英雄と夜這い少女
今回ちょっと下品です。ご注意を。
「ふむ、大海嘯を防ぐ為に、4つの根源ダンジョンを攻略しなければならん、と。そう『窓』とやらが申している……とな」
ふむ、といぶかしげに眉根を寄せるアストリッド女王陛下。
あー、まあ信じられねえよな。特にこの『窓』の存在なんざ、どこの狂人の妄想かと思われても仕方ねえんだが……
だが信じて貰わんことにはどうしようもねえ。
正直、あれ以上の巨大ダンジョンが後3つも残っているとなりゃあ、俺1人の手には余るってもんだ。
「あー……アストリッド陛下。一冒険者の与太話とお思いになるかもしれませんが……」
「ああ、いや、まて。すまんな、疑っている訳ではないのだ。なにしろ……その『窓』……いや、『システムウィンドウ』の存在は王家の秘文書にも残されているからな」
「へっ……そ、そうなんで……?」
「うむ……古代の英雄達はその『窓』を駆使して多大な戦果を残し、一部は王家の祖ともなっている。故に王家の記録に残っているのだ……まあ正直、今までただの言い伝えだと思っていたが、偶然の一致にしても符号が合いすぎるしの」
ああ、なるほどね。
それでこんな突拍子もない話に納得出来るって訳だ。
「……それに王家付きの天文の司の研究でも迷宮の攻略と海嘯の発生に因果関係があるらしきことが分かっている。そしてこの所、海嘯の予兆がとみに高まってきていたことも同時に報告に上がってきていた」
「予兆?」
「うむ、地震の頻発、マナの異常活性化……などだな。それらがお主が鉱山迷宮を攻略した時期から沈静化の兆候を示しておる……これもお主の話の裏付けとなっておる。そこで、だ」
言葉を一旦切ると、アストリッド陛下はにたり、と意地の悪い笑みを浮かべた。
……嫌な予感しかしねぇ。
「そなたに対する指名依頼だ。大海嘯の防止、若しくは原因の解明を王家の名においてジオ・ウルマ、そなたに依頼しよう。ああ、正式な書類は後日ギルドを通して出しておくよ」
……王家に面倒事を押しつけようとしたら特大のブーメランが戻って来ちまった、てか。
※
アストリッド陛下に無理難題を押しつけられてから、1年と半年。
俺は4つの根源ダンジョンの内、2つめをようやっと攻略した。
地道にレベルを上げ、仲間を増やし、魔法の道具を揃え……大陸の西方で発見された2つめの迷宮『森林迷宮』を制覇した頃には、俺は大陸でも数人しか居ない「特級冒険者」まで成り上がっていた。
時間を掛けすぎだと思うかもしれねぇが、2度とあんなギリギリの勝利なんざごめんだからな。
安全マージンをたっぷり取ったてぇ訳だ。
後は後継者を育成し、冒険者全体のレベルの底上げにも心を砕いた。
根源ダンジョン以外にも「普通の」ダンジョンを攻略しても、それなりに海嘯の抑止効果があると分かったからだ。
幸い俺には育成に関して特筆に値する能力がある。
見込みのありそうな若いのを鍛え上げて各地の迷宮に送り出していく。
……まあ、言ってみれば、自分の時間稼ぎのために若いのを死地に送り出している訳だ。
これは全くの俺のエゴで弁解のしようもねえ。
ま、せめてもの心遣いとして、いくらかのエクスチェンジ謹製武具は持たせてやっているし、無理をしないよう言い含めてあるが。
それなのに、だ。
世間の評判は俺の予想とは裏腹に至極良い。
俺が送り出した子ども達は『神弓の子ども達』と名乗り、各地で活躍しているのだという。
※
「『狂い熊』、そっちに行ったよ! コーラル姉!!」
イルルカの『雷撃の矢』に追い立てられて、あたいの2倍は丈のありそうな魔獣――『狂い熊』が地響きを立ててこちらに向かってきた。
「イルルカ、ナイスアシストぉ……後は任せて!」
あたいは素早く魔弓『鋼の百合』に矢をつがえると、スキル発動のために精神を集中する。
「いっけぇ! 『アローレイン・フレア』!」
ジオ兄直伝の弓技が発動し、幾本もの炎の矢が『狂い熊』を貫く。
「グォォォォォォアアア!!」
断末魔の咆哮を上げて、どう、と倒れる『狂い熊』。
へん、この程度の魔物、敵じゃないね。
「あーあ、コーラル、炎系の弓技使っちまうから……せっかくの毛皮が台無しだぜぇ?」
「……うるさいな、ルーグ。牙と肉だけでも十分黒字でしょうが」
全く、ルーグは相変わらずいやみったらしいね。
「ありがとうございます、冒険者様!」
私より1つ2つ下位かな。エプロン姿の村娘がお礼を言ってきた。
村の近くまで迷い込んできた『狂い熊』に彼女が襲われたところを、たまたま通りがかった私達が助けたんだけど……
いや、こっちにしてみれば労せずして獲物が目の前に飛び出して来たようなもんだからね。
むしろ儲けたようなもんだし、お礼を言われるほどのことじゃない。
「ああ、怪我は……ちょっと頬を切っているね。じっとしてて……『手当』」
彼女の頬を両手で挟んでスキルを使う……これもジオ兄直伝。
切り傷や打撲程度ならこれだけで跡形もなく治ってしまう。便利なことこの上ないね。
「あ、や、そんな……冒険者様……はふぅ」
ありゃ、真っ赤になってぐったりしちゃった。怪我は治したはずだけど……大丈夫かな。
「冒険者様方、ありがとうございます!」
「す、すげぇ……『狂い熊』をたった3人であっという間に……」
「それに魔法も使わずに娘の傷を消し去ったぞ」
「赤髪の弓使い率いる3人……まさか『神弓の子ども達』か!」
「じゃ、じゃあもしかして『神弓の子ども達』の一期生……『紅百合』コーラル様!?」
「『黒曜』のイルルカ様に『烈風』のルーグか!」
「運が良かった……狂い熊なんざ村に入られた日には下手したら村が滅んでたぜ」
「流石……大陸5英雄の一人『神弓』ジオのお弟子さん達だ……噂は大袈裟ではなかったな!」
今まで家屋の中でじっと息を潜めていたんだろう村人が集まってきて、口々に感謝を伝えられる。
噂……噂かぁ。
当 た り 前 だってーの。
だってジオ兄だよ?
『神弓』
『栄光の指導者』
『千技』
エトセトラEtc.……
数々の二つ名や異名を持つジオ兄だ。噂の方がまだまだ追いついちゃいないさ。
実を言えばあの鉱山迷宮をきっかけに、あたい達はギルドへと登録してジオ兄と同じ冒険者になったんだけど……
ジオ兄にはその後も目を掛けて貰って、度々一緒に迷宮に潜ったりしてたんだ。
で、明らかにジオ兄と一緒に行動している時って成長速度が異常なんだよね。
どうやらそれもジオ兄の『千技』の一つらしいんだけど。
ま、ともかく、ジオ兄から貰ったこの力と魔法の武器のおかげで、あたい達はこの一年であっという間にギルドの上位冒険者になったって訳さ。
今では稼ぎも十分あるし、もうひもじくて眠れないこともない。
今回みたいに魔獣退治で人々から感謝されさえする。
しかも、それはあたい達だけじゃないんだ。
あたい達の後にもジオ兄は次々と孤児や浮浪児を引き取ったりして鍛え上げ、冒険者として独り立ちさせている。
ジオ兄という強力な弓から放たれた矢。
そのうち誰からともなく、あたい達や他のジオ兄の弟子達のことを『神弓の子ども達』、なんて呼ぶようになったてぇ訳。
ジオ兄はアタイ達が強くなって活躍することそのものが自分の助けになっているって言うけど、正直そんなんじゃとてもじゃないけど返しきれない恩がある。
だから、せめてあたいらはジオ兄の弟子として、『神弓の子ども達』として……師匠の自慢出来る弟子であろうと心がけているんだ。
※
狂い熊をギルドに引き渡したその足で、あたいは街外れにあるジオ兄の家を訪ねていた。
あたいは独り立ちした後も度々こうしてジオ兄の所に顔を出す。
ま、名目は修行なんて言っているけど……うん、その、単に顔が見たいって言うか……ほ、惚れた弱みって言うか。
ああ、もう、つまりはそういう事だ!
まあ、ジオ兄はユニ姉一筋で……あたいもそんな二人の仲を裂く気なんて毛頭無いし。
ただ、会いたいなぁーってだけなんだけど……
ユニ姉が「そんなに好きならアタックしないと後悔するよ」って言ってくれて。
で、でもあたいみたいな子どもを相手にしてくれるかなって言ったら「そこら辺はお膳立てしてあげるから覚悟が決まったらいらっしゃい」って……
……と言う訳で!
あたいは一世一代の覚悟を以てジオ兄宅へ来ている訳だ!
で、なぜか二人の寝室の前にて正座待機中であったりする。
一応、修行を付けて貰う、と言う名目で訪問したので、昼間はきっちりと特訓に精を出した。
で、その後「もう遅いから」と自然な流れでユニ姉に泊まっていくよう誘われ、そっと耳元で今の時間寝室の前で待つように言われ……それで、今に至る、と。
そして当然のごとく、目の前の木の扉からはくぐもった男女の秘め事の声が漏れ聞こえてくる。
「お子を授けて下さい……」とか「○○○○○○てぇ」とか「もう○○○○○○」とか。
え、なに、こんな事言っちゃったりするの!?
そういうプレイ!?!?
やがて1時間程も経った頃だろうか。
やっと部屋の中が静かになったと思ったら、かちゃり、とドアが内側に開いた。
「わたっ……」
ドアに重心を掛けていたせいで、思わず部屋の中に転がり込んでしまう。
うぎゃあ。これじゃ私が盗み聞ぎしていたみたいじゃないか(※してます)
「コーラルちゃん、ジオ様の準備出来たわよ。そっちの準備は……ん、万端みたいね」
ユニ姉の視線があたいの股間に刺さる。
いや、違うから。これ汗だから。ちょっと粘度高いけど。
「お、おいユニ、途中でやめていったい何の……ってか、なんで嬢ちゃんが」
「すみません、ジオ様。コーラルちゃんのために一番盛り上がった所で寸止めさせていただきました」
あ、なるほど。
男の人は途中でやめられないって言うもんな。
ユニ姉の言うお膳立てってそういう……確かに今の状態ならアタイみたいな子どもでも襲ってくれるか……も……って、
「な、なにそれ……大根!?」
それは ピーというにはあまりにも大きすぎた。
大きく 硬く 重く そして長過ぎた。
それは 正に大根だった。
「あらあ、正真正銘ジオ様のピーよ? ちょっと他の殿方より大きいかもだけど」
すりすりと愛おしげにそれを撫でるユニ姉。
「やっぱり『夜の帝王』の称号のせいかねぇ……ここ一年でどんどん……」
そそくさと自分の股間をシーツで隠して、ため息をつくジオ兄。
「で? 本当に嬢ちゃんが相手してくれんのか? 正直、ユニのように閨房術とか閨関係のスキルがねえとつらいと思うぞ……最悪壊れる」
いやいやいやいや。
無理無理無理無理!!
「無理だよ! そんな、おっきーの!!」
こうして、私の初恋は実ることなく終わったのだった。
アイアンリリーは例によってガチャ武器です。
武器の格としてはブレードカシナート(wiz1)位