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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます 作者:あまうい白一

第一章

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エピローグ 一人前の《運び屋》、頼られてます

 古龍襲撃から二日が経った。

 街の中央は大分荒らされた物の、魔獣の襲撃には慣れているらしく修復は素早く行われた。
 その結果、ほんの数日で、とりあえずの景観を取り戻すことに成功していた。

 商業ギルドや冒険者ギルドでも、修復のための素材集めや、作業者としての依頼がいくつも出回っていて、あれだけの大騒動があったにもかかわらず、街は活気にあふれていた。

 その中で、俺は輸送袋を手にサジタリウスの店の前にいた。
 隣にはバーゼリアが立っており、そして対面にはマリオンとドルトがいた。

「この依頼を受けるという事は、もう旅立つのね、アクセルさん」

 そう言う彼女が持っているのは今回受けた依頼書だ。内容は『水の都』への物資輸送と、その中継地点となる街まで複数人のグループを戦闘サポートするというものだ。
 そして赤い注意書きで《現地解散》とも書かれている。

「一度『水の都』をじっくり見たかったからな。海産物も美味いっていうから、食べてみたいし。――で、この依頼は、荷物を届け次第、現地で依頼終了するって事で良いんだよな?」
「ええ、これは荷物に受領確認の魔法が掛かっているからね。届き次第、魔法が解除されるから、そのまま旅立ってしまって問題ないわ。ただ、旅立つとしたら、輸送袋には多少多めの食料を入れた方がいいとは思うけれど」
「そこは問題ない。三か月は暮らせる分の食料は入れてあるからな」

 あとは、今回の襲撃で少し壊れてしまった自宅に置いていた金と、竜騎士の武器も輸送袋には入れてある。

「使えそうな物は全て持ち出したし、旅立ちの準備は万全だ」
「アクセルさんはしっかりしてるから、その辺りは心配してないわ。まあ……少し、寂しくなるけれどね」

 マリオンの言葉に、彼女の隣にいるドルトも大きく首を振った。

「うむ! 本当にな。空飛ぶ運び屋が星の都からいなくなると思うと、なんだか奇妙な気持ちだよ。だが、めでたい門出でもあるから、ワシは祝おうと思うよ、アクセル君」
「はは、ありがとうよ。まあ、ここには絶対に戻ってこないって訳じゃないし、また来るさ。……それと、本当に二人には世話になった。転職したばかりの俺を支援してくれて本当に助かったよ」

 礼を言うとマリオンとドルトは二人で顔を見合わせて、苦笑し合った。

「ふふ、こっちがお世話になってばっかりだったけどね」
「うむ、竜関連では本当に世話になった。――それで、少し遅れてしまったがこれを君に渡しておこう。君が街の修復に使ってくれと言って渡してきた古龍の鱗の売上だ」

 ドルトが出して来たのは、一つの革鞄で、中には札束がぎっしり詰まっていた。

「大金じゃないか。こんなに良いのか?」
「何を言うか。倒した君が大金を得て悪い事など一つもない。それに街の修復には十分に金を使っているし……大物だったからな。これでもまだまだ売れる物は残っているのだ。全てを一度に売り抜くことは出来なかったレベルでな」
「へえ、割と売れるところが残っていたんだな」

 スキルで思い切り上半身を消し飛ばしてしまったけれど、それでも古龍は中々の大金になるようだ。大戦時に拾っておいても良かったかもなあ、と思っていると、ドルトが金の入った鞄を指さした。

「それで、だね。今後も売り上げをアクセル君に渡したいのだけれども……君さえ良ければ、ワシの商業ギルド・ジェミニアに君の口座を作って、後々、残りの金は入れておきたいと思うのだ。どうだろうか? 良ければ手続きはこちらでやっておくが」
「ああ、ドルトのおっさんのギルドは銀行みたいな事もやってるんだな」

 魔王を倒した時の報酬の大部分は現金でもらったし、持ち切れない分は王都預かりで、連絡をすれば届けてくれるので、口座を作る事をすっかり忘れていた。
 どこのギルドで作っても良いんだろうが、手続きをやってくれるというのであれば、やって貰おう。

「じゃあ頼むわ」
「承知した。ではこれが君の口座認証用カードだ。失くさないでくれ。再発行には写真がいるのでな」

 ドルトは頷きながら、俺に一枚のカードを渡してくる。

「……ドルトのおっさん、もしかして前もって作ってあったな?」
「サブマスター権限でちょいとな。許可を得なければ作ってなかった事にしたから許してほしい。こちらの方が円滑で良いだろうと思ったのだ」
「まあ、微妙に釈然としないが……旅立ちのタイミングだしな。こうして直ぐに受け取れた方が、俺も有り難い」
「うむ、そう言ってくれると助かる。この国の殆どの都市に支部があるから、必要な時に寄ってくれれば、どこでも引き出せるぞ。そして、このカード以外にも一つ渡しておきたいものがあってだな……」

 そう言ったあとで、ドルトは再び懐に手を突っ込み、小さな棒を一本、取り出した。
 そして、俺が付けているサジタリウスから受け取った指輪を指さした。

「……アクセル君、そのリングをこちらに出して貰ってもいいか?」
「ああ、はいよ」

 俺が指輪を向けるとドルトは金属部分に、小さな棒を押し付けた。するとその部分に、人の両手を組み合わせたようなマークが生まれた。 

「これは……なんか模様が増えたな?」
「それは、ワシのギルド、S級ギルドジェミニアの認定マークだ。君の力をワシたちが保証する、というものでな、君の力を証明する道具になる筈だ」
「へえ、ドルトのおっさんのところもS級ギルドだったんだな」
「うむ、そうだぞ。ジェミニアもサジタリウスもこの国が誇る、神に最も近しいと言われる十二のS級ギルド――王導十二ギルドだ。その内の二つから君を優秀な運び屋として認定させてもらったのだから、どこのギルドに行っても、どこの街に行っても門前払いを受ける事はないだろう」
「マジか。重ね重ねありがとう、二人とも」

 仕事を覚えられたばかりか、こんなプレゼントまであるとは。本当にいい支援をして貰っている。有り難い事だな、と思っていると、教会の鐘がゆっくり八回なった。
 八時になったのだ。

 頃合いだ、と俺は受け取ったものを全て輸送袋の中に押し込んだ。そして、

「そろそろ今回の依頼の集合時刻だ。東門の方に行ってくるわ。……じゃあな、二人とも」

 少しの名残惜しさを覚えつつも、バーゼリアと共に今回の依頼に向かおうとしたのだが、

「あ、待って、アクセルさん。待ち合わせはココでいいのよ」

 マリオンにそんな言葉で止められた。

「うん? それはどういう事だ?」

 意味が分からなかったので尋ねると、マリオンは少しだけ悪戯っぽく笑った。

「だって、その依頼をしたのは、私とカウフマンさんだから」
「え?」
「今回の依頼に、紛れ込ませて貰ったのよ。これが一番、アクセルさんが旅しやすそうな道程かなあって」

 何を言っているんだ、と思いながら俺はドルトの顔を見る。すると彼も彼で、楽しそうな表情を浮かべて頷いていた。

「え、マジで、これ、二人が出したのか」

 俺は依頼書に掛かれた依頼人の部分をよく見る。
 そこには商業ギルドとしか書かれていないのだけれども。だから改めて尋ねると、マリオンは微笑みながら説明をしてくる。

「ええ、ちゃんと理由もあるのよ? 星の都を直すための物資を買いに出るっていうね」
「うむ! それと君と別れるのは、やはり名残惜しくてな! 少しだけ、水の都に中継する街くらいまでは、一緒に行ければと思ったのだ。食料などはこっち持ちでいけば、アクセル君の門出祝いにもなるからな!」

 ドルトもドルトで親指を立てて力強く言ってくる。
 どうやら、この二人は俺の旅立ちまで支援してくれるようだ。

「ちょっとしたサプライズプレゼントだな、こりゃ。――まあ、そういう訳なら、途中まで一緒に行こうか」

 俺の言葉に、マリオンもドルトも嬉しそうな顔で応えて来る。

「ええ、よろしくお願いするわ、アクセルさん」
「サポート役の方、頼りにしているぞ、アクセル君!」
「はは、了解二人とも。――運び屋として、しっかり仕事は果たさせて貰うさ」

 そのまま、マリオンとドルトと軽く話をした後、俺たちは水の都への街道がつながっている東門へと向かっていく。そんな中、俺の隣を歩くバーゼリアも嬉しそうな表情で声をかけて来る。 

「なんだか、楽しそうだね、ご主人」
「まあな。前の仕事が悪かったなんて考えちゃいないが。――《運び屋》っていう仕事は凄く楽しいと、そう思ってるからな」

 そうして賑やかな仲間たちと共に、俺は星の都を旅だって行くのであった。
これにて一章終了です! 
続きの二章は旅と新しい街へ、という形で。お楽しみに。
●書籍化のお知らせ
1/18にガガガブックス様より、『最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます』の1巻が発売されます!
書き下ろしを凄く頑張りました。そしてイラストも非常に素敵ですので是非とも、書店でお手に取っていただけると嬉しいです!
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