、街の宝飾職人に発注していたって訳だ。


「……修練の指輪(トレーニングリング)じゃエンゲージリングには少々地味だろうからよ……ま、今までまともな装飾品とか買ってやってねえしな」


 こいつはハーフミスリルの台座に魔石化した金剛石をあしらった指輪で、魔力(MP)を貯めておくことが出来る一種のマジックアイテムにもなっている。

 魔法の品としちゃ結構ポピュラーな物なんだが、マルセル・トルコフとかって有名な職人がデザインした、ぶりりあんと……なんとかって加工を施してあり、結構な値段がした。

 値段の半分がデザイン料と技術料だぜ……いやはや。


「え、でも、私、その……」 

「なんだ、いらねぇのか? なら……」

「い、いる! いるますっ!!」


 冗談半分に指輪を取り返そうと手を伸ばすと、ユニは指輪を抱えて丸くなっちまいやがった。


「ひっ……ひぐっ……」

「……なんだよ、泣くなよ……でよ、その、なんだ……嫁に来てくれるって事でいいんだな?」

「あ゛い。じおさまの、お、およめさんになりましゅ……ぐすっ」


 結局ユニはプロポーズを受ける間も、ずっと指輪を抱え込んでまあるくなったままだった。

 一瞬でも手放すと、どこかに行ってしまうと思っているかのように。


          ※


 ユニと正式に所帯を持ったのはプロポーズから3ヶ月ほど後の事だった。

 ユニは元奴隷という立場から派手な式は望んでいなかったようだが、俺自身が今や結構な有名人だ。

 あれよあれよという間にまわりの者の方が盛り上がってしまい、街中を馬車でパレードするハメになっちまった。

 そして意外だったのはユニの人気で、ついこの間まで奴隷の身分だったというのに、パレードの最中、街中の者達から祝福の声を掛けられていた。

 特に多かったのが若い娘からの歓声で、どうやら「薄幸の少女が苦難の末に英雄の妻になる」というストーリーが(俺が言うのもなんだが)受けたようだった。

 馬車の上から花嫁の手によって蒔かれる「幸運の花びら」を手にして、その幸運にあやかろうと馬車の周りは若い娘達でごった返していたもんだ。


          ※


 そしてさらに12年後。

 俺達5人(・・)は最後の迷宮『始原の迷宮』を探索していた。

 ちなみに3つめの迷宮は『天空の迷宮』といい、10年程前に制覇している。

 俺ももう55歳だ。冒険者引退どころか普通の人間族ならお迎えが来たっておかしくない年なんだが……。

 不思議なことに『窓』を得てから体の老化が止まったような気がする。

 それはユニやルフも同じで、彼女等も若い頃のままの姿を維持している。

 今やユニよりもコーラルの方が年上に見える位だからな……。



 ま、それはともかく、話を戻すと……最後の迷宮に時間が掛かったのは、『天空の迷宮』制覇後に俺とユニに子どもが出来たからだ。

 男と女の双子でダオとイオと名付けた。

 ……別に韻を踏んでいる訳じゃないぞ。

 まあ、つまりこの二人が手を掛からなくなるまで待っていたって訳だ。

 ちなみにルフとの間には子どもはいねぇ。

 執拗な「子種くれ」攻撃も最近はルーヴァルのおかげで落ち着いたしな。


 ああ、ルーヴァルってのは『森林迷宮』に取りかかっていた時にパーティメンバーに入った、黒狼族の男だ。


 コイツと知り合ったのは『森林迷宮』の探索中だったな。

 その最中、「ブラックハウンド」という一級冒険者のパーティを助けた事があり、そのパーティのリーダーが「鉄身」の二つ名を持つルーヴァルだった訳だ。

 その際、まあ……なんとか全員、命は助かったんだが……結局冒険者として復帰出来たのはルーヴァルただ一人だった。

 いや、ひでぇやられかただったからな。トラウマになっても仕方ねえ。

 むしろ良くルーヴァルは冒険者を続けようと思ったもんだ。

 ま、そんなこんなで1人になっちまったルーヴァルは……恩返しも兼ねて俺達のパーティに同行を願い出たって訳だ。

 今ではパーティのメイン盾『重装盾士ヘビーシールダー』として無くてはならない存在になっている。

 今も全身鎧に大盾を構えてパーティの先頭に立って迷宮を進んでいる所だ。

 で、コイツ、パーティ加入当初から近親種族であるルフに思いを寄せていたんだが、俺に遠慮して口説くどころか思いを告白すらしなかったのだ。

 だが、はたから見ればその思いはバレバレで、気付いてないのは思いを寄せられている当のルフだけ、と言う有様。

 俺は寡黙で真面目なコイツが気に入っていたので、それとなくルフとの仲を応援してやっていたんだが、1年ほど前やっとのこと数年越しの思いを告げたところ、ルフもまんざらではないようで最近は二人で良い雰囲気になっている。


 だが、ルフはまだ時折思い出したように俺に『種付けを』『子種を』とせがんでくることがあり、その度にしゅんとデケえ体を小さくして落ち込んでいるルーヴァルが哀れでならない。

 種族特性的に強い番を求めるのは狼族に共通する半ば本能のようなものらしいからな。

 是非ともより強くなってルフをつなぎ止めてくれ。


 そして最後の5人目は『神聖治療術士ホーリーヒーラー』のエリエスティア・エル・ダリア。

 純粋な回復役が居ない我がパーティに、王家から押しつけられた「才能のある術者」であるエリエスティア……エリスだが、名前にアストリッド陛下と同じ「エル」のミドルネームが入っている事から分かるように、歴とした『王族』だ。

 詳しく言えば現王アストリッド陛下の妹の子であり、陛下の……というか王家の思惑がぷんぷんする。


「まかり間違って子どもが出来ちゃったら王家で引き取るから安心なさいね……というか起こしちゃって良いのよ間違い」


 とかのたまっていたしな。陛下。

 明らかに『窓』使いの血を王家に入れようとしているよな?

 まあ、エリス自体は素直な良い子だし確かに才能もあるから助かってはいるんだが。


 とまあ、以上の五人でこうして『始原の迷宮』にもぐっているって訳だ。

 ダオとイオもわずか10歳にしてオークを瞬殺できるくらいには鍛えあげたからな。家の留守を任せても安心出来る。

 後はこの最後の迷宮を制覇すれば、肩の荷も降りるってなもんで……。


「ジオ殿。どうやらここが最奥らしい」


 ルーヴァルの声に物思いから我に返ると、硬質で滑らかな素材で出来た扉が通路の奥にあるのに気付く。

 おっと、いかんね。

 本来なら職的にもレベル的にも、俺が一番最初に気付かなきゃならんのだがね。


「お、すまんな。ちっと感慨にふけっていたみてぇだ」


 パン、と軽く自分の頬を張り気合いを入れる。


「……仕方ありません。これで最後ですもの」

「最後か。ン、なんか寂しい気もすル」

「そう、ですね。わたくしも……です」


 ユニとルフ、それにエリスも神妙な顔だ。

 ま、このパーティもいい加減長えからな。


「よっし、それぞれ『窓』のステータスを確認して治療や装備の点検しとけ。10分後には突入するぞ」


 『窓』を操作してそれぞれのステータスウィンドウを表示してやる。

 俺以外の平均レベルは……ん、この迷宮でまた少し上がって……119って所か。

 以前、俺達以外の特級冒険者のレベルを見たことがあるが、平均60~70程度だったから、俺達のパーティがどれだけ常識の埒外か分かろうってもんだな。

 ちなみに俺自身のステータスはこの10数年でこうなった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

ジオ・ウルマ  55歳

 総合    LV200(MAX)

 神弓    LV200(MAX)

 錬金医師アルケミストドクター  LV181

 隠密    LV119


 

 生命力ヒットポイント 13402/13440(頑健×レベル×1.2) 

 魔力マジックポイント 4759/4800(精神÷2×レベル×1.2) 

 CPチャクラポイント  52/52((神弓15+錬金医師10+隠密18)×1.2) 


ステータス

    基本値       実効値(VEベリーイージー補正1.2倍込)  

 腕力 15+54+4   1831

 頑健 11+45     1404

 精神 15+25     1003

 速度 16+57     1831

 器用 17+52     1730(アローレイン173本)

 賢明 12+27      978


 残スキルポイント71(スキルポイントは複数ジョブの分が加算される) 

 残ステータスポイント0(ステータスポイントは総合レベルの分のみ)


称号

 『不死者』HPの自然回復に+50%の上昇補正。

 『不屈の挑戦者』同一ボスに敗北、もしくは逃走するたびにそのボスに対して+5%ずつ被ダメージが下がる。(最大50%)

 『導く者(改)』自身、及びパーティメンバーに対して取得経験値が4倍。

 『ガラスの腰』ダンジョン攻略後3%の確率で状態異常『ギックリ腰』に。

 『神の手』(ゴッドハンド) 素手の行動に+50%補正

 『夜の帝王』夜間、頑健基礎値に+3 魅了系抵抗+30% 局部サイズ自在

 『弓を極めし者』弓系ダメージ+20%

 『医神』薬品調合成功率+50%

 『闇に潜む者』暗所でステータス+20%

 『幸運の星(ラッキースター)』レアドロップ率+50%


スキル

  多数のため省略

 

装備

 天乃鳴弓+4

 雷鳴の包丁ライトニング・キッチンナイフ+9

 月神の影鎧(シャドウアーマー)+3

 妖蜘蛛の籠手ガントレットオブアルケニー+7

 ウィングブーツ+6

 修練の指輪(トレーニングリング)+1

 集魔のマリッジリング+2

 快癒の指輪+1

 減衰無効の護符

 破魔矢の矢筒

 自動薬壺(回復)

 自動薬壺(矢毒)

 力のお守りアミュレットオブストレングス+3 


 ※+表記は「錬金医師」によって強化した値。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 



 ……いや、なんつうか……

 自分の事ながらあきれるほどの数値だな。

 ましてや「べりーいーじー」の効果のせいで、各数値が1.2倍になっているからな……

 最近はコーヒーカップを持つのにも苦労しているんだぜ?

 ちいと気を抜くと握りつぶしちまったりしてなぁ……

 ま、「器用」の数値も高めに上げているから日常生活も何とかなっているがな。


 ……ん、特に支障はねえな。

 矢毒も各種ポーションも十分だ。

 後は……そうだな。最後の戦いだ。秘蔵のこいつも使っちまうか。


「……よし、お前ら、コイツを渡しとく。効果時間は20分だ。戦闘前に1本飲んどけ」


『窓』の『あいてむうぃんど』から虹色に輝く水薬ポーションを取り出し、各自に2本ずつ配る。


「じ、ジオ様……これは例の……いいんですか!?」

「ジオ殿……これほどの物、おそらく国にもそう数は無いはず……分けていただいて良いのか?」

「てやんでぇ、今使わずにいつ使うってんだ。出し惜しみは無しってな」


 ユニとルーヴァルが躊躇ためらうのもむべなるかな。

 こいつは『薬師』の上位職『錬金医師』で初めて作成可能になった、全能力を2倍にする水薬ポーション『虹の霊薬アムリタ』だ。

 世界樹の雫や古竜の血、賢者の石等、超レア素材が必要な為、全部で12本しか在庫がねえ。

 おそらくエリクサー並みに希少な薬なのだ。


「おお、この薬キレーだな、んぐっんぐっんぐっ……ぷはーーっ! ジオ、これ甘くて美味イぞ!」


 ああ……うん。ルフ、おめえは相変わらずブレねえな。


「ほれ、手前ぇらもさっさと飲め! 飲み終わったと同時に踏み込むぞ!」


 おそらく、この先にはこれだけの準備をしても命がけとなる戦いが待っているのだろう。

 しかしそいつぁ、平穏で平凡な人生よりも英雄と呼ばれることを選んだ時から覚悟していたことだ。

 この一戦に大陸の命運が掛かっているんだ。大層なことじゃねえか。


「一丁……やってやろうじゃねえかってな」


 俺は『虹の霊薬アムリタ』をぐいっとあおると、目の前の扉を押し開いた――――。


          ※


『いやー、ジオりんお強い! 流石攻略に10年以上掛けただけはありますなぁ! あはは。』


 ……あー。

 なんというか。

 ラスボスは雑魚だった。

 なんか12枚の漆黒の羽を持った『聖魔神なんとか』ってヤツだったんだが、あっさりと10分もかからずに打倒に成功した。

 『虹の霊薬アムリタ』でフルブーストした『アローレイン・ホーリー』の346本同時発射は流石に効いたらしい。

 ああ、今回は「第3形態」まであったが、きっちりととどめを刺したぜ?

 で、な?

 倒した途端、以前死んだ時に来た真っ黒な空間にまた来ていた。

 だが今度現れたのは以前とは違い、明らかに感情のこもった男の声だ。

 ま、姿が見えねえのは変わらねえが。


「世辞だか嫌みだか知らねえが、話があるなら手早く頼むぜ。あいつらが心配しているだろうからな」

『あ、もう、ジオりんったらいけずう。ま、いいですわ。とりあえず自己紹介しますと、ウチは『ミーミル3』言いますねん』

「みーみるすりぃ? ……変わった名前だな」

『ま、そもそも人じゃありゃせんですしなぁ……ていうか生物でもありゃしません』


 その、自称『生物で無いミーミル3』の話は驚くべきものだった。


 そもそも事の起こりは約1000年前。

 この大陸には人が住んでいなかった、のだそうだ。

 そこに目を付けたのがチキュウとかいう別の世界の人間達だった。

 彼の世界ではVRMMOとかいう……『冒険者や英雄になりきるゲーム』が人気を博していたが、それも次第に飽きられていった。

 そして次世代のゲームシステムとして開発されたのがSISソウルインシステムとやらだ。

 俺達の世界はチキュウ側からだと接続さえしてしまえば比較的クリエイト? しやすいのだそうだ。

 俺達の世界にあまねく存在する『魔力』。

 それに干渉し、こいつらはまず、この大陸にゲームの舞台となる迷宮ダンジョンを無数に設置した。

 迷宮には魔力を素材に魔物を作成し配置。(その際、現住の魔物を参考に作成)

 そして次に躯体プレイヤーボディと呼ばれる人の体を模した物を作成、チキュウ側の人間の意識だけをそれに移し入れる。

 最後に大陸に街を築き、NPCと呼ばれる人工生命体を配置して完了だ。


 つまりはこの大陸はチキュウとやらの人間が作った巨大な遊戯施設だったのだ。

 で、しばらくはこの新しい遊戯施設は大人気となった。

 VRMMO等とは桁違いのリアル性が受けたのだ。

 ま、そりゃそうだわな。リアル性ってか、現実だしな。

 が、誤算が一つ。

 確かに当時この大陸には人は居なかったのだが、『他の大陸には』存在していたのだ。

 そして時は大航海時代。

 魔力駆動の船が開発され、大海を渡って人が未知の大陸に飛び出していった頃と重なったのだ。

 やがて発見されたこの大陸には、他の大陸から開拓者が続々と渡ってきた。

 それはそうだろう。

 迷宮からは危険も伴うとは言え多くの資源が無限に取れたし、すでに住んでいたNPC達は美形ばかり。

 更には迷宮が魔力を集め消費するため、外は比較的弱い魔物しかおらず住みやすい。

 渡ってきた人間達は積極的にNPC達と交流し定住していった。

 さて、この事態に困ったのがチキュウ側の人間達だ。

 現地人類が居ないと思っていたから無茶な環境の改造をやったというのに、その前提が崩れてしまったのだ。

 やがて、現地人とチキュウ側の人間達(プレイヤー)にトラブルが頻発するようになり、わずか10数年でチキュウ側はこの大陸を放棄してチキュウ側の人間達(プレイヤー)はこの世界から去ったてぇ訳だ。


『せやけどなぁ、ダンジョンとかイベントとかNPCとか……ここいら辺をほっぽって置く訳にも行かんでなぁ。うちらミーミルがなるべく大海嘯が起きんように管理しとった言う訳や』

「てこたぁ、今現在こっちに住んでいる人間は……?」

『ん、大半がプレイヤーとNPCと現地人の混血やな……まあ、今となっては、ほとんど現地人と変わらんやろ。実際プレイヤーとして認められたんはジオりんが935年ぶりやからな』


 なんてこった。

 英雄だなんだかんだ言っていたのが莫迦らしくなってくるな。


『で、な。今回ジオりんに、この『システムエリア』に来て貰ったんはな、一つ質問するためや』

「ああ? 質問?」

『せや。ジオりんはこの度グランドクエストを終え、めでたくゲームクリアした訳やが……』


 ぽん、と音が鳴って俺の目の前に小さな窓が現れる。


 ○強くてニューゲーム

 ○ゲームを終了する


『ゲーム終了を選ぶと今の状態のままボス部屋に戻って貰うことになりますなぁ。せやから、お勧めは強くてニューゲームやで! アイテム引き継ぎ、ステータス基本値引き継ぎ、称号引き継ぎ、ジット引き継ぎ、記憶の引き継ぎ無し、別の街から18歳スタートや……って! なにためらいも無く終了選ぶん! お得やで、無双出来るで!? 若返るで!」


 あほう、記憶無しで別の街からとか……こっちは嫁さんと子ども持ちだぞ。

 選ぶわけねえだろが。


『ああ~……これでまた100年も経ったら海嘯対策人員探さんとあかんやん……』


 ま、その辺は弟子や子孫に期待しといてくれ。

 きっちり鍛えとくからよ。


『約束やで!? 計算やと、ジオりんが死ぬまでにせめてレベル100越え80人ほどは育て上げんと継続的な海嘯対策にならへんで!?』


 マジかよ。

 ち、しょうがねえな。

 引退はだいぶ遠のいちまうが……もう一踏ん張りしとくかね。

 平穏な老後と子や孫、子孫のためにな。


『約束やでぇ~~~~……』


 遠くなるミーミル3の声を背中に、徐々に現実世界に浮上してくる意識。

 やがて薄く開いた視界には……あれ、また真っ黒……?


「ジオ様ジオ様ジオ様……ジオ様? ……ジオ様もどっでぎだぁ~……」


 て、ああ、ユニの髪か。

 どうやら俺の首っ玉に抱きついていたユニの髪が俺の視界を覆っていたようだった。


「こ、鉱山迷宮の時どいっしょだったからぁ……大丈夫だと思っでまじだけどぉ……し、心配でぇ……ぐしゅ」


「ああ、悪かった、心配掛けたな」

「ジオ様ジオ様ジオ様ぁ~……」


 ぽんぽんとユニの頭を軽く撫でてやる。

 ……ほらな? こんな嫁残していけねえだろ? ミーミルさんよ。


 ……ボス討伐よりユニをなだめる時間の方が長かったのは余談だ。






      □ ■ □ ■ □ 終 □ ■ □ ■ □








なんというか、いつも通り最後は駆け足になってしまいました。

これで本編は完結となります。

ちょっと最後、据わりが悪かったかなぁ。

もしかしたら外伝とか閑話とか入れるかもしれませんので、しばらくは連載にしておきます。

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